表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「アーパム財団」編
516/617

516話 「戦艦と蜘蛛」


(やはり遠くが見通せない。これも術式のせいか)



 空を飛んでいるので本来ならば遠くまで視認が可能なのだが、アンシュラオンの視力をもってしても霞がかかったように制限がかかる。


 これも大地同様、強力な視認妨害の術式が荒野全域にかかっているのだろう。


 方角だけを頼りに慎重に飛行を続けること数時間。


 そこで『谷』を発見。


 縦七キロ、対岸までの横幅およそ四キロの、より正確に述べれば『亀裂』のような形状をしている。



「ここが目的地?」


「そうだ。戦艦は岩陰に隠れているはずだ」



(亀裂自体も大きいけど、深さも千五百メートルはありそうだ。けっこう深いな)



 日光が届いていないために内部は真っ暗だが、アンシュラオンの目は空中からでも谷底を見通す。


 話によれば、ここに例の蜘蛛型魔獣が生息しており、近くを通りがかった戦艦に襲いかかってきたという。


 だが、襲われた理由はすでに判明している。



「少年、波動円は控えてくれよ。まだ表層に蜘蛛が残っているからな」


「『電波』に反応するんだっけ?」


「探知系の魔獣ゆえに大型送受信機や波動円には敏感だ。戦艦が襲われたのもキャンプと通信しようと強い電波を出した時だったからな」



 当時の状況を少し詳しく説明しよう。


 アンシュラオンが翠清山で戦っていた頃、ガンプドルフは西方開拓における魔獣の狩場以外の拠点を探していた。


 そこで候補に挙がったのが、前回も話に出た『食人森』とその南で新たに発見された森林地帯である。


 この厳しい荒野においても森には水資源が存在するため、拠点とするには最適な場所だ。


 ただし、食人森は初期の調査段階で危険度が高いことが判明していたことから、今回は南の森を調査する予定であったという。


 が、そこに向かう途中、この大きな亀裂を発見。


 亀裂は事前調査段階では『存在していなかった』ので、この三年間のどこかのタイミングで新たに生まれたことになる。


 安全面の確保からも戦艦の責任者であった副官のメーネザーは、亀裂の調査を決断。


 数日の調査の結果、谷底で水場の可能性を見出し、敵性魔獣も少なかったことから、ここを新たなキャンプ地に採用することを検討し始める。


 そして、一旦ガンプドルフがいる狩場キャンプに連絡を取ろうと大型無線機を調整中、地震が起きたと思ったら亀裂の穴から大量の蜘蛛が這い出てきて交戦する羽目になった。


 もともとメーネザーの任務には周囲一帯の敵を排除することも含まれているので、蜘蛛の出現自体には驚かなかった。


 戦艦という強力な兵器を使って順調に蜘蛛を排除していったが、ここで予想外のことが起きる。


 【蜘蛛の進化能力】である。


 彼らは外敵を見つけると特殊な形態に至り、攻撃を受けて瀕死に陥るごとに『脱皮進化』するという異様な特徴を持っていた。


 仕留め損ねればどんどん強くなる蜘蛛に、さすがの戦艦も苦戦。


 砲撃だけでは対応できなくなり、騎士や魔人甲冑も総出で対応するしかなくなった。


 だが、災難はさらに続く。


