550話 「因果のけじめ」
「キャサリン…さん」
「行かせないわ。あなただけは」
「聞いてください! もうカーリスは駄目です! この都市も滅びます!」
「そんなことはどうでもいいの。とっくの昔にわかっていたことだもの」
キャサリンはナイフを取り出す。
刀身に何やら紋様が浮かんでいるので、おそらくは術式武具だ。
それを見たキリポが叫ぶ。
「ファビオ! 四番街三丁目の裏通り! そこが集合場所です! 早く行ってください!」
「キリポはどうするのです!?」
「僕は残ります」
「そんな! この状況で置いていけと!」
「大丈夫、すぐに追いかけますから。それより急いで! 家族が待っていますよ! 行ってくれないと僕の立場がありません!」
「…わかりました。ありがとう、キリポ」
「よいのです。すべては自業自得。僕の罪なのですから」
キリポの目には覚悟の光があった。
そして、もう戻る気はないのだとも。
いろいろな感情が渦巻いたが、今は家族のことを優先すべきだろう。
ファビオとユーナが通り過ぎていっても、キャサリンはキリポだけを見ていた。
二人を見送ったキリポが、キャサリンと向かい合う。
「ボロボロに…なってしまいましたね」
これには複数の意味がある。
今のカーリスや人間関係もそうだが、この十余年でキャサリンの容貌も変わってしまっていた。
年齢を考えれば十二分に美しいのだが、かつて出会った時の輝かしい美貌は見る影もない。髪の毛も色褪せて肌艶もあまり良くなく、頬もこけて目元にはクマも目立つ。
加齢だけが原因ではない。精神を病んだことで服用した安定剤の副作用も出ているはずだ。
こうなった原因は、もちろんイノールにある。
「あなたは彼のために身を擦り減らしてきた。もう…終わりにしましょう。彼は死んだのです」
「あれで全部終わってしまった…今までの全部が。じゃあ、何のためにやってきたの? 好きでもない男たちに抱かれて、あの時はそれが正しいことだと思っていた。だったら死んでいった子供たちは何? 誰も浮かばれないわ」
身体を売っている以上、常に懐妊の可能性はある。
これだけ術式が発達している世界ではあるが、子供が産まれてくることを確実に抑制する道具は存在しない。
なぜならば、子供こそ女神の恩寵。
お互いの霊を分け合って霊体を作り、遺伝子を分け合って肉体を生み出す神聖なる行為だからだ。
この強制力は極めて強く、避妊薬程度でどうにかなるものではないし、神聖視されていることから避妊具自体もさして発達はしていない。
ただし、【中絶】は存在する。
考えるだけでも怖ろしいことだが、物理的に赤子を破壊してしまえば死産するしかないからだ。
「何度も泣いて、何度も吐いて、何度も破られて、私の身体はもう壊れる寸前。子供も産めなくて、全員殺されて、毎日夢に見るの。殺された子たちが私にまとわりついて、お母さんのところに産まれたかったって泣き叫ぶの。頭がおかしくなりそう。でも、誰かに抱かれていれば忘れられる。そんなことをしている間に何もできなくなった。子供も二度と宿らない。気づけば周りに誰もいない。司祭長様も死んでしまった」
「…僕がいます」
「そう…ね。あなただけは…こんな私に最後まで寄り添ってくれた。どうして?」
「あなたが好きだったからです」
「友達を裏切らせたのは私なのに?」
「最後に少しだけ信頼を取り戻せました。だいぶ遅くなりましたけど…」
「あなたのこと、べつに好きじゃなかったわ」
「知っていました。一方的な一目惚れです。気にしないでください」
「気にするわ。今度はあなたの夢ばかり見るの。私がこんなに苦しんでいるのに、あなたはいつも優しく笑っている。それが憎くて憎くて…たまらないの!」
「キャサリンさん…」
キャサリンはだいぶ前から壊れていた。
