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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
群雄回顧編 「思創の章」
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531話 「ユアネス」


 それから二年後、十六歳の頃。


 十三番区にあった四つの村は、正式に合併して『街』を目指すことになった。


 本来ならば『村』の上位は『町』であるが、このあたりは基準が曖昧なので少し上等な村ならば町と自称しても問題はない。


 十三番区に関しては、小規模な村がそれぞれで自治を行っていたことで、あえて村のままでいたにすぎず、規模的にはすでに街に比肩するまでになっていたので妥当な判断といえる。


 ただし、『街』には明確な昇格基準が存在する。


 規模の大きさはもちろんのこと、ここでは『交通ルートの有無』がもっとも重要な要素となる。


 交通ルートの定義は、集落と集落を結ぶ『みち』であることと、一定の安全が確保されていることだ。


 安全な道路を設置すれば自然と人と物が集まってくる。経済活動は人が行うものである以上、移動の活性化こそが発展を促す一番の要因になるからだ。


 といっても交通ルートの開拓はとても大変で、普通ならば何十年もかかる事業である。


 魔獣や野盗が多い地域では治安を維持し続ける戦力が必要になるし、単純に道路を生み出すだけでも多大な労力が必要となる。


 治安維持には傭兵やハンターを雇うにしても、そもそも誰が金を出すのかという大前提の問題があり、揉めている間に衰退して消えてしまう集落が多いのも現実だった。


 しかし、十三番区にはファビオという転生者がいる。


 彼が開発した土木用シャベルや簡易運搬機は素人にも使いやすく、一人の労働力で五人分以上の成果を上げることができた。


 ファビオは募集で集めた大勢の労働者とともに、まずは手近な場所、もともと住んでいた周辺の整地を始める。


 今までは手当たり次第に家を建てていたが、改めて区画図を作って街並みを整えることにしたのだ。


 この時の区画整理においては、土地の権利に関しても文書で定めてトラブルがないように努めた。


 また、今までの野盗の侵入の経験から強固な柵の設置を検討。


 土地が広いので当初は無理だと思っていたが、ユーナによる森の再生とファビオの能力で強化木材を大量生産することで無事に覆うことができた。


 たったこれだけでも見た目は随分と変わり、外から見れば十分立派な街に見える。


 続いて、交通ルートの条件である『他の集落との連結』を試みる。


 こちらもディノたち衛士隊の力を借りて労働者を野盗から守りつつ、ファビオの道具を使うことで短期間で終了。比較的近くにある十二番区と七番区との間のルートを確立した。


 これで街になる最低条件は満たしたので、一度ハローワークに連絡して確認してもらうことにする。


 自治区にハローワークは存在しないが、ロードキャンプに連絡要員が点在しているので彼らを仲介して連絡をしてもらうわけだ。(連絡要員はそこに住む一般人を採用している)