 消耗戦を恐れたメーネザーが撤退も考え始めた時、運悪く大型の蜘蛛が出現。


 それは全長が二百メートル以上もある巨大な【白い女王蜘蛛】であった。


 女王蜘蛛は素早い動きで戦艦の真横に張り付く。


 最初は砲撃などを繰り返し、なんとか引き剥がそうとしたが、女王蜘蛛の攻撃が激しくなるだけで状況は改善されなかった。


 何よりも戦艦の真上や真横は死角になっており、主砲では狙えない位置にある。副砲ではたいしたダメージを与えられず、撃つだけ無駄であった。


 抵抗を続ければ続けるほど艦へのダメージが蓄積され、より絶望的になると予想したメーネザーは、『敵の目的』を探るために攻撃を一時停止する。


 もし女王蜘蛛が戦艦を潰そうと思えば、いつでも潰せたからだ。それにもかかわらず、抱きかかえるような仕草に違和感を覚えた、というわけだ。


 ただ闇雲に攻撃を繰り返すことは誰にでもできるが、こうした博打にも近い決断は極めて難しいものである。


 このあたりの判断から彼が優れた指揮官であることがわかるだろう。


 結果は半々といったところ。


 予想通り、女王蜘蛛はそれ以上の攻撃を仕掛けてこなかったものの、その代償に戦艦が亀裂に引きずり込まれてしまう。


 普通のクルマと同じく、一度落ちたら戦艦は簡単には戻れない。地球でも崖に落ちた車の回収には大掛かりな人手が必要になるものだ。


 その後はどんどん巣穴の中を引っ張られていき、最奥のひときわ大きな空間にたどり着くと、本格的に抱きかかえられることになる。


 アンシュラオンが推測したように目的は―――産卵


 しばらくしてから女王蜘蛛は、戦艦内部に脚を突っ込んできた。


 それはなかなかに強烈で、獲物の一部を解体するかのように強引に開けようとしてくる。


 このままでは破壊されると思ったメーネザーは、あえて格納庫を解放することで女王の卵を受け入れる措置を取った。


 この作戦は成功。


 女王蜘蛛は卵を産み付けると満足したのか、おとなしくなった。


 他の蜘蛛たちも戦艦には襲いかからなかったことから、おそらくは孵化した子供の餌になる予定だったと思われる。


 まだ孵化には時間がかかりそうだったため、メーネザーは蜘蛛の巣穴の中で戦力を温存。救助を待つことに徹した。


 一方、魔獣の狩場で別行動をしていたガンプドルフは、戦艦からの連絡が途絶えたために必死に捜索を開始。


 戦艦の予定航路を追跡することで、この谷を発見するに至る。


 それから決死隊を編成し、聖剣だけではなく魔人機も持ち出して死に物狂いで戦い、ようやく戦艦を助けることができたのだ。


 と、ここまでが戦艦拿捕から奪還までの大まかな経緯である。


 実際に西方の地に赴いてみると、それがいかに困難であったかがわかる。ガンプドルフが翠清山に来られないのも当然だろう。


 アンシュラオンたちは、亀裂から少し離れた位置にあった巨大な岩同士の隙間に移動。


 そこに巡洋艦ナージェイミアの姿があった。


 長さは五百メートルと大きいが、幅約百メートル、高さ約七十メートルの長方形をしているので、なんとなく一般的なアイスバーを想像してもらえると形が想像できるだろうか。



「ああ、これだこれ。あの時に見たやつだよ」



 アンシュラオンの記憶にも合致するフォルムだ。(21話参照)


