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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
『翠清山の激闘』編
202/619

202話 「海でブギウギ その1」


「いい天気だなぁ、海が眩しい! サナ、海だぞ! 海!」


「…こくり」



 本日、アンシュラオンたちは浜辺にいた。


 周囲では観光客たちが水着になって、肌を焼いたり泳いだりしているので、誰でも入れる安全なビーチであることがわかる。


 そして当然、こちらも水着だ。


 アンシュラオンは白いショートパンツの水着、サナはフリルが付いた黒いワンピースのものを着ている。


 完全に白と黒で分かれているので、相変わらず目立つ二人である。



「海水浴ってこんな感じなのね。なんだか不思議な感覚だわ。これだと下着とあまり変わらないわよね…」



 マキはやはり赤いビキニだ。


 健康的で引き締まった身体に大きな胸が際立ち、浜辺に降り立った瞬間からこちらも人目を引いている。


 水着に慣れないのか、少しソワソワしている様子が妙に色っぽい。



「これぞバカンスですね! やっぱりハピ・クジュネに来たなら海に入らないといけません!」



 続いてやってきた小百合は、腰周りが切り取られた青いワンピースを着ており、後ろから見るとビキニにも見える『モノキニ』というタイプの水着である。


 すらっとした身体にもかかわらず、出るところはしっかり出ている綺麗なお姉さんなので、さらに女性としての魅力が引き立つようだ。


 彼女は水の国レマール生まれであるし、幼少期を過ごしたヴェルト地方も海辺かつ水が多い場所だったので、水着に抵抗はないらしい。



「私も海に入るのは初めてです。少し緊張しますね」



 ホロロはコルセットタイプの水着を着ているが、マキよりも胸が大きいため、逆に少し隠れている様子が妙にそそられる。


 もともと艶っぽい女性なので、当人にその気がなくとも色気がムンムンである。思わず見ただけで股間を押さえた男もいたくらいだ。



「うんうん、サナも可愛いし、オレの妻たちは今日も美しいな」


「それはいいが、お前と一緒にいるといつも目立つんだよなぁ」


「いや、ロリコンの格好のほうが目立ってるぞ。なんだその水着は」


「俺は熟練者だからな。海に来たら毎回これで泳ぐのさ!」



 と言っているロリコンは、なぜか水玉のラッシュガードの水着にスイミングキャップを被っていた。ビート板も持っているので泳ぐ気満々だ。


 その隣にいるロリ子は、普通のワンピース型の水着で歳相応といったところだろうか。ロリコンが怪しい格好なので、若干距離を取っている気がしないでもない。


 一行は空いている場所に陣取ると、シートとパラソルを設置。


 トロピカルジュースも用意すれば、完全にバカンスである。



「なぁ、なんかずっと遊んでいるけどいいのか?」


「ライザックから待てって言われているんだから仕方ない。ほかに何をすればいいんだ?」


「ハンター活動はどうしたんだ? 最近やってないだろう?」


「金があるし、今は無理にすることはないかな。修練も裏の森でできるからね」


「これがセレブ生活ってやつなのか!? 俺はちゃんとがんばって薬を売ったのに!」


「他人の不幸に付け込んで高く売りつけるなんて、さすがロリコンだね」


「そういう言い方をするなよ! 俺が手に入れる前から疫病が流行っていたんだ。それこそどうしようもないぞ」


「で、いくらで売れたんだ? 競売に出してたよな?」


「いやー、待った甲斐があった! 高く買い取ってくれた商人がいたんだよ! なんと一千万円だぞ! ありえないよな!」


「いくらぼったくりとはいえ、そんなに高く売れたのか? なんか怪しいな。相手は誰なんだ?」


「んー、商品説明の時に会話はしたけど、名前は訊かなかったな。基本的に入札額に満足なら、そのまま交易所で勝手に決済してくれるんだよ」


「商人の取引は、そんなに適当でいいの? 名前くらい知っておくべきじゃないのか? 売る側はいいけど、買う側は商品に瑕疵かしがあったらどうするんだ?」


「ある程度交易所も保証するが、こういうのはお互いに納得するのが重要なんだ。商人には目利きも必須スキルってことさ。今回の相手は見る目があったってことだろう。まあ、実際に目つきが鋭いやつで思わずびびっちまったけど、話がわかるやつだったぞ」