持って生まれた美貌ゆえに利用され続け、結局最後は捨てられて終わる。
何が幸せなのか、誰が悪いのか、どうしたらよかったのか。
カーリスの洗脳と心身の疲労と混乱が、彼女を凶行に走らせる。
「死んで! 私のために死んでよ! 私のことが好きならできるでしょう!」
「はい、できます」
「なんで即答できるのよ! 哀れみ? 同情? 迷惑だわ!」
「それであなたが救われるのならば」
「やめてよ、自己犠牲なんて嘘っぱち! 何の役にも立たないわ!」
「そんなことはありません。僕はカーリスのことを少しは知っています。『本』で読みましたから。たしかに聖典には嘘や偽善が多いですが、聖女カーリス様の本当の言葉には力があった。ただあなたが好きだからという理由だけで入信したのではありません」
「カーリス教徒ね。私なんかよりずっと」
「もしあなたと一緒に生まれていたら、ここが村だった頃に一緒にいられたら…きっと幸せな家庭を築けたと思います」
「やめて…もう無理なの。私を惑わせないで!」
「わかりました。一緒に死にましょう。狼に噛み殺されるよりはましな死に方です」
キリポは両手を広げて力を抜く。
この時、彼は本当の『愛』の一端を知った。
(ああ、愛しい。女神様はいつもこんな気持ちなのだろうか)
彼女が愛おしい。世界が愛おしい。死すら愛おしい。
この世に失われるものなどなく、すべては循環している。愛は減ることなく増え続ける。
そのことを肌を通して悟った。
だが、そんな本物の自己犠牲の姿が、彼女をさらに追い込む!
「死んで―――ちょうだいぃいいいい!」
キャサリンがナイフを持って突っ込んでくる。
もう彼女には言葉すら通じない。死ぬことしか救いがなかった。
しかし、キャサリンが半分ほど距離を詰めた時。
柱の陰から誰かが飛び出してきて、キャサリンの頭部を棍棒でぶん殴る!
「っ―――…っ……」
キャサリンの目が泳ぎ、前後不覚に陥って床に倒れ込んだ。
キリポは何が起きたのか理解できずに呆然と立ち竦む。
が、彼女を殴った者はズカズカと歩いてきて、キリポの頬に強烈なビンタをかます。
「こんなやつのために死ぬとか、ほんとに頭大丈夫? バッカじゃないの!」
「………」
「ほら、しっかりしなさい! こっち見て! ちゃんと見て!」
「きみ…は?」
そこにいたのは、十代後半くらいの少女だった。
カーリスの服を着ていることから信者であることは間違いないが、まったく見覚えがない子だ。
その反応を見た彼女は、大きなため息をつく。
「あなたって人は、いつもそう。この女しか見ていなかったものね。だから盲目になるのよ」
「君に何が…わかるんだ」
「わかるわよ。ずっとあなたを見ていたもの。この十年以上、ずっとね」
「…?」
「まだわからないの? ファンジーよ」
「ファン…ジー?」
「呆れた。自分が助けた女の名前も忘れるなんてね」
「ファンジー…ファンジー……あの時の女の子!?」
キリポの脳裏に浮かぶのは、森で助けた女の子だ。
十年以上前の話になるが、野盗たちにさらわれて森に連れ去られた子がいた。
結果的に彼女のおかげでタイスケと知り合うことになったので、そのこと自体は忘れていない。
が、彼女がその後どうなったのかまでは知らなかった。
「あーあ、もうこれはいらないわね」
ファンジーは、清々とした様子でカーリスのローブを脱ぎ捨てる。
その下には動きやすい簡素な服を着ていた。
「信者ではないのですか?」
「入ったのはだいぶ前だったけど、ずっと信者のふりをしていたのよ。そのほうが監視もしやすいでしょう?」
「どうしてそんなことを? キャサリンさんをずっと見張っていたのですか?」
「というか、あなたをね。誰に言われたわけじゃないわ。あの時に助けてくれた恩を返すためよ」
「僕はただ傍にいただけですよ。実際に助けたのはファビオやディノですし…」
