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第72録 一眠り終えて

前回のあらすじ

・急にフランクになる女神様

・女神様はぼっち


今回は一眠り終えたマキジと仲間達の一幕

 

「……くん。マキジくん。起きてますか?」

「んん……?」


 コンコンと扉をノックする音と共に、俺を呼ぶ声が聞こえる。

 ……軽く寝るつもりが思ったよりも寝てしまったようだ。もう外はすっかり明るくなっている。


 取り敢えずマールには起きてることを伝えないと。

 俺はのそりとベッドから出ると、そのまま扉へと歩いていき、ドアノブに手をかけた。


「ごめん、マール。寝過ごしたかな?」


 そのまま扉を開けて、目の前のマール声をかける。


「大丈夫ですよ。でももうすぐ朝食の時間が終わっちゃいますので、私が呼びに来たんです」

「……もしかして皆待ってくれてる?」

「はい! あとはマキジくんだけです」


 おおっと、それはかなり申し訳ない。急いで食堂に行くとしよう。


「わかった。直ぐに用意して行くから、宿の人に朝食頼んでおいて」

「わかりました。それじゃあ食堂で!」


 そう言って廊下を歩いていくマール見送ったあと、部屋に入り急いで身支度を整える。


「よし、こんなもんかな」


 それじゃ、皆待ってることだし食堂へ急ぐとしよう。


 ※※※※※※※※※※



 俺が食堂に入ると、奥にあるテーブルに皆が座っているのが見えたので、そのまま近付いていく。


 テーブルには先程運ばれて来たのか、湯気の上がるスープ等が置かれていて、良い匂いが漂ってくる。

 当然ながら俺が最後のようなので、一言謝っておくとしよう。


「ごめん皆ちょっと寝坊したみたいだ」

「いいのよ~昨日は色々あったから疲れていただろうし~」

「そうでござるよ。逆にゆっくり休めていたようで何よりでござる」

「……(こくこく)」

「そう言って貰えると助かるよ」


 よかった。皆、特に怒ったりとかはしてないみたいだ。

 俺は一つ開けられていた椅子を引いて座る。


「改めておはようございますマキジくん。席について早々ですけど、私もうお腹ペコペコで……」

「あはは、大分お待たせしたみたいだもんね。それじゃ、食べようか」


 俺がそういうと、チーズとパンを手に取り食べ始めるマール。

 いつもながらに美味しそうに食べるな。

 俺も手前に置かれていたスープに手をつける。


「……旨いなこれ」


 口当たりはジャガイモのポタージュだろうか。

 濃厚でとろっとした暖かいスープが起きがけの胃に落ちるのはなんとも心地良い。


「ここはギルドの直営店だから料理の質も良いのよ~。昨日の夜の料理もおいしかったでしょ~?」

「えぇ、確かに」


 神様二人のせいで忘れそうになっていたが、昨日の料理も美味しかった。まさか魚が出てくるとは思わなかったし。


 初日に香辛料無しの串焼きを食べてからこっちは美味しいものにありつけていて、嬉しい限りだ。これ食事だけでも【ギルド特別派遣員】になって良かったとさえ思える。


「それで、この後はどうするでござるか? 主殿は大図書館へ行くとして、時間があるなら拙者は任務でも受けようかと思っているでござるが……」

「私は~、ちょっとギルドでお仕事があるわね~」

【私はマキジと図書館に行くつもり】

「じゃあ私はララーナさんと一緒に任務かな」


 ララーナの一言を皮切りに、皆それぞれ今日の予定を話す。

 水を差すようで悪いけど、ちょっとだけ俺の話に付き合って貰わないとな。


「ごめん皆。それぞれの予定の前に、ちょっと話したいことがあって……マリアさん、この後ギルドの会議室って借りられます?」

「大丈夫よ~、全部埋まることはまずないから~」


 よかった。使えないとなると宿の部屋に【阻害】をかけるなりする必要が出てくるからな。


「じゃあ申し訳ないけど、この後一旦ギルドに皆で行こう。いいかな?」

「わかりました」「承知!」「は~い」「……(こくり)」


 よし、じゃあ朝食のあと全員でギルドに移動するとしようか。


 ※※※※※※※※※※


「あら、マキジ様。昨日はよく休めましたか?」


 会議室を借りようとギルドにやって来た俺は、見知った顔に気が付いて近付いたのだが、どうやらあちらも気が付いていたようだ。


「ナタリアさん……様付けは流石に背中がムズムズするので止めてもらえると……」

「そうですか? お気に召さないようなら止めると致しましょう。それで、本日はどのような御用件で?」


 ……これはからかわれたのだろうか?

 昨日のやり取りを思い出すと、ナタリアさんは事務的な表情を崩すことが少ないように思えるので、その辺判断がつかないな……まぁいいか。


「会議室をお借りしたいのですが、問題ありませんか?」

「はい。問題御座いません。会議室の使用状況を確認しますので、少々お待ち下さいね」


 そう言うとナタリアさんは、素早くカウンターの後ろにあるコルクボードのようなものに貼られた表を確認する。

 あれが会議室の使用状況を書いた表なんだろう。


「お待たせしました。空いている会議室を押さえましたので、このままご案内します」

「え? カウンターは良いんですか?」


 部屋番号さえ教えてもらえれば自分達で行けるけど……


「……はぁ……昨日も言いましたが、【ギルド特別派遣員】は貴賓扱いです。それを部屋番号だけ教えて案内なしなんてことをしたら私が怒られます。それともなんですか? マキジ様は私が怒られる姿が見たいと?」

「いやいやいや! そんなわけないです! だからその眼と様付けは止めて下さい!」


 ナタリアさんみたいなタイプが半眼で睨んだら圧が! 圧が凄いから!


「はぁ……まぁマキジさんはまだ【ギルド特別派遣員】になって直ぐですから良いですけど、少しは慣れてくださいね?」

「ぜ、善処します……」


 元がただの庶民の俺としては慣れるのに時間がかかりそうではあるけど……


「さて、マキジさんを弄るのはこれくらいにしておいて、会議室にご案内致します。皆様こちらへどうぞ」


 さらりとそう言い、スタスタと歩いていくナタリアさん……もしかすると、この人が今まで会った人の中で一番苦手かもしれん……


 き、気を取り直して会議室に向かうとするかな!

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