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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「海賊たちの凱歌」編
168/619

168話 「妻たちの変化とハピ・クジュネ到着」


「アンシュラオン君ったら激しいんですもの。うふふ、ぎゅっ。まだ奥のほうがジンジンして感触が忘れられないわ」


「う、うん…そうなんだ。けっこう強くやったからね。そのせいかな?」


「やっぱりあなたは私が求めていた王子様なのね。ねぇねぇ、もっとやりましょう。ねぇねぇ、もっとぉ」


「あの…マキさん、なんかキャラ変わった?」


「そんなことないわよ。これが本当の私だもの。だってぇー、初めてだったしぃー、こんなことされたらまた好きになっちゃう」



 マキの距離が近い。異様に近い。さきほどから常に密着してベタベタして甘えてくる。



「二人だけで盛り上がってずるいですよー」


「うふふ、いいでしょう? これが武人の特権よ」


「もう、マキさんったら、すっかりと寄りかかることも覚えたんですね。少し安心しました」



 小百合は茶化しつつも、どこか祝福しているようでもあった。


 マキが今まで男勝りで異性を近寄らせなかったのは、単純に自分よりも強い男が圧倒的に少ないせいでもある。


 こうして一度完全に負けたことで、マキの中で何かが変わったのは間違いない。



「それにしても速すぎて全然見えなかったんですけど、アンシュラオン様とマキさんの差ってどれくらいあるんですか?」


「そうだね…たとえるならサナとロリコンくらいかな?」


「それって相当な差ですよね。私でもわかります」


「でも、マキさんが弱いわけじゃない。いろいろと他の武人も見てきたけど、今のところマキさんと対等にやれそうな相手は、領主城にいたファテロナさんくらいだからね。あとは先日の盗賊たちだけど、あれも特殊なほうだと思うよ。あんなのがほいほいそこらじゅうにいたら、スザクたちは毎日涙目だろうしね」


「素人の私にはもうついていけない世界ですよ。アンシュラオン様がすごい強いってことだけはわかりますけどね!」


「私も同感ね。正直アンシュラオン君の強さは別格だと思うわ。今までこんなに強い人は見たことがないもの。先生より強いなんて信じられない」


「先生って?」


「私に武術を教えてくれた人よ。もう初老だけど、まだまだ現役でやっている武芸の達人なの」


「マキさんがこれくらい強いってことは、その人が強いのもなんとなくわかるよ。弟子はどうしても師匠に似ちゃうもんね」


「アンシュラオン君には師匠はいるのかしら?」


「いるよ。自称覇王のハゲたジジイだけどね」


「え? 覇王!? もしかして陽禅公?」


「知ってるの?」


「すごい有名人よ。歴代最強の覇王と呼ばれているくらいだもの」


「ふーん、あのじいさん、本当に覇王だったんだね。性格はクズで下界にまったく興味がない引き篭もりニートだけど、オレより強いからそこだけは認めているかな」


「そうだったの…これでその強さも納得だわ。ただ、覇王に弟子入りできるのならば、それだけの資質がないと駄目なはずよ。私が行ったら門前払いされそうだもの」


「オレは入門試験とかなかったけど…気づいたら修行を受けさせられていたよ。まあ、今は免許皆伝になったから、滅多に会うこともないだろうね。ところでマキさん、少し強くなったんじゃない?」


「私が?」


「さっきのオレとの戦いで限界を超えた。それによって力が引き出されたはずだよ」


「そう…かもしれないわ。たしかに今まで以上に力が溢れる感覚があるわ」


「マキさんの戦士因子がさらに覚醒したんだよ。今しがたの戦いもあるし、ア・バンドの連中と生死をかけた戦いをしたからね」



―――――――――――――――――――――――

名前 :マキ・キシィルナ


レベル:53/99

HP :2380/2380

BP :750/750


統率:D   体力: C

知力:D   精神: C

魔力:D   攻撃: B

魅力:C   防御: C

工作:F   命中: D

隠密:F   回避: D


【覚醒値】

戦士:4/6 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:第六階級 名崙めいろん級 戦士


異名:白い魔人の妻、烈火の華

種族:人間

属性:火、炎

異能:烈火の華、鉄鋼拳、鉄壁門、我慢、根性、気迫、低級戦闘指揮、物理耐性、銃耐性、即死無効、母性本能、家族愛、夫への燃える愛情

―――――――――――――――――――――――



 レベルが向上し、HPとBPが上昇。


 特筆すべきは、レベル限界が99に上昇しており、戦士因子が3から4になり、覚醒限界値も4から6に上がっていた。


 もともと能力が高かったので、ステータスは魅力が一段階上がってCになった以外は変化はないが、レベルと覚醒限界だけでも大きな変化といえる。



(ふむ、こんなに一気にレベル限界が上がるのは、サナと同じ現象だな。スキルも『烈火の華』や『気迫』といったものが増えている)



