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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「白い魔人と黒き少女の出会い」編
34/615

34話 「変態と魔獣の狩場へ出立」


 アンシュラオンはラブヘイアと一緒に荒野に移動。



「このへんにはどんな魔獣がいるんだ?」


「第六級の駆除級魔獣では、ヘビーポンプとワイルダーインパスが多く、第五級の抹殺級魔獣ではエジルジャガー、グランタートルでしょうか」



 ヘビーポンプは、身体に巻き付いたポンプのようなものから火炎を放射する蛇型魔獣。


 毒の代わりに火を吹くと思えばわかりやすいだろう。油や燃料などを好むので露店や工場地帯を襲ったりする。


 ワイルダーインパスはバッファローに似ているが、角が大きく攻撃的で人間をよく襲う。三十頭以上の群れになると抹殺級魔獣にランクアップする。


 エジルジャガーは、ワイルダーインパスを食料にする肉食獣だが、これまた人間を襲う。知能が高いので、行商人の馬車などを襲い食料を奪っていくこともある。


 グランタートルは亀型の魔獣だが、やたらでかい。進路をまっすぐに進むので、外壁や家などがあっても破壊して止まらない。


 グラビガーロン〈たゆたいし超重力の虚龍〉の遠い親戚だと思えばいいだろうか。戦闘力は亀とゴジラくらい違うが。



「魔獣討伐はどういう仕組みなんだ?」


「魔獣討伐申請の場合、種類と駆除数に応じてハローワークから一定額の報奨金が支払われます」


「素材は別扱いなのか?」


「はい。その報奨金とは別に素材はハンターのものです。報奨金と素材を売った合計額が報酬となるわけです」


「なるほどな。素材だけだと倒し方によっては金にならないこともあるし、素材を傷つけるのを気にして負けてしまうかもしれない。そういったものに対する保険か。報酬額の半分は税金として納めるんだっけ?」


「そうなります。お金が必要なのですか?」


「魔獣を狩る理由なんて、それくらいしかないだろう?」


「では、私を上手く使えば納税額は低く済むでしょう。下級市民権を持っておりますから三割で済みます」


「それは便利だな。ぜひ利用させてもらおう。で、各魔獣の値段はいくらだ?」


「一般的に素材込みで、エジルジャガーで十万、グランタートルなら二十万くらいです。素材の質が悪いとその七割弱になりますね」


「たかが抹殺級でも、そこそこにはなるか」


「ですが、抹殺級自体がこの近辺ではそこまで見かける魔獣ではありません。その下となる駆除級魔獣のワイルダーインパスは安いですし、ヘビーポンプはそれ自体が産業廃棄物になるので、あまり値は…」


「どれもクズ値ってことか。一日でどれくらい狩ったことがある?」


「最高でワイルダーインパスを二十頭、それを追っていたエジルジャガーを六頭くらいでしょうか」


「全然足りないな」


「暮らすには十分なのですが…」



 仮にこれが八十万になり、半額税金になっても四十万の収益だ。個人が一日で稼ぐ金とすればかなりの額だろう。


 毎日こんなおいしい獲物と遭遇するわけではないが、二ヶ月に一度大きな当たりがあれば、毎日ぐーたらしても十分やっていける。


 が、アンシュラオンが求めるのは、そんな小物ではない。



「明日の昼までに最低六百万以上稼ぐぞ。それは理解しておけ」


「ろ、六百! そんな大金をどうするのですか?」


「大金? あの子の値段だとすれば、さして大金とも思えないな。安い。安すぎる。お前は自分が愛する女神がその値段で売りに出されていたら、どう思う?」


「安いですね!! 借金してでも買います!」


「だろう? 安いんだよ。人の命なんてもんはな。だが、オレがそれを高めてやる。だから六百万だ。それでもはした金だがな」



 あの少女にどれだけの価値があるかと問われると、アンシュラオンも答えられない。


 だが決めたのだ。買うと決めた。自分のものにすると決めた。


 ならば、それがすべてだ。



「第四級の根絶級魔獣は、いくらだ?」


「一匹あたり、百万以上はしますね」


「お前はブルーハンターだったな。狩ったことがあるのだろう? いくらだった」


「私の場合は百二十万くらいでした」


「第三級の討滅級魔獣は?」


「そこまでいくと最低でも一千万は超えるのでは? このあたりでは滅多に遭遇しませんが…」


「一千万か。ならば第一目標は討滅級魔獣。続いて根絶級魔獣とする。雑魚は相手にするな。時間の無駄だ」


「し、しかし、高いということはそれだけ強いということです」


「何をびびっている。お前だって第四級の根絶級魔獣を倒したはずだ。ブルーハンターには根絶級を倒さないとなれないのだろう?」


「倒しましたが、それでも相当苦戦をしました。あの時、どれほどの苦痛を味わったか…。おかげでまた髪の毛パワーを補充しなければならなくなり…」


「お前の変態的な性癖のことなど知るか。最初に言っておくが、オレはホワイトハンターだ。戦闘面でお前を必要としていない。それはオレに殴られた時に理解したはずだ。あれでも相当手加減したしな」