 が、現在は船体にかなり傷が付いており、大きく破損している箇所も見受けられる。


 周囲では修理に勤しんでいる者たちが見え、所々で溶接作業による火花が散っていた。


 マスカリオンごと甲板に舞い降りると、事前に連絡を受けていたメーネザー千光長が出迎えてくれる。


 ガンプドルフもグレートタングルから降りて、彼を紹介。



「この男が副官のメーネザーだ。非常に優秀な軍人だ」


「初めまして、千光長のイヴァン・メーネザーと申します。お話はかねがね伺っております」


「アンシュラオンだよ。よろしくね。オレは軍人じゃないから気楽に接してくれていいよ」



 メーネザーは副官として、長年艦隊を支えてきたベテラン将官の一人だ。


 年齢はガンプドルフより下の四十歳で、すらりとした顔立ちのためか、もっと若く見える。


 体躯も大きいとはいえず中肉中背だが、さすが千光長というだけあって、かなりの腕前であることがうかがえた。


 ただし、あくまで艦隊運用と指揮能力に長けた人材なので、単純な戦闘力ではゼイヴァーのほうが上だろう。



「首尾はどうだ?」


「順調とは言いがたいですが、予定通りには進んでおります。戦艦は一ヶ月もあれば通常航行が可能になるでしょう」


「兵器製造のほうは? 核は足りているか?」


「目標は達成し、出来上がったものからテストを行っております。弾薬に関しましても今のところは問題ありません」


「こちらも順次、造船技師を送る。まずは駆逐艦の建造から試してみてくれ」


「了解しました」



 DBDの兵器製造は狩場キャンプで行っているわけではなく、こちらの戦艦において行われている。


 というのも、この戦艦には二百メートル級の『高炉(溶鉱炉)』が設置されており、鍛冶場兼サブエンジンとして機能していた。


 すべての戦艦に高炉があるわけではないが、このタイプの戦艦があったおかげで、戦争時においても現場で武具や兵器の製造が可能になり、長期間の抗戦に大いに役立ったものだ。


 ガンプドルフが東大陸に来る際に、わざわざナージェイミアを選んだ理由も現地生産を可能にするためである。


 現状では順次キャンプから送られる資源によって、砲台や弾薬の製造が行われており、その実験をするにも荒野は最適といえる。


 唯一の問題として、キャンプとこの場所を繋ぐルート確立がまだなので、今回の旅路はその確認作業も兼ねていた。


 そして、それとは別にアンシュラオンにも大きな目的がある。



「さて、少年はどこから見たい?」


「戦艦もじっくり観察したいけど、やっぱり蜘蛛が先かな」


「蜘蛛か…。有益な存在であると理解しているが、嫌な思い出ばかりあるな」


「では、私もご一緒いたします。谷底から物資を引き上げないといけませんので。こちらへどうぞ」



 メーネザーの先導で、アンシュラオンたちは亀裂に向かう。


 今回はあえてヒポタングルを使わず、谷間に作られた昇降機を使って降りていくが、千五百メートルもあると一回では足らず、何度か乗り換えることでようやく降りることができた。


 亀裂の壁は完全な垂直ではないところもあるので、アンシュラオン独りならば面倒くさいので飛び降りたほうが早いだろう。(領主城の時のように壁に張りつけばよい)