 連絡を受けた近隣のハローワークから職員が派遣され、審査と承認が成されることで開拓したルートは公式に認められる。


 労働者の多くはハローワークで情報を仕入れるので、正式な交通ルートとして認められれば、一気に多くの人々が集まることになるだろう。


 そして、審査には無事合格。


 かつての四つの村は『街として承認』されることになり、多大な功績を挙げたファビオがハローワークの連絡要員として採用されることになった。


 それによって今後は、ファビオが中心となって大規模な開拓事業が展開されることが決まる。


 自治区同士を繋げることで街に昇格したが、さらに経済規模を上げるには『他の【街】との連結』が必要不可欠だった。



「はぁ、忙しいな。掘っても掘っても終わりゃしない。距離が長すぎるんだよ」



 輝く太陽の下、ディノがぼやきながらシャベルで土を掻き出す。


 彼は衛士であるが街の住人でもあることから、その体力を見込まれてちょくちょく工事現場に駆り出されるのだ。



「口を動かす前に身体を動かす。得意ですよね?」



 横にいたファビオが、ディノが掻き出した土を運搬機に載せて運ぶ。


 そしてまたディノが掻き出してファビオが運ぶを繰り返す。


 正直、面白くはない。交通ルート開拓はひたすら単純作業の繰り返しなので、ディノが愚痴をこぼすのも仕方がないことといえる。



「そりゃ肉体労働は得意だが、限度ってものがある。俺たちだけでルート開拓なんてできるのか?」


「大丈夫ですよ。ちゃんと計画は練ってありますから」


「本当か? 疑ってはいないが、この広さだからな。なにせ次は街まで繋げるんだろう? 何キロあるんだ?」


「南西にある『ラピット・フット』までは、およそ五百キロですね」


「五百…マジかよ。ほかになかったのか?」


「このあたりは街が少ないですから選択肢はありませんよ」



 目の前には、面積でいえば北部と同程度の広大な荒野が広がっている。


 いくら道具が優れていても、これを生身でやるのは至難の業だ。さらには人手も限られているのだから絶望するのが常人の考えである。


 しかし、ファビオの辞書に諦めの二文字はない。


 その強い意思を宿した瞳には、遠くからこちらに向かってくる『クルマ』が見えていた。



「ファビオー!」



 助手席から手を振るのは、ユーナである。


 彼女はこの二年でさらに成長しており、身体付きも成人女性に近いものになっていた。特に胸の成長は著しく、手を振る際も窓からこぼれてブルンブルンと大きく揺れている。


 目の前でクルマが止まると、降りてきたユーナがファビオに抱きつく。



「ユーナ、いきなり抱きつかないでください」


「なに照れてんの。夫婦でしょ」


「そうですが…汗臭いかなと」


「そんなことは気にしないわよ。はい、これ着替えの服ね」


「ありがとうございます」


「………」


「なんです?」


「ありがとうの『チュー』は?」


「いやそんな、公共の場ですし」


「ただの荒野でしょ。何もない場所よ」


「人はいますよ」


「あー、面倒くさいわね。はい、チュー!」



 ユーナが少し背伸びをしながらキスをする。


 この二年でファビオの身長も高くなっており、より大人らしくなった。


 顔立ちは中性的な側面を残しているが、肉体労働も増えたことで筋肉量も増し、なかなか良い体格になっていた。



「ユーナは強引ですね」


「ファビオがいちいち面倒なのよ。どう? 嬉しいでしょ」


「…まあ、悪くはない気分です」



 いきなりのキスで驚いたものの、妻を優しく抱きしめるファビオ。


 その様子にディノが肩をすくめる。



「おいおい、お二人さん。一応俺もいるんだけどな」


「ディノは大丈夫よ。男の子のパパだものね。はい、こっちはディノの分の着替えよ。ルイザに頼まれたの」


「おう、サンキューな。しかしまあ、この二年で変わるもんだな。いや、身体のことじゃないぞ」


「わかっているわよ、エッチね。まあ、私も本格的に妻になれば少しは変わるってことよ」



 ユーナの急激な成長(胸含む)には誰もが驚いたが、『女性は愛を知れば変わるもの』という名言を母のクラリスは残した。


 要するに、ファビオと見事に結ばれたのである。


 それは肉体的だけではなく、精神的な繋がりという意味でも十分に『夫婦』と呼べるものだった。


 そのきっかけは、やはり二年前の出来事に起因する。



(あの時の経験は僕に『覚悟』をくれた。ユーナだけじゃなくて、みんなも守らないといけないんだ。僕にはそれができるだけの力があるんだから、迷っている暇なんてない)



 これまでのファビオは、どこか消極的だった。


 それは生きる意味をはかりかねていたからだ。新しい人生を自ら望んだものの、力をどう生かすかに迷いがあった。


 しかし、村人の危機やタイスケとの出会いを経て、自分にはちゃんとした役割があることがわかった。



(タイスケさんは、力があることは不幸だとも言っていた。彼なりに厳しい人生を経験して得た答えなのだろう。だからああやって身を隠している。でも、僕は自ら望んで来たんだ。今の僕の目標は、この街を大きくしていくこと。それが皆の幸せと安全に繋がるはずだ)