「目つきが鋭い?」


「俺が見たところ、表側の雰囲気じゃなかったな。あまり関わりたくないタイプだ。べつに相手がイケメンだからじゃないぞ」


「もしかして近くに女性がいた? 眼鏡をかけたサイドアップの青髪の人とか」


「ああ、いたな。つーか、何度も商品を見てチェックしては、どこで手に入れたとか、どうやって手に入れたとか執拗に訊いてきたもんだ。いくら美人でも、ああいうタイプは苦手だよ。俺としては高く買ってくれたから、ありがたい客ではあるんだけどな…」



(間違いない。あの男だ)



 その特徴はどう考えてもソブカ・キブカランである。


 彼も商人と名乗っていたので、その行動自体には何ら不自然な点はないが、わざわざロリコンの商品を買ったことが気になる。



「ソブカ・キブカランという名前は知ってる? グラス・ギースの商人らしいんだけど、たぶん薬を買ったのはそいつだよ」


「ソブカ…? 誰だ?」


「たしかラングラス派閥で、商会の会長をやっているらしい。心当たりはないか?」


「うーん、俺は知らないな。ロリ子はどうだ?」


「それってキブカ商会の会長さんですよね? ああ、なるほど。どこかで見たことがあると思っていました!」


「ロリ子ちゃんは知っているの?」


「はい。グラス・ギースで働いていた時に、たまに話題に出ていましたね。私がいた店は女性用品を販売していたので、店員も女性ばかりだったのですが、イケメンランキングでいつも上位に入っていましたよ」


「うんまあ…女性だらけなら、そういう会話になりそうだね。というか、女性しかいない職場は珍しいね」


「店のオーナーが、行き場をなくした女性に働く場を提供したいという考えの人でした。オーナーも女性で、キブカ商会と同じラングラス派閥だったはずです。その繋がりでキブカランさんのことも知りました」


「じゃあ、キブカ商会のことも知っているんだね。どんな商会なの?」


「主に医薬品を仕入れている商会ですね。今までは細々とやっていたみたいですけど、新しい若い会長さんになってから外から珍しい薬も仕入れてくるので、派閥での売り上げはトップだったはずです」


「ふーん、ライザックと対等に会話するだけの実力はあるってことか。でも、あまり偉くないんだよね?」


「グラス・ギースって、けっこう血筋とか家柄を大事にするみたいなんですよね。城塞都市なので親類同士での結婚も多いみたいですし、生まれで序列が決まってしまうと聞きました」


「なるほど…だから改革か。イタ嬢とかを見ていると気持ちはわかるな。馬鹿が上に立つと最悪なことになるからなぁ」



 ソブカがハピ・クジュネにいる理由は、単純に商品の買い付けであろう。


 港湾都市ならば他の地域からさまざまな物が集まるので、その中から掘り出し物を探すのだ。アンシュラオンが行った闇市と同じである。


 そして、手に入れた薬を違う場所で売りさばくことで、さらに利益を上げる貿易商のようなこともしていると思われた。



(だが、ライザックと密会していたくらいだ。もっと大きなことを考えている可能性がある。あまり近くをうろつかれると面倒だが…嗅ぎ回っているのはあいつだけじゃないからな。ここまで目立てば、もう仕方ないか)



