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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「誑魁跋扈の予定調和」編
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576話 「お父さんは絶対に豊胸手術なんて認めないんだからね!」


(なんともすごいことになったな。これで金に関しては問題ない。さらにアーパム財団を強化することができるぞ!)



 ニクバンドとの交渉がまとまった翌日。


 自室にいたアンシュラオンは、莫大な金が手に入ることに笑みが止まらなかった。


 もともと趣味で作ったものなので、こちらとしてはアーパム財団で使う分だけ作れれば問題ない。商会全部にトイレを設置すれば客も増えるだろう。


 そして、この金を使って財団の規模を大きくすることで、さほど遠くない未来にはハピ・クジュネ経済の三割は掌握できそうだ。



(だが、それは足がかりにすぎない。所詮ハピ・クジュネは借り物の場所。オレの目標はサナのために新しい世界を切り開くことだ。オレとサナだけの国をいつか作るぞ)



 ハングラスに力を与えるのも新都市建造や西方開拓のためである。


 西方は非常に危険であるが、その分だけ少なくとも人間勢力に邪魔されることはなく、土地も自由に手に入れることができる。


 すべてを一から作る喜びがそこにはあるのだ。大変であればあるほど心が躍るものである。


 そんなことを想像して夢見心地だった時。


 思わぬ客の訪問を告げにホロロがやってきた。



「ご主人様、ベルロアナ様がいらっしゃいました」


「ベルロアナ? 久々だね」


「はい。サナ様のお誕生日以来となります」


「え? そんなになる? 家が隣なのに会わないって、あいつはどれだけ引き篭もりなんだ。たるんでるなぁ」


「とても大事なお話があるとおっしゃっておりますが、いかがいたしましょう?」


「面倒くさいな。でもまあ、今日は気分がいいから会ってもいいかな。庭に通しておいて。お茶の準備もお願いね」


「かしこまりました」



(ベルロアナか。改まって何の用事だ?)



 クイナはよく来ているが、ベルロアナ当人は久しぶりである。


 今がちょうど秋の終わりに差し掛かる時期なので、最後に会ったのはサナの誕生日、およそ半年前だ。


 サナを連れて庭に向かうと、そこにはすでにマキによって案内されていたいつもの三人組、ベルロアナとファテロナとクイナがいた。


 そこまでは何も変わらない日常である。以前もよく見た光景だ。


 がしかし、この男は即座に異変に気づいた。


 おもむろにベルロアナに近づき、挨拶もせずに凝視する。



「な、なんですの?」


「………」



 戸惑うベルロアナに対しても無反応。


 彼の視線は『とある一点』だけに集中していた。


 そして、突然ものすごい剣幕で叫ぶ。



「これはいったいどういうことだ! 女将を呼べ!」


「は、はへ? おかみ…?」


「ベルロアナ、お前! なんてことをしたんだ!」


「何をおっしゃっているの!? 訳がわかりませんわ!」


「訳がわからないのはこっちの台詞だ! な、なんなんだお前は! どうしてこうなった!? オレは夢でも見ているのか!?」


「だから何のことですの!?」



 アンシュラオンは、ベルロアナの肩を激しく揺する。


 そのたびにがっくんがっくんと彼女の首が前後に振られるが、それよりも遥かに揺れているものがあった。


 それは―――



「馬鹿もーん! お父さんは【豊胸手術】だけは許さないと言ったはずだぞ!」


「ほ、ほうけきょ?」


「ええい、わからんか! どうしてわからん! 豊胸手術だけは駄目なんだ! 見た目だけ大きくなってどうする! 男優が遠慮がちに触ったり、どう見ても意図的に触らないなんて乳に対する冒涜! いや、父親に対する侮辱だ! 人類全体に対して申し訳ないと思わないのか!」



 よくA〇女優が豊胸手術をするが、全然揺れなかったりするのを見て涙が出そうになる。


 乳は柔らかいからこそ価値がある。天然だからこそ意味がある。


 ねっとりと触ってこそ味わいが出るのだ!



