第1録 ハローニューワールド
前回のあらすじ
・ダーツ
・バットで頭フルスイング
今回はよくある初回能力確認回的なアレ
――神の無慈悲な一撃から、数時間後……
「……うっ……痛たた……」
側頭部に何とも言えない痛みを感じながら目覚める。
……どうやら神様の2回目のフルスイングから生還できたらしい。
いやまぁ、生還というかそもそもさっきまで死んでたんだが。
しかし、ちょっとだけ言いたいこと言っただけだというのにこの仕打ち。
いくら生き返らせて異世界に転移させてもらうとしても、やっていいことと悪いことがある。
「ちょっと神様、いくら何でもバットで頭をフルスイング……は……」
ちゅんちゅん、とどこからともなく聞こえる鳥のさえずり。
肌で感じる、少しひんやりとした風。
そして濃厚な緑の香り。
「え~っと……これはもしかしなくても……」
気が付くとそこは、異世界の森でした。
「あのジジ神やりやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
※※※※※※※※※※※※
とりあえず落ち着こう。狼狽えてもあのジジ神に笑いを提供するだけだ。それだけは断固阻止したい。
深呼吸、深呼吸……
「スゥーー……うん、土臭い」
見事なまでの森の香りである。
「まず状況を確認しよう。俺はあのジジ神にスキルを入れると言われて頭にバットでフルスイングを貰った。そして気が付いたら、恐らく異世界の森にいた。当然ジジ神からは何のレクチャーも無し。以上だな」
うん、クソにもほどがあるわ。スキルの説明とかどこに行ったんだマジで。
あれが地球の神だというなら、今後の地球に不安しかない。
「はぁ……」
とにかく自分でできることをするしかない……か。
……よし! 先ずは自分の状態確認だ。ここがもし異世界でスキルなどがある世界なら、あれができるはず……!
「ステータスオープン!」
ドキドキしながら、ちょっぴりいい声で言ってみた。
……
…………
………………
「……何も起こらないとか! うわっ、くそっ! 恥ずかしっ!」
誰も聞いてなかったよね!? ていうか誰かいても困るんだけどね!?
ま、まぁあれだ。開かないことも考えていましたとも。
なのでもう一つの方法を使ってみるとしよう!
「……【分析】!」
使い方のレクチャーすら受けてなかったが、とにかく自分を意識してスキル名を唱える。
……唱える必要があるかはわからんが取り敢えず唱える!
「……うぉ!? なんか出た!」
何となくでやってみたがうまくいったみたいだ……
目の前に自分のステータスとスキルなどがゲームのウィンドウのようなものに表示されている。
名前:マキジ・ヨコシマ
年齢:18(27)才
状態:普通
所属:浮浪者
ステータス
Lv.1
HP:100/100
MP:50/50
STR:F
VIT:C
DEX:F
INT:F
AGL:F
LUK:B
所持スキル
【刻印術Lv.1】【分析】【阻害Lv.1】【異世界言語Lv.5】【生活魔法Lv.1】【ストレージ】
……VITが既に微妙に高いのは絶対ジジ神のフルスイングに耐えたからだろこれ。そんでもって死因があれでLUKがBって絶対嘘だろ……
あっ、でも生き返ってるようなもんだし、ある意味運はいいのか……?
「で、スキルはダーツの分と……これは異世界セットって言ってた分かな」
ぶっちゃけ【ストレージ】はチートだと思うんだが……まぁくれたんだから良しとしよう。
「ていうか所属が浮浪者ってどうなのよ……無所属じゃダメなのか……」
ん? ちょっと待てよ?
よくよく考えると俺、攻撃スキルとか何も持ってないな?
これはなかなか心配になる……
「とにかく、ここは森の中だし何が起こるかわからないな」
スキルの詳細を【分析】してなにか考えるしかなさそうだ。
と、いうわけで……
【刻印術Lv.1】
ユニークスキル。
任意の対象に対し、魔術式の刻印が可能。(Lv.1)
尚、この刻印は刻印術でのみ破棄が可能。
Lvが上がると刻印可能な術式が増える。
【分析】
ユニークスキル。
使用者の認識範囲内にある対象に対して解析を行い、必要な情報が分析され、使用者にフィードバックされる。
尚、この情報元は【#$883!”】に保存されている最高位の情報が使用されている。
【阻害Lv.1】
ユニークスキル。
任意の対象に対し、使用者の定めた阻害効果をバッドステータスとして付与する。
付与対象に対してかけられる阻害の数はLvに依存する。
尚、強制力の強い阻害効果は弾かれる可能性が高くなるが、Lvによって成功率は上昇する。
【異世界言語Lv.5】
パッシブスキル。
異世界マナルガムで現在使用されている言語について読み書きが可能になる。
【生活魔法Lv.1】
魔術スキル。
生活魔法を使用することが可能。(Lv.1)
現在使用できるのは【クリーン】、【パイロットファイア】
【ストレージ】
ユニークスキル。
異空間への無生物の保管が可能。容量は使用者のMPに依存する。
ざっとすべて【分析】してみたが……刻印術とかちゃんとチートスキルだったんだな。
あと、【分析】がなんか一部文字化けしてるんだが……使っても問題ないんだよな?な?
「ていうか所持スキルがユニークまみれな件。これ誰かに見られても大丈夫なやつなんだろうか……」
ホントに不安しかない……独り言が多くなるのも致し方なしというものだ。
「ともかく、現状でもしモンスターに遭遇したとしても使えそうなのは【阻害】くらいかな」
あとのスキルはモンスター相手にどうこう出来るもんでもないしな。
刻印術とか魔術式を知っていれば、うまく使えたかもしれないけども……今、生活魔法しかないし……
「……よし! このままここにいても仕方ない。とにかくこの森から出よう」
ここでどれだけ考えても状況は変わらないしな!
……とは言えぶっちゃけどっちに行けば森から出られるのかわからないんだけどね!
※※※※※※※※※※※※
―― 一時間位後……
「ダメだ……出られる気がしない……」
案の定、そこには迷っている俺がいた。
まぁ普通に考えたらそうなるよね! 右も左も木! 木! 木!
森だもんそりゃそうだ!
こんなことにも気付かないのはINTがFなのが影響してるのかな!
「くそう……このまま森の中で二度目の人生終えるとか冗談じゃないぞ……」
もしここで終わってしまったらあのジジ神に何言われるかわかったもんじゃない……それに絶対笑われる……
「何としてでもここから出て街に……ん?」
木の葉が鳴る音に混じって何か聞こえてくる……?
これは……【分析】!
分析結果:戦闘音、複数名の者が戦闘を行っている。
ダメ元で使ってみたが、どうやらこういう音なんかも分析してくれるらしい……
「【分析】凄いな……とにかく、人が戦っているならとりあえず様子を見るか」
助太刀……した方が良いんだろうけど、今は出来ることが【阻害】位しかない。とは言えこのまま森を彷徨うわけにもいかないしな。
少しだけ考えた後、俺は戦闘音のするほうへと足を向けた。
続きが気になるぞい!な貴方も、つまらんのぅ…な貴方も、評価して行ってくれると、作者が泣いて喜びます。