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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「英才教育」編
87/614

87話 「武器屋バランバランでサナの装備を買おう その1」


 ハローワークを後にしたアンシュラオンは、一般街でキャンプ用品を購入。


 自分自身はどうでもいいが、今回はサナが一緒だ。一般人の彼女には相応の準備が必要になる。


 ハンター用の少し大きめのコテージや簡易ベッド。鍋やまな板等の炊事用品、野菜や米といった食材、調味料各種も買い込まねばならない。


 また、サナの服も新たに買い揃える。今までのものは都市内部で着るロリータ服が大半だったが、さすがに荒野では違う服装が必要になる。


 土埃で汚れてもいい外套やラフな服に加え、下着も新たに補充。


 これらの大半はポケット倉庫に入るので、かさばることはないだろう。



(こんなものかな? 移動中の風呂はオレが命気を使えばいいし、怪我をしても簡単に治せる。食料も買い込んだ。もし足りなければその都度仕入れれば大丈夫だろう。あとは安全面だな。二度とあんなことにはさせないからな)



 脳裏をちらつくのは、やはり領主城での一件。


 人様の物を奪って悪びれない悪辣な輩がいることも、この都市への不快感が増す要因である。ガンプドルフの仲裁があったとはいえ、いまだにムカムカする。


 しかし、ここで発想を転換してみる。なぜこうなったのかを分析するほうが大切だ。



(当たり前だが、簡単に人を信じないことだ。べつにモヒカンを信じていたわけじゃないが、事前にもっと物理的な制約を加えておくべきだった。モグマウスを護衛に忍ばせておいてもよかったんだ。まあ、その際は領主とイタ嬢はバラバラにされて死んでいただろうが、モヒカンが罪を被ってくれたはずだ。オレに被害はない)



 モヒカンの前で領主たちが死ぬ。


 当然、最重要容疑者は誰がどう見てもモヒカンであり、どう弁明しても信じてもらえないだろう。それ自体が自分を裏切った彼への罰にもなる。


 もう一つの要因は、単純にサナに【自衛能力】がないことだ。


 実のところ、これが一番の問題点である。そもそも白スレイブにされたのもモヒカンに拉致されたからだ。彼女自身が望んだことではない。他の白スレイブたちも同じ境遇だろう。


 そういった悪意に対抗する力がないことが怖いのだ。



(スレイブ・ギアスがあるからサナの意識はもう大丈夫だろう。簡単に乗っ取られはしないはずだ。だが、物理的に連れ去られる心配は残る。こればかりは仕方ないことだが…ならばサナ自身が強くなればいいんじゃないのか? たしかにまだ子供だけど、教えれば強くなるかもしれないしな)



 結論は簡単だ。


 サナを強くして自らを守れるようにすればいい。


 保護者として守り抜く予定ではあるが、彼女の将来のためにも力は必要である。



「サナ、お前も強くなりたいか?」


「…こくり」


「オレみたいに戦ってみたいか?」


「…こくり」


「わかった。できるだけのことはしよう。お兄ちゃんに任せておけ!」



 その意思をどこまで鵜呑みにすればいいのかわからないが、当人が頷いているのならば兄として協力してあげるべきだろう。


 ただし、サナは―――弱い


 正直、ステータス上は一般人の中でも最弱に近いだろう。子供なのだから当然のことだ。


 それを強くするのは、なかなかに大変である。



(サナが弱いからといって何もしなければ、一生弱いままだ。なればこそオレががんばらねばならない。気合を入れるんだ。教える側にすべてがかかっているぞ)



 才能がないとはいえ、知識や技術を教えることはできる。幼い頃から学べば熟練度も高くなり、基礎的な能力が向上するのは間違いないだろう。


 それに加えて、サナは強くなれるという漠然とした【予感】もある。


 その根拠は、契約時に見たイメージ映像だ。



(あれがオレの夢か願望かは知らないが、映像の中のサナはかなり強そうに見えた。オレから見ても、なかなかの佇まいだ。相当な鍛錬を積んでいる雰囲気があったよな。一応、あのレベルを想定して育ててみるか)



 映像のサナは、少なくともガンプドルフに匹敵する武人に見えた。もしかしたら、それ以上かもしれない。


 どうしてもそのイメージが強く残っているので、サナを強くしてあげることも今後の目的の一つとなるだろう。


 ただの可愛い妹でも十分素晴らしいが、兄妹で一緒に戦えたらもっと楽しいに決まっている。


 そして、アンシュラオンとしても楽になるだろう。



「よし、まずは武器だ! お兄ちゃんと一緒に装備を見に行こうな!」


「…こくり」



 何はともあれ攻撃力がないといけない。一般人でも銃があれば心強いように、相手を打ち倒すための力は人を安心させるものだ。


 アンシュラオンが訪れたのは、一般街のメインストリートから一本裏側に入った道。


 大通りほど人はいないが商店街の一部であるため、それなりに人通りはある場所だ。


 目立たないように途中まで馬車で移動し、そこから徒歩で移動すること数分、目的の場所が見えてきた。


 視界の先には、一軒の店。



 武具屋―――「バランバラン」



 スーパーのように道路にまで商品をはみ出して置いてある家屋型の店であった。


 ちらっと中を覗いてみると客は数人しかいないようだ。



(あんまり人がいないな? 経営は大丈夫なのか?)



