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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
『翠清山の激闘』編
277/618

277話 「二人の評価と鍛練の開始」


(さて、弟子にしたはいいが、どうやって鍛えていくかな。まずは二人のタイプを再確認しようか)



 二人を『情報公開』で調べる。



―――――――――――――――――――――――

名前 :サリータ・ケサセリア


レベル:32/45

HP :520/520

BP :150/150


統率:E   体力: D

知力:E   精神: E

魔力:E   攻撃: E

魅力:D   防御: D

工作:E   命中: E

隠密:E   回避: F


【覚醒値】

戦士:0/1 剣士:0/1 術士:0/0


☆総合:第十階級 下扇級 戦士


異名:大盾使いの女傭兵

種族:人間

属性:

異能:熱血、護衛、低級盾技術、物理耐性、体育会系

―――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――

名前 :ベ・ヴェル


レベル:30/50

HP :530/530

BP :180/180


統率:E   体力: D

知力:F   精神: E

魔力:E   攻撃: D

魅力:D   防御: F

工作:E   命中: E

隠密:E   回避: E


【覚醒値】

戦士:0/1 剣士:0/1 術士:0/0


☆総合:第十階級 下扇級 戦士


異名:大剣使いの女傭兵

種族:人間

属性:

異能:根性、単体剣術強化、女戦士の誇り、短気

―――――――――――――――――――――――



(最初に見た時とそこまで変化はないかな。二人とも能力自体に大きな差はなく、サリータは防御タイプで、ベ・ヴェルは攻撃タイプといった程度の違いしかない。上手く似た者同士が集まったもんだよ)



 サリータのスキルを見てみると、ダメージを受けると能力に補正がかかる『熱血』や『物理耐性』があるので耐久力が高く、叩かれれば叩かれるほど強くなる性質を持っていることがわかる。


 一方で『体育会系』スキルは、格上にはマイナス補正がかかり、格下に対してはプラス補正がかかる特殊なスキルだ。


 男傭兵とのいざこざのように相手が雑魚の場合は圧倒できるが、上記のスキルと若干嚙み合っていないので、強い相手に対して上手く力が発揮できないことがあるのが弱点だ。


 ベ・ヴェルに関しては、『単体剣術強化』という非常に優秀なスキルがあるので、一撃を重視する大剣とは相性がよい。


 『根性』もマキが持っているものと同じで、気絶等の状態異常にかかりにくくなる効果があるため、肉体的にも強いといえるだろう。


 ただし、我が強い面があり、『短気』といったマイナススキルも相まって、状況次第では一気に劣勢に陥る可能性がある。



(両方ともレベルが高いことから、相当がんばっていたことがわかる。がしかし、サナと比べると【才能がない】のが痛いな)



 ここでサナの最新ステータスを公開しておこう。



―――――――――――――――――――――――

名前 :サナ・パム


レベル:35/99

HP :990/990

BP :400/400


統率:D   体力:D

知力:D   精神:D

魔力:D   攻撃:D

魅力:A   防御:E

工作:D   命中:D

隠密:D   回避:D


【覚醒値】

戦士:2/5 剣士:2/5 術士:1/5


☆総合:第七階級 達験たつげん級 剣士


異名:白き魔人に愛された黒き少女

種族:人間

属性:雷、闇

異能:トリオブスキュリティ〈深遠なる無限の闇〉、エル・ジュエラー、観察眼、天才、早熟、即死無効、黒き魔人の姫

―――――――――――――――――――――――



(というか、サナちゃんも強くなったなぁ。剣士だからマキさんと比べるとHPは少ないけど、もう達人レベルにまで到達しているじゃないか。でも、これは魔石使いとしての評価が入っているっぽいな)



 前回のサナのデータは、まだハピ・クジュネに至る道中でのものだったので、これまでの鍛練や魔石の覚醒および、今回の鬼熊撃破によってレベルがかなり上がり、ステータスにも向上が見られる。


 ステータスは全体的に万遍なく上がっているので、攻防にそつなくこなすバランス型剣士なのは間違いない。


 ただし、魔石の力を九割以上引き出せる『エル・ジュエラー』の資質によって、魔石獣である青雷狼のパワーが加わると、先日のように強力な攻撃が可能になる。それを含めて達人級といった評価だろう。