 覚悟を決めてからの二年は、まさにあっという間。


 本当の意味でユーナと結ばれ、村長代理として精力的に働くうちに、めきめきと頭角を現していった。


 今では村長のカイロナウテもファビオにすべてを任せており、街の合同会議においてもファビオが代理で出席するほどだ。


 まだ若い彼に嫉妬する者も少なからずいたが、実績と功績がありすぎて誰も文句が言えない状態にある。


 このクルマにしてもファビオの提案で商人から買い上げたものだ。代金の半分は自分の資産から出しているので反対意見は出なかった。


 さきほども述べたが、誰が金を負担するのかという最大の難問をファビオ自身が担当しているので、文句のつけようもないわけだ。



「クルマはどうです? 使えそうですか?」


「乗ってみた感じでは問題ないわね。これで一気に開拓も進むわ」


「ぜひとも良い道路にしましょう。安心して通れる場所ならば人の往来も多くなるはずです」


「コンクリート式だっけ? 何よりも綺麗なのがいいわよね。太陽の光を受けてキラキラしているし」


「特殊な石を交ぜていますからね。さらには昼間に吸収した光によって、夜でもわずかに光るのが最大の特徴です。これで旅人が迷わないで済みます」



 ルート開拓の手法はいろいろとあり、北部では広すぎるゆえに踏みならす程度のおそまつな出来であったが、ファビオが提案したのは『コンクリート舗装式』であった。


 実際は日本で見かけるような高品質なものではなく、あくまで整えた地面の上を特殊な土で軽く補装するものだが、それでも見た瞬間にそこが交通ルートであることがわかるほど綺麗なものだ。


 これはクルマの大半が、浮遊式であることに目を付けたがゆえの発想である。


 地面に接地するタイプの車両だと、どうしても道路の上面が壊れてしまうが、この世界のクルマならばたいして地面を痛めることがない。だから見栄え重視の道路でも問題ないのだ。


 東大陸西部においてこのようなルートは珍しいため、それに惹かれて商人や旅人がやってくると考えていた。


 当然ながら手間も増えるので人力では大変だが、そのために中古でクルマを購入。工事用に改造したというわけだ。


 クルマとしては一般的な二十メートルほどの大きさではあるが、大型シャベルを搭載しており、走るだけで大きく地面を掘り起こすことができる。削岩機能も搭載しているので、硬い岩や地盤があっても問題ない。


 このクルマで道をならしたら、次はコンクリート補装用のクルマで塗り固める作業が行われる予定である。



「では、クルマはユーナに任せて、僕たちは続きをしましょうか」


「俺らは人力か」


「そりゃそうです。全部機械というわけにはいきませんから。しかも肉体はタダ、つまりは無料です。寝れば回復するのですから有効活用すべきです」


「すっかりと人使いが荒くなったもんだぜ」


「それが指導者の役目ですからね。ディノだって僕にそうなってほしいと言ったじゃないですか」


「やれやれ、身から出た錆か。なら仕方ない。ちゃっちゃとやるかね」


「終わったら発酵酒くらいは奢りますよ」


「それは楽しみだ」



 こうして汗を流すこと半年。


 南西にあるラピット・フットまでの、およそ五百キロメートルの交通ルートが開拓された。


 ニューロード自体が、もともとは中南部から自由貿易郡への通り道でもあったことから、商人の数自体はそれなりにいる。


 商人は野盗や盗賊を怖れて危険な道は通りたがらないので、当然ながら安全なルートがあればそこを通る。


 ファビオが作った道路は綺麗かつ、随所に危険を知らせて応援を呼ぶための『糸電話』や『笛』を設置していたため、商人たちはこの道を絶賛して愛用。必然的に街にやってくる商人が増えることになった。


