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私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか  作者: れもんぴーる


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17/31

気の許せる存在はありがたい

「どうしてバランド様がいるのですか!」

「一人で案内をしないのはトラブル回避の鉄則ですから。」

 今日はヴィンセントがレイノー国に遊びに来ることになっており、エミリアが案内することになっていた。

 その待ち合わせの場所に、しれっとヨハンが立っている。


「今日は仕事ではありません。お客様でもありません、友人と会うだけですのでお帰り下さい。」

「せっかくですから、私も・・・」

「・・・デートですのでご配慮下さい。」

「デート?!」

「ですので、遠慮してください。明日も休みですので明後日またよろしくお願いします。」

 がっくりと肩を落としてヨハンは家に戻った。


 ヴィンセントが到着し、久しぶりの再会に話が弾む。

「アルテオでも結構評判だよ。エミリア、頑張っているんだな。」

「周りの方に凄く助けてもらっているわ。トゥーリ侯爵の手助けがなければ無理だったと思う。」

 ヴィンセントを一番お気に入りのカフェに案内し、そこから観光に出る予定にしていた。

「あいつも追いかけてきたんだろう?」

「そうなのよ。背に腹は代えられなかったの。トラブルがあって、書類や法に詳しい人がいないと大変で。求人を出したら彼しか応募がなくて・・・仕方なく。」

「俺は複雑だけど。」

「・・・そうね。私も。初めはすごく気まずくて・・・毎日きつかったの。でも、特に何も言ってこないし一従業員として頑張ってくれているから少しずつ慣れてきた感じ。」

「そうか、いやな目や危険な目に合っていないのならいいけど。で、こちらにはもう慣れた?寂しくないか?」

「うん、まあまあかな。忙しくて寂しいって思う暇はなかったけど、今日ヴィンセントに会えて嬉しいわ。こちらの生活はやりがいがあるし楽しいけれど、こうしてヴィンセントの顔を見るとホッとしてる。」


 ヴィンセントはエミリアの手を取ると優しく包み

「頑張りすぎるなよ。休みとって、たまには帰ってきて欲しい。」

「ええ。ありがとう。それで・・・あちらはどんな感じかしら?」

「まあ、あの男はこちらに追いかけてきたみたいだけど、バランド家はお前に無礼なことをされたとお怒りで婚約破棄を突き付けたようだ。だから実質もう婚約者ではない。」

「正式な破棄じゃないの?」

「お前の父親が納得しないようだ。もとはといえばヨハン殿の不誠実が原因なんだから婚約破棄するなら慰謝料をよこせとな。」

「うわあ、はずかしい。本当に嫌になるわ。」

「エミリアがこちらで評判だっていうのも耳に入ってるようだ。また何か言ってこなければいいけどな。」

「こんな遠方にまでわざわざ来ないんじゃない?いらないお金がかかるだけだし。」

「そうか。それと・・・俺考えたんだけどさ。」

「うん?」

「エミリアの仕事さ、アルテオ国でもできるんじゃないかなと思って。アルテオでレイノー国や他国からの観光客の通訳や観光案内すれば俺たち離れずに済むし、お前も仕事あきらめないでいいだろ。」

 エミリアは目からうろこの思いだった。

「ほんと。考えつかなかった。まあ、はじめは逃げるためだったしね。こちらに来たかったんだけど。」

「一つの案として考えてくれたらと思って。」

「ええ、ありがとう。嬉しいわ。」


 それからレイノー国の素敵な場所を案内し、夕食をともにして楽しい時間を過ごした。

 翌日は街やカフェを案内し、レイノー国を堪能してもらった。

「こうやってゆっくり一緒に過ごすのも久しぶりだな。」

「うん、婚約者ができてからは遠慮していたし。」

「エミリアが思い切ってレイノー国に来てくれたおかげかな。楽しかった。」

「私も楽しかった。来てくれて本当にありがとう。」

 話をしながら歩いていると、女の子が寄ってきた。

「お姉さん!」

「レナちゃん。どうしたの?」

「お姉さんにあったらお礼を言おうと思ってたの!お姉さんのおかげで母さんのお店に人が増えたの。お姉さん、ありがとう!」


 満面の笑みでエミリアにお礼を言う少女に、エミリアも嬉しそうに少女の頭を撫でる。

 エミリアがレナの母の店を美味しい卵料理が楽しめる店として観光客を案内しているのだ。 

「レナちゃん、それはレナちゃんのお母さまのお料理が素晴らしいからよ。また食事に伺うわね。」

「うん!絶対来てね!待ってるから!」

 ヴィンセントは走っていったレナを見送りながら、先ほど立ち寄った店でもエミリアが声をかけられ、いつものお礼だからと紅茶に合うクッキーをサービスしてもらったのを思い浮かべる。


「エミリアはこの街になくてはならない存在になったんだなあ。」

 ヴィンセントはしみじみとつぶやいた。

「そうだと嬉しい。私もみんなに助けられているの。」

「そっか、しっかりこの国に馴染んでいるのを見て安心した。来てよかったよ。」

 ヴィンセントは眩しそうにエミリアをみた。

「私も会えて嬉しかったわ。また、来てね。で、帰国したら一杯宣伝してきてね!」

「はは、わかったよ。お前も帰って来いよ。」


 ヴィンセントはエミリアが元気にしていることを確認すると、安心してアルテオに帰っていった。

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