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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「海賊たちの凱歌」編
135/618

135話 「サナのレッドハンター昇格申請をしよう!」


「おはよう!」



 朝、ロリコンがすっきりした顔でやってきた。


 なんともいやらしい顔つきであるが、最初からこんな顔をしていた気がしないでもない。



「ロリコン、ご機嫌だな」


「今日はいい天気だからな」


「言っておくけど犯罪だからな? オレに迷惑はかけるなよ?」


「な、何のことだ!」


「名前の段階でもうギリギリアウトなんだから、行動には気をつけろってことさ」


「お前が勝手に呼んでいるだけだろうに! それはそうと、そっちはどうだったんだ? ホロロさんも一緒に泊まったんだろう?」


「それを知っているってことは、お前もグルだったんだな」


「いや、俺じゃなくてロリ子が主犯だ。お前がサナちゃんと修行している時とかに、女同士でいろいろ話していたみたいだぞ」


「ロリ子ちゃんなら仕方ないか…けっこう圧力をかけてきてたからなぁ」


「女同士って、こういうときはやたら強いよな」



 向こうのほうでは、そのロリ子とホロロがひそひそと会話している。



「ホロロさん、ホロロさん! 昨晩はどうでした!?」


「…それは…その……ぽっ」


「その様子だと大成功だったんですね! よかったです! で、どんな感じでした!?」


「いえ…その、とても言葉では言い表せなくて…まさに神に抱かれて天にも昇る気持ちでした。すごく優しくて…その温もりだけで何度も満足してしまって…」


「ほぅほぅ、さすがはアンシュラオンさん! 年上の女性に対しては本当に優しいですよね! それでそれで? ちゃんと最後まで?」


「はい…愛され……ました」


「おほぉおおおおおおお! キターー! 素敵ですね!」


「ですが、私が未熟ゆえにご主人様に満足していただけたかどうか…あまりに多すぎて…」


「多すぎて!? そ、そこをもっと詳しく!」


「噂に聞いていたよりもすごい量で驚きました。あのような…バケツ一杯も出るものなのですね。それで何度も失神してしまって…次はもっとがんばりたいものです」


「なにかおかしいですよ!? どういう状況ですか!?」


「え? 普通は違うのですか?」


「あっ、その……まあ、うちの旦那もそんなにすごいほうじゃないとは思うのですが…そんなに出ない…ような? どれくらいですか? 手で表せます?」


「これくらいでしょうか?」



 ホロロが、両手で何か大きなものを抱える仕草をする。



「ええええええええ! 意味がわからないんですけど!?」


「すごく久しぶりだとお聞きしましたが…溜まっていたのでしょうか?」


「いえいえいえ、どこにそんなスペースがあるんですか!? 物理的にありえないですよ!」


「ご主人様は神ですから」


「それで全部済ませてしまうホロロさんがすごすぎます! え? でもそれじゃ…溢れますよね? 絶対に収まらないですし」


「それは…下はそうですね。ですが、半分は上でがんばりました。…ぽっ」


「上で!? 何が上なんですか!?」


