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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「海賊たちの凱歌」編
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164話 「マキと小百合の初めてと討伐報酬」


 それから四日後の夜。


 アンシュラオンの部屋にマキと小百合がいた。



「だ、駄目よ。やっぱり駄目」


「マキさん、まだそんなことを言っているんですか? 昨日だって土壇場で逃げちゃったじゃないですか。そんなことじゃ、いつまで経っても処女のままですよ?」


「それ自体はその…準備ができたらいつでも…とは思っているのだけれど…どうして『二人一緒』なの?」


「それは私とマキさんが、仲良しだからなのです!」


「えええええ!? それだけの理由なの!?」


「仲良しじゃ駄目ですか?」


「そ、そんなことはないわよ。私も小百合さんとは今回の旅で理解し合えたと思うの。でもね、それとこれとは話が違うんじゃないかしら?」


「だったら独りでできるんですか?」


「えっ…? で、できる……わ。二年後くらいなら…」


「遅い! あまりに遅すぎます! ホロロさんなんて私たちより出会いが遅かったのに、もうとっくの前に済ましているのですよ! そんなんじゃまた置いていかれてしまいますよ!」


「そ、それは…そう……なんだけれども……」


「ほら、早く脱いでください」


「ちょっ、あっ、駄目よ! あー! 服を引っ張らないで!」


「ふっふっふー! 逃がしませんよー!」


「篭手だけは駄目! ちょっと準備させて!」


「そうやってまた逃げるんですから!」


「本当に篭手だけは危ないのよ。ちゃんと脱ぐから。ね?」


「むー、仕方ありませんね」



(オレは何を見せられているんだろう?)



 その光景をアンシュラオンは、まな板の鯉のように見つめていた。


 状況は見ての通りなのだが、何回も同じ行動を見せられるのは、なかなかにシュールである。


 その原因は、マキが恥ずかしがって土壇場で逃げてしまうせいだった。


 それならそれで小百合だけがすればいいことなのだが、今回の旅路で仲良くなったこともあるし、第一夫人より先にするのは『序列』を考えるとよろしくないとのことで、それならば一緒に初体験をしようと思ったらしい。



(その考えもどうかと思うけど、お互いに剣呑な関係になるよりは遥かにいいんだよね。オレとしても二人同時は楽しみだけど…妻かぁ。結婚式とかやったほうがいいのかな? うーむ、初めてのことだらけでよくわからないな)



 アンシュラオン自身は、今世でも姉やホロロといった女性たちと関係を持っているが、前世においても普通にそれなりの経験があった。


 日本でも付き合いで遊郭に通ったり、好意を寄せてくる女性も多かった。ただし、生き方の問題で結婚にまでは至ったことはなく、子供もいない。


 そういった欠落した人生が満たされるのはありがたいことなのだが、勝手がわからずに苦悩することもある。



(ロリコンは行商人だからこだわりはなさそうだったけど、オレとしては家は欲しいな。ハピ・クジュネが良さそうな街だったら物件でも探してみようかな。あっ、そっか。スザクに頼めばいいのか。金以外に欲しいものがあまりないからなぁ…今度訊いてみよう)



「お待たせしました!」


「そ、その……あんまり見ちゃ…駄目よ。さ、小百合さん…やっぱりこれはちょっと…微妙に透けてるし…少し小さいかも」


「うーん、マキさんって着痩せするタイプなんですね。私の見立てより胸が大きいとは…さすがです。事前にもっと触っておくべきでした。どれどれ?」


「あっ、触ったら…」


「こ、これは…Hカップはありますよ! なんですか、この重量感は! おかしいです! 不平等です!」


「だ、だから触ったら…ね? 駄目よ?」


「もみもみもみもみ」


「小百合さぁんっ! 女同士でなんて…だ、だめだから…!」


「これはマキさんが悪いです! イリージャさんが道を誤りそうになった原因は、まさにこれですよ!」


「えええええ!?」


「こんな魅惑的な物体を持ちながら強いだなんて、そりゃ女性だって放っておきませんって」


「そ、そんなこと言われても…こればかりはどうしようもないわ」


「アンシュラオン様、どうですか? 私たちの下着は!」


「う、うん。すごい綺麗で可愛いね。やる気満々なのは伝わってきたよ」


「そうでしょうとも! グラス・ギースを出る前に仕入れたものなのです! 高かったんですよー!」



 いろいろと考え事をしている間に、小百合がマキを脱がして、色気のある下着を着せていた。


 それぞれの髪の色に合わせてか、小百合は黒、マキは赤い下着だ。しかも微妙に透けているので、マキは恥ずかしそうに押さえている。


 ただし、その手には包帯が巻かれていた。



「マキさん、その包帯は?」


「これは…ちょっと古傷があって。恥ずかしいから付けているのよ」



(そういえば、命気で怪我を治した時に『しこり』みたいなのがあったな。無害そうだったからそのままにしておいたけど…かなり古くて身体中に根付いているみたいだった。あれは何だったんだ?)