 そして、因子レベルも戦士と剣士と術士が、それぞれ1上昇。


 戦士と剣士における術士因子は属性攻撃の補正に関わるため、サナに『雷』属性が増えたことも要因だろう。より雷との親和性が増した、という意味だ。


 これは水属性のアンシュラオンと相性が極めて良いことを示してもいる。


 また、因子の覚醒限界も3から5に上昇し、もはや可能性の塊だ。全部覚醒すれば第五階級以上は間違いないだろう。


 最後に不思議なスキルが増えていることにも着目。



(『黒き魔人の姫』…か。やっぱりあの黒くなった現象が関係しているのか? どう考えてもオレの力を吸い取った結果だよな。いまだに原理がよくわからないが、サナにとって力になるのならば問題はない。ただ、危ない力だから暴走しないように気をつけないとな)



 青雷狼が『黒雷狼』に進化した件と、アンシュラオンの力をもっとも強く受けていることで、ステータス上にも『魔人』の文字が見られるようになった。


 この魔人が何を意味するのかはともかく、まずは恒例の一言。



(サナちゃんが、すごいことになってるぅううううううう!)



 サナは着実に急成長を遂げており、アンシュラオンが望む通りになっていた。まさに理想の女性である。


 そして、これらの数値を見てもわかるが、明らかにサリータやベ・ヴェルよりも上にいた。


 サナと比べると二人は、ステータスの上昇率もたいしたことはなく、努力しているわりに『こんなもの』でしかない。


 限界値も低く、これ以上の成長の見込みがないのだ。仮にこのままレベルをカンストさせても、せいぜい二流傭兵止まりだろう。


 これが散々言われていた彼女たちの『限界』なのだ。



(それに、ステータスだけでは測れない能力もあるんだ。一見すればゲイルとさほど大差がないように見えて、両者の間には致命的な差がある。当然ながら【武人】であるかどうかの違いだ。これは極めて大きな差といえる)



 ゲイルもレベルはあまり変わらず、特筆すべきところがないように見えるだろう。


 がしかし、彼はすでに戦士因子が目覚めており、筋肉や骨の質が常人とは異なっている。


 因子が覚醒するということは、身体が作り変えられることを意味するため、もはや一般人とは別の生き物なのだ。


 長年傭兵をやっていることから戦気術のレベルも高く、質も良い。数値には出ない戦闘技術にも優れており、献身的で我慢強い優秀な傭兵といえる。



(今までの経験上、情報公開で出る数値は『戦気を使用する前』のものであることは間違いない。ゲイルくらいの熟練者だと、あの能力に二倍から三倍の補正がかかるから、その段階でサリータたちは完全に置いていかれている。足手まといになるのも仕方がないんだ)



 アンシュラオンが、あっさりと猿や熊を排除できるのも、ただでさえ高い攻撃力が質の高い戦気術によって五倍近くにまで跳ね上がるからだ。


 さらに付け加えれば、アンシュラオンたちは『男』だ。


 同じ武人であっても、やはり男のほうが強い身体をしていて筋肉量も多い。一方の女性はしなやかで繊細な動きを得意とする。


 マキにしても単純なぶつかり合いでは、シダラのような屈強な男には対抗できない。動きを交えたバネで勝負して、ようやく互角だろう。


 見た目や数値以上に、彼女たちはハンデを背負っているのである。(姉は例外。むしろハンデをください)


 ちなみに魔獣は魔獣で特殊なスキルや、人間以上に頑強な骨や筋組織があるので、こちらも数値以上に強い場合が多い。



(しかし、二人にも長所はある。小百合さんやホロロさんと同じ一般人枠でも、彼女たちは傭兵として戦ってきた分だけ鍛えられている。戦いの中で暮らしてきたことで荒事には慣れているし、上手く武人として覚醒してあげれば、単純に強い兵として扱うことができるはずだ)



 はっきり言えば、サナも小百合もホロロも、あるいはユキネさえも、最初からゴリゴリの戦闘タイプではない。


 アンシュラオンの方針や、自衛のために仕方なく戦うしかなかっただけで、もともとは街で平和に暮らす者たちなのだ。


 そう考えると傭兵としてやってきた二人は、衛士であったマキに近い貴重な人材といえる。これは成長の方向性という意味で、後々大きな影響を与えるはずだ。



(最優先課題は、まずは武人としての覚醒。これだな。そのためにやるべきことは一つだ)