「いいか、よく聞け! 小さくてもいいんだ。小ぶりでなにが悪い。世間では大きいほうが良いとされるが、すべからく乳は素晴らしい。乳だけは例外なく偉大なものなんだ。あの光の女神様も小ぶりらしいが、その神々しさは一番だと聞く。わかるか!? わかるだろう!! それだけ乳は偉大なんだ!」


「は、はぁ…?」


「だからお父さんは豊胸はyるうしそぢおあぢkだkだいいあああああああ!!」


「えええええ!? 何を言っているのか聞き取れませんわ!」



 興奮しすぎて早口になる病気が発症。


 各分野のオタクにありがちだが、それがアンシュラオンにとっては乳なのである。


 と、ここまでくればすでにわかっていると思うが、アンシュラオンが見ていたのはベルロアナの【胸】だ。


 秋も終わりなのでやや厚手の服を着ているものの、その膨らみだけは誤魔化せない。


 そう、ベルロアナは―――



「どうして【巨乳】になったんだーーーー! 最後に会ったのは半年前だぞ! これは豊胸としか思えない! そうだろう! そうなんだろう!? お父さんは涙が止まらないぞ!」


「どうして父親ですの!?」


「アンシュラオン様、お嬢様は豊胸手術などされておりません」


「なん…だと? で、では、どうして…! どうしてこうなった! たかが半年前だぞ! モミモミ!」


「きゃあああ! さ、触らないでくださいまし!」


「おかしい! おかしい! これは本物だ! モミモミモミ! 本当に本物だぁああああ!!」



 相手がベルロアナということも忘れて夢中で胸を触る。


 まだ発展途上ゆえの硬さは残っているが、その柔らかさは間違いなく天然のものである。


 練達のおっぱい博士が言うのだ! 間違いない!



「ということは、自然に成長したってこと…なのか?」


「そ、それをあなたがおっしゃるのですか!? す、すべてはあなたが…アンシュラオン様のせいですわ!」


「え? オレ? 何かしたっけ?」


「し、しましたわ! わ、わたくしにあんなことを…! だからおかしくなったのです!」


「乳がでかくなる方法があるのか!? だったら、むしろ教えてくれ!」


「あうあうあーー! 揺らさないでくださいませー!」



 ベルロアナの肩を押し引きすると、またもやその大きな胸がブルンブルンと揺れる。


 ギリギリDだったものが、今ではどう見てもF…いや、GかHはありそうだ。これはマキに匹敵する大きさである。


 ただし、彼女の身体はまだ小さいので、ここでまさかの【ロリ巨乳】が誕生してしまう!



「お前な、最近はロリ巨乳の需要は少ないんだぞ。まあ、オレは好きだが。一時期はすごいブームになったもんだが、時の流れは哀しいな。今ではあまり見られなくなったもんだ。まあ、オレは好きだが。それでもなおロリ巨乳に挑む姿勢は見事だ。まあ、オレは好きだが」



 だいぶ好きらしい。


 黄金期の九十年代から十数年は絵柄の都合もあり、どうしてもロリ巨乳になってしまう事案がたくさんあったものだ。いろいろととんでもない時代だったが、あの頃はよかった。


 アンシュラオンもサナのように年相応の微乳も大好きだが、ロリ巨乳も紳士の嗜みなので抵抗はない。


 が、その原因はやはりアンシュラオンにある。



「あなたのせいですわ! あなたがあの時…あんな……あんなことをして!」


「だから何をしたのか、はっきり教えてくれよ。覚えてないからさ」


「そ、それは…わ、わたくしの口からは言えませんわ!」


「アンシュラオン様がお嬢様に『接吻せっぷん』をなさった時のことです」


「ふぁ、ファテロナーーーー! それは言わない約束でしょ!」


「どのみち隠しきれるものではありません。あの日以来、お嬢様は『発情期』に入ったのです!! 女性ホルモンがドバーッと分泌されて、プクーッと乳がでかくなったのです! それはもう牛のように!」


「いやー! やめてー! 言わないでー!」


「それを夜な夜な天井の屋根裏から観察していたわたくしは、もう大興奮の毎日でございました! 無垢なお嬢様が日々悶々として、その手を恐る恐る胸と下腹部に押し当てて! はぁはぁはぁ! なんてはしたない!」