 アンシュラオンの命気は基本的にどんな怪我でも治せるが、たとえば昔切断された部位や、すでに細胞と同化しているような古傷の類はやや苦手としている面がある。


 その場合は、姉が得意としている回復術式のほうが向いている。そちらは遺伝情報から設計図を読み込んで再生するので、術式のレベルと能力次第でどんな古傷でも治すことができる。



(マキさんが倒した男は、なぜか鉄になっていた。もしかして特殊な技に関係することなのかな? もしそうならいくら夫になるとはいえ、武人の奥の手に関することを質問するのはルール違反だ。マキさんから言ってくるまで詮索はしないでおこう)



「アンシュラオン様、マキさんを逃がさないように縛ってください!」


「ええええ!? 突然何を言うの!?」


「今日こそは絶対に最後までやりたいのです!」


「だ、駄目よ! そんなプレイは駄目! わ、私はノーマルで…」


「しょうがない。マキさん、覚悟してね。オレの妻になるなら通らねばならない道だよ!」


「アンシュラオン君まで…あああ! 捕まったぁあーー!」


「なんか、いつも衛士として悪人を逮捕していたマキさんを、逆に逮捕できるなんて…意外と燃えるかも」


「普通がいいのよ! 普通でいさせてえええええ!」


「ふっふっふー! 時間はたっぷりあるのです! 楽しみましょうね!」


「いやあぁーーーーーー!」



 ということで、二人のドタバタ劇に巻き込まれながら夜は更けていき、第一夫人と第二夫人が無事誕生するのであった。





  ∞†∞†∞





「お久しぶりです。大変遅くなって申し訳ありません」



 マキたちを救出してから一週間後に、スザクがシンテツとバンテツをお供にしてホテルにやってきた。


 今回は甲冑ではなくシャレた軍服を身にまとっている。


 初めて出会った時も端整な顔立ちではあったが、こうして見るとまさに気品ある領主の息子に相応しいいでたちだ。



「バタバタしていたんだ。仕方ないよ。状況はどうなっているの?」


「この話は極秘でお願いいたします。すでに多少の噂は流れていると思いますが、ハピナ・ラッソは七割が壊滅、ハビナ・ザマは五割ほど損害を受けて、都市機能がほぼ麻痺している状況です」


「かなりの打撃だね。やっぱりあっちは防げなかったか」


「特にハピナ・ラッソは防衛機能が著しく低下しておりましたので、死傷者も大勢出たようで非常に残念です」


「そうだね…残念だ」



 と言いつつ、内心はこうだ。



(なんだ。壊滅するんだったら、もっと金を奪っておけばよかったな。まあ、おかげでオレがやったことも完全に闇に葬られたから、結果的には得になったかな? あまり欲張るとよくないからな。ほどほどで満足しておくか)



 これだけの被害が出た原因の一つが、この疫病神のせいであることは間違いない。ハピナ・ラッソの一般人はいい迷惑だろう。



「でも、その言い方だと制圧はされなかったの?」


「彼らの最終的な目的は、ハピ・クジュネだったと思われます。そのために補給路を断つのが今回の一連の動きだったのでしょう。一通り破壊したら去っていったそうです。ただ、猿神の撤退が影響を与えた可能性は高いです」


「君たちの話だと、猿はあの山の魔獣の中でも別格の扱いだったね。それがわざわざこっちに来たってこと自体が、目的の違いを証明しているわけか」


「そうなります。ハピ・ヤックは制圧して拠点にし、ハピ・クジュネへの足がかりにする予定だったのでしょう。その差ですね」


「やっぱり魔獣にしては頭が良いね。オレが前に住んでいた場所では人間の言葉を普通に話したりするやつもいたし、種族によっては人間以上の知能を持っているやつもいる。魔獣が知恵をつけると厄介なんだよね」


「だからこそアンシュラオンさんが、右腕猿将を倒したことに意味があるのです。あの魔獣は猿神のナンバースリーに位置しているボス猿の一頭でした。彼らに相当なショックを与えたことでしょう」


「あれでナンバースリーか。まだまだ敵の勢力は残っているってことだね」


「はい。あの程度は山全体からすれば、一割にも満たない戦力です。まだ油断はできません」


「ハビナ・ザマの損害が少ないようだけど、どうして?」


「実は事前にハンターたちを呼び寄せていたようなのです。森の調査が目的だったそうですが、結果的に魔獣に対応することができました。この一週間抵抗を続けて、なんとか撃退に成功したようです」