「慌てずに迅速に運べ! 補強も怠るなよ!」



 谷底では、DBDの騎士たちによる物資の搬送に加え、亀裂に鉄板を打ち込む作業が行われていた。


 軍事施設自体は地下に建造されるため、先に入口である亀裂を補強する必要がある。


 戦艦や他の輸送船が楽に移動できるように亀裂自体を広げ、新たに階段や簡易エレベーターなども設置しているようだ。


 多くの騎士がそれなりの実力を持った武人なので、ちょっとした段差――常人ならば崖に等しい――くらいならば軽々と移動できるのも強みだ。


 岩盤の破壊も剣で切ったり豪快にハンマーで破壊したりと、次々と亀裂が広がっていく姿は見ていてなかなかに面白い。



「思ったより慣れているね。これがおっさんの言っていた土木作業ってやつか」


「先行部隊の者は、この大地に来てから三年以上は経っている。こうした作業にも慣れているのだ」


「ここで使っている資材は、『亀裂内部から見つかった大量の鉄資源』を戦艦の高炉で溶かして作ったものだっけ?」


「うむ、思いがけない副産物だった。ここでの戦いは苛烈だったが、それに見合うものが手に入ったのは大きい」



 アンシュラオンが翠清山で資源を得たように、ガンプドルフも膨大な量の鉄鉱床を手に入れていた。


 ただし、量は多いがその分だけ質は悪く、建造物の材料か安物の武器くらいにしか使えないという話である。


 が、国を再興しようとしてる彼らにとっては非常に有益な資源だ。大勢の人が住むには多くの家や施設が必要になるからだ。



「このペースだと、あと三時間で基礎工事は終わります」



 ガンプドルフと谷底を歩いていると、メーネザーがさりげなく報告を入れる。


 その姿は、長年連れ添った司令官と副官であることを証明するように、とても自然で淀みないものだった。



「少年、メーネザーの言葉は当たるぞ。そういう能力だからな」



 ガンプドルフが少し自慢げに胸を張る。


 その理由がメーネザーのユニークスキル、『先読み』にある。


 これは簡易的な【未来予知】の一種であり、彼の言ったことは予言のように的中するため『先読みのメーネザー』という異名すら持っているほどだ。



「すごいな。何でもわかっちゃうの?」


「いえ、そこまで強力なものではありません。せいぜい直近の結果くらいまでです」


「でも、未来予知は貴重な能力だよね。少なくとも眼前に迫った危険は回避できる」



 未来がわかれば何事にも対処することが可能だ。


 特に集団戦闘においては有用で、いつどこでどの部隊が損耗するかがわかるだけでも迅速に援軍を送ることができる。


 その逆に相手の崩れる場所がわかっていれば、一気に戦力を投入することで流れを完全に引き寄せることもできるだろう。


 メーネザーはこの能力を艦隊運用にもちいることで、ルシアの猛攻を幾度も押しのけることに成功していた。


 ガンプドルフが言っていた「非常に優秀」という言葉は嘘ではない。


 がしかし、どんなスキルにも欠点はあるものだ。



「蜘蛛の穴がまだあったぞー!」


「調査隊を回せ! 生き残りがいたら刺激するなよ!」



 岩盤の拡張中に蜘蛛が作ったであろう横穴が発見される。


 これによって工事は一時中断。


 わずかな遅れが出ることになった。



「やれやれ、予想外のことはいくらでもあるものですね。ごらんの通り、ハプニングには弱いのです」



 メーネザーはすでに慣れたもので、諦めたような口調で頭を掻く。


 そう、彼の能力は『現状が続いた場合における的確な予知』なのである。


 そのままいけば戦局がどう動くかはわかっても、突然の敵の援軍や予想外の出来事には対処できない。


 そうなったときはまた新しい環境条件をセットし、計算し直さねばならないのだ。


 だからこそ突然出てきた蜘蛛の襲撃に対して、彼の能力は無力であったわけだ。



(だとしても強力な能力に違いはない。諜報活動で相手の情報を事前に入手していれば、まさに百戦百勝すら可能だろう。おっさんめ、いい人材を持っているな)



 この能力は、むしろアンシュラオンの『情報公開』と極めて相性が良い。そこにガンプドルフの艦隊指揮が加われば鬼に金棒だ。


 アンシュラオンとDBDは多少の方向性の違いはあっても、両者の欠点を埋めることができる良いパートナーといえる。



「本当の巣穴はこちらです」



 メーネザーに連れられて亀裂の端にまでやってくる。


 そこには三百メートル以上ある大きな穴があいており、もはや大空洞と呼んで差し支えない『奈落』が地下に向かって伸びていた。



(でかいな。しかも深そうだ)



 火怨山にもこういう場所はあったので驚きはしないが、これだけ大きければ、たしかに戦艦を運び入れることもできただろう。



「近寄ってもいい?」


「刺激しなければ問題ありません」



 アンシュラオンが巣穴に近寄ると、奈落の中から気配が急激に増えていく。


 そして、ゴソゴソと数匹の蜘蛛型魔獣が姿を現した。


 姿はタランチュラに近い形状をしており、大きさは体長三メートル程度で、高さは成人男性の胸くらい。


 人間から見れば大きな蜘蛛なので怖いが、魔獣としてはそこまでの脅威を感じない。


 だが、問題は【数】だった。


 次々と穴から蜘蛛が這い出てきて、地面だけではなく岩壁にも張り付き、こちらを凝視。


 その数は十秒たらずで百匹を超えていた。



―――――――――――――――――――――――

名前 :カーモスイット・スパイダー〈石喰蜘蛛〉


レベル:42/50

HP :690/690

BP :150/150


統率:D   体力: D

知力:F   精神: E

魔力:F   攻撃: E

魅力:F   防御: E

工作:D   命中: D

隠密:D   回避: D


☆総合: 第四級 根絶級魔獣


異名:悪食石喰い蜘蛛

種族:魔獣

属性:土、岩

異能:集団行動、脱皮再生、脱皮進化、糸放出、思念糸、鉱物喰らい

―――――――――――――――――――――――



(あまり強くはないな。兵士でも十分対応できるレベルだ)



