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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「アーパム財団」編
487/617

487話 「ロゼ姉妹 その1『白スレイブ検分』」


 数日後。


 公募での人材集めが進む中、アンシュラオンはサナとホロロを伴って、ハピ・クジュネのスレイブ館である『八千人やちじん』に赴いていた。


 目的は、もちろん白スレイブの物色である。


 中に入ると、さっそくモヒカン二号が出迎える。



「お待ちしていたっす」


「ちゃんと世話はできているんだろうな?」


「そこは抜かりないっす。ここでは禁止されているっすが、世話の仕方は全部理解しているっす。スレイブ商になるために、全員がそういう研修を受けるっす」


「では、さっそく案内してもらおうか」


「了解っす!」



 店の裏口から外に出る。


 白スレイブは扱わないと言っていたものの、グラス・ギースの八百人と同じく、胡散臭い建物が表からは見えない場所に建てられていた。


 そこは相変わらず薄暗く、微妙に危険な雰囲気を醸し出している。



(やはり酒場とは違う雰囲気だな。非合法な感じがすごくいい)



 久々に感じるスレイブの闇の香りが、ひどく自分に馴染むのを感じて、やる気も上昇だ。



「最初はこのあたりを見るっすか? 年齢別に分けてあるっす」



 案内されたのは、十一歳から十五歳前後の白スレイブがいるエリアだった。


 アンシュラオンが各部屋の女の子を検分。


 ざっと見回して、まず思ったことがこれ。



「数が少ないな」



 その場にいた白スレイブは、八人ほどしかいなかった。


 これだと選択肢がかなり限られる。



「しょうがないっすね。年齢的にギリギリっすから。普通はその前に買われていくっす」



 白スレイブとして成り立つのは、せいぜい十五歳くらいまでである。


 それ以上になると精神が発達してしまうので、契約をすり抜けることができなくなり、白として売ることはできなくなるのだ。



(改めて考えてみれば白スレイブは、従来のギアスの制限をすり抜けるからこそ価値があった。だが、新型ギアスを開発した今のオレからすれば、その恩恵はもはや存在しないんだな。とはいえ、良質な子供を集めていることは事実だし、好きに契約を決められることも利点だ。そこを重視すればいいか)



「育ちすぎた場合はどうなる? ラブスレイブ落ちか?」


「そういう場合もあるっすが、基本は普通のスレイブになるっすね。ただ、もともとの質がいいんで等級は高く設定するっすけど」


「輸入した以上、オレが買わないと路頭に迷う子もいるのか。少し同情してしまうな。だが、さすがに全員をそのまま買うのも難しい」



 グラス・ギース側からの条件は『半年間の優先購入権』なので、その間に買われなかった子は、またモヒカン一号の八百人に戻されることになる。


 そうなれば、どんな客に買われるかはわからない。


 少なくとも半年間という貴重な時間を浪費してしまうのだから、成長期の彼女たちにとっては死活問題だ。



「そんなに気に病む必要はないっす。チャンスがあるだけ恵まれているっす。本当なら飢え死にか、無法者に連れ去られているところっす。十分に幸せっす」


「荒野の現状を鑑みれば、たしかにそうかもしれんな。大人たちでさえ生活苦だしな」


「ところで、何か白を買う目的があるっすか? 用途がわかれば紹介しやすいっす」


「本格的にサナの親衛隊を作ろうと思ってな。将来に向けた人材というやつだ。能力や容姿も重要だが、年齢も近いほうがいい」



 ちらりと隣のサナを見る。


 彼女はじっと周囲の様子を観察しているものの、他の白スレイブを見ても特に反応はなかった。


 そこには感慨やら嫌悪といった感情も無く、かつて自分が白スレイブであったことにも興味がなさそうだ。



(サナにとっては何の価値もない場所か。良い意味で同属意識もないんだろうな)



 やはり自分が買われたことにマイナス感情を抱く者は多いだろう。それが子供ならば、なおさらだ。


 意思が力になる世界においては、これが成長の足枷になってしまうのだが、彼女の特異な性格のおかげで負い目がないことは非常にありがたい。


 サナがここまで急成長できたのは、素直にアンシュラオンの意見を全肯定して受け入れたからであり、それこそが彼女の最大の長所といえる。


 引き続きアンシュラオンは、少女たちを見て回る。



(うーん、見た目はもちろん可愛い。どの子もそれなりに可愛いが…サナには及ばないな。サナと比べるほうがかわいそうだけど…。さて、どうするか。どれも似たようなものなら能力を見て決めようか)



 サナが可愛すぎるせいでどの子も大差ないので、今度は能力で判断することにした。


 どうせ手に入れるのならば、それなりに使えるほうがいいに決まっている。



―――――――――――――――――――――――

名前 :アリア・ナ


レベル:1/30

HP :30/30

BP :0/0


統率:F   体力:F

知力:F   精神:F

魔力:F   攻撃:F

魅力:D   防御:F

工作:F   命中:F

隠密:F   回避:F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:評価外


異名:

種族:人間

属性:

異能:

―――――――――――――――――――――――



(アリア・ナ…一般人だな)



 さすがに可愛いので魅力はDだが、特に異名もない一般人の少女である。


 取り立てて何かに秀でているわけでもないが、かつてのサナもそうだったのだから、この点に関して文句を言うのもかわいそうだ。



―――――――――――――――――――――――

名前 :エステル・ラト


レベル:1/40

HP :40/40

BP :0/0


統率:F   体力:F

知力:F   精神:F

魔力:F   攻撃:F

魅力:C   防御:F

工作:F   命中:F

隠密:F   回避:F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:評価外


異名:

種族:人間

属性:

異能:信仰心

―――――――――――――――――――――――



(エステル・ラト、この子も一般人か。『信仰心』というスキルがあるが…これは何だ? まあ、信心深いとかそういうことかな?)



 『信仰心』は精神耐性の一種であり、特定の環境下で精神の値にプラス補正が付くスキルだ。


 ただし、信仰というものはある種の「精神汚染」でもあるので、何を信じているかによって新しい概念を許容しづらくなり、成長が遅くなる側面もある。


 一般的にこの世界の人間は『女神信仰』が根幹にあるため、特に表示がなければ女神に対する信仰心なのだろう。


 その場合は特にデメリットはない。


 単純に忍耐強くなるスキルとでも思っておけばよいが、それを加味したとしても彼女は一般人の範疇にとどまる。



―――――――――――――――――――――――

名前 :ジェニファー・フロックマイ


レベル:1/30

HP :30/30

BP :0/0


統率:F   体力:F

知力:F   精神:F

魔力:F   攻撃:F

魅力:D   防御:F

工作:F   命中:F

隠密:F   回避:F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:評価外


異名:心に傷を負った愛深き少女

種族:人間

属性:

異能:慈愛、傷心

―――――――――――――――――――――――



(心に傷を負った子もいるんだな。そりゃそうだ。これが普通なんだよ)



 さまざまな事情でここにやってくるので、彼女たちの中にはつらい記憶を持っている子もいる。


 幼少期に受けた心の傷は簡単には癒えず、下手をすれば人格形成に大きな悪影響を与えてしまうだろう。


 しかもモヒカンのような悪人面に捕獲されれば、嫌でも恐怖を覚えるに違いない。


 スレイブ商は規律があるというだけで、大きなカテゴリーでは人買いと大差ないのだ。



(ただ、この子は『慈愛』というスキルがあるから、もともとは優しい子だということかな。異名でも愛が深いって書いてあるし)



 『慈愛』は、自身が与えた愛情の分だけ一定期間魅力が上昇し、周囲から守られやすくなるという加護系のスキルだ。


 彼女が傷心に負けず他者に愛を与え続ければ、きっと素晴らしい人生が待っていることだろう。


 が、それ以外に特筆すべき点はない。そこは他の子供と同じだ。


 そして、中にはこんな少女もいた。



―――――――――――――――――――――――

名前 :フェンティーヌ


レベル:1/40

HP :40/40

BP :0/0


統率:F   体力:F

知力:F   精神:F

魔力:F   攻撃:F

魅力:C   防御:F

工作:F   命中:F

隠密:F   回避:F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:評価外


異名:男性不信の美しき愛玩少女

種族:人間

属性:

異能:男性魅了、男性不信、復讐心

―――――――――――――――――――――――



(ほぉ、この子は飛び抜けて美しいな。見た瞬間、質が違うことがわかる)



 アンシュラオンでも、その美しさに目を見張る。


 サナとはまた違う独特の美貌を持っており、将来は間違いなく美女になることがわかる容姿だ。


 人形のような美しさ、と言えばわかるだろうか。一瞬、作り物かと思うほどの美を持っている。


 それに加え、妙に惹きつけられる力を感じる。



(『男性魅了』か。オレの『姉魅了』に近いスキルのようだ。なるほど、こういう感じなんだな)



 スキルの力によって、意識せずとも男性を魅了してしまうらしい。


 感覚的には、クルルの羽根に刺された時に感じた「欲望の刺激」に近いもので、主に異性への欲情を掻き立てるもののようだ。(だから初めてグラス・ギースに行った時には女性たちに裸で迫られた)


 ただし、アンシュラオンに対しての効果はさほどではない。


 おそらくは両者の魅力や精神の数値が関係しているのだろう。



(だが、大人になって魅力が上がれば『魔女』になるかもな。それが幸せかどうかはわからない。すでに幸せではないようだしな)