「はい。身にしみております」


「お前はあくまで狩りに行くための口実だ。ここで待っていてもいいぞ。髪の毛より命のほうが大事だろう」


「いえ!! この命に代えてもお供いたします!! ぜひぜひ、お連れください!」


「…待っていてくれても…いいんだぞ。本当に」


「ご心配には及びません! この剣にかけて誓います!!」


「…そう…か。残念だ」



 心の底から置いていきたいのだが、この男がいないと割引サービスを受けられない可能性がある。


 本当に嫌々だが連れていくことにした。



「根絶級以上はどこにいる? やはり北の大森林か?」


「そうですが、距離がありますので近場のほうがよろしいでしょう。アンシュラオン殿の願いは、明日の夕方までに戻ること。ならばあと二十七時間と少々ですから、往復時間を考えてその範囲内ということになります」


「当てがありそうだな」


「ここから西に五百キロほど行くと【魔獣の狩場】という場所があります。そこならば根絶級魔獣もいるでしょう」


「西…地図ではかすかに森のようなものが載っているが…」


「大きな山林地帯ですが、大部分は草原ですね。そこに草食系の魔獣が出るのですが、それを目当てに肉食魔獣が集まります。そして、それを目当てに…」


「より上位の魔獣が出るか?」


「その通りです。あそこは手付かずの魔獣の楽園と言ってもよいでしょう。調査団によって第三級の討滅級魔獣の存在も確認されております」


「食物連鎖の過程で大物が出るようになった、ということか。ならば、なぜ積極的に狩りに行かない? 他のハンターも知っているのだろう?」


「地図の通り、あそこは『警戒区域』にかかっています。この警戒区域というのはあくまで目安でして、赤いラインを超えて内側に強い魔獣が出ることもあるので、普通はかなり距離を取った場所で狩りをします。討滅級魔獣もあくまで確認されているというだけで、倒しに行く者などそうはいませんし…」


「ハローワークのハンターで、一番強いのは誰だ? そいつなら討滅級くらい倒せるだろう?」


「……私です」



 一瞬、間を置いてからラブヘイアが申し訳なさそうに答えた。


 その答えにアンシュラオンの目が点になる。



「は? 冗談はよせ。お前はブルーだろう。ブラックくらいいるはずだ」



 第三階級の黒爪級狩人ブラックハンターは、同じく第三級の討滅級魔獣を狩れる者に与えられる称号だ。


 つまり、このブラックハンターがいないということは、討滅級魔獣クラスの敵が出たら対応できないことを意味する。



「それがその…事実なのです。都市周辺で魔獣の駆除をしているのは、それを目当てに大きな魔獣が近寄らないようにしているのです」


「治安の維持というより、さらに大きな脅威を招かないためか」


「そうなります。街の周辺に根絶級魔獣が出ただけでも大騒ぎですからね」


「なんてこった…あまりに弱すぎる。この都市の防衛力は大丈夫なんだろうな? 心配になってきたそ」


「あくまでハンターの中での話です。都市内部には私以上の武人もおりますよ」


「そいつらは魔獣は狩らないのか?」


「基本的に魔獣狩りはハンターの領分ですからね。役割分担がしっかりしているので、商売として狩る者はハンター以外にはいません。本格的に都市を守る場合には、そういった戦力も出てくるはずです」


「それならば少しは安心か。門番のお姉さんも強そうだしな」


「アンシュラオン殿が来たので街もハローワークも助かっていると思います。第二階級のホワイトハンターですからね。偉大なことです」


「たかだかホワイト一人が珍しいとはな。受付のお姉さんが騒ぐわけだ。まあ、それはいい。さっさと魔獣の狩場とやらに行くぞ。案内してくれ」


「あの、やはり近場で済ますということも…」


「どっちなんだ、お前は。時間がないんだから、当たりが大きいほうを選ぶに決まっているだろう」



 アンシュラオンが大きな荷台を持ち上げる。


 馬の付いていない荷車といえばわかりやすいだろうか。ただし、その大きさはやたら大きく、幅十メートル、長さ三十メートルはある。



「ところで、これは…?」


「倒した魔獣を載せる荷台だ。素材を持ち帰るんだろう?」


「は、はい。そうですが…大きすぎませんか?」


「討滅級魔獣はどれも大きいぞ。小さいものでも八メートル以上はざらだからな。剥ぎ取るからそのまま載せるわけじゃないだろうが、それでも何十匹にもなればひと山にはなるだろう。本当はもっと大きいのがいいんだが、倉庫のおっさんがこれが一番大きいというから我慢している。最悪は引きずってくればいいし、足りなかったらその場の材料で新しい荷台を作ってもいいだろう」



(本気で狩るおつもりだ…)



 ラブヘイアはアンシュラオンが本気であることを知った。


 しかも一匹ではない。確実に数十匹を想定している。



「よし、行くぞ」


「は、はい。生きて帰れるようにがんばります…」


「お前なんか死んでもいいけど、気が向いたら守ってやる。だから安心しろ」


「いえあの…あまり安心できないのですが…。気が向かなかったら死ぬのでしょうか?」


「ぐずぐずするな。走るぞ」



 そんなラブヘイアの不安をよそに魔獣狩りに出発である。



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