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『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』(新版)  作者: 園島義船(ぷるっと企画)
「英才教育」編
123/618

123話 「さらばハピナ・ラッソ! また会う日まで!」


 朝、ホテルのロビーでロリコンと合流。



「昨日は遅かったみたいだが、何時頃に戻ってきたんだ?」


「深夜だったかな? 日をまたいでいたのは間違いないね。帰る途中でサナが寝ちゃったくらいだし」


「そんな時間までカジノにいたのか。子供にあんまり夜更かしさせるなよ」


「それは反省しているって。成長期だから睡眠はたくさん取らせたいよね」


「で、いくら儲けたんだ?」


「まあ、それなりにね。宣言通り、億は超えたよ」


「おぐうううううううううううううう!? 本当に儲けたのか!? なぁ、本当なのかぁあああ!」


「いちいち反応がオーバーなんだよなぁ。昨日は大フィーバーだったからね。ロリコンも来ればよかったのに。こんな勝機を逃すなんて商人失格だぞ」


「ちくしょううううううう! ロリ子がいたから行けなかったんだよ! あいつ、ギャンブルとか嫌いだからさ! 負けたら絶対怒るからな…」


「オレが言うのもなんだけど、ロリ子ちゃんが正しいね。危ない場所に行かずに普通に暮らすのが一番だと思うよ。慎ましく平和に生きるのが正解さ」


「それはそうだろうが…羨ましいな」


「アンシュラオンさん、おはようございます!」


「ロリ子ちゃん、おはよう」



 ここでロリ子も合流。


 彼女は夫を見つけると、夫婦ならではの近い距離感で話し始める。



「在庫のチェックは大丈夫? 昨日、お野菜が安かったから少し買っておきましょう。ハピ・ヤックまでは距離もあるし、余っても途中のキャンプで売れるかもしれないわ」


「そうだな。ちょっと買い足してから街を出るか」


「ほら、帽子が曲がってるわよ。アンシュラオンさんもいるんだから、身だしなみには気をつけてね」」


「わかってるって」



(多少浮き沈みはあっても商人として独立してて、可愛い奥さんもいる。実はこいつが一番の勝ち組かもしれないよな)



 額としては自分のほうが金を持っているが、血と闘争の果てに得ているものだ。それが幸せかと問われると答えに窮する。


 危険に巻き込まれないという前提だが、人間の幸せとは、ごくごく当たり前の生活の中にあるのかもしれない。



「食事をしたら出発しますが、もう用事は済みましたか?」


「ああ、大丈夫だよ。全部終わったから」


「では、レストランに行きましょうか」


「あっ、ちょっと待ってね。オレのお客さんだ」



 アンシュラオンがロリ子を制止。


 その視線の先には、ホロロと母親の姿があった。



「おはようございます、アンシュラオン様。昨日は本当にありがとうございました」



 二人が深々と頭を下げる。



「うん、晴れ晴れとした素敵な表情だね。すごい魅力的だよ。それが君の本当の美しさなんだね」


「ありがとうございます。アンシュラオン様に出会って生まれ変わった気持ちです。母もあなた様に御礼を言いたいようでして」


「昨日何度も聞いたから、もういいんだけど…」


「いえいえ、あたしゃもう感激して感激して! あと三十年若ければ抱かれたいくらいでしたわよ! あはははは! 申し遅れましたね。私はホロロの母、アロロ・マクーンといいます」



 母親のアロロは、もう車椅子にも乗らずに普通に歩いている。


 肌にも生気が戻って顔色も良い。むしろ元気一杯になりすぎて、身体が一回り大きくなったようだ。


 全身の細胞を一度命気で洗浄して再構築したので、その際に若返りに近い効用があったのだろう。四十代と言われても違和感がない見た目になっていた。



「今でも十分綺麗だよ。さすがホロロさんのお母さんだね。美人だ」


「あらま! そんなことを言われたら本気にしちゃいますよ! でもまあ、こんなおばさんが浮かれたら娘に叱られちゃいますね。この子ったら、ずっとあなたの名前ばかり唱えているんですよ」


「お母さん、余計なことは言わなくていいの」


「ああ、そうなんだ。そんなに想ってくれるのは嬉し……ん? 唱えて…いるの?」


「それはもう、明け方からずっとですよ。こっちがうるさくて眠れないくらいでしてね」


「お母さん」


「はいはい、わかっていますよ。んまー、この子ったら、二十九にもなって奥手なんだから。もっとこう、強くドーンとアピールしないと」


「そんな…畏れ多い。私はアンシュラオン様を見ているだけで十分満たされるのよ。はぁはぁ…じー」



 ホロロがじっとこちらを見つめてくる。


 その視線はねっとりと熱っぽく、心ここにあらずといった様子だ。


 それをロリコンが冷やかす。



「なぁ、あんな美女といつ仲良くなったんだよ。昨晩遅かったのは、あの人としっぽりやっていたからなんじゃないのか?」


「しっぽりって、いつの時代のオヤジだよ。昨日たまたま出会っただけさ」


「でも、どう見てもお前に気があるよな」


「オレって年上からは滅茶苦茶モテるからね。自覚はあるよ。でも、普通はもっとこう愛しそうに呟くとか、そういう感じじゃないの? お経じゃあるまいし、唱えるってどういうことなんだろう?」