「助けてくれたことには変わりないわ。それに、あなたみたいな頼りない童貞を放ってはおけなかったってのもあるし」
「もう童貞ではないですけどね!! そこは重要です!」
「あんな女にお情けでやらせてもらって有頂天になるなんて、なさけないにも程があるわ。いい? 人類の半分は女なのよ。要するにいくらでもいるわけ。こんなやつにこだわる必要なんてないわ」
「彼女は…特別だったんです」
「あーあ、ほんときしょい。都会からやってきた女にコロっと騙される。男ってどうしてこんなに馬鹿なのかしら? いいカモじゃない。で、最後は粘着されて一緒に死のうとするなんて、馬鹿ここに極まれりね」
「もう終わったんです。僕たちのことは放っておいてください」
「そうはいかないわ。それじゃファビオさんやユーナさんに申し訳が立たないもの。あなたも一緒に行くのよ」
「やめてください! 一緒に死ぬんです!」
「責任を果たしなさい、キリポ・コスタ! あなたの罪がそんなことで消えるとは思わないことね! 最後まで生きて生きて、あらがい続けるのが赦しへの道でしょう!」
「っ…」
「なんてね。少しはカーリス信者っぽいことを言えたかしら? ほら、早く行くわよ。考える前に走って。追いつけなくなるわ」
「か、彼女は…キャサリンさんは!?」
「手遅れよ。死んではいないと思うけれど、立ち上がる気力もないでしょう。まだ前に進める人が、そういうものに引きずられてはいけないわ。助けられるものも助けられなくなるもの」
あの時に森で殺されていた可能性もあったのだ。彼女が言うからこそ、その言葉は重い。
「…キャサリンさん……すみません。僕は生きます。まだ…償わないといけないから」
床に倒れている、かつて愛した人に涙を流しつつ、キリポはファンジーと一緒に走り出す。
彼の初恋は、ここで終わりを告げたのだ。
∞†∞†∞
「ファビオ、見て! すごい血痕だわ! 狼の死骸もある!」
外に出たファビオとユーナの二人は、合流地点に向かって走っていた。
キリポの話を裏付けるように都市の至る所では大量の血が流れており、反撃されて殺された刃狼も数多く見受けられた。
だが、それ以上に人間側の死者が多い。
一般人もかまわずに殺していることから、彼らの怒りは頂点に達していると思っていいだろう。
その中には火刑の時、ファビオ人形に石を投げた者たちもいる。
イノールの呪いが実現する形になったが、彼らもまさかこれほど早く報いが訪れるとは想定外だったはずだ。その証拠に、誰もが驚きと恐怖の表情を浮かべて噛み殺されている。
ただし、ハローワークに籠城している傭兵やハンターたちには積極的に襲いかかっていないことから、彼らは主に『カーリス関係者を標的』にしていることがわかる。(敵意を向ければ誰にでも襲いかかってくるが)
ファビオがドグマを視認できるように、彼らは臭いによって敵を判断しているのかもしれない。
(この状況なら司教の隊も迎撃に出ているはずだ。鉢合わせないようにしないと)
ベルナルドたちは応戦のために出撃中だと思われる。事実、周囲に神官騎士の姿は見られない。
彼らがいないことは千載一遇のチャンスである。
目立たないように注意しながら裏路地を移動すると、その先に見覚えのある人物を発見。
「ファビオ! よかった! 無事だったのね!」
「母さんたちも無事で! ディノもいるのですね!」
「おう、タイスケじいさんに助けてもらったんだ!」
そこにはファビオの家族とユーナの父親に加え、ディノ一家もいた。
彼らは予想通り、自分たちとはかなり離れた場所に隔離されていたので、通常の手段で助けることは絶対にできなかっただろう。
そして、そこに杖を持ったタイスケもやってくる。
彼は結界を張り、家族が戦いに巻き込まれないように退路を確保してくれていた。
