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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
『翠清山の激闘』編
249/619

249話 「出撃アンシュラオン隊 その3『赤鳳隊の戦い』」


「な、なんだ…何が起こった!」


「三十人にも満たない隊で、あれだけの数の魔獣を倒したのか!? ありえねぇ!」


「ザ・ハン警備商隊と同じくらいの戦果じゃねえか!?」


「アンシュラオンの部隊だぜ。あれくらいはやって当然さ」


「でもよ、三分の一は女なんだろう? 信じられないな」


「子供もいるみたいだぜ。アンシュラオンの妹だったか? やっぱり血筋かね」



 下がって治療や補給を受けていた傭兵隊が、白の27番隊が持つ圧倒的な破壊力に驚愕。


 何よりも戦闘では不利だと思われていた女性が多いことが注目の的だ。


 それは女傭兵であるサリータとベ・ヴェルにとっても衝撃的だった。



「ちっ、あたしらが必死になって戦っていたのが馬鹿らしくなるねぇ。全否定された気分さ」


「女でもあそこまで戦えるのか…」


「こっちとは武装が違うってことを忘れるんじゃないよ。あいつらはアズ・アクスの特注武器を持っている。あのクルマと機関砲だって南から流れてきた西側の兵器だろうさ。あたしらだって、あれくらい立派な武器があればねぇ…」


「…そうだな」



(ベ・ヴェルが言うことはもっともだ。良い武具があれば誰でも強くなれる。だが、それだけなのだろうか? そもそも彼女たちは何のために戦っているのだ? 金のため? 名誉のため? それとも…彼のためか? 遊びでここまで戦えるとは思えない。命を張るだけの何かがあるはずなのだ)



「また援軍が来たぞーーーー!」



 そこに新たに傭兵隊二千人がやってくる。


 先頭を歩くのはソブカ率いる赤鳳隊だ。



「さすがはアンシュラオンさん。随分と暴れているようですねぇ」


「相変わらず滅茶苦茶な男です」


「それがよいのですよ。あれくらいやらないと相手を怯ませることはできませんからね」



 ファレアスティがあまりの派手な立ち回りに呆れるが、それこそアンシュラオン隊の持ち味だ。



「では、傭兵隊の皆さんは、ここで壁を作って待機していてください。我々が先に出ます」


「その数でか? このまま全員で攻めたほうがいいんじゃねえのか?」


「それでは今までと同じ消耗戦になります。被害を少しでも防ぐために私とアンシュラオンさんの隊が先行して掻き回しますので、こちらから合図があったら突撃してください。有利な状況を作ってから一気に進軍します」


「わざわざ危険な任務を引き受けるか。だが、ハンターのアンシュラオンはともかく、マフィアのあんたがどうしてこんな無茶なことに付き合うんだ? 専門外だろう?」


「血が滾るのです」


「…え?」


「あの人を見ていると、どうしても熱くなる。黙って見ていることなどできません。その気持ちはあなたにもわかるはずですよ」


「たしかにな。アンシュラオンは人間的にはクソだが、やることが破天荒で見ていて気持ちいい。俺も身体が疼くぜ」


「私たちは今この瞬間においては、同じ目的を持った仲間です。そこにマフィアも傭兵も関係ありません。お互いに役割を果たしましょう。赤鳳隊、準備はできていますね?」


「応!!」



 ソブカも三台の装甲車を用意しており、同じようにいくつもの重火器を積んでいた。


 むしろこれを見たアンシュラオンが、そのアイデアをパクったともいえるので、性能は似たようなものだ。



「赤鳳隊! 出撃!!」



 ソブカの号令で二十八人が赤い外套を脱ぎ捨て、戦場に飛び込む。


 装甲車三台を軸に三つの隊を生み出して前進。


 ソブカやファレアスティたち、中心メンバーはその中央の部隊を担当する。


 通り道の敵はアンシュラオン隊が倒していたので、すぐに合流を果たすことができた。



「ソブカか」


「また魔獣が集まってきたようですね。赤鳳隊もお手伝いしますよ」



 あれだけ倒したにもかかわらず、前方の森からは多数の魔獣の気配が漂ってきていた。


 小猿の『チユチュ〈鼠集猿〉』のように短期間で大量に増える魔獣が多いせいでもある。


 では、どうすればいいのか。その答えは簡単だ。



「ここを制圧するには、どっちが強いか魔獣たちに教えてやる必要がある。弱い者は強い者に従う。それが自然界のルールだからだ。オレたちには絶対に敵わないと教えてやるのさ」



