第74録 マキジ、秘密を話す②
前回のあらすじ
・女神様、降臨!(本体)
・エレミアさんに新たなスキルが!
女神様の奇跡から少し、俺は皆が落ち着くまで自分の話は始めず、黙って皆が状況を呑み込むのを待つ。
この状況で話を始めても集中出来ないだろうし、そもそも理解が追い付くか怪しいからな……
「スキルを後天的に与えるなんて……」
「実は若干、半信半疑でござったが、これは紛れもなく神の御業でござるな……」
「あらあら~これは凄いわね~……流石は女神様です」
どうやらエレミアさん以外の面々は立ち直って来たみたいだ。
「色々混乱してると思うけど、これでルージェニア様が女神だと信じてもらえたと思う……エレミアさん大丈夫?」
ただ、やっぱりエレミアさんだけはなかなか泣き止むことはなかった。
まぁ仕方ないよな……長く苦労してきただろうし、実際に声は出せなくても、他人と円滑にコミュニケーションが取れるようになったんだ。感情が出てしまうのも仕方ないだろう。
その気持ちは、声が出なくなったことの無い俺には分からない。彼女だけのものだ。
俺は声をかけながら踞るエレミアさんに近付くと、様子を伺おうとしゃがみ込んだ。
すると、
【マギジィィィィィィ~~~~!!!】
「おわっ!?」
しゃがみ込んだ俺に、急に抱きついてきたエレミアさん。
なんとか倒れることなく抱き止めることはできた……危うくバランスを崩して倒れて、皆の前で押し倒されるところだったわ……
「……良かったですね、エレミアさん。ホントによかった」
まだ【無声病】が治ったわけではないが、今の彼女にかける言葉を、俺は残念ながらこれ以上持ってはいなかった。
代わり、と言ってはなんだが、声をかけながら背中をポンポンと叩く。
【……マキジ、ありがとう。貴方についてきて本当に良かった。前に言っていた勉強の件、私頑張るから】
「うん。それはお願いします。まぁ、スキルを与えてくれたのは女神様だから、俺が感謝されるのはちょっとおかしい気もするけど」
今回はたまたまルージェニア様が力の一端を見せるため、エレミアさんにスキルを与えてくれたけど、俺の力じゃない上に偶然だ。
ルージェニア様が感謝されこそすれ、俺が感謝されるのはお門違いだと思うんだよね。
俺がそう言うと、急にエレミアさんが泣き止んだ。
【マキジ。それは違う】
エレミアさんは俺から離れて涙を拭うと、俺を真っ直ぐに見つめて伝えてくれる。
【貴方が私を助けると決めて、ここまで連れてきてくれた。これは紛れもなく貴方の決断の結果。だから、感謝されてもいいの】
「……エレミアさん……」
「ふふふ、良かったですねマキジ。私もこれ程喜ばれると嬉しいものです」
俺がエレミアさんに諭されて感動していると、様子を伺っていたルージェニア様が話しかけてきた。
……空気読んでよ……
「……ルージェニア様、エレミアさんのこと、ありがとうございました」
「いえいえ、マキジには私に協力してもらわなければなりませんからね。これくらいお安いご用です」
軽いなぁもう……
「……それじゃあ皆落ち着いたみたいだし、そろそろ俺の話を聞いてもらおうかな」
さて、どんな反応が返ってくることやら……
※※※※※※※※※※
「まずは皆に謝らなきゃならない。特にマール、君には」
「私……ですか?」
……正直、かなり言いづらくはある。マールには記憶喪失をかなり心配してもらっていたからな……
「実は……俺は記憶喪失なんかじゃないんだ。騙していて本当に申し訳なかったッ!」
そう言うと俺は皆に向かって深く、深く頭を下げる。心臓の音が耳にうるさい位に、俺の謝罪と共に会議室には沈黙が流れた。
「……マキジくん」
「は、はいッ!」
「良かったです……私のせいで記憶がなくなったとかじゃなくって、本当に良かったです!」
「え?」
怒ら……ないの?
というか、マールのせい?
「私、マキジくんは違うって言ってくれてましたけど、ずっとあの時、ゴブリンから庇ってくれたせいでマキジくんの記憶が失くなってしまったんじゃないかって思ってて……本当に……良かったよぉ……」
「マ、マール?!」
今度はマールが泣き出してしまった……これ、どうあがいても俺のせいだよなぁ……
「……ごめん。ごめん、マール。俺が記憶喪失なんて嘘をついたから、辛い思いをさせた。本当にごめん……」
「いいんでずっ……! ズズッ……マキジくん、嘘をつかなきゃならない理由があったんですよね?」
「うん。これからそれも話すよ。信じてもらえるかは分からないけど。ただ、俺が話すことは女神様が保証してくれるとだけは言っておくよ」
「わかりました。急に泣いてごめんなさい。続きをお願いします」
涙を拭うと、俺の話を聞くために姿勢を正すマール。
周りを見るとマリアさんもララーナも、それにエレミアさんもこちらの話を待っているという感じだ。
……もう、後には引けないな。
「……俺が記憶喪失を偽っていたのは、俺の生まれた場所や、育った場所がこの世界には無いからなんだよ。俺は異世界からこの世界にやって来たんだ」
俺の告白の後、再度会議室に沈黙が流れる。
最初に破ったのはルージェニア様だ。
「皆が戸惑うのはわかります。ですが、これは事実なのです。彼は地球という世界の日本という国で生まれ育ちました。どうですか? 聞いたことがありますか?」
「ないですね~。ギルド勤めも長いので~、別の大陸の国の名前も知っていますが~……チキュウもニホンも聞いたことがありません~」
「拙者も里の書物で色々と世界のことは学んだでござるが……聞いたことがないでござるよ」
【私も。今までいろんな本を読んできたけれど、そのような地名を見たことがない】
「じゃあ、マキジくんは記憶喪失じゃなくて、そもそも私達の世界のことを知らなかった、ってことですか」
ルージェニア様が最初に切り出してくれたお陰で、うまく皆も状況を呑み込んでくれたらしい。
「今まで黙ってて悪かったとは思う。けど、いきなり俺は異世界から来たんだ、って言っても誰も信じてくれなかったと思うんだ。だから俺は、記憶喪失を装うことにしたんだよ」
「そうだったんですね……」
「うん。だからさ、俺はこの世界で生きていくために、色々学ばなきゃならない……厚かましいお願いかも知れないけど、これからもついてきてくれるかな……?」
今まで嘘をついていた手前、かなり厚かましいだろう。それでも、お願いしたい。ここでお別れなんて悲しすぎる。
恐る恐る聞く俺だったが、それに対する皆の反応は真反対に明るいものだった。
「当然です! マキジくんと私は同じパーティーメンバーなんですからね!」
「ふふ、拙者なんて奴隷でござるからな! 主殿が嫌と言ってもついていくでござるよ!」
「うふふ~。私も女神様からマキジくんのこと頼まれちゃったからね~。ちゃぁんとお付き合いするわよ~?」
【当然私も。まだ私の【無声病】は完治してないんだから】
……皆……
「……皆……ありがとう……本当にありがとう……ッ!」
なんてことはない、最後は俺が、泣く番だった。
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