「ファビオ、すまぬな。わしのせいでこんな目に遭わせてしもうた。この責任は必ず取る。今はお前たちを逃がすことで許してくれ」
「そんな…! 僕が不注意だったのです! もっと警戒していれば」
「時間がない! じいさんが作ってくれた退路で逃げるぞ!」
「ですが、まだキリポが…」
ディノが急かすが、やはりキリポが気になってしまう。
が、それを見たタイスケがニヤリと笑う。
「あの子には計画を伝えておる。あとからでも追ってこられるじゃろう。それに、助っ人も呼んでおいたからの」
「助っ人…誰です?」
「あの時から一途に想い続けていた子じゃ。真摯な心は必ずや邪なものを打ち破る。任せておいて問題なかろう」
「な、なるほど?」
タイスケの言葉に首を傾げながらも、この老人が言うのだからと無理やり納得するファビオ。
「まだ安全じゃないからな! 気をつけろよ! ファビオ、殿は任せるぞ」
「わかりました。行きましょう!」
タイスケが用意してくれた衛士隊の装備を身にまとったディノを先頭にして、一行は走る。
多くの一般人や狼は結界内に入ってこられないが、たまに遭遇した神官騎士はこちらを見つけると猛然と襲いかかってきた。
彼らも馬鹿ではない。逃げ出したことがそろそろバレるはずだ。しかし、平時では厄介な相手だが、今はタイスケがいる。
ディノが攻撃を防いでいる間に、タイスケが本を開くと『二足歩行のネズミ』が出現。
ネズミの目が赤く光ったと同時に神官騎士が動きを止めた。
「わしらは先に行く。ここの守備を頼むぞい。誰も通さぬようにな」
「はっ、了解しました!」
神官騎士は平然とファビオたちを見逃し、さらには守るような動きさえ見せた。
突然の豹変ぶりに誰もが驚いたが、これは以前、森に入り込んだ人間の記憶を操作した時に使っていた『カナジー・レミンガル〈雲より生まれ既知と消ゆる使徒〉』の力である。
能力は精神攻撃による記憶操作で、今使ったのは『親愛の既知』というスキルだ。対象の精神に『既知』を生み出すことで、あたかも見知った者のように思わせることができる。
親愛はその名の通り、友愛の記憶を相手に植え付けて、あたかも自身を尊敬する上司に仕立て上げるものだ。
かなり強力な精神攻撃なので、あらかじめ高度な精神防御策を講じていなければ防ぐことは難しく、直前の記憶も消すので足もつかない。
タイスケはこれを使ってさまざまな情報を得ていた、というわけだ。
「よいか、ジーギスたち異端審問官は、わしのように『使徒』を武器として使う。もし対峙することがあれば本に注意せよ」
「だからあの時、司教は本を構えたのですね。彼の使徒はどんな能力なのです?」
「詳細は知らぬが、噂ではオリジナル十二使徒の高品質レプリカらしい。わしのカナジー・レミンガルなどよりも戦闘向けで、遥かに強くて危険なものじゃ。けっしてまともに戦ってはならぬぞ。ひたすら逃げるのじゃ」
「………」
(この本を持っているということは、タイスケさんも異端審問官だったということか)
口には出さなかったが、この本も『アメンズ=メタナイア〈異端への懲罰〉』であることは間違いない。だからこそベルナルドの強さもわかるのだろう。
が、そこは気づかなかったふりをするのが人情だ。
「これからどこに? 外に逃げるのですよね?」
「仮に逃げおおせても、一度カーリスに睨まれたら見逃してはくれぬ。わしと同じく死ぬまで追われることになろう。神殿には予知ができる聖女もおるのだ。特におぬしのように特異な力を持つ者たちは見つかりやすい」
「では、どうすれば?」
「『力』を得よ。わしが守ってきた『遺産』をおぬしが継承するのじゃ。本当は使わずに越したことはないが、今はこれしか方法がない」
「禁書の類はもう読みましたが…」
