第87録 VS飛竜
前回のあらすじ
・ララーナを探して山の中
・マキジを襲う、女性陣の口撃!
今回は、飛竜をボコボコにしてやるぜ!
「……あれが飛竜か……!」
「聞いてはいましたけど、実際に見るとやっぱり圧倒されますね……」
木陰での休憩を終え軽く作戦会議をした後、俺達は飛竜のいる窪地へとやって来た。
話に聞いていた通り、その巨体は小さな屋敷程はあるだろう。全長は……うーん、今は丸まって寝ている? みたいだから分からないな。
……軽く【分析】をかけてみるか。
分析結果:飛竜。中型種。全長15m。軽度のストレス状態。
「これで中型なのか。これよりでかいのも居るとかちょっと想像つかないんだけど」
「因みに拙者は大型の飛竜を見たことがあるでござるよ。まぁ近づくこともなく風圧で吹き飛ばされたんでござるが……」
……流石は【不幸阻害】前のララーナだ。なんて運の悪い……
「マキジ、作戦は先程の通りで問題ありませんか?」
飛竜を前にソワソワしているシャルロッテさんが作戦がそのままでいいか最終確認をしてくる。
「問題ないですよ。それじゃあ俺から行きますね。【移動阻害】【AGL阻害】」
俺は飛竜に向けて淡々と【阻害】をかける。
……今回の作戦は至って単純だ。
俺の【移動阻害】で飛竜をその場に固定、そして今回初登場の【AGL阻害】をかける。
動けなくなったところをシャルロッテさん中心で総攻撃して倒す、という作戦と言えるか怪しいものである。
【AGL阻害】は特に何の捻りもなく、ステータスのAGLを阻害する。これだけ聞くと良くあるデバフ効果だ。
が、そこはユニークスキル。下げ幅が尋常ではない。
【AGL阻害】は対象のAGLを最低にするのだ。つまりどうなるかというと……
「では行きます!」
「拙者も参るでござる!」
「よし! じゃあ俺も!」
俺の【阻害】スキル使用を確認してシャルロッテさんとララーナが飛び出す。俺も鞭の届く範囲までその体を躍らせた。
それに気が付いた飛竜が動こうとするが、当然【移動阻害】でその位置からは動けない。
「!?」
「……おぉ、魔物でも驚くと目を見開くんだな」
この飛竜、思ってたより知能が高そうだ。その辺も【分析】で見ておけば良かったかな。
次に手足は動くことに気が付いて、こちらを攻撃しようとする飛竜であったが……
「!?!?!?」
「おぉ、戸惑ってる戸惑ってる」
音で表すならのそり、と表現するのがいいだろう。緩慢な動きの手足を接近しようとするシャルロッテさんに向けるが、彼女は当然のように回避。AGLが高いからね。
【AGL阻害】の厄介なところは前触れなく自分の動きが遅くなることにある。
今いる位置からは動けず、動かせる部分はいつもと違って上手く動かない。戸惑うなというほうが酷だろう。
「はあぁぁっ!」
「ふっ!」
「よっ!」
そうして、動きの取れない飛竜へ易々と近付いたシャルロッテさんの気迫の一撃と、少しばかり距離を置いたところから投擲物を投げるララーナ。俺も負けじと鞭を振う。
普通の状態ならば、俺達の攻撃は飛竜の硬い皮膚に対して有効なダメージを与えられなかっただろう。
だがしかし、残念ながら現在の俺達の状態は普通ではない。
攻撃を受けた飛竜は思わぬ苦痛に低く重たい咆哮を口から吐き出したのだ。
【防御阻害】がかけられた攻撃は、硬い皮膚をも容易く切り裂き、破り、貫く。
「……! まさかこれ程までとは……!」
「投擲武器で飛竜にマトモなダメージを与えられたなんて前代未聞ではござらぬか!? もしや拙者、偉業を成し遂げたのでは!」
あまりにも簡単に攻撃が聞いたことに、攻撃を行った二人の方が驚いている程だ。
……てかララーナさんや。一応戦闘中なんでもうちょっと集中してくれ……
「……!」
「! マズイ! マール! マリアさん!」
「はいっ!」
「お任せ~!」
体も手足も思うように動かない飛竜は、遂に竜種に許された絶大な威力を誇るブレスを放とうとしているのだろう。口に燐光が見え始めている。
ただ、それをのんびり見ているほどこっちも優しくはない。
【攻撃阻害】を全員にかけてあるから大丈夫だとは思うけど、目の前に飛竜のブレスが飛んでくるとか考えただけでもゾッとする。とにかく阻止だ。
「【アクアバレット】!」
「【ストーンバレット・ラッシュ】~!」
二人の魔法が吸い込まれるように飛竜の顔にぶち当たる。
そして再び上がる咆哮は悲鳴のような悲痛さを含んでいた。
当然のように二人にも【阻害】スキルをかけてある。
かけたのは【魔法耐性阻害】だ。一度闇ギルドの拠点を破壊するために使用したが、今回は味方に対してかけてみた。思った以上に上手く効果は変わっているようだ。
【魔法耐性阻害】
付与者及びその支援者にのみ適用。
攻撃対象の魔法耐性を無視する。
要するに、今あの飛竜に対して二人はどんな属性の魔法を撃っても効果があるということだ。
ブレスを撃ち損ねた飛竜に対して再びシャルロッテさんとララーナが攻撃、そして後方からはマールとマリアさんの魔法の連打。
見るからにダメージを蓄積させて弱っていく飛竜。
……ちょっと可哀想になってきたな。
とは言え相手は魔物、手抜かりは無しだ。
「よし、このまま押し込んでしまおう。エレミアさん!」
【わかった。【発動】】
俺がエレミアさんに合図をすると、彼女は短く【付与魔法】を発動した。
次の瞬間、飛竜の至るところで爆発が起こり、その体を打ちのめしていく……!
「はっはっは! どうでござるか! 拙者の苦無にエレミア殿の爆発魔法が書かれた【戦術符】を組み合わせた【爆裂苦無】のお味は!」
説明どうもありがとうララーナ。頼むから集中してくれ。
これは最近ララーナとエレミアさんが二人で作っているものだ。
エレミアさんが戦うには【戦術符】を使うわけだが、何分敵に符を貼るのは難しい。
そこでララーナの忍び道具の出番だ。
手裏剣、苦無に【戦術符】を組み合わせ、ララーナが投擲、エレミアさんが起動することで【戦術符】の使いにくさを上手く克服している。
爆発が終わり、煙が晴れるとそこには満身創痍の飛竜が横たわっていた。
既に咆哮を上げる気力もないらしい。
「シャルロッテさん!」
「ああ! ……はあぁぁぁぁぁぁぁ!」
最後の最後、【活性魔法】で自らの身体能力を強化したシャルロッテさんが、その首に渾身の一撃を叩き込む!
……勢いよく振りきられた剣線から、赤い鮮血が噴き出した。
飛竜はその首から夥しい量の血を流し、断末魔を上げると、その体から力を抜いていったのだった。
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