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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「英才教育」編
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88話 「武器屋バランバランでサナの装備を買おう その2」


「じゃあ、スレイブ商はマングラスにみかじめ料を払っているの?」


「そうなるな。人材管理は全部マングラスだ。ハローワークも裏ではマングラスと提携しているとは聞くぞ。どのみち人の出入りは全部把握しているらしいからな」


「なるほどね。東門を見張っていればわかるよね」



(この件に関しては、今度モヒカンに会ったら問いただしておくか。そういった連中がいるならスレイブの取引も監視されているかもしれない。しかし、ハローワークもか)



「他の都市のハローワークにもマングラスは関与してるの?」


「それはさすがに無理だろう。他の都市には地元の組織があるはずだ」


「それもそうか。結局のところ、どこに行っても構造は同じなんだね」


「都市も利権で動いているからな。それで今日は何の用だ? 武器か? 防具か? 武器屋に来たなら何か必要なんだろう?」


「ここに『銃』はあるの? 衛士たちが持ってるやつ」


「いきなり銃かよ。あるぞ。『商会証明書』があれば売れるな」


「なにそれ? 一般人には売れない感じ?」


「そりゃ銃だからな。気軽に売ったら危ないだろう」


「そうかもしれないけど、外は魔獣だらけでしょ? 銃くらい普通に買えてもいいんじゃない?」


「だからこそ城壁があるんだろうが。俺が生まれてから第二城壁内部に魔獣が入り込んだことは一度もないし、都市の治安は衛士隊が守っている。一般人は武器を持つ必要性があまりないんだ」


「だから客が少ないのか。そんなんで経営が成り立つの? また心労でハゲちゃうね」


「大きなお世話だよ。一応衛士たちに武器を卸しているからな。それだけでも十分やっていけるもんさ」



(この都市全体を覆っている『緩慢さ』はそのせいか。裏で領主を含むマフィア連中がすべてを仕切っているから、都市内部での武器売買も制限されているんだな)



 仮に銃が簡単に手に入るようだと、一般人が凶行に及んだ際に衛士たちが危険に晒される。それはマフィアも同様だろう。


 逆に一般人が武器を持てない状態にすれば、鎮圧が楽になるため反乱が起きにくくなる。よって、閉鎖的で独裁的な場所ほど武器のやり取りは厳密に管理されていることが多い。



(日本もそうだったけどね。『廃刀令』が出てからは刃物も簡単に持てなくなったし、自衛の手段を限定して支配するのはどこも同じか。それが国や都市を弱くすることだとも知らずに。まあ、オレには関係ないか)



「ハンターなら買える? さすがに魔獣を相手にするんだから売ってくれるでしょ?」


「買えるが…ハンターなのか? 証明書はあるか?」


「はいこれ、ハンター証」


「どれどれ」



 店主がハンター証を受け取り、しばし見つめる。


 その時間がやたら長かったのは気のせいではない。



「マジで?」


「疑うならハローワークに行ってくれば? 受付のミナミノさんに訊けばわかるよ」


「…ほんとかよ。そうか、お前が噂のホワイトハンターか!」


「噂とかやめてよ。ほんとやめて!」


「なんだよ。普通は喜ぶもんだろうが」


「こっちには複雑な事情があるんだよ。だからしばらく外に出て、ほとぼりを冷まそうと思っているんだ。もしかしたら、そのまま戻ってこないかもしれないけどね」


「ハンターだったら仕方ないな。『渡り狼』みたいに都市を転々とする連中も珍しくはない」


「渡り狼?」


「雇われながら移動を繰り返す傭兵たちさ。一つの街に長居しないことが多いそうだぞ。下手をすると一度きりしか訪れないこともあるらしい。まあ、いつ死ぬかわからんし、それも仕方ないんだろうけどな」


「そういう生活もいいね。でも、どうせならゆっくり暮らしたいけどなぁ」


「誰もが金を持っているわけじゃないからな。仕方ないさ。待ってろ。銃を見せてやる」



 店主はそう言うと、奥から銃を持ってきた。


 見た目は猟銃のような形だが、もっとシンプルというか、地球にあったものより造りが雑だ。


 長さもストックを付けたサブマシンガン程度のもので、長距離での射撃は想定されていないことがうかがえる。



「なんか、ちゃちくない?」


「対人用の銃だからな。こんなもんだろう。うちで卸しているのはこれだけだ」


「バズーカとかライフルとかはないの? 重火器ってやつ」


「西側にはあるが、こっちにはそこまで普及はしてねえな。とはいえ無いわけじゃない。商会になればライフルくらいは持っているところもある。ハングラスの警備商隊とかがそうだな。あそこは外からも銃を仕入れてるから良いものがあるみたいだ」


「おっさんのところは都市内部限定って感じか。うーん、通販で買ったエアガンのほうが精巧だったな。ちょっと試し撃ちしていい?」


「いいぞ、弾はこいつだ」


「ありがとう。これがコッキング? ガチャッとやって…こうかな?」


「庭のほうの的を使え。危ないから気をつけ―――」


「よっと」



 パスンッという音とともに、アンシュラオンの手に銃弾が発射される。



「お、おい! なにやってんだ! 自分の手に撃つ馬鹿がいるかよ!」


「大丈夫だって。ほら」


「…え?」



 アンシュラオンの手には、今撃った銃弾が掴まれていた。


 もちろん怪我などはしていない。



(火薬じゃなくて『風』で撃ち出しているのか。地球にあるものと同じくらいの威力かな? でも銃ってさ、弾丸の種類も大事なんだよなぁ。この弾は何だ? 何かの骨なのかな? それを鉄で薄くコーティングしているみたいだ。弾の形は丸くて昔の火縄銃に似ている。銃身にはライフリングが無いからブレそうだけど…でもまあ、当たれば一般人は死ぬだろうから使えないことはないのか)