 見た瞬間は、「なぜこんなに美しい少女が売れ残っているのか?」と疑問を抱いたものだ。


 しかし、その美しい外見に反して、心は怒りや憎しみに染まっていることが雰囲気から察せられる。



(幼いうちに能力が出ると不幸になるな。特に武力がなければ大人の男に襲われることもあるだろう。ここにいるのだから処女なのだろうが、女性を傷つけるのは性行為だけではない。痛々しいものだな)



 何があったのかはわからないが、今のアンシュラオンに彼女は魅力的に映らない。


 魅力がCにとどまっているのも、彼女が持っているマイナススキルが影響しているはずだ。せっかくの美貌が台無しである。



(オレだったら癒してあげられるか? いや、それこそ傲慢だな。目的に沿った利益ある女性でないとオレには背負えない。一人の女性の人生を背負うんだ。無責任なことはできない)



 その少女に価値があると思えるから付き合うことができる。デメリットにも耐えられる。


 しかし、ただの偽善からでは長続きはしない。


 そんな偽物の愛では少女の傷を抉るだけだ。それこそ最低である。



(この子は…平凡だな。この子もそうだ。こっちも一般人…か)



 それからさらに続けて見るが、誰もが一般人であった。目を引くような子はいない。


 さすがに焦ったのでモヒカンに訊いてみる。



「なぁ、能力測定ってのはどうやっているんだ? 力を持った子は特別扱いしているんだろう?」


「そうっすね。明らかにそうとわかれば違う場所に入れているっすが、白スレイブの中で特別な子は今のところ見当たらないっす」


「調べる装置はないのか? ほれ、ハローワークのハンター測定で血液検査があったじゃないか」


「それは使っているっす」


「使ってもいなかった、ということか」


「残念ながら、その通りっす」



(あのパッチで調べていたのは血液中の生体磁気だったか? だとすれば、わかるのは『現状での身体能力』にすぎない。子供なんだ。この歳で力を発揮しているほうが少ないだろうな)



 子供の頃から因子が覚醒している人間はそう多くはない。


 あのパッチテストだけで全項目を調べられるとは思えないので、隠れた才能を持つ者がいてもいいはずだ。


 ただ、こうして『情報公開』で確認しても、どれもぱっとしないので、あながち間違っているとは言えないのだが。



(隠れた能力を持つ者なんて簡単には見つからないよな。こないだ公募で集めた中でも、せいぜいミャンメイくらいだったし。確率としては数千人に一人か、一万人に一人ってところか)



 ミャンメイの場合はさらに特殊なので、数十万に一人、あるいは百万人に一人の可能性もある。


 武人の資質だけならば多少下がるが、それでも全体の1%前後といったところだろう。


 マキやユキネレベルともなれば、もっと確率は低くなる。男ならばまだしも、女性という制限が足を引っ張るのだ。



(うーん、能力も変わらないとなれば、もう本当に見た目かフィーリングで決めるしかないぞ。だが、サナの親衛隊がそれでいいのか?)



 そして、何気なく最後の少女を、ふと見た時である。



「なんだ、やっぱり駄目か。どうしようかな…」



 落胆して去ろうとするが、寸前で何かが引っかかった。


 脳裏に少しだけ違和感が残ったので、再び最後の少女を見る。



(ん? ちょっと待てよ…ん? 気のせいか? いやいや、ちゃんと見よう。見るだけならタダだしな)



―――――――――――――――――――――――

名前 :セノア・ロゼ


レベル:1/50

HP :50/50

BP :10/10


統率:F   体力:F

知力:F   精神:F

魔力:F   攻撃:F

魅力:C   防御:F

工作:F   命中:F

隠密:F   回避:F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/3


☆総合:評価外


異名:求められるままに生きる少女

種族:人間

属性:水

異能:念話、恭順姿勢

―――――――――――――――――――――――



(おおっ!! この子は術士の覚醒限界が『3』だぞ! 一瞬、0に見えちゃったけど『3』だよな? あっぶねー! 見落とすところだったじゃないか)



 人間の思い込みとは怖いもので「どうせ0だろう?」とか思っていると、3とか6、8、9などが0に見えてしまうことがある。


 しかも七人続けて0が続いていたので、それも罠だった。


 今度は何度見ても3だ。もはや間違いない。



(覚醒限界だけがすべてじゃないが、仮に3まで覚醒したとすれば一流の術士になれるかもしれないレベルだ。間違いなく才能があるな)



 戦士や剣士もそうだが、3もあれば一般的な評価で一流と呼ばれる領域に入ることができる。


 それ以上となると達人や武芸者の領域に入ってしまうので、3でも十分高い数値といえる。


 アンシュラオンとて普段使う技の多くは、因子レベルが3以下のものばかりだ。BP消費も少なく使い勝手がよく、発動時間も短いので便利なのだ。



(現状の能力が低くても魔石を使えば最低限の強化はできる。才能があるのならば、この子にしてみるか)



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