「あれはカモフラージュじゃ。本当の遺産は別のところにある。よいか、世界樹に向かえ。あの根本の地下に本物の遺産はある。さあ、『鍵』を受け取るがよい」
そう言うと、タイスケは自身が身に付けていたネックレスを渡す。
そこには宝珠が複数付いており、どれもが最高級品の貴重な代物であることがうかがえる。
「この鍵を持って遺跡の最奥の部屋に行くのじゃ。封印が解けて遺産がある場所に行けるようになる」
「タイスケさんでは駄目なのです?」
「一度試したが、わしではまったく制御できんかった。じゃが、おぬしとユーナならば…。そう、これは女神の思し召しなのじゃよ。大丈夫、わしの目を信じよ」
「わかりました。それしか手がないのならば、やってみます」
「うむ。では、まずは森に向かう。そこが一番安全じゃ」
タイスケに連れられてファビオ一行は森に移動する。
一方、その頃。
ベルナルドたちは、赤刃狼率いる狼の精鋭と交戦中だった。
「魔獣除けの結界を張ってはいたのですが、こうも簡単に破られるとは誤算でした。やはりタイスケ・ローランドが動いたようです。この様子ではオルシーネさんも逃げたでしょうね」
「ちっ、おびき出す作戦が裏目に出たんじゃないすか!?」
「否定はできません。今回は策に溺れました。さすがは神殿が長年追っていた咎人といったところでしょうか」
ガジガの言う通り、ベルナルドはファビオを囮にしてタイスケをおびき出す策を考えていた。
それゆえに教会の警備を薄めにしていたのだが、まさか狼と結託するなど思いもしなかった。
魔獣をただの動物としか認識していなかったことが彼のミス。一石二鳥を狙った傲慢が裏目に出た形となる。
だが、表に出てきたのならば叩くこともできる。
「私はオルシーネさんとローランドを追います。ガジガさんとジャコブさんは、あの大きな狼を排除なさい」
「お独りで大丈夫ですか?」
使徒を展開しているジャコブが訊ねる。
が、ベルナルドは笑う。
「むしろあなた方のほうが心配です。あのような魔獣に後れを取らぬように。異端審問官としての責務を果たしなさい」
「心得ました」
「では、この場は任せましたよ」
ベルナルドは赤刃狼の相手をガジガとジャコブに任せ、狼たちを蹴散らしながら悠然と追跡を開始する。
まずは魔力珠を取り出してファビオの現在位置を確認。
(かなり破壊されましたが、『マーカー』はかろうじて機能しているようです。この進路だと向かうのは森ですか)
因子レベル5の魔王技、『視々眈々』。
序盤のパミエルキのところでも説明したが、事前に相手の身体の一部に術式でマーキングすることで、位置まで特定して監視することが可能な術である。
すでに破壊されて痕跡を残す程度ではあるが、方向から推測すると単純に都市外に出るのではなく、森に向かったことがわかる。
(もしも逃げるだけならば、一刻も早く交通ルートに出てクルマを使ったほうが確実です。この状況下であえて森に行くとなれば、やはり何か隠してあるようですね。いいですよ、悪くない。本命が来てくれるのならば損害と釣り合います)
もともとベルナルドは神託を受けてここにやってきた。それゆえに怪しい者は片っ端からリストに挙げて監視している。
その中の三人であるファビオとユーナ、タイスケに関しては情報が集まり、ある程度の要素が確定した。
それぞれ特異な力を持っているが所詮は個人のもの。世界規模の組織であるカーリスからすれば脅威の度合いはさしたるものではない。
となれば、注目すべきは前文明の遺跡だろう。
神託が示すほどの脅威となりえるのならば、それに見合うものであるべきだ。それが前文明関連ならば納得もできる。
狼という不確定要素には不覚を取ったが、本命を押さえればベルナルドは使命を果たせるに違いない。
「さあ、最後の詰めといきましょうか」
ベルナルドはファビオたちの追跡を開始する。