 ハローワークで確認したが、ここがグラス・ギースで唯一の武器屋なのは間違いない。


 スレイブ館のように裏の世界には危ない違法店があるのかもしれないが、少なくとも表の世界にはここしかないようである。


 されど、そんな貴重な武器屋だというのに、ぱっと見る限りでは客がほとんどいないのが気になる。


 たまに数人出入りがあるくらいで、ローカル電車しか停まらない駅のメガネ屋みたいな印象を受けた。



「とりあえず入ってみるか」


「…こくり」



 アンシュラオンとサナは、扉を開けて店内に入る。


 大きさは、まさに小さめのスーパーマーケットほど。何もなければそれなりに広く思えるのだろうが、店内には所狭しと武器防具が置いてあるので、実際に入ってみるとごちゃごちゃしていて非常に歩きにくい。


 カウンターには、一人の男性が立っていた。


 つるぴかな頭に筋肉質の身体と、まるでボディビルダーを彷彿させる男だが、エプロンの作業着を着ているので店の関係者なのだろう。



「ん? 子供か?」



 男は入ってきたアンシュラオンとサナに気づき、近寄ってきた。



「子供が武器屋に来るなんて珍しいな」


「この子は子供だけど、オレは子供じゃないよ。もう成人さ」


「本当か? そうは見えないけどな」


「武器の購入に年齢制限ってあるの?」


「そんなもんはないが、上からけっこう言われたりするんだよな」


「上って?」


「『ハングラス』だよ」


「ハングラス? サングラスの仲間?」


「なんだ、ハングラスを知らないのか? この都市の物流を仕切っているマフィア…じゃなくて上位組織だ」


「今、マフィアって言ったよね?」


「大きな声で言うなって。まあいい、奥に来い。そこで話そう」



 アンシュラオンたちは店の奥に連れていかれる。ここならば表に声が漏れる心配はないだろう。


 店にいた客が全員いなくなってから、改めて男と話す。



「おっさんは店主?」


「そうだ。じいさんのじいさんの代から、ずっとここで商売をやっている」


「なんでこんな変な店名なの? この鎧とか大丈夫? バラバラになるんじゃないの?」


「失礼なこと言うなよ! 俺のじいさんのじいさんの名前だぞ。由緒正しき名前だ」


「バランバランっていう名前なの? 言いにくいな。改名しなよ」


「じいさんの名前は『バラバラン』だ。そこをちょっといじったのさ」


「そっちのほうがヤバイじゃん。ますます心配になるよ」


「やれやれ、好き勝手言う小僧だな」


「何も買わない無口なやつよりいいでしょう? オレは金があるぞ! 金持ちの客だぞ! さっさと商品を見せろ!」


「いきなり横暴になったな!? あー、はいはい。お辞儀でもしてやろうか?」


「そんなハゲ頭を見ても何も嬉しくないよ」


「ったく、初対面でそんな態度を取るやつは初めてだぞ」


「これが生まれ持った性格なんでね。で、さっきのハングラスって?」


「うちが『みかじめ料』を払っているマフィアのことだ。食料と医療品関係以外のほぼすべての店は、そこに金を払って商売をしている」


「食料とかは違うの?」


「それぞれ担当が違うんだ。とまあ、そんなことをお前さんに言っても仕方ねえか」


「いや、勉強になるよ。都市のことには疎いからね。ちょっとだけでも教えてくれない?」


「それはかまわんが、言いふらすなよ。暗黙の了解なんだからな」


「わかってるって」


「最初に断っておくが、都市それぞれでルールが違うぞ。グラス・ギースはグラス・ギースのやり方と統治体系がある。それはわかるな?」


「それはそうだね。この一ヶ月いろいろ調べたけど、それぞれの都市は独立しているんだよね? 特定の国家はないみたいだ」


「辺境の土地だからな。それも仕方ないさ。都市それぞれに代表者か領主がいて統治しているのさ。それでグラス・ギースだが―――」



 店主が言うには、物流はハングラス。食料はジングラス。人材はマングラス。医療はラングラスという四つの組織が管理しているらしい。


 全部に「グラス」と付くのは、かつてこの都市が「グラス・タウン」と呼ばれていた頃の名残のようだ。


 そして、領主もまた「ディングラス」という組織の長であり、主に土地と軍隊の利権を持っているという。



(あの領主、偉そうにしていると思ったが土地売買で儲けてやがったのか。とんでもないやつだな)



 べつに不動産業が悪いわけではない。完全なる言いがかりだ。


 ただ、それによって領主が言っていた「ここはわしの都市だ!」という意味も頷ける。


 その代わり他の業務を四つの派閥とハローワークに委任しているため、領主といっても絶対の権限があるわけではない。



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