 見たところ、速度も威力も地球製のハンドガンと同程度のものらしい。ただし、弾丸自体は鉄や鉛ではなく何か硬いもの、おそらくは魔獣の骨を使っているようだ。


 同じく弾が丸い火縄銃も、近い距離からならば現在の銃弾と威力はさして変わらない。衛士の銃でも十分に人を殺すことができるだろう。



「装填数は二発までなのかな?」


「あ、ああ。そうだが…手は大丈夫か?」


「問題ないよ。ハンターだから」


「ハンターだからって銃を受けて無事なやつのほうが少ない気がするがな。だが、ホワイトハンターなら当然か」


「この銃、もっと改良したら強くなるんじゃないかな。銃身を伸ばせば距離も伸びるだろうし、殺傷力が低下するけど風で飛ばすのならば石でも代用できるよね」


「銃の改造に関しても制限があるんだよ。これ以上は公にはいじれないんだ」


「そこまで口を出されるなんて面倒くさいね。やるなら違法改造しかないか。うーん、銃はどうしようかな。買おうかな」


「それは小僧が使うのか?」


「いいや、この子に使わせようかなって」


「そうだな。お前さんには必要なさそうだしな。というか、その子は銃を持てるのか? 大きさ的な意味だが」


「…それは盲点だった。サナ、持てるか」


「…こくり」



 サナが銃を持つ。


 身体が小さいので抱える形だが、腕力の問題で若干ふらついている。



「ちょっと危ないかな…誤射したら怖いね」


「ほかにも武器はあるぞ。ところで防具も必要じゃないのか?」


「防具も欲しいね。先にそっちを見ようか。何かあるかな? サナは全身鎧は無理だろうから軽いものがいいな」



 アンシュラオンが店内を見回すと、魔獣の革で作った鎧を見つけた。


 よく傭兵が着ている一般的な革鎧で、斬撃にはあまり強くはないが衝撃にはそこそこ強いものだ。


 とりあえず着ていれば交通事故に遭っても致命傷は避けられるくらいの防御力はある。



「ねえ、あそこの革鎧ってさ、サイズを小さくできる?」


「あれか? 邪魔な部分を切ればなんとかなるかな」



 斬撃に強くないということは、切れるということだ。それを利用すればサイズの調整ができる。



「あれに金属製の鎧のパーツを引っ付けて強化すれば、そこそこの防御力にはなるんじゃないの?」


「ふむ、それは可能だな。ただ、鎧も革鎧も半端が出るぞ?」


「それはしょうがないね。予備のパーツとして買い取るよ。それならいいでしょう?」


「うちは改造屋じゃなくて武器屋なんだがな」


「名は体を表すって言うじゃん。この店はバラバラで売る宿命なんだよ」


「人の宿命を勝手に決めるなって」



 そう言いながらも革鎧とパーツ用の金属鎧を持ってくる。


 気の好いおっちゃんである。



「サイズを測るから動くなよ」


「どさくさに紛れて胸とか尻を触るなよ!」


「俺はロリコンじゃねーよ!」



 この時、遠くで馬車に揺られていたブシル村にいた元祖ロリコンは、誰かに呼ばれた気がして振り向いたという。彼も悲しい性を背負っているようだ。


 サナがサイズを測っている間、周囲の武器を見て回る。



(サナに使えそうな武器…か。とりあえず何をやるにもナイフかダガーは必需品だな。このあたりがよさそうだ)



 ダガーは魔獣の牙を削って作られており、そこらの金属のものよりも硬くて鋭いのでよく切れそうだ。


 サナの体躯を考えると、一撃で相手を殺傷するのは難しいが、持っていて損にはならないだろう。



(あとはどうしようかな。重いものは無理だよな)



 他に使えそうな武器を探すが、どれも重そうなものばかりだ。


 武器とは本来、重いものだ。その質量自体が破壊力になるので、至って自然なことであるが、それがネックとなって子供が使えるものは必然的に限られる。


 そこで一つ、目に入ったものがある。



「あそこの【クロスボウ】も見ていい?」


「あいよ。勝手に取っていいぞ」



 アンシュラオンが発見したのは―――クロスボウ



 同じような飛び道具に弓矢があるが、人類の叡智は弦を固定するクロスボウを開発した。


 連射性能としては弓に劣るものの、一度セットしてしまえば子供だろうが同じ威力で発射することができる優れものだ。


 このクロスボウは木製のセルフコッキング式のもので、レバーを引けばテコの原理で比較的楽にセットできるのも好印象である。



「おっちゃん、これの有効射程距離ってどれくらい?」


「そうだな…百メートル以上は飛ぶが、実質的には三十メートルってところかな。ただ、皮膚が硬い魔獣なら十メートル以内じゃないと満足に刺さらないと思うぞ」



(つまりは鎧を着込んだ人間も同じってことか。もともと急所に当てないと致命傷にはならないものだしな。しかし、戦闘力を削ぐことはできるはずだ)



 とりあえず当たれば相手は怯む。武人ならば難しいが、相手が一般人の範疇に入る場合はかなり有効だ。



「ちょっと奥で革鎧を調整してくるわ。クロスボウはちゃんと的で試し撃ちしとけよ」


「うん、ありがとう」




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