 あとは彼らから直接情報と要望を聞き、それに合わせてさらにルートを開拓すれば、ますます街は発展していくことになるだろう。


 ただ、本当ならば自由貿易郡に向かってルートを伸ばすほうがよいのだが、諸々の事情で断念せざるをえなかった。


 というのも、北側の治安が相当悪くなっているからだ。



「北はまだ危ないのですか?」



 ルート開拓が一段落つき、実家に戻っていたファビオがマテオに情勢を訊ねる。


 今は村長の家の近くに建てた新築の家でユーナと二人で暮らしているが、距離が近いので定期的に実家に戻っているのだ。


 マテオもファビオの言葉に頷く。



「そうらしいな。もともとあの地域は、東の国家間での騒動から逃げてきた連中が集まっているエリアなんだが、それがついに限界に達したらしい」


「あそこの東って、ガーネリア帝国があるんでしたっけ?」


「昔からある相当でかい帝国だ。西には何もないから侵略はされないが、東ではどんどん勢力を増しているそうだ。まあ、こことはだいぶ離れているし、俺らには関係ない話ではあるんだが…間接的に影響は受けているな」



 十三番区はニューロードの北東に位置しているので、東側国家とも近いエリアにあるが、北にある地域よりはましだ。


 ここから北のエリアには、東の大国の一つであるガーネリア帝国が仕掛けた大規模な併呑計画、言い換えれば侵略戦争を受けて敗北した国家から大量の難民が流れ込んでいた。


 もともと何もなかった地域に人だけが溢れれば、物資不足による奪い合いが横行し、暴力だけが支配する世紀末が誕生してしまう。


 今では窃盗などは当たり前の状況で、新しく村を開拓しようとしてもすぐに備品を奪われたり、襲撃を受けて施設や機械を破壊されてしまうので、まったく発展の見込みがないらしい。


 日本でもよく発展途上国に寄付や支援をしているが、それが実らないのも、こういった現地での倫理観の欠如が大きな要因となっている。


 いくら援助しても現地の人々の意識が変化しない限り、ただ浪費して終わってしまうのだ。


 ここまでいってしまうと、もはや手の打ちようがない。他のエリアも近づかないようにすることしかできないが、かといってそこから犯罪者が出てきても困る。


 そこで一つの大きな動きがあった。



「昔からあのエリアに住んでいた豪族たちが協力して『監獄』を作るそうだ。要するにどうしようもないから、片っ端から犯罪者を捕まえて牢屋にぶち込むって話だな」


「監獄…ですか。入りますかね? 難民自体は少なく見積もっても数百万人はいるそうですし、犯罪に加担する者だって最低でも十万人以上はいるはずですが…」


「それに見合うだけの監獄をたくさん作るって話だ。土地だけはいくらでもあるからな」


「なるほど…」



 と頷くが、こんな荒野でわざわざ監獄を作るのは、ややきな臭い。


 犯罪者を捕まえれば管理をせねばならず、最低限の食事も提供せねばならない。看守も雇わねばならないだろうし、何よりも監獄を造ること自体が大変だ。


 そんな手間がかかることを治安維持だけの目的でやるとなれば、経費がいくらあっても足りないだろう。


 となれば、『違う目的』があるはずだ。



(見当はつくが…あまり考えないようにしよう。他の地域にまで関わるほどの余裕はない。自分の街の発展だけにとどめておかないと、また中途半端になってしまう)



 ひとまずわかったことは、北側は危険なので近寄らないほうがいい、ということだけだ。


 ファビオも自由貿易郡には興味があるものの、街の拡大で手一杯なので、この話題は終わりとなる。



「ところで『ハローワークの誘致』の件はどうなったんだ? お前は連絡要員になったんだよな? 話も通しやすいだろう」


「そう簡単ではありませんね。交通ルートは作ったのですが、ラピット・フットも小さい街なので経済効果もたいしたことがないのです。うちの街も住人の数と収益面の条件を満たしていませんので、なかなか厳しいようです」


