第60録 宿の前で一騒動?
前回のあらすじ
・地上へ戻ろう
・スティーブおじさん……
今回は戻った宿で何やら一騒動……?
スティーブさんの家を後にし、宿へと向かう俺とエレミアさん。
帰り道、すれ違う剣や槍等の武器を持った人が何人か驚いたような顔をしたりしていた。中には何故か頷いていた人もいるけど。
恐らく俺とガイルの一件を知っているのだろう。
その上で俺がエレミアさんと一緒に居ることに驚いたのか、はたまたその逆なのか、分からないがあまり気分の良いものではない。
「……ちょっと速めに歩きますよ」
「……(こく)」
エレミアさんの了承も得たので、足早に宿へと向かう。
最後の通りの角を曲がり、もう少しで宿、と言うところまで来たのだが、何やら宿の入り口が騒がしい。
何かあったんだろうか?
「あ! マキジくん遅いですよ!」
「主殿~……助けて欲しいでござるよ~……」
俺とエレミアさんが宿に近付くと、人だかりからマールとララーナがやってくる。
マールはちょっとご立腹気味、ララーナは……なんか凄い疲れた顔をしてるな。
二人から何かあったのか聞こう、俺はそう思って口を開こうとした。
だがその前に、人だかりのほうから答えが飛んできた。
「アイツだ! アイツがゲイルを倒した奴だ!」
「ホントかよ。全然強そうに見えねぇじゃねぇか」
「ゲイルの奴は横暴だったけど……へぇ、おとなしそうな顔してるじゃない」
「あらン! 思ったよりいいオ・ト・コ!」
どうやら原因は俺らしい……っていうか最後ヤバそうなのが居なかったか今!? 鳥肌立ったよ!?
と、取り敢えずマールとララーナに事情を聞いてみるか……
「えっと、原因は俺みたいだけど、どうなってるのこれ」
「私とララーナさんが帰ってきたときにはこうなってたんです。で、皆マキジくんを出せって」
「初めはお帰り願っていたでござるが、段々と帰ってくるまで待つ御仁が増えて……宿の食堂にも居てるでござるよ」
おっと……外だけならまだしも、中にまで居るのか。
宿の主人には悪いことをしたな。
「そっか。後で謝っておかなくちゃな」
「あ、それには及ばないと思うでござるよ」
「え? でも実際迷惑をかけて……」
るよね? と続けようとしたのだが……
「おっ! 兄ちゃん帰ってきたのか! いやー、兄ちゃんのお陰で商売繁盛だよ! 待ってる間食堂で酒を出して正解だった! はっはっは!」
「……あー、その、お役に立てたのなら何よりです」
逞しいな、おっちゃん……
「おい! あんた! マキジってんだよな!」
俺が宿の主人の逞しさに感心していると、しびれを切らしたのか集まっていた人の中から若い男が俺を呼んできた。
「はい、俺がマキジですけど。何か御用でしょうか?」
用件は分からないが、わざわざ俺を訪ねて来てくれたようだし、まずは話を聞いてみよう。
そう思って声をかけた。すると若い男は凄い勢いで前に出ると、これまた勢い良く話し始めた。
「ゲイルを倒したお前さんのパーティーに入れて欲しくてさ! 俺は槍を使うジャスパーってんだ! 見たところ前衛が殆ど居ないんだろ? 悪い話じゃないと思うぜ?」
……自己アピールを。
まぁその、なんだ。わざわざ宿にまで押し掛けてパーティーに入れてもらおうとする熱意は買うんだけど……
「すいません。ちょっと今は困ると言いますか、実は明日にはこの街を出る予定ですので……」
今でさえエレミアさんの荷物を取りに行って来たところなのだ。これ以上急に人員が増えたら出発どころじゃない。
「じゃあ今すぐ準備するからさ! 頼むよ!」
「いや、あの、だからですね……」
なおも食い下がるジャスパーくん。何故そんなに俺のパーティーに固執するんだ……
「ふふふ、あんたじゃマキジさんのパーティーに入るのは無理みたいね?」
「な、なんだよお前! そんなの分かんないだろうが!」
ジャスパーくんをどうしようかと思っていたら今度は別の人が前に出てきた。今度は女の人か……
「見れば分かるじゃない。マキジさんのパーティーは彼以外女性ばかり。つまり、そういうことよ」
「どういうことだよ! 分かるように説明しろよ!」
あ、この流れはマズイ!
そう思ったのだが、時既に遅し。
止める間も無く女の人は言って欲しくなかった一言を放ってしまった。
「マキジさんのパーティーはね! 彼のハーレムなのよ!」
「な、なん……だって……!? そうなのかマキジ!?」
「……はぁ……」
こう、周りがざわざわしているのを聞くに、どう頑張って弁明しても変な尾ひれが付いて町中にこの話が拡がるんだろうなぁ……
それでも弁明はするんだけど。
「違います。彼女達はパーティーメンバーであって、あー、その、そういった関係性があるわけではありません!」
これだけは言っておかないと、俺だけじゃなくて皆にも迷惑がかかりかねないからな……
「あら、そうなの。でも女性が増えるのは嬉しくないかしら? 私はこう見えて剣を使うのだけど」
そう言ってしなを作って近寄ってくる女性。
うんまぁ、そりゃ嬉しくないかと言われれば否定はしないけども。
「いや、まだ俺は自分の生き方も定かじゃないんです。冒険者としてこのまま進むのか、それとも別の道を行くのか。ですから、いまはまだ、これ以上パーティーメンバーを増やすつもりはありません。どうなるか分からない状態でドンドン人を増やすだなんて、そんな無責任なことはしたくないですからね」
そう、これはハッキリさせておかなきゃならないことだ。
まだ俺のこの世界での生活は宙に浮いたまま。
これ以上は間違いなく身に余るだろう。
俺は女性に、真っ直ぐにそう伝えた。
「……そう、じゃあ仕方ないわね。今パーティーに入ってるコは運がいいってことかしらね~」
いや、約一名の運悪いです。
「すいません。でもお気持ちは嬉しかったです。ジャスパーくんもね」
「そこまで言われちゃな……でももし! あんたの道ってのが見つかったときは考えてくれよ!」
そう言って二人と、話を聞いていた人達が解散し始めた。
この人達全員、俺達のパーティーに入りたかったのか……
「びっくりしましたけど、あの一件で随分マキジくんの名前が広まったみたいですね」
「うむ! 主殿の凄さが認められると拙者も鼻が高いでござるな!」
「ははは……そんなに自分では大した人間だとは思わないんだけどな……」
なんせ元々はただのフリーターだしね。
まぁ、なんだかんだ使いにくいが【阻害】スキルをくれたジジ神に感謝、か。
さて、宿の騒動も落ち着いたし、明日の出発に備えるとしようか。
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