 一般人だったサナも99に上がったのだから、すでに武人であるマキもそうなってしかるべきだろうが、何度見ても不思議な現象である。いまだに何が原因かは不明だ。


 そして、階級も一つ上がって第六階級の『名崙めいろん級』に上昇。


 こちらは達人を超えて、名有りの勇士に仲間入りしたことを示している。達人中の達人、といったところか。


 この上の第五階級の『王竜級』は、国家レベルにおいて最高位の力を持つ者なので、それに準ずる力を持つ意味は大きい。



「オレと一緒にいれば、マキさんはもっともっと強くなれるよ。まだまだこれからさ」


「…アンシュラオン君。あなたに話しておきたいことがあるの」


「うん、何でも言ってごらん。すべてを受け入れるよ」


「ありがとう。実はね―――」



 ここでマキが『鉄鋼拳』について伝えてきた。


 過去の事故の話、細胞の移植の話、鉄化させる能力等々、包み隠さずすべてを語る。


 武人が自らの奥の手を話すことは、たとえ夫婦であっても簡単にはできないことなので、それだけ信頼してくれた証といえる。



「あのしこりは、そういうことなんだね」


「ええ、そのせいで『鉄に触れていない状態で』一定以上の戦気を展開すると、身体の細胞が刺激されて鉄化現象が起きちゃうの。一度発動すると相手に叩きつけるまで終わらなくて…」


「もともとは師匠の能力だったんだよね?」


「そうなの。先生も一度だけしか見せてくれなかったから、かなり危険な技だと思う。ただ、私のものとは少し違うみたいね。私のを『亜種』とか『副作用』とか言っていたわ」


「他人が与えた細胞が根付いて力になる…か。親和性がなければ不可能なことだね。それって『細胞系』の能力だから、マキさんにもそっちの才能があったのは間違いない。同じ細胞系の命気ならば排除も可能かもしれないけど、どうする? クリーニングしてみる?」


「…やめておくわ。この力は望んで手に入れたものじゃないけど、あなたの役に立つためには必要なものだもの。私、今初めてこの力があってよかったと思ったの。あなたならば、私がどんなふうになっても受け入れてくれるとわかったからね」


「オレにとっての愛は、与えることと同時に相手を全部受け入れることだ。マキさんの綺麗な部分も汚い部分も含めて、全部をオレのものにする。嫌いになるなんてことはないよ」


