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私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか  作者: れもんぴーる


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19/31

天国へ

 エミリアは、業務が少ないはずのヨハンが毎日机に向かって真剣に何かをしているのを不思議に思っていた。気にはなったが、これまでそれほど積極的に関わってこなかった自分から気やすく話しかけるのはあまりにも身勝手だと話しかけられずにいた。


 今日はエミリアも残業で、ヨハンも残っていた。

 今日は、観光案内が長時間に及び、時間が遅くなったうえにその後の書類作成などで遅くまで事務所に残らざるを得なかった。

 書類を書き上げると、全身の疲れや首周りの痛みを感じ、腕を上にあげて大きく伸びをした。


「お疲れさまでした、エミリア様。」

「あ、はしたないことでごめんなさい。」

「いいえ、全くです。むしろご褒美・・・」

「え?」

「え?・・・お茶いれます!」

 ヨハンはさっとお茶を入れてお菓子も添えてくれた。

「ありがとうございます。うわ~、おいしそうですね!」

「先日街で見かけて、おやつにしようと置いてあったので。」

「ああ、甘いもの。生き返るわ。」

 幸せそうにお菓子をほおばった。

 その顔を見てヨハンも幸せになる。

 そして、この笑顔を見るためにまた美味しいおやつを買いに行かなければと算段する。 


「今日は、ちょっと大変だったのです。こちらで決めていたルートを、噂で聞いたからと言ってあっちもこっちも全部行きたいとおっしゃられて。評判が上がったのはいいけれど、皆がそう言いだすと収拾がつかなくなりますし・・・時間も足らず困りました。」

「でしたら、基本のコースを決めてそれ以外は追加契約にいたしましょう。一回の契約料ではなくて、加算方式です。それだけこちらも人と時間を費やすのですから。それで、方向があまりにも違うコースの場合は同日不可とし、宿泊コースも作って翌日ご案内するとか、宿泊施設と提携すればお互い紹介しあえますしいいかもしれませんね。」

「・・・バランド様。とっても素晴らしいですわ。私・・・自分が恥ずかしい。勢いだけで始めて、それもトゥーリ侯爵にすべて頼りきりで。トラブルも対処できずあなたに来てもらい・・・そしてこんなに有意義な提案をしてくださって。なんだか私が一番足手まといみたい。」

 エミリアは溜息をついた。


 客が増えてきて、ありがたい反面、精神的な疲労が積み重なってきていた。

 客の望みに精一杯応えたいと、間際で計画を変更したり、無理をすることが多く、毎日一杯一杯になってきていた。

 ヨハンのように対処法を考えたり、毅然と断るなどすべきだったのだろう。目の前の事をこなすのが精いっぱいで、何もできない自分のふがいなさに落ち込んだ。

「な、何言っているんですか!エミリア様が素晴らしいものを立ち上げたんですよ。私はこうして一から作る能力はありません。出来たものを観察、分析して意見をいうことが出来ますが、無から有は生み出せないのです。それぞれの能力が違うだけで、エミリア様のされていることは簡単な事ではありません。今は疲れて弱気になっているだけですよ。」

「・・・バランド様は、お優しい。御世辞でも元気出ます!ありがとうございます。」

「お世辞ではありません。本気でそう思っておりますから。今日は遅いですし・・・食事をして帰りませんか?家まできちんと送りますから。」


(おお!僕、スマートじゃない?!さらっと誘えたよね?気持ち悪くなかったよね?)

 エミリアの返事をドキドキして待った。

「そうですね、今日は帰って作るのも大変ですし・・・お願いします。」

「はい!」

(おおおっ!やっとやっとエミリア様が、エミリア様が!僕と食事。二人で食事!これはもうデート!僕、嬉しくて死んじゃいそう・・・)

 キリっとした顔をしてはいたが、ヨハンの心の中は小躍り状態、お祭り騒ぎだった。


 それ以来、家が近くということもあり時々ご飯を食べながら、仕事のことを相談したり、いろんな話をするようになった。ヨハンは、婚約者として会っていた時よりもよほど心の距離が近づいた気がした。

 二人で母国の言葉で話をしている時のエミリアは相手がヨハンだというのにどこかほっとした様な様子になる。エミリアは言葉も文化も異なるレイノー国に来てからずっと気をはり続けていたのに違いない。

 それに気が付いたヨハンはエミリアの癒しの場になれるよう二人の時間をせっせと作り、エミリアから頼られる男になろうと頑張るのだった。


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