「それなりの規模の街か都市にしかない機関だからな。うちじゃ高嶺の花かね」


「そうですね。調べれば調べるほど大きな組織です。できれば誘致したいですけど…」



 ファビオもハローワークの存在を知ってから誘致を検討していた。


 しかし、思っていたより条件が厳しい。


 まずは『住人が三万人以上』かつ、年間で『十万人以上の交通量』があることに加え、『五億円以上の収益』があること。


 それを満たせなくても近隣に都市があり、それが交通ルートで繋がっていること。治安が安定していること。


 もしくは、その地域に特別な物、または特殊な環境があること。


 支部長以上の上級職員からの推薦または、優れた実績のある傭兵やハンターからの要望と要請があること。


 といったように細かな誘致の条件が定められており、ファビオにとってはどれもハードルが高いものばかりだった。


 アンシュラオンの場合は、ゴールドハンター級の実績に加えて、翠清山での活躍および、魔獣の楽園である北部という環境から誘致はそう難しくはない。


 キンバリィのような上級職員もいるだから、条件がそろいすぎて逆に困っているくらいだ。



「北側へのルート開拓ができれば話も変わったんですけどね」


「自由貿易郡と繋がることは悪くないが、そうなると今度はこっちが騒動に巻き込まれるかもしれん。大きい都市には、それ相応の悪い面もある。この街はまだ出来たばかりだ。分相応にやるべきだな」


「そうですね。今は人の流入も厳選しないといけない段階ですし」


「その前に【街の名前】はどうするんだ。名前がないと始まらないぞ」


「ああ、そうでしたね。名前と言われても良い案が浮かばなくて」


「どういう街にしたいのか、中身から考えてもいいんじゃないか」


「どんな街…ですか。そうですね…」



 ファビオは少し考えてから自分の考えを述べる。



「僕は今までの経験で、人はそれぞれ違う考えを持つことを知りました。夫婦にしたって、好きな食べ物だって違うし服の趣味だって違う。就く職業だって異なる。だから、それでいいんだと思います。大事なことは、そうした自由があること。それぞれが自由を楽しんで、その中で協力し合えるところは協力して、みんなで少しでも過ごしやすい街にしたいのです」


「ほぉ、すごいな! さすが俺の息子だ! まるで学者みたいだぞ!」


「そのためには経済の活性化が必要になります。逆説的になりますが、本当はハローワークが来てくれれば、それだけで大きな経済効果になったのですが…」


「身の丈に合った生き方でいいさ。俺たちには森があるからな」


「そうですね。そういう素朴で堅実な生き方こそ人間らしい生活なのかもしれません」



 ファビオが言ったことは日本人からすれば当然のようにも思えるが、それが許されない場所のほうが多いのが実情だ。


 最低限の物資も手に入らない場所では、個人の自由などと言っている暇もなく全員が働かねばならない。そこで怠けていたら袋叩きに遭うだろう。


 誰かに支配されれば好きな服だって着られない。好きな音楽も聴けない。好きな言葉も紡げない。


 その意味で『自由とは自ら勝ち取るもの』なのである。


 人権は当たり前に与えられるものではない。今まで戦ってきた者たちがいるからこそ今の自由が存在するのだ。


 この話をユーナにしたらたいそう気に入り、それにちなんだ都市の名前を考えてくれた。


 次の合同会議で提案してみたところ、他に案もないことから、そのままファビオの案が通る。



「では、全会一致でこの街の名前は『ユアネス』になりました。これからも街の発展のために協力し合っていきましょう」



 会議の場で宣言された名は、【ユアネス】。


 あなただけの街、自分らしく生きられる街、おいでよユアネス、ウェルカムユアネス、ハッピーユアネス、地上の楽園ユアネス。


 後半は若干怪しくなったが、ともかくユアネスである。



(ユアネス、僕たちの街であり故郷の名前だ!)



 この名前には、家族や友人、地域への愛が込められていた。


 転生してからずっと過ごしたこの土地を、彼は愛してやまない。



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