「では、今から二人を弟子として扱う」


「はい!」


「あいよ!」


「まずは走り込みをしてもらおうか」


「走り込みぃ? そんなんでいいのかい?」


「君たちも傭兵だ。それなりに体力には自信があるんだろうが、オレの修行をなめてもらっては困る。特に今は作戦中だから、ちんたら鍛えている暇がない。大ボスと戦う前までには、最低でも戦気は修得するつもりでいてくれ」


「それは望むところです!」


「もちろんさね。遠慮なくやってくれよ」


「いい返事だ。ならば、いくぞ」



 アンシュラオンが二人に触れながら『賦気』を行う。


 これはサナや小百合たちの鍛練にも使っているものだが、彼女たちの場合は少しずつ時間をかけて慣らしたがゆえに受け入れられていたのであって、まだ出会って日が浅い二人には―――ドスンッ!



「うぁっ!」


「ぐっ…ぬうう!」



 いまだ常人の肉体に、アンシュラオンの異質な生体磁気が浸透していく。


 身体中が痺れたように痙攣し、一時的に感覚がなくなるほどの圧力がかけられる。まるで拘束具でガチガチに絞めつけられているようだった。



「こ、これは…何が……」


「呼吸も厳しい…ね。どうすりゃ…いいんだい」


「君たちにはオレの生体磁気を送り込んだ。それによって肉体を強制的に活性化させる。だが当然、これは穴があいていない場所をドリルで削るような作業だ。それだけ痛みや苦痛を伴うことを意味する。まあ、筋トレと同じだな。一度壊して再構築する過程で強くさせるんだ」


「筋トレって…レベルじゃないけどね……」


「ああ、これは…全身の神経に針を刺されているみたいだ…」


「サナ、二人の鍛練に付き合ってくれ。そうだな、ここから第一拠点まで二十五キロくらいだから、五十往復くらいでいいか」


「…こくり」


「なっ…この状態で…ですか!?」


「走るだけなら簡単だろう? じゃあ、がんばってね。あと、サナは戦気術の鍛練も欠かさないように。剣気もいつでも出せるようにするんだよ」



 そう言い残すと、アンシュラオンはさっさとコテージの中に入ってしまった。



「チビちゃんたちは…いつもこんなことをやっているのかい?」


「…こくり」


「そりゃ強く…なるわけさね」


「いくぞ、ベ・ヴェル。我々は強くならねば…ならないのだ!」


「こりゃ、一往復できるかも…怪しいねぇ」



 二人がよろよろと動き出すが、身体が上手く動かないためにふらつき、杖をついた老人が歩いているようであった。


 それをサナが先導しながら、ダガーを取り出して剣気の修練を始める。


 サナは『怒り』という意思を出せるようにはなったものの、激情だけでは戦気を完全に制御できない。あくまで放出ができるようになっただけだ。


 次の修練は、それを集中して維持すること。


 剣気は戦気が圧縮されて生み出されるものなので、彼女がより強くなるためには必要な鍛練である。最低でも三十分は維持できなければ戦いでは使えない。


 その後三人は、夜になるまで鍛練を続けた。


 サリータとベ・ヴェルに関しては、軽いジョギングにすら及ばなかったために、結局二往復しかできなかった。


 戻ってきた二人は、バタンと倒れてそのまま動かなくなり、ご飯を食べる余裕もなく意識を失ってしまう。


 それだけ馴染んでいない賦気は強烈なのだ。下手をすれば死亡するリスクもあるため、アンシュラオンでなければできない芸当であった。



「まだまだ話にならないな。あとは戦いながら強くしていくか。まあ、アイラよりは見込みがあるのは救いだよ。あいつは走るのも嫌がるしね」



 アンシュラオンは意識を失っている二人の服を脱がし、汚れた身体を命気で綺麗に洗ってからコテージの布団の上に寝かせる。


 弱い者が強くなるためには、サナが辿ったように厳しい道を歩む必要がある。これくらいはまだまだ序の口だ。


 が、それでも二人は幸せだ。


 覇王の弟子の弟子になる幸運など、宝くじに当たるより何倍もレアな体験なのだ。


 いつか必ず努力は実るだろう。




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