「アンシュラオン君…」


「はいはーい、小百合ももっとアンシュラオン様と繋がりたいですー! 私にも鍛錬させてください!」


「走り込みはホロロさんと一緒にやってるよね? あとは武器かな。銃は持ってたよね?」


「単発式なのであまり役立ちませんけどね。ほかに使えそうなものといえば、刀くらいですかね」


「家にあったやつ?」


「それ以外にも実戦用のものがあります。一応、両親の指導で剣の修練はしていたのです」


「それは興味深いね。ちょっと見せてもらえる?」


「では、軽く型をお見せいたしますね」



 小百合が刀を取り出す。


 取り立てて業物ではないが、レマールはサムライの国でもあるため、そこらの刀でもかなり出来が良い。


 鞘から抜いて、静かに正眼に構える。


 そこから素早く前に出ると、上段斬り、胴薙ぎ、下段斬りときて、袈裟斬り、突きへと変化。


 速度こそ一般人だが、武芸経験者特有の鋭さがあった。



「思ったよりしっかりしているね。驚いたよ」


「たいしたことはありません。ただの道場剣術です。レマール人ならば最低限習う程度のお粗末なものです」


「それでも使えるだけすごいよ。人を斬ったことはある?」


「まだありませんが、小百合はアンシュラオン様のためならば、喜んで斬り捨てます!」


「う、うん。無理に喜ばなくてもいいからね。自衛ができればいいんだから。サナも刀の扱い方を学んでいる最中なんだけど、それって教えられる?」


「基本でよろしければいくらでもできます!」


「じゃあ、小百合さんはサナの刀の練習相手をしてくれるかな」


「お任せください!」


「サナ、小百合さんと一緒に剣の練習だぞ。よかったな」


「…こくり!」


「サナ様、よろしくお願いいたしますね!」



 こうして他の面々も一緒に修練をする。


 その光景を眺めながら、改めてサナの数値もチェック。



―――――――――――――――――――――――

名前 :サナ・パム


レベル:24/99

HP :750/750

BP :380/380


統率:E   体力:D

知力:E   精神:E

魔力:E   攻撃:E

魅力:B   防御:D

工作:E   命中:E

隠密:E   回避:D


【覚醒値】

戦士:1/3 剣士:1/3 術士:0/3


☆総合:第八階級 上堵じょうど級 剣士


異名:白き魔人に愛された意思無き闇の少女

種族:人間

属性:闇

異能:トリオブスキュリティ〈深遠なる無限の闇〉、観察眼、天才、早熟、即死無効

―――――――――――――――――――――――



 ハピ・クジュネ滞在中の鍛錬とア・バンドや猿との戦いを経て、レベルが6上昇。


 強敵との戦いがなかったので大幅な変化はないが、防御と体力がDになったせいか階級が一つ上昇。


 第八階級の『上堵じょうど級』に進化する。


 そして、変化はホロロと小百合にも起きていた。



―――――――――――――――――――――――

名前 :ホロロ・マクーン


レベル:26/99

HP :320/320

BP :330/330


統率:C   体力: E

知力:C   精神: D

魔力:D   攻撃: F

魅力:C   防御: F

工作:E   命中: D

隠密:F   回避: F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:評価外


異名:白い魔人の妻兼メイド

種族:人間

属性:滅

異能:絶対忠誠心、信仰心、冷静、中級メイド、下級料理人、夫への健気な愛情

―――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――

名前 :小百合・ミナミノ


レベル:17/99

HP :210/210

BP :180/180


統率:E   体力: F

知力:C   精神: D

魔力:E   攻撃: F

魅力:C   防御: F

工作:C   命中: F

隠密:E   回避: F


【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:0/0 術士:0/0


☆総合:評価外


異名:白い魔人の妻

種族:人間

属性:夢

異能:万年笑顔、迅速事務処理、信頼感、家族愛、夫への陽気な愛情

―――――――――――――――――――――――



(二人ともレベル上限が劇的に上がっている。魅力もCになっているし、精神の値にも変化が見られる。ロリ子ちゃんは…ほとんど変わってないか。ロリコンとアロロさんにも変化はない。ということは、変わったのは『身内だけ』になるな)



 いつも一緒にいるサナや、すでに一ヶ月以上前から一緒にいるホロロはともかく、妻になった途端にマキと小百合に大きな変化が起きた。


 ホロロにしても普通に鍛えているだけの頃は、レベル上限が上がるといった特異な現象はなかったはずだ。



(前と違うものがあるとすれば…『アレ』しかないよな)



 唯一心当たりがあるとすれば、『男女間での営み』だろうか。


 もっと詳しく述べれば【夫婦間の契り】がきっかけになったとしか思えない。


 なぜかアンシュラオンと結ばれると能力に進化が起きるらしい。とはいえ、まだデータが少ないので、これに関してはもう少し検証が必要だろう。



(みんなが強くなるのはありがたい。唯一気になるのはギアスだよな。ホロロさんの精神がDになったから、一般仕様のジュエルを使えるギリギリの状態だ。早くこのあたりの問題をクリアしないと安心できないなぁ。とりあえずハピ・クジュネでギアスを付けてみればわかるか)



 こうして道中は、マキがベタベタしてきたり、小百合も真似てベタベタしてきたり、ついでにホロロもベタベタしてきたりと、一気に妻とのスキンシップが増えて楽しい旅であった。


 修行や鍛錬も続け、マキはアンシュラオンとの組手や、サナと一緒に魔獣の相手、小百合とホロロは銃や近接戦の訓練をしながら親睦を深めていく。


 そして四日を経て、ハピ・クジュネに到着。



「潮の匂いだ!」



 都市に近づくにつれて強い潮の香りが漂ってくる。


 全体像が把握できる頃には海も見えて、匂いもさらに強くなってきた。



「あー、なんだか懐かしいな。オレが前に住んでいた場所も海沿いだったからな。これだよ、これ! この匂いだ。サナ、本物の海だぞ!」


「…こくり。すんすん」



 サナも潮の匂いを嗅いでいた。


 塩湖とは明らかに規模が違う本物の海を前に、胸が高鳴るのを感じる。


 グラス・ギースを出て、ついに最初に目標としていたハピ・クジュネにやってきたのだ。感無量である。




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