表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/87

第72話 次は魔王軍結成? いやいや、俺は別に叛旗を翻したいわけじゃない

 いきなり手を引っ張られた俺は、唯桜(いお)に暗がりへと連れ込まれた。


「あの、唯桜さん? 一体、なんのご用で……?」


 甘ったるい雰囲気などない。唯桜はいつもの澄まし顔であるが、その眼差しに少々真剣な雰囲気が漂っている気もする。


「リベル様、お怪我などはありませんか?」

「ないよ」


 実際、怪我などない。そりゃあ、ピースメーカー・バントラインスペシャルと事を構えたんだから、怪我どころか死んでいてもおかしくないのだが、なんとか無傷だ。運が良かったとして言いようがない。


「安心しました」


 安堵のため息をつく唯桜。いつも俺を千尋の谷へと叩き落としているくせに、今日はなんか心配性だ。


「運が良かったんだ。でなきゃ、今頃……」


 もし、ピースメーカー・バントラインスペシャルにやられていたら――と思うと、ゾッとする。あいつのレーザービーム(正式名称は知らん)を浴びた瞬間、人体は熔けてしまうだろう。ぴゃあああああああああ! 絶対やだ!


「リベル様?」


 怖ろしい想像をしてしまいフリーズした俺を見て、唯桜が首をかしげる。かわいい。


「そういえば、リベル様は私の背を追い越されたのですね。こうしていると実感します」


 リベル・リヴァイ・バントラインは高身長のイケメンなので、タッパだけはあるのだ。すくすくと育ったからな! 大和民族だった頃の身長はとうに追い越している。遺伝子は残酷だね。


「そ、そうだな」


 なんか、今日の唯桜は様子がおかしい気がする。


「唯桜、なんか変だぞ。おかしなモノでも食ったか?」

「失礼な。そもそも、私は機械人形(オートマタ)。食事は必要ないことはご存知でしょう?」


 物の例えに気づいていない。これはおかしい。オーバーヒートでもしたか?


「……熱くはない、かな」

「リベル様。なにをなさっているのです?」


 額と額を合わせても、熱っぽくはない。むしろ、少しひんやりしている。どういう素材なのかはわからないが、唯桜の肌は人のそれと変わらない感触で、しかも滑らかさにおいてはそれ以上だった。


「いや、熱でもあるのかなぁ……と。熱暴走とかしていたら大変だ」

「…………なるほど。ですが、構造自体が異なる私の表面温度を曖昧な人の触感で計るのは、些か乱暴ではないでしょうか」

「そうなのか?」


 馬鹿な、ママンや前世の母親もこうしていたぞ!


「そうなのです。いいですか、私は人間のお側に仕えるために設計されています。したがって、人間が不快感を抱かないよう留意されているということです。体温についても同様です。内部で多少温度が上昇しようとも、表面温度には出ないような加工がされているのです」

「つまり?」

「人間のように体温を計っても何もわからないということです」


 よくわからんが、そういうことらしい。


「まあ、いいや。それで、唯桜えもんはなんでこんなところに連れてきたんだ?」

「まずはリベル様のお体に不調はないか、そして……魔王様の次の目的です」

「………………………………………………は?」


 ちょっと待て。俺はさっきまで魔王の仮面をかぶらされて、死にかけたのだ。何を言っているのだ、このメイドは。


「唯桜さんや。俺は、魔王の扮装で、さっきまでキミが心配するような相手と戦って、なんとかかんとか生き延びて、あの怖ろしいエイジに不意打ち気味だけど勝ってきたのだよ? そんな俺に、まだ何かを求めるのかね? 魔王活動、頑張ったじゃないか」


 正確には頑張らないと死にかねないから頑張っただけであり、魔王としての活動を認めたわけではないけど。


「あんなの、リクリエーションです。ちょっとした催し物です。あくまで魔王その人としての活動ではないので、魔王活動の一部と認めるわけにはいきません」

「はぁぁぁぁぁあああ⁉ マジで言ってるの、あんた‼」


 信じられない。主を窮地に追いやって、リクリエーションとか……!


「改善だ! 改善を要求する!」

「リベル様、お母君の夢を壊すおつもりですか?」

「ママンがこんな大それた夢を息子に託していてたまるか!」

「チッ……。わかりました。では、夜水景(よみかげ)と一緒に自首しましょう。運が良ければ死刑は免れるかもしれません」


 おいおい、コイツ今舌打ちしたぞ。ん? 死刑?


「唯桜さん? なんで死刑になるの?」

「え? 魔王はもはや反体制の旗標ですよ? あんなカッコいい宣言をしておいてしらばくれるのですか?」

「え?」

「え?」


 宣言なんかしたか? むぅ、記憶が曖昧だ。魔王活動をしているときは社畜モードに入っていることが多いからか、あんまり記憶に残っていないんだよなぁ。


「とにかく、次の目標はこれです。ドン!」


 何処からともなく取り出したフリップ。


「なになに……。魔王軍結成への道のり――なんだこれ?」

「いくらなんでも、銀河帝国という巨象の前ではリベル様はぎょう虫――もとい、アリ程度の影響力もありません」


 こいつ、ひょっとして俺のこと嫌いなのか?


「しかし、巨象といえども、アリの大群を相手にすると倒せます。アリの大群、つまりは魔王の軍勢を結成するのです!」

「はぁ……」


 燃えている唯桜。とはいっても、表情はすまし顔である。あんまり表情変わらないんだよな、いおって。


「名付けて、リライズス!」

「‼ やめろ! それだけはやめろ!」


 唯桜を制止する俺。なんて名前を使おうという気だ、怖ろしい。ホント、怖すぎるよこのメイド。


「なんでですか! いい名前じゃないですか。圧政に沈んでいた者たちが再び浮上する――銀河帝国に叛旗を翻すにあたって、コレ以上の名前がありますか⁉」

「わかった認めよう。でも、その名前だけは却下だ。却下させてくれ」


 俺が頑なに拒む理由、それは――このリライズスという組織名が『銀光の勇者シルヴァリオ・エイジ』で本当に魔王の組織として登場していた名前だったからだ。こんな名前を冠してしまえば、俺が魔王ともはや既成事実と化してしまう。


「どうしましょうか。では、叛逆者という意味でリベリオンにしましょうか」

「それでいい、それにしよう」


 なんか引っかかる名前だが、如何にも魔王魔王した名前よりはマシだ。


「さて、次の魔王活動です。人材確保と教育その他諸々……。腕が鳴りますね」

「鳴らないしやりたくない」

「わがままを言わないでください」


 本心からの返答はむべもなく切り捨てられるのであった。


「これってわがまま? 唯桜のわがままの定義って何? 大体、なんで俺が魔王なんてやらなきゃいけないんだ! ビェェエエエエエエエエエエ!!!!」


 俺の叫びは空に溶けるばかりで、誰も答えてくれなかった。

アヒャヒャ(●´∀`●´∀`●´∀`●´∀`●)アヒャヒャ

当作品は皆様の応援、感想、コメント、高評価によって成り立っています

別に減るもんでもないので、ぜひぜひよろしくおねがいしまーす

カーッ(゜Д゜≡゜д゜)、ペッ

(´∀`*))ァ'`,、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