「してないわ! そんなことしていないもの!」


「初めての経験に戸惑い、あまりの恥ずかしさに半年も引き篭もって! そんなお嬢様が…お嬢様が!! イエス! イエスイエスイエス!!」


「やめてぇえええええーーー!」



(キャロアニーセさんがいないと止まらないな、この人も)



 相変わらずベルロアナをいじって愉しんでいる様子がうかがえる。


 とはいえ、あの時の『口づけ』が原因となったことは事実らしい。


 よく女性が若い頃に初体験をすると、身体は子供を産む準備が始まったと錯覚し、女性ホルモンが多分に分泌されることはある。


 その結果として突然胸が大きくなったり、身体付きが急速に成人女性に近づくこともあるようだ。


 だが、まさか半年での巨乳化には驚きが隠しきれない。



(やっぱりキャロアニーセさんの娘なんだな。血は争えないか。怖ろしいな。オレは今後どう付き合っていけばいいんだ)



 胸の大きさで態度を変える男。それが我らが主人公である。


 そんな馬鹿げたことに悩んでいると、ファテロナが意外なことを口にした。



「アンシュラオン様、この責任をどう取られるのですか?」


「へ? 責任?」


「お嬢様の胸を大きくした責任でございます」


「それって責任が生じるものなの?」


「大いにございます。胸の大きさの変化は、女性にとって一大事でございますから」


「う、うん。それは…たしかにそうかもしれないけど…」



 常識的に考えればおかしな主張だが、事が胸ゆえになぜか納得してしまうアンシュラオン。


 価値観の違いとは怖ろしいものである。わかりあえる気がしない。



「ほら、お嬢様。早く」


「な、なんですの! 押さないでちょうだい!」


「ハヤクイッチマエヨー! ハヤクハヤクー!」


「や、やめて! わたくしにはわたくしのタイミングがあるのですわ!」


「…? なにやってんの?」



 ファテロナが背中を押すと、ベルロアナが顔を真っ赤にしながらモジモジしだす。


 トイレでも我慢しているのかと思ったが、どうやらそれも違うらしい。


 そして、意を決してベルロアナが口を開く。



「そ、それで…あの! こんなことに…なってしまいましたわ」


「うん。それで?」


「で、ですから…あ、あなた様には…責任を……」


「責任と言われても。逆に感謝してもらいたいくらいだよ」


「で、ですが、あれからずっと……その……こうなったらもう……け、けけけ……」


「けけけ?」


「けっこ………するしか」


「けっこ?」


「お嬢様、危なぁーーーい!!」


「へっ―――ぶひゃっ!!」



 突然ファテロナがベルロアナを押した(体当たりした)ことで、さすがの化け物も体勢を崩してしまい、アンシュラオンに向かって倒れ込む。


 だが、胸のボリュームが増し増しになったことで、弾力で跳ね返って元に戻った。


 そうはならんやろ案件ではあるが、なってしまったものは仕方がない。


 それによって、またベルロアナが赤面。



「あうううう! む、胸が! 胸が当たりましたわ!」


「悔しい! これだけは認めないといけない自分が悔しい!」


「どうしてあなたが泣いてますの!?」



 会うたびにベルロアナが(性的に)強化されていくのが悔しくてしょうがない。


 顔はもともと良いうえに胸がここまで大きくなれば、必然的に魅力が上がってしまうものだ。どんな感情があるにせよ評価せざるをえない。



「いいか! それでサナに勝ったと思うなよ!」


「そんなこと思っておりませんわ!? そ、それでですね…わ、わたくしたちはその、け、ケジメをつけるべきだと思うのです!」


「マフィアみたいだな。何のケジメ?」


「ううう、それは…。ですが、あなたに会うとなぜか胸が…ムズムズしますの!」


「サイズが大きくなったからでしょ?」


「それとは違いますわ! でも、近寄ったら近寄ったで離れたくもなる! わたくしはおかしいのですわ!」


「うん、知ってた」



 周知の事実である。


 が、自覚が芽生えたことは良いのか悪いのか。