 徹底的に叩き、相手の屍の上に立つ。相手が屈するまで何度でもそれをやり続ける。


 言葉が通じる人間同士でも争うのだ。魔獣相手ならば、なおさらそうするしかない。



「これから突撃をかけて穴をあける。お前にはオレの隊の後ろを任せる。足を引っ張るなよ」


「努力します」


「援護に来たソブカ様になんたる言い草だ。お前の隊だけで対応できる数ではないだろう! 単独で突っ走るな!」


「ここから先は地獄だよ。その覚悟があるなら、ついてくるといい」



 ファレアスティの抗議もさらっと受け流し、アンシュラオン隊はガンガン前に出る。


 こと戦闘に関して、この男は非常にクールだ。これから起こることもすべて理解しての発言だった。



「言わせておけば!」


「それだけの力があるのです。彼に認めてもらいたければ、我々も実力を見せるしかありません。では、訓練通りにいきますよ」


「はっ! 我ら赤鳳隊の力を見せてやります!」



 アンシュラオン隊が突き進めば進むほど、魔獣たちの群れの中に入り込むことになって取り囲まれてしまう。


 それをカバーするようにソブカの赤鳳隊が、少し距離を取って追随し、アンシュラオン隊の背後に回り込もうとした魔獣を攻撃する。


 まず最初にアタックを仕掛けるのは、戦士の鷹魁おうかい


 その巨体を生かしたぶちかましで、魔獣を弾き飛ばす。



「どけどけどけーい! 赤鳳隊、トップバッターの鷹魁さんのお通りだぜ! ここで活躍しなきゃ、ただの木偶の坊ってな!」



 鷹魁はメッターボルン並みの怪力でもあるため、バッドブラッドを使って攻撃するだけでも一撃で相手を倒せる力はある。


 がしかし、彼の最大の役割は『敵を背負う』ことだ。


 魔獣たちを大剣で牽制しつつ、数で迫り来る個体には身体でぶつかって、隊中央への進入を防ぐ壁となる。


 それができるのも彼の身体が半分機械であり、壊れても修復しやすい点が挙げられるだろう。



(鷹魁は単純に身体が強い。あの鎧の重さは普通のフルプレートの五倍くらいあるからな。それくらい重量があれば討滅級の魔獣にも当たり負けすることはないだろう。戦気もけっこう弾力があって強い。というか、半分機械でも戦気を出せるんだなぁ)



 アンシュラオンも装甲車に乗りながら、赤鳳隊の戦いを見物。


 そして、鷹魁が魔獣の行動を阻害した瞬間、背後から飛び出るのは赤い髪をした目つきが鋭い少年、準装の鎖帷子を着ているクラマだ。


 彼は素早い動きで接近すると、サナの脇差に似た短めの刀を取り出し、至近距離から高速の斬撃を繰り出す。


 一撃、二撃、三撃、四撃、五撃―――六撃!


 小百合は常人の一太刀の間に二太刀繰り出していたが、クラマは凄まじい速度で一瞬で六回も斬った。


 超高速の剣撃。


 それこそがクラマの長所である。


 だがその距離は、魔獣の体毛にさえ触れそうなほどの超接近戦。


 魔獣が暴れて爪や脚が振り回されるが、そのすべてを見切ると同時に、カウンターで剣撃を叩き込んでいる。


 一撃一撃は軽くて浅いが、それを圧倒的手数で上回り、ズタズタに引き裂かれた魔獣が地に倒れて絶命。



「へへん! どうだ!! 見たか、ソブカ!」


「それくらいで調子に乗ってはいけませんよ。まだまだ敵はいます」


「そうだぞ、小僧! 俺がいなけりゃよ、簡単に潰されちまうんだからな!」


「それがあんたの役割だろ。敵を倒すのは俺の仕事だ! 赤鳳隊、いくぞおおおおおお!」


「組長、いいのか? 最初からペースを上げすぎだ」


「ふっ、彼もすっかりアンシュラオンさんの影響を受けていますね。せっかくです。このまま押していきますよ!」


「なんだよ。一番影響を受けているのは組長じゃねえか」



 赤鳳隊の隊列は、前衛を鷹魁とクラマの二人が担当する。


 マキとユキネとの違いは、今述べたように鷹魁が身体を張ったポストプレーで敵を妨害しつつスペースを作り、シャドーストライカーのクラマが飛び出して仕留める動きをすることだ。


