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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「愛の約束」編
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72話 「そうだ、小百合さんの家に行こう! その2『マッサージするよ!』」


 サナを二階にある小百合のベッドに寝かす。


 持ち上げている間も目覚めることなく、気持ちよさそうに爆睡していた。



(武人は二日や三日くらい簡単に徹夜できるから、そういうこともすっかり忘れていたよ。一ヶ月寝ないで戦うなんてざらだしね。でも、サナは普通の女の子なんだ。弱い子なんだ。そこを忘れないようにしないとな)



 一般人の肉体は弱い。面倒くさいと思えるほど管理が必要で、ご飯もしっかり食べないと元気が出ない。


 武人のように闘争本能さえあれば何とでもなる、といったような便利な存在ではないのだ。



(これからは気をつけないとな。でも、無事でよかったよ。寝顔も可愛いなぁ)



 すやすやと寝ているサナを見ていると、心にじんわりとした熱が広がるのがわかった。


 とてもとても優しい気持ちであり、強い庇護欲であり、まさに父親が娘に感じるものとまったく同じものだ。


 兄と妹ではあるが、経験と力にあまりに差がありすぎるので、今はこちらのほうが正しい間柄かもしれない。



「アンシュラオン様、その…差し支えなければでよろしいのですが、いったい何があったのですか? サナ様は寝巻きのようですし、普通の状況ではありませんよね?」


「おっと、そうだった。こんな夜中にいきなり押しかけてごめんね」


「いえ、いつでも来てくださいと言ったので本当にいつでも大丈夫です! 私も嬉しかったですから! そこは気にしないでください!」



 小百合は嬉しそうに笑う。


 その顔は本当に迷惑そうに感じていない明るい笑顔である。



(小百合さんの家に来てよかったな。やっぱりお姉さんと一緒だと和むよ)



 改めてここに来て正解だったと知る。


 領主城では特に苦戦はしていないが、精神的に焦っていた面もある。


 おっさん連中はムサいし、女の子はいてもイタ嬢関連だしで、正直心が荒むばかりであった。


 それを小百合の笑顔が癒してくれた。さすがアンシュラオンの嫁の一人である。



「改めて紹介するね。この子はオレの【妹】のサナだよ」


「妹…さんですか?」


「今までは事情があって離れ離れに暮らしていたんだけど、今回ようやく一緒に暮らせるようになったから迎えに来たんだ。別れたのはサナが赤ん坊の頃だから、普段のこの子の生活スタイルがよくわからなくて、いきなり意識を失ったからびっくりしちゃってね。頼れるのが小百合さんしかいなかったんだ」


「そうだったのですね! 私でよければいつでも頼ってください! それにしても可愛い妹さんですね! ああ、こんな可愛い子が私の義妹になるなんて! いやっほーー!」



 すでに結婚することが前提。



「今日はぜひ、うちに泊まっていってくださいね!」


「それはありがたいけど…いいの?」


「もちろんです! 大歓迎ですよ!」


「小百合さん、明日の仕事は? もう今日になったかな? 大丈夫?」


「ええ、八時までに行けば大丈夫です。いつもは朝六時起きですね」



(今は午前一時前か。五時間もないじゃないか)



 本当ならば、もう寝ている時間なのだろう。


 アンシュラオンたちを受け入れたせいで、さらに睡眠時間は削られるに違いない。


 それを考えると少し申し訳なく思えてくる。



「睡眠時間は足りてる?」


「そうですね…。最近はちょっと不足しているかもしれません。でも、まだまだ『若い』ので大丈夫です!!」



 若干、若い部分を強調した。


 たしかにバスローブから見える肌は、さすがに十代の頃とまではいかないが、まだまだ張りがある。


 ただ、二十歳を超えると一気に身体は弱ってくるもの。あまり無理をさせられない。



「そうだ。お礼にマッサージをするよ!」


「マッサージですか!?」


「そうそう、特殊なオイルを使うんだけど、それがもうすごい効くんだ! 一気に身体が若返っちゃうくらいにね!!」


「そ、それはなんと魅力的な!! ぜ、ぜひお願いします!」


「任せてよ!! じゃあ、裸になって」


「はい!」



 そう言って、まったく躊躇せずにバスローブを投げ捨てる。


 清々しいまでに潔い脱ぎっぷりだ。なんだか小百合がまた好きになった気がする。



(案外、マキさんのほうが恥ずかしがりやかもしれないなー。普段はがさつで強気な女性のほうが、いざってときは恥らうものだからね。そのギャップがいいんだけど)