 アンシュラオンは蜘蛛を観察。


 この程度の魔獣ならばたいした問題ではない。道中で出会った飛行型のボーミンシーファのほうが、よほど危険な魔獣であろう。


 しかし、彼らの危険性は数以外にもある。



「この蜘蛛は、すでに伝えてあるように『脱皮進化』する。最低でも中位の討滅級レベルにはなるだろう。また、多様なタイプが存在するので極めて厄介な相手だ」



 勇猛なガンプドルフでさえ、当時のことを思い出して苦々しい表情を浮かべている。


 このカーモスイット・スパイダー〈石喰蜘蛛〉は、進化するとグラヌマーハ級の強さにまで至るうえ、砲台型の蜘蛛や暗殺型の蜘蛛といったタイプ別に分かれているので、多様な戦い方をしてくるのが特徴だ。


 唯一の救いといえば、すでに女王蜘蛛が死んでいるので統制がとれておらず、こうして対峙していても一向に襲ってくる気配がないことである。


 ただし、ここにもう一つの重要な要素を加えねばならない。



(やはりここには『術式の影響がない』。こいつらは大地の術式に囚われていないんだ)



 もっとも興味を惹いたのが、この部分。


 亀裂からはあの禍々しい波動は出ておらず、この周囲一帯だけがすっぽり切り取られたように術式から隔離されていた。


 この現象こそ、アンシュラオンの『仮説』を裏付ける重要な証拠なのだ。



「おっさん、奥を見てきていいかな?」


「直接入るのか? 深いぞ」


「単独なら問題ないかな。確認のために一度見ておきたいんだ。大丈夫、もし襲われても反撃はしないよ。最悪はここを凍気で塞げば蜘蛛も出てこられないしね」


「わかった。好きにしてかまわない。実際のところ我々も内部に入るには勇気がいるのだ。魔獣に詳しい君の助力があれば助かる」



 ガンプドルフたちは地下で鉱脈を発見しているが、現在使っている資源は戦艦が内部で拿捕されていた時に手に入れたものが大半で、新たに入手するためには改めて中に入る必要がある。


 のだが、戦艦が脱出してから一度しか入れていないのが実情だ。


 その理由は単純明快で、はっきり言えば、まだ安全確保ができていないのだ。


 蜘蛛は積極的に襲ってこないものの、完全に安全とは言いきれず、騎士たちも多大な被害を受けたことで魔獣に敵対心を抱いている。


 しかし、争うことが無益であることも事実。


 ここを軍事基地にするのならば、嫌でも蜘蛛と『共生』する必要がある。



「時間がかかるから、セノアとラノアはおっさんと一緒に先に戻っていてよ。周りが軍人ばかりで怖いならマスカリオンの傍にいればいい。空で待っていてもいいけど移動は控えるようにね」


「わ、わかりました。お気をつけて」


「いってらーしゃい」



 ロゼ姉妹と別れ、アンシュラオンは単身で内部に入る。


 依然として蜘蛛の視線は感じるが、やはり襲ってはこなかった。


 試しに『念糸(術糸)』を出してみると、蜘蛛からも糸が放出されて絡み合い、こちらの意思を確認しようとしてくる。


 彼らのスキルに『思念糸』というものがあるが、これはアンシュラオンがセノアとの接触でも使っている『術糸』と同種の代物だ。


 この蜘蛛は肉眼では見えない糸を空間に張り巡らせて、周囲の状況を常時監視している。


 その精度はアンシュラオンの波動円にも気づくほど繊細で、微弱の音波や電波といったものにも敏感だ。


 また、個体同士で念糸を絡ませて情報交換もしているので、群れ全体で一つを構成するタイプの魔獣といえる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

励みになりますので、評価・ブックマーク、よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
[良い点] 蜘蛛の巣穴はデカいのもあるとは……驚きました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