 こちらの場合は、実際にゴールを決めるのはクラマであり、その負担を減らすために身体を張って鷹魁がカバーしているわけだ。


 それは単純に、クラマの才能が飛び抜けているからである。



(クラマは単に速いだけじゃない。何よりも度胸があって傷つくことを怖れない。ガキ特有の無鉄砲さともいえるが、あの距離で戦えるのならば手足の短さも武器になる。オレと同じ距離だからな)



 同じく背丈が小さなアンシュラオンも懐に飛び込んでからが本領だ。


 そのせいかクラマの戦い方は、どことなく自分を彷彿とさせる。が、彼は完全なる攻撃型スピードタイプであることが最大の違いだ。


 超至近距離で防御を完全に捨てて、ひたすら剣撃だけを叩き込む。直撃を受ければ死ぬかもしれないのだから、やはり度胸がなければ務まらない。



「キタキタキタぁーーーー!! クスリだぁああああ! ぎゃはははははははっ!! 熱くなってきたぜぇええええ! なぁ、殺していいんだよな!? 好きなだけ殺してもよ!」


「ええ、私があなたに殺人許可証を与えます。その力で私の敵を屠るのです」



 続いて突っ込むのは、クスリを決めて本調子に戻った鬼鵬喘きほうぜんだ。


 ドス黒い戦気を放出しながら持つ得物は、大型の戦闘用チェンソーである。



「オラオラオラぁああ! ぶったギルウウウウウウ!!」



 魔獣に叩きつけた刃が高速回転。


 ただでさえ木々を切るために作られた強い道具であるうえ、そこに剣気が加われば、さらに危ない武器に変化。


 チェンソーの高速回転に合わせて剣気が周囲に放出されるため、硬い皮膚すら強引に破り、ズタズタに引き裂く。


 手当たり次第に暴れ回り、敵陣を突っ走る動きは、キレキレのサイドアタッカーといった様相である。


 彼が切り裂いたスペースによって分断された魔獣を、装甲車の機関銃が狙い撃ち。


 こちらの機関銃はアンシュラオン隊の機関砲より威力が低いので、倒しきれない場合も多いが命中率が高く、手傷を与えることで動きを鈍らせて勢いを削ることを目的にしている。



(やる気になった鬼鵬喘の突破力はすごいな。マキさん並みかもしれない。ただ、準装だから防御力は鷹魁ほど高くないし、あまり単独で突破させすぎると危険だ。かといって、それをやめてしまうと持ち味がなくなる。ここは悩みどころだ。まあ、元殺人鬼らしいから自分の命なんてどうだっていいんだろうけどね。好きにやらせるのが一番か)



 一度ハイになった鬼鵬喘は、まさに鉄砲玉になって突っ込んでいく。その分だけ被弾も増えるので、使いどころを誤るとすぐに落ちるだろう。


 だが、その弱点はソブカもわかっているので、彼の周囲には一般隊員が必ずサポートに入っているようだ。



「さぁ、みんなで遊ぼうねぇ。今日は戦争ごっこだってさ」



 鬼鵬喘の逆サイドにいるのは、ガンセイ。


 彼が大小さまざまな女の子の人形をいくつも放出すると、人形自らが魔獣に近寄っていって銃撃を開始。


 よくよく見ると、人形は武装していて銃やバズーカを持っている。


 こちらは本物の銃火器なので威力はそのままだが、人形が相手の足元や腹の下に入り込んで、急所に撃ち込むことで効果を倍増させていた。


 ただし、彼の能力はこれだけではない。


 燃え盛る火の人形を生み出すと、次々と魔獣に飛びかかって燃やしていく。その中には大納魔射津を持っているものもいて、魔獣に抱きついて自爆。


 術具を使った派手かつ高威力の攻撃によって魔獣を寄せつけない。



(ガンセイは『遠隔操作』ができる武人だ。しかもあの火の人形は『闘人操術』で生み出している。オレと比べるとだいぶ初歩の技だが、火気を人形に変えて操るやつは下界で初めて見た。最大操作数は二十ってところか。十分実用的だな)


 

 アンシュラオンのモグマウスが最大五百匹同時操作可能なので、それと比べると児戯ではあるものの、世間一般では闘人操術を扱えるだけでも達人である。


 さらにガンセイは、これらとは別の人形も持っているようだ。彼の背中が大きく膨れているのは、彼自身と合体する人形を背負っているからだという。


 現在はそこまでの相手ではないため温存しているが、なかなか面白い戦い方をする男だった。




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