「べつに差はないんじゃないのか? まあ…ちょっと視線が強すぎる気もするけどな。そういえば、前にカーリス教徒があんな目で女神像を見ていたような…」


「それって宗教だよね? やばいやつじゃん」


「あの人に何をしたんだ?」


「カジノの帰りに絡まれていたのを見たから、ちょっと助けただけだよ」


「あー、そりゃもう駄目だな。そんなの惚れるに決まってる。まあ、好かれるのは悪いことじゃないだろう。何でもいいじゃないか」


「まあ、そうなんだけどね…」



 若干疑問は湧いたが、美女に想われることは悪いことではない。


 ここは素直に受け入れておくとしよう。



「あの…アンシュラオン様はどちらまで行かれるのですか?」


「ハピ・クジュネに行く予定だよ。その後は未定。サナが気に入れば長期滞在してもいいかなとは考えているけどね。ホロロさんは、これからどうするの?」


「私たちはグラス・ギースの下級市民なのです。本当は母の治療のためにハピ・クジュネにまで行こうとしていたのですが、その途中で容態が悪くなり…」


「それで連中に付け込まれたのか。本当に大変だったね」


「今にして思えば、入院したおかげで母が持ちこたえられたので、あのことも必然だったのだと思います」


「じゃあ、グラス・ギースに戻るのかな?」


「………」


「ん? どうしたの?」


「私は…その……」


「とりあえず私たちもハピ・クジュネにまで行こうと思うのです。一緒に行ってもよろしいでしょうか?」


「お、お母さん…迷惑をかけては失礼よ」


「馬鹿な子だね。あんたは自分のことになると、いつもそう。もうわかったはずよ。自分の気持ちに正直に生きなきゃ人生はつらいだけ。そうですよね?」


「オレもそう思うよ。ホロロさんは十分がんばった。これからは自分のために生きるべきさ」


「…はい」


「じゃあ、紹介しておくね。こっちがロリコン、そっちがロリ子ちゃんね」


「ロリ…コン?」


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 ロリコンが叫ぶが、ロリコンはロリコンなので仕方ない。他になんと呼べばよいのかわからないので、ホロロにもロリコンと説明しておく。



「ロリ子ちゃんもいいかな? ちゃんとお金は払うから一緒の馬車に乗せてもらえる?」


「護衛してもらうのですから、お金なんていりませんって! 旅をするのに一人や二人増えたところで何も変わりませんよ。ぜひぜひどうぞ」



 さすがロリ子である。本心かはともかく、営業で培ったスマイルは見ていて気持ちいいものだ。


 金はいくらでもあるし、あとでいくらか包んでやる気遣いを見せれば特に問題はないだろう。



「ね、ホロロさん。向こうもこう言っているし、一緒に行こう」


「そ、その…よろしい…のでしょうか?」


「もちろんだよ。な、サナ?」


「…こくりこくり! ぎゅっ」



 サナがホロロに抱きつく。


 どうやら彼女の胸が気に入ったようで、顔をうずめるのが好きなようだ。昨日も抱きついたまま眠ってしまったくらいだ。


 しかし、兄と違って健全に感じられるのは気のせいではないだろう。サナからは純粋な好意と愛情が見て取れる。あるいは『母性への飢え』だろうか。



「サナがこんなに他人に懐くなんて初めてだ。お兄ちゃん、ちょっと嫉妬しちゃうな…。サナちゃん、お兄ちゃんにもぎゅってして!」


「…ぎゅっ」


「やったー! サナちゃんがぎゅってしてくれたよぉおおおお! 大好き!」


「うふふ…。私はホテルでメイドを務めておりましたので、こんな私でもよろしければ好きに使ってくださいませ」


「おおおおお! メイド!? 本当に!?」


「はい。グラス・ギースで高級ホテルのメイドをしておりました。このホテルに泊まっていたのも、そこの伝手を使って格安にしてもらっていたからなのです」


「いいねいいね! メイドは最高だ! テンション上がるなぁ!」



(ホロロさんはメイドだったのか。従順な女性といえばメイドは定番だ。これはポイントが高いぞ)



 容姿も職種も、どストライクである。これほどの逸材はほかにいない。ますます一緒にいたくなった。


 こうしてアンシュラオンとサナ、ロリコン夫妻、ホロロ親子の六人でレストランに行く。


 その後、食事を終えたアンシュラオンたちは、ハピナ・ラッソの入り口に赴き、駐車場で新しい馬車を受け取る。


 馬車は何事もなく出発し、交通ルートを通って南に進路を取った。


 その途中、ロリコンが不思議そうに首を傾げる。



「なぁ、なんか街の様子が変じゃなかったか? 慌しいというか、バタバタしていたように見えたが…」


「そう? 朝はどこもあんなもんじゃないの?」


「うーん、門も壊れていたみたいだし、カタギに見えない連中も走り回っていたよな。何かあったのかもしれんぞ。…お前、本当に何もしていないんだよな?」


「なんでオレ?」


「どう考えても一番やらかしそうなやつだからな」


「心外だなぁ。カジノで大フィーバーがあったから、興奮した誰かが暴れたんじゃないの? どっちにしろ、もう関係ないことさ。いちゃもんをつけられる前に、さっさと勝ち逃げしようよ」


「それもそうだな。厄介事には関わらないのが一番だ」



 ロリコンも適当なので、そのあたりは簡単に終わる。


 こうして他の場所に去る者たちはよいが、街を牛耳っていたボスが死んで金もなくなったのだから、今頃ハピナ・ラッソは大混乱の中にあるだろう。



(ボスが死ねば、また次のボスが生まれる。それだけのことさ。誰かが街を管理しないと荒れるだけだしね)



「さよなら、ハピナ・ラッソ。十分稼がせてもらったよ。街に金が貯まった頃にまた来るね」



 不吉な言葉を残し、次の街であるハピ・ヤックに向かうのであった。




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