「…恥ずかしくてこれ以上は無理です。申し訳ありません」


「そんな! 気になってしばらく眠れなくなります!」



 ということで、ホロロはお腹が空いていないという謎の理由で朝食は食べなかった。


 が、時折恍惚とした表情でアンシュラオンを眺めては、そっと自分の腹部や喉に触れる姿が目に付いたという。


 昨晩何が起こったのかは、まさに神のみぞ知るのだろう。


 食事が終わり、ロリコンと街での予定を話し合う。



「今日はどうするの?」


「俺は薬の相場を見てくるつもりだ。高く売れそうならここで売ってもいいしな」


「仮にここで売れてもハピ・クジュネまでは行くんだよね?」


「ああ、そこに変更はない。どうせ仕入れもあるからな。ただ、盗賊とかの話を聞くと金を持ち歩くのが怖く感じるよ」


「盗賊…か。オレと一緒にいる間はいいけど離れた時が怖いね。できるならさっさと潰したほうがいい。オレとしても、やつらには少し怒っているんだ」


「その術具屋の人が殺されたからか?」


「それ自体はいいんだ。おっちゃんが弱かったから仕方ない。でも、その一億円はもともとオレが支払ったものだよね? 今思えば多少ぼられていたのかもしれないけど、その時のオレは納得して金を払った。おっちゃんもそれで満足して、オレも満足した。つまりはスレイブ契約と同じく平等で対等な関係だったんだ。それをやつらは壊した。オレが満足した取引を横から掠め取ったのさ。ムカつくよな」


「どこまで自分本位なやつなんだよ。結局、自分が出した金が取られたのが気に入らないんだろう?」


「そうだけど、その金が正当に使われるまでが取引なんだ。オレは、おっちゃんが家を買うのも楽しみにしていた。オレの金で誰かが幸せになる喜びさ。せっかく気分がよかったのに、それを台無しにしたやつは許せない」


「俺も商人だから言いたいことはわかるが…なら、盗賊を捜すのか?」


「いや、そこまではしないよ。怒ってはいるけど、同時にそれだけのことをやり遂げたほうも見事だしね。パトロール隊も動いているなら無駄にかち合いたくない」


「それなら少しこの街で時間を潰すのもいいな。まだ危険があるのに焦ってハピ・クジュネに行く必要はないだろう。盗賊が捕まってからでも遅くはないさ」


「そうだね。ここは安全性が高い街みたいだし、少しは安心かな。あっ、そうだった。ハローワークに行かないといけないんだ。ハピナ・ラッソにハローワークがなかったから、今まで倒した魔獣素材が山積みなんだよね。ポケット倉庫も無限じゃないから整理しないと」


「じゃあ、別行動だな。夕方になったら『海宋かいそう食堂』で落ち合おう。新鮮な魚介類を扱っている美味しいレストランがあるんだ。ロリ子も好きで、ここに来たら毎回寄っているんだよ」


海宋かいそう食堂ね。了解。海草って覚えればいいか」



 ロリコンから落ち合う場所を聞いて、一行は二手に分かれた。


 唯一アロロだけは残り、ホテルでゆっくりと過ごすらしい。見た目は若くなったものの、武人ではない一般人である。旅の疲れが残っているのは本当のようだ。


 サナとホロロと三人で、街を歩く。



(ハピ・ヤックは着飾っていないな。ごっちゃとした普通の街そのものだが、その分だけ本物の活気が見て取れる。ハビナ・ザマやハピナ・ラッソとは大違いだ)



