第67録 【ギルド特別派遣員】
前回のあらすじ
・【防音】と【遮音】の言葉遊び
・ナタリアちゃん
今回は【ギルド特別派遣員】の説明と、マキジの選択
「【ギルド特別派遣員】は特殊なスキルを持つ冒険者にギルド職員と同等の権限を与える制度です。こちらの認定を受けた場合様々な特典と、義務が発生してきます。これから順に説明していきますが、最初にマキジさんにとって最も大きいメリットを提示させていただきますね」
全員に配られたお茶を頂きながら、ナタリアさんの説明に耳を傾ける俺達……マールは一人、出されたお茶菓子に興味津々だ。説明を聞いた後で残ってなかったら味の感想だけでも教えてもらおう。
さて、先ずはメリット、と言うからには義務の辺りは俺にとってデメリットになり得るのだろうか。まぁとにかく続きを聞いてみよう。
「【ギルド特別派遣員】に認定されると、原則的にギルド所属の貴賓となるため、ギルドから人格・能力に優れた人物が護衛に就くことになります。同時にマキジさんに対して何らかの敵対行為を働いた場合、それはギルドに対して行ったものと見なされ、直ちに報復措置を取って良いものとなります。当然、マキジさんが行わなくとも、ギルドから報復措置を取る場合もあり得ます」
「えーっと、既に色々聞きたいんですが一つずつ聞きますね」
「どうぞ」
「まず最初の部分、人格・能力に優れた人物が護衛に就くと言ってましたが、最終的な同行判断は俺がしても良いのでしょうか?」
ギルドがいかに良いと判断した人物でも合う合わないは当然ある。わがままかも知れないが、もし長旅で合わない人と一緒になってしまったらと思うと中々辛い。
「それは構いません。それにマキジさんが認定を受けた場合の護衛は既に決まっていますので。間違いなくお断りにはなられないでしょう」
「え? そうなんですか?」
そんな話いつの間に? てか断らないってなんでわかるのさ?
「そうです。何故ならギルドが護衛に任命する予定の人物は既に貴方の目の前にいらっしゃる方ですから」
「目の前……って」
俺の目の前には椅子に座ったまま微笑んでるマリアさんが……
「マ、マリアさんですか!?」
「そうよ~。既にギルド長には言ってあるわ~」
「そ、そうでしたか……」
確かに護衛がマリアさんなら断る理由がない。ここまで一緒に旅をした仲だし、何よりその実力は折り紙付きだ。
「護衛についてはわかりました。次は俺に対する敵対行為についてです。これはどの辺りまでがそうなるのですか? 戦闘になる、恫喝されるなどあると思うんですが……」
敵対行為、という言い方はかなり広義だ。アウトとセーフの境界線は明確にしておきたい。
「こちらはマキジさん及び護衛……アンナマリア女史の裁量次第です。【ギルド特別派遣員】はそれほどのものだとお考えいただいて結構です」
……つまり、俺とマリアさんが黒と言えばギルドとしては黒となるわけか。
「……わかりました。信用していただいてるからこその認定と言うことなんですね?」
「その通りです。普通はかなり長い審査を要するのですが、今回はアンナマリア女史の推薦ですので」
マリアさん、一体ギルドの何をどうしたらここまで信頼されるんだ……
「では最後に、俺への敵対行為に対してギルドが報復措置を取るとありますが、こちらに俺の意思は尊重されますか?」
「はい。もしもギルドからの報復措置が不要であるようでしたら、そう言っていただければその様に」
「成る程……有り難うございます」
確かに【ギルド特別派遣員】の認定を受けた場合、俺の身の安全はかなり確保されると思っていい。なんせマリアさんの【探知魔法】もあるわけだしな。
「ではデメリットの方もご説明させていただきますね」
「あ、はい。お願いします」
さて、問題はこれだろう。一体どんな内容だ……?
「デメリットとしてはギルドから年に数度、スキルに応じた専用の任務を用意します。こちらは強制受注となっており、拒否が出来ません。拒否される場合は直ちに【ギルド特別派遣員】の資格を剥奪することになります」
「あー……強制依頼ですか……」
成る程、確かにデメリットだ。冒険者は自由に任務を受けたり受けなかったり出来るのが強み。それが出来ない任務が年に数度あるというのは結構大きなデメリットだ。
「ただ、ギルドからお願いするのはそれくらいとも言えます。あとは街の入場が規制されているときも、職員と同様出入りが可能ですし、ギルドが運営している施設等の利用料金が割引になったりしますね」
……なんか最後の方はよくある会員特典じみてきたな。
「う~ん……強制任務は気になるところだけどメリットは大きいなぁ……皆はどう思う」
正直、この世界での後ろ楯が全くない俺にとってこの話はかなりありがたい。自分の身の回りが整うまでは受けてもいいと思っている。
だがそれは俺自身の問題だ。少なくとも一緒に行動するパーティーメンバーの意見は聞いておくべきだろう。
「私はいいと思いますよ。これから冒険者を続けるにしても、箔がつくと思いますし。そして何よりギルドの直営店で食料が安く買えます!」
マールさんや、後半本音が駄々漏れです。
「拙者は主殿のなさりたいようにすれば良いと思うでござるよ。拙者はなんであれ、ついていくでござる!」
ララーナはなんというか……いつも通りだな。
【私としてはマキジが【ギルド特別派遣員】になってくれると、薬の材料が手に入りやすくなるかもしれないから助かる。でもそれ以前にマキジの気持ちが大事だから。自分の道は、自分で選んで欲しい】
エレミアさん、良いこと言うなぁ……自分の道は、自分で……か。
「あの、ね? マキジくん~……」
最後の一人、マリアさんが俯きながら話しかけてきた。
「出来れば~その~……受けてもらえるとお姉さん嬉しいな~って~。久しぶりに旅をしたけど~こんなに楽しかったのはアンジェ以来なのよ~。お願い~」
まさかのなんの捻りもなく、直球のお願いが来るとは……うぅむ。
全員、受けるか俺の意思を尊重するって感じだな……よし!
「ナタリアさん、決めました。俺は……」
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