「よかった。あそこにはディムレガンのお姉さんもいたし、ハローワークにも綺麗な女性がいたから心配していたんだ」


「ハローワークの存在は大きいですね。ハピナ・ラッソが対応できなかったのも、おそらくはハローワークがなかったことが原因の一つです」


「なるほどね。で、グラス・ギースはどうなったの? 陥落していたら面白そうなんだけど…」


「あちらは…全滅です」


「え!? 本当に? やった!」


「はい。すべての魔獣を殺したと聞いています」


「ん…? 魔獣を撃退したの? いや、全滅させたの?」


「そのようです。さすがはグラス・ギース。まだまだ威光は健在といったところでしょうか」



 一瞬グラス・ギースが全滅したのかと思って喜んだが、どうやら逆らしい。



(意外だな。そりゃあれだけの防備だし、撃退はできると思っていたが…返り討ちにするだけの戦力があったのか。まあ、ファテロナさんとかがいればかなり対応できるとは思うが…モヒカンの話じゃ、ほかにも優れた武人がいるとか言っていたな。そっちが出てきたのかな?)



「さて、暗い話ばかりでは面白くありませんね。アンシュラオンさんへの報酬の話をしましょうか」


「待ってました!」


「いろいろと考えたのですが、まずはご希望を伺おうかと思っております。何がよろしいでしょうか? 今回の功績は大きく、いかなることでも対応しようと考えております」


「スザク様、こういうやつは遠慮しないものです。それなりに釘を刺しておいたほうがよいですぞ」


「ははは、シンさんは手厳しいな。でも、僕はアンシュラオンさんはそんなに欲深い人じゃないと思うよ」


「そうでしょうか?」


「だって、これだけの力があるのに、こんなに慎ましく暮らしているじゃないか」


「妻が三人いますぞ?」


「それだけ器が大きいんだよ。それに本当に欲だけに溺れるなら何十人いてもおかしくはないさ。そうですよね、アンシュラオンさん?」


「まあね。オレは厳選するタイプなんだ。深く愛したいからね」


「やはりそうでしたか。そうでなければ、わざわざ奥様をあんなに心配しませんよね。他の女性への気遣いも人一倍でしたし、心から尊敬します」



(天然なんだろうけど、抜け目ないよな)



 こういうやり取りで、さりげなくこちらにプレッシャーをかけてくる。


 意図的だとイラッとするかもしれないが、すべて素でやってしまうところがスザクのすごいところだろう。それもまた彼の才覚である。



「ハピ・クジュネの宿って手配できる?」


「お安い御用です。お勧めのホテルを用意しておきます。ほかにはございますか?」


「そうだな…ハピ・クジュネの土地を買うことはできるの?」


「もしや都市に暮らしてくださるのですか?」


「そこまではまだ考えていないけど、今後のことも含めて家の一つくらいは持っておこうかなと。ほら、奥さんもいるからさ。でも、前にキャンプで聞いた話だと、もう土地はほとんど余っていないそうだから、どうなのかなと思って」


「アンシュラオンさんがハピ・クジュネに暮らしてくださるのならば、いくらでも無料でご用意いたしますよ!! こんなに素晴らしい話はありません!」


「あっ、いや、だからそこまではまだ…」


「バンさん、担当者を連れてきて! そっちの隊に経理や商売に詳しい人がいたよね?」


「あー、いましたね。了解です。ちょっくら行ってきます」


「ハピ・クジュネはいい都市なんですよ! それなら案内役もつけましょう! いやぁ、今日はいい日ですね!」



 あまりのスザクの喜びように話がどんどん進んでいく。


 こういうときに限ってシンテツは黙っているのだから、実にいやらしいものである。



(まあ、アロロさんの問題もあるから、どうせハピ・クジュネには家が必要なんだよね。もらえるのならもらっておくか)



 ホロロはアンシュラオンの妻兼メイドとして一緒に行動するが、母親のアロロは長い旅路や激しい戦いには向いていない。


 すでにグラス・ギースを出た以上、住む場所もなく、先日援護してもらった恩義も感じていたので、家の一つくらいぽんっと用意してあげたかったのだ。


 それが無料で手に入るのならばありがたい。が、スザクたちにとっても、これだけの武人が都市に滞在することは大いなるメリットになる。家の一つや二つ程度、安いものだろう。



「では、僕はこれで。もっと話していたいですが、なにぶん忙しいものでして。申し訳ありません」


「これからどうするの?」


「第二海軍と一緒に破壊された街に行きます。軍はそのまま駐屯しますが、僕はいろいろと折衝がありますので、グラス・ギースに向かう予定です。何かありましたら担当官にお申し付けください。便宜を図るように命じておきます」


「大変だろうけど、がんばってね」


「またお会いしましょう」



 スザクと握手して別れる。


 嫌味ったらしいところが何一つない、相変わらずの好青年なので気分がいい。


 こうしてアンシュラオンもハピ・ヤックでの用事が終わり、ついにハピ・クジュネに旅立つのであった。




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