 ハピ・クジュネに近い都市とは、こんなにも栄えるものなのかと思えるほど、ハピ・ヤックには人と物が溢れている。


 西に移動する人と物資のすべてが、この街に集まるのだから当然のことだろう。


 また、南に行けば海も比較的近いので、交通ルートを外れる危険にさえ目を瞑れば、地図には載っていない漁村や集落から直接買い付けもできる。


 昨日魚を扱っていた問屋も、そうやって安い値段で鮮度の高い魚介類を仕入れているようだ。


 呑気に牛を放牧していることからもわかるように、ここから南は強い魔獣も少ないため、そうした事情も商売の活性化に繋がっているのだ。



「すごいすごい! 歩くだけで楽しいな!」



 サナを楽しませるはずが、いつの間にか自分が一番楽しんでいる気がする。


 昨晩ホロロと強い絆を作ったこともあり、すべてが輝いて見えた。



「サナ、市場に行ってみようか。珍しいものがあるみたいだぞ!」


「…こくり!」



 続いてアンシュラオンたちは市場を見学。


 新鮮な野菜や肉、魚介が売りに出されている光景は、日本の市場とまったく同じだ。店主の声が大きく響き、客もそれに応えて楽しげに買い物をしている。



「…じー」


「………」



 サナが魚を見て回っている間、その後ろにはしっかりとメイド服のホロロが付く。


 街中を出歩くサナは高価なロリータ服を着ているので、その光景だけ見れば完全にお嬢様とメイドである。


 道行く人々も、どこの良家のお嬢様がやってきたのかと振り返るほどだ。その愛らしさと美貌も注目の的だろう。


 ただし、サナはもう武人であるし、ホロロも戦闘訓練を積んでいるので、周囲を見回しながらしっかり警戒もしている。人混みもよい鍛錬の場になっているようだ。


 そして、ホロロがいることでサナの生活も大きく変わることになる。



「…じー」


「こちらは何ですか?」


「ホヤッガイだな。魚と貝の中間みたいな変な生き物だが、いい味が出るんだ。海水か調味料を入れた水を注いで鍋にすると美味いぞ」


「なるほど、ありがとうございます」


「…じー」


「こちらの大きな魚は何というものでしょうか?」


「ああ、こっちはホンホセオだ。白身の魚だな。鮮度が高いやつは刺身もいいが、寄生虫がいるかもしれないから火を通したほうがいいだろう。脂身も多くて焼き魚にすると美味いんだ」


「ありがとうございます」


「そういえばホテルにパーティー用の自炊場もあったね。別料金を払えば使えたはずだよ。ロリコンも酒を飲むから、ツマミに適当に買ってみてもいいかも。買い物全般はホロロさんに任せるよ」


「かしこまりました。サナ様、どれにいたしましょう?」


「…じー。ぐっ」


「では、こちらの魚と貝をいただきます」


「まいどあり!」



 ホロロはサナにも深い愛情と尊敬を示し、常に恭しく対応していた。声が出ないことも障害ではなく、むしろ大きな個性として受け入れていることがわかる。


 彼女が疑問に思うことがあれば代わりに訊いてくれる。それがあまりにも自然なので、おせっかいに感じさせることはない。


 店側も、お付のメイドが世話をするのが上流階級の習わしだと思っているようで、サナが話さないことに対して疑問を抱かない。余計な詮索やトラブルを避けるためにも役立っていた。



(いやぁ、オレって女運があるよな。サナやホロロさんみたいな素敵な女性と出会えて、こうして一緒に過ごせるなんて最高じゃないか)



 これぞ夢にまで見た自由で従順な女性に囲まれた生活である。感動で涙がこぼれそうになる。



 市場を見ていたら、あっという間に午前中が終わった。


 カフェで軽い昼食を食べたら、今度はハローワークだ。


 ハローワークはちょうど街の真ん中、大通りの中心にあったのですぐにわかった。


 その隣にも大きな建物があり、入り口には警備兵が立っている。あれが詰所だと思われた。



(詰所はまだいいか。いつでもいいって言われたからね。もう少し経ってからにしておこう)



 どうせあの盗賊は小物であるし、こっちもたまたま遭遇しただけなので有益な情報はない。凶悪な盗賊に関しては三人組が調べているだろうから、もう少し時間が経ったら新しい情報も入るはずだ。


 ひとまず今はハローワークに入ることにした。



(グラス・ギースと同じくらい大きいな。街なのに都市級だよ)



 ハピ・ヤックのハローワークは、学校の校舎くらいありそうな大きな建物だった。グラス・ギースのものと比べても遜色はない。


 さらに人の数が多いため、出入りする数は数倍以上だ。


 アンシュラオンたちもミスター・ハローに挨拶をしてから中に入り、さっそく窓口に向かう。



(ここのハローワークはわかってるなぁ)



 受付は全員女性だった。これこそ大組織の嗜みであろう。


 受付さえよければすべて許される。何が哀しくて男と触れ合わなければならないのだろう。ハピ・ヤックは素晴らしい街だと断言できる。



(さて、窓口はどこにしよう。昨晩は豊満なホロロさんをたっぷり堪能したから、今日は普通くらいがいいかな)