「隣のベッド、使っていい?」


「もちろんです」


「独り暮らしだよね? どうして二つあるの?」


「…ハローワークの社宅には必ず二つあるのです。夫婦で暮らすのが前提だとか。…憎らしい限りです。何度捨てようと思ったことか…燃やしてやりたいです」



 そんな理由だった。


 便利ではあるが、孤独な人の心をさらに追い込む危険な設備らしい。


 それはともかく、ベッドにシーツを敷いて横たわらせて小百合のマッサージを開始。


 まずは手にたっぷりの命気を生成。粘度はまさにローションである。



「じゃあ、背中からかな」


「は、はい。ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします!」


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ただのマッサージだし。はい、べちゃー」


「あはんっ!! あっ、申し訳ありません! 妹さんが起きてしまいますね」


「うーん、大丈夫かな?」



 サナはまったく反応しない。


 まだ怖いので波動円で常時チェックしているが、身体情報に異常はない。ただ寝ているだけである。


 よほど疲れていたのか、それとも単純に深く眠る体質なのか、どちらにせよこの様子では何をされても起きないかもしれない。



「続きをやるよ。ぬりぬりぬりー」


「はぁあ!! あはんっ!」


「おっ、いい声! やっぱり大人の女性は違うな」



 領主城にいた若い子とはまったく違う、成熟している女性の声である。



(ああ、これだよこれ。こうして大人の女性の生肌に触るのも姉ちゃん以来だ。やっぱり奉仕はたまらないな!)



 アンシュラオンは、女性に対して奉仕をすることで満足感を得ることができる特殊な体質だ。


 長年姉に尽くしてきたので、もはやそれが当たり前になっているわけだ。それゆえかマッサージも自然と熱を帯びてくる。



「燃えてきたよ。ガンガンいくからね。ぎゅっ、ぎゅっ、肩が凝ってるね。腰もけっこう傷んでいるみたい。座りっぱなしの事務作業だもんね。しょうがないけど、女の人は腰も大事にしないとね。ほーれ、たっぷり命気を吸ってー」


「あっ、アンシュラオン様! い、いけません! そんなにしたら…あはあ! あんっ、あんっ!! あはああ! 背中が…腰がぁあ! あはんっ!」


「感度もいいね。それにもっと声を出していいよ。声を出してくれると、やるほうも楽しいしね」


「で、ですが、サナ様が…隣に…あはっ! んー、んーーー、んーーーー! ら、らめっ、んーーー!」


「ほらほら、我慢しないでいいよ。全部吐き出して」



 律儀にもサナを気にして声を我慢する。


 それがなんとも色っぽい。



「どこまで我慢できるかな。足をモミモミ、太ももをモミモミ、ぬるぬる、ぐちゅぐちゅっ」


「んふっ!!! んっ! んんんっ!! ぷあっ!!」



 小百合の肌がさらに紅潮し、息遣いも荒くなっていく。



「小百合さんは綺麗なんだから、ちゃんとケアしないともったいないよ。まあ、任せてよ。オレはこの道二十年に迫るプロだから」



 ここまでアンシュラオンは、少しばかり手加減をしていた。


 小百合は一般人なので、どれくらいやっていいかで迷っていたのだ。


 だが、それも終わった。これからは本気である。



「次は、命気振動いっきまーす。肌が一気に若返るからね! 覚悟して!」


「め、めいき振動…? ふぁっ―――!!?!?!?」



 ヌルヌルヌル ブルブルブルブルブル

 ヌルヌルヌル ブルブルブルブルブル

 ヌルヌルヌル ブルブルブルブルブル


 命気を高速振動させ、身体に浸透させつつマッサージ。


 毛穴から侵入した命気がお肌のお手入れを行い、さらに傷んだ細胞を修復しつつ快感を与えるという、まさに至高のマッサージ。


 姉はこれを数時間やってもまったく平気なのだが、一般人にやると―――



「あはぁあ、声が、声が…出ちゃうぅううう! 駄目なのに! こんなに出したら、妹さんが…起きちゃうぅうう! でも、我慢できない! わ、わたし、私…!! あはあああ―――――――――!!」



注意:背中のマッサージです



 小百合は激しく痙攣し、がくんと身体から力が抜けて意識を失う。



「ああ、やっぱり普通の人には刺激が強すぎるのかな? でも、せっかくだから徹底的に小百合さんを綺麗にしておこう。オレの嫁だしね」



 ガクガク身体を震わせてる小百合に、さらに追い討ちのように命気でマッサージを続ける。


 やはり彼女も普段からストレスを感じているのか胃腸の調子が悪いようだ。ついでに臓器、血管、肌を含めて、すべての部位を生まれたての若々しい細胞に浄化しておいた。



「うーん、我ながら素晴らしい出来だ。これならエステを仕事にするだけで暮らしていけそうだよ。本気で考えてみようかな」



 助けてもらった恩は奉仕で返す。これがアンシュラオン流のお姉さん限定の恩返しである。




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