 ともあれ、このままでは埒が明かないのでファテロナが代弁してくれる。



「お嬢様の胸の奥には、アンシュラオン様から受けた『疼き』があるのです。その責任を取っていただきたいのです」


「具体的にどんな疼きなの?」


「それはゴニョゴニョ…」


「ふぁ、ファテロナ!」


「大丈夫でございます。私にお任せを! ゴニョゴニョゴニョ!」



 実際に「ゴニョゴニョゴニョ」としか言っていないので、こちらにもそうとしか聴こえない。これも昭和を思い出して泣けてくる。


 と思っていたが、ファテロナが小さく耳元で囁く。



「お嬢様の胸の奥には、『あの日』にアンシュラオン様から受けた傷が残っております。それが影響しているのです」


「ああ…あれか」



 ベルロアナがアンシュラオンを異性として意識すればするほど、逆にあの時のトラウマが無意識に蘇ってくるのだ。


 その狭間で揺れて、ますますベルロアナが悶絶する自体が発生。


 胸のサイズアップは偶然だが、すべての原因はそこにあった。



(うーん、どうするかな。サナの連れ去りに関して、マキさんはあれが領主の独断だと思っているし、ベルロアナ当人も記憶がないのだから蒸し返すのは得策じゃない。逆にそれで記憶が戻ったら最悪だ)



 マキはキャロアニーセ経由のベルロアナ派なので、どうしても彼女を擁護するだろう。


 ここで下手に蒸し返してベルロアナを悪者にするメリットはない。せっかくキャロアニーセが作ったグラス・ギースとの関係性も崩れてしまう。


 そんなアンシュラオンをニヤニヤと見つめるファテロナ。


 かなり嫌だが、今回は彼女の提案に乗るしかなさそうだ。



「で、どうすればいいの? 何か考えがあるんでしょ?」


「新たな関係性を生み出せばよいかと。たとえば『妻』にするとか」


「いやいや、それこそ無理でしょ」


「責任、責任、責任、責任!」


「あれはオレの責任じゃないよね? …ん?」



 服を引っ張る感触に視線を向けると、サナが何かを言いたそうにじっと見つめている。



「サナ、どうかしたのか?」


「…ぐいぐい」


「な、なんですの? サナさん?」


「…ぎゅっ。ぶんぶん」



 サナが右手でアンシュラオンの手を握り、左手でベルロアナの手を握る。


 ちょうど二人の間に入る形だ。



「サナ様は、ベルロアナ様も家族だと考えておられるようです」



 その意図をホロロが翻訳してくれる。


 能力があるとはいえ、なぜかアンシュラオンよりも的確にサナの意思を掴むから不思議だ。



「か、家族!? さ、サナさん、それはどういう!!」


「…ぶんぶん!」


「あうあうあー!」


「それはいい考えね! 素晴らしいことだわ! アンシュラオン君、ちゃんと迎え入れてあげないと駄目よ!」



 サナに振り回されているベルロアナを見て、マキもなぜか賛同する。



「マキさんまで…。家族と言われても…」


「お隣に住んでいるのですもの。それにここまで関わったら、もう他人じゃないわ」


「完全なる他人だと思うけど…サナはどうしたいんだ?」


「…ぐっ!」


「あうっ!」



 サナが、握ったベルロアナの手を上に持ち上げる。


 意図はわからないが意気込みだけは伝わってくる。


 今度はそれをなぜかファテロナが勝手な解釈を加えて『意訳』。



「アンシュラオン様、お嬢様とサナ様はすでにご友人でございます。ということは、お嬢様も『妹』ではないのでしょうか?」


「どういう理屈でそうなったの!?」


「たとえばでございます。お友達の家に遊びに行った時、その友達の兄と出会ったら『お邪魔しています、お兄さん』と言うでしょう。それと同じです」


「そうかもしれないけど、兄からすれば相手は妹の友達ってだけじゃない? それを妹とは呼ばないよね?」


「ですが、相手からの呼び方は同じです。やはりお兄さんなのです」



 怖ろしい「こじつけ」である。


 言っている意味はわからなくもないが、結論は完全に飛躍していた。よく詐欺師がやる手口だ。



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