 選び方がやや不純ではあるが、若干小百合に似た女性の窓口に向かう。



「魔獣素材の換金をしたいんだけど、頼めるかな」


「ハンター証はお持ちですか?」


「オレとサナの両方の分でいいかな?」


「お嬢様もハンターだったのですね。はい、承りました」



 ハンター証を専用の機械に通すと、蓄積されたデータが表示される。


 これは持ち込んだ魔獣素材が、適正に取得したものかを確認しているのだ。


 それと同時に、ポイント査定も行われる。


 その結果―――



「こ、これは…」


「どうしたの?」


「い、いえ。サナ・パム様の討伐数が…あれ? 故障かしら?」


「たぶんそれで合ってるよ。ハビナ・ザマからの旅路で三百体くらいは倒したはずだからね」


「こ、根絶級も混ざっているのですが…それもかなりの数です」


「それも間違ってないね。調べてもらえればわかるけど、単独で倒したやつも多いはずだよ。最初に言っておくけど、オレはほとんど手助けしていないからね」


「………」


「お姉さん、大丈夫?」


「これは大変失礼いたしました!! サナ・パム様の累計ポイントが120ほどになっております。レッドハンターへの昇格申請が可能となっておりますが、いかがいたしましょう?」


「相変わらず辛口査定だよね。根絶級を倒したんだから、一気にブルーハンター申請はできないの?」


「これでも凄い戦績なのです。普通はこれほどまでに一気には上がらないものです。しかし、ノンカラーであるサナ・パム様が短期間でこれほどの戦績を挙げるとなると、やはりホワイトハンターのアンシュラオン様の関与が……え? ホワイトハンター!?」



 どうやらサナのほうに意識が向いていて、アンシュラオンの情報が目に入っていなかったようだ。


 さらにお姉さんがパニックになる。



「た、大変失礼いたしました。ちょっと上司を呼んできます!」


「上司は男?」


「はい、そうですが…」


「お姉さんで大丈夫だよ。いや、お姉さんがいいんだ! 君ならやれる! オレたちの命運は君に託すよ! もっと自信を持って!」


「は、はい! ありがとうございます!」


「じゃあ、サナのレッドハンター申請をしておいてよ」


「承りました。こちらは課長の審査と承認が必要ですので、翌日には許可が出ると思います」


「オレのポイントは変わってない?」


「はい。620のままとなっております」


「弱い魔獣ばかりだから仕方ないか」



 ホワイトハンターがいくら根絶級を倒しても、1ポイントたりとも増えないのは仕方ない。ハンターたるもの、もっと大物を狙えということだろう。


 だが、その大物が滅多にいないのだからどうしようもない。今は素直にサナの昇格を喜ぶべきだ。



「では、魔獣の素材は裏のほうにお持ちください。査定させていただいます」


「うん、わかった。そういえば旅の途中でパーティー以外のメンバーが魔獣を倒したんだけど、その素材はどうなるのかな?」


「相手側が登録済みの他のパーティーであった場合は、互いの取り決めが優先されます。もし一般人であった場合は、一時的にパーティーに加入したものとして処理させていただきます」


「つまりはオレがそのまま売っていいってことだね。当たり前だけど、ハンターじゃない一般人が魔獣を倒してもポイントは増えないんだよね?」


「そうなります」


「ロリコンはともかく、ホロロさんたちはパーティーに入れたほうがいいのかな?」


「私はメイドですので、ご判断はお任せいたします」


「うーん、ポイントが貯まってもハンターじゃないとあまり価値はないんだよなぁ…」



 ホロロもハンター登録すればポイントが貯まるが、実際のところポイントを貯めたところで使い道がない。


 せいぜいハンター証という身分証ができるくらいだが、そちらも自分と一緒ならば特に意味はないのだ。彼女はグラス・ギースの下級市民証も持っているからだ。



「今回はいいか。変に名前が載って狙われたら嫌だしね。換金だけよろしく」


「承りました」



 こうして魔獣の素材と懸賞金で一億五千万をゲットする。


 朝、ロリコンと一億円がうんたら話していたが、あっさりと手に入れてしまうのだからハンターはやめられない。(倒した数を考えれば安いくらいであるが)




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