「ちなみにうちの旦那は、店に来たら警戒しろって店長から言われていました」


「うそ!? 初耳なんだけど!」


「ロリコン、そりゃ仕方ないよ。ロリ子ちゃん目当てだったんだろう? 小さな女の子に付きまとう怪しい男がいたら誰だって警戒するさ。通報もんだぞ」


「旦那の隠語は『品切れ』でしたね」


「それ、よく聞いたぞ!? 俺が行くと『品切れでーす』とか言って、女たちがすっと奥に消えて、やたらゴツイ女が出てくるんだよな。あれがそうだったのか…」



 ついでに哀しい話を聞いてしまったが、現実はいつも厳しいものである。



「それにしても、お前がそんなに他人のことを気にするのは珍しいな」


「こないだちょっと会う機会があってね。どんなやつなのか知りたかっただけだよ」


「高く買い取ってくれたんだ。いいやつに違いない」


「ロリコンは単純だな。まあ、商人なんてそんなもんか。あいつも利益があるから近寄ってくるんだろうしね」


「それより海を楽しもうぜ! 俺はいくぞ!」



 ロリコンが海に走っていき、ダイブ。


 ビート板を使ってどんどん沖に向かっていく。



「サナ、オレたちも行こうか」


「…こくり」



 サナを海にまで連れていくと、波がざぶんと彼女の足を濡らす。



「…じー」


「塩湖に似ているけど、これが本物の海だよ。ずっと先まで続いているんだ。少し舐めてごらん」


「…ぺろ。…?」


「ははは、しょっぱかっただろう? 泳ぐと目や口に海水が入るから気をつけるんだよ。じゃあ、さっそく入ってみようか」


「…こくり」



 サナが水の中に入っていく。


 海水が膝まで上がり、腹、胸、首に至り、ついにすべてが海に入る。



「…ごぼぼぼっ…とことこ……ごぼぼぼっ……とことこ」


「サナちゃん、浮いてごらん。ぷくっと浮いてみて!」


「…ごぼぼぼっ…とことこ……ごぼぼぼっ……とことこ」


「…あれ? なんか浮いてこない…よ?」


「…ごぼぼぼっ…とことこ……ごぼぼぼっ……とことこ」


「サナぁああああああ!」



 水中から出てこないので慌てて救出。


 顔を出したサナは口から海水を吹き出す。



「サナ、大丈夫か?」


「…こくり」


「ほら、こうやって浮くんだよ。やってごらん」


「…? …ごぼぼぼっ…ごぼぼぼっ」



 サナが浮こうとするが、すとんと水の中に落ちて上がってこない。



「ええええ!? もしかして浮けないの!?」


「あれ? アンシュラオン君、これってどうやって浮くのかしら。あれれ? ごぼぼぼぼっ」


「マキさんまで!? 女性の武人は浮けないようになっているのか!?」



 マキも水の少ないグラス・ギース出身であり、頭まですっぽり水に浸かる経験がなく、無理に立とうとするので、どんどん水の中に落ちていってしまう。



「こりゃ駄目だ。一回浮き輪だね」


「万一のために買っておいて正解でした。ご用意いたします」



 ホロロが浮き輪を二つ取り出して膨らます。


 サナにはハート型の浮き輪、マキには黄色い浮き輪をかけて、いざリベンジである。



「ホロロさんは、グラス・ギース出身なのに浮いているね」


「そうですね。勤めていた高級ホテルにはプールもありましたので、自然と慣れていきました」


「サナもハビナ・ザマで入ったけど、あれは子供用だったからなぁ。まあ、慣れれば大丈夫だろう。ほら、まずはバタ足からだよ」


「…こくり」


「こうかしら?」



 アンシュラオンが手を取りながら、二人がバタ足を開始。


 最初は静かな動きだったが、徐々に激しくなって大きな水飛沫を上げていく。



「いい感じね。もっといけそうだわ」


「…こくり。バタバタバタッ」



 だが、マキはもちろん、サナもすでに武人として覚醒している状態だ。


 その二人が全力でバタ足をしたことで、大きな濁流が生まれて、先に海に出ていたロリコンを呑み込む。



「ぎゃあぁあ! ごぼぼぼっ! なんだこれ! ごぼぼぼっ!」


「そうそう! 上手いぞ! バタ足はもっとこう!」


「…こくり…バタバタ!」



 さらに興奮したアンシュラオンまでが参加したことで、ついには渦が発生して、そこに再びロリコンが呑み込まれていく。



「ぐええええ! 溺れるぅううう!」


「ロリコン、うるさいぞ!」


「ごぼぼぼっ! おえええ! 海水が口に入って…おえええ!」


「サナ、マキさん、ここは汚いから、あっちに行こう。ここはもう駄目だ。汚染されちゃったよ」


「…こくり」


「そうね。さすがに気分が悪いわ」


「ほんと、場所を考えてほしいよな。みんなの迷惑だぞ」


「お前たちのせいだからな! ごぼぼぼぼっ!」



 その後、無事二人は泳げるようになった。


 マキはもともと運動能力が高いし、サナはアンシュラオンの動きを真似ることで覚えたようだ。




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