第51録 決着のあとで……
前回のあらすじ
・勝利!
・汚いなさすが勇者汚い
今回はなにやらゲイルパーティー側でトラブルか……?
ゲイルくんの今後に期待して、ギルドの訓練場を後にしようとしたとき、渇いた破裂音が響き渡った。
何事かと振り返ると、そこにはゲイルくんのパーティーメンバーの一人が、もう一人の頬をたった今叩きましたという光景が広がっていた。
……うぅむ、何やら険悪なムードだな。多分原因は俺なんだろうけど。
「あんたね! ゲイルが危なくなったときあれほど補助魔法をかけなさいって言ったじゃない! どうして言った通りにしないのよ!」
「そうよぉ! お陰でぇ、ゲイルの名声に傷が付いちゃったじゃないのぉ!」
あれは俺とゲイルくんが戦う原因になった「力の差を見せつければ良いじゃない!」っていってた女性と、妙に媚び媚びしたしゃべり方をする女性だな。
あの二人普通に俺とゲイルくんの戦いに茶々入れるつもりだったのか……いい性格してるよ。
で、叩かれたほうは……
「……(ふるふる)」
あの全く喋らない子か。
可愛そうに、二人に責められて涙目だ。ていうか何で喋らないんだろうか?それにどうもあの二人にやれと言われたことをやらなかったから怒られているようだが……
まぁ何れにせよ俺が関わるとややこしいし、リーダーのゲイルくんがなんとかするだろう。多分!
「ナターシャ、ミルフィ。そこまでだ」
おっ、噂をすれば。ちゃんと仲裁に入るようだ。
まぁパーティーメンバーだもんな、その辺はキチンとしてるか。
「マキジくん、何か気になるんですか?」
「ん? いや、別になにも」
「主殿はお優しいでござるからな。大方自分が勝ったことで酷い目に合う子が居るのが気になったのでござろう」
「あー、成る程。マキジくんなら確かに」
……なんだよ二人して、別にそんなんじゃないって……確かにちょっと悪いことしたかなとは思ったけど。
「二人とも、最近俺に対する評価甘くないかな?」
「そうですか?」「そうでござるか?」
なんだろう、結構性格は違うのにこういう時息ピッタリだよなこの二人。下手なこと言わないようにをつけよう……
「まぁ、取り敢えずゲイルくんが仲裁に入ったみたいだし、俺達が関わる事じゃないよ。俺達はギルドカウンターで賞金を貰って……」
「マキジくん~、どうもあちらさん雲行きが怪しいわよ~?」
宿に戻ろう、という前にマリアさんの待ったがかかる。
雲行きが怪しいって……あそこからどう悪くなるんだ……
前を向きかけた体を戻してゲイルパーティーの方を再度見やると、丁度ゲイルくんと、えーっと、ナターシャ? とミルフィ? がこちらに背を向けて歩いて行くところだった。
……床に蹲った少女を置いて。
これは流石に口出ししないわけには……行かないよな。
「ちょ、ちょっとゲイルくん!」
歩き去っていくゲイルくんに慌てて声をかける。
「? なんだいマキジ、もう僕に用はないだろう? 非常に腹立たしいが、既にギルドに金貨100枚の委譲は申請してある。さっさと持っていくといい」
うんまぁ金貨ついては有り難う! でも今はそうじゃなくて!
「どうしてこの子を置いていくんだ? ……随分泣いてるじゃないか」
近くに寄れば、どうにも泣いてしまっているのがわかる。
……あぁ、泣き声も出てないのか。これは普通じゃないな。
仮にも【勇者】がこのような状態のメンバーを置いていくなど、問題以外の何物でもないと思うのだが……
「あぁ、元々そいつ……エレミアは僕のパーティーメンバーではないんだ。僕は腕のいい【紋章術】を使える人物を探していてね。彼女はこの街で唯一の紋章術士だったんだが……どうやら期待外れだったようでね。たった今契約を破棄したのさ」
「……じゃあ何でこれ程までに彼女は泣いてるんです?」
それほどまでにゲイルくんを好いているなら、パーティーから除名されて泣くのも分かるが、何となくそれだけではない気がする。
「あぁ、それは僕のパーティーに正式に加入した暁には、彼女のその声の出ない病の解決を申し出ていたからだろうね。【無声病】と言うんだけど、材料の入手も、特効薬の購入も普通の冒険者じゃ難しいのさ。でも仕方ないよね。実力はともかくリーダーの意向に添えないメンバーは要らないよ」
「……そうかい」
戦う前まではメンドクサイで済んでいたけど、事ここに至ってはもう包み隠す必要もない。ゲイルくんはそもそも性格が歪んでいるらしい。
どうも試合前に彼が彼女に何らかの指示をしていたらしいな。
で、恐らく彼女はそれを実行出来なかったんだろう。多分、良心という彼には無いものが働いて。
「話は終わりかな? じゃあ僕たちは次のメンバーを探すからこれで。ナターシャ、ミルフィ、いくぞ」
そう言い残すと二人を連れて去っていくゲイルく……ゲイル。
ララーナの言うとおり、心を鬼にしてボコボコにしておいた方が良かったのかもしれない。
ゲイルから視線を外してエレミアさんの方を見る。
すると丁度マール達がやって来ていて彼女を宥めていた。
……さて、どうしたものか。
極論を言ってしまえば俺は関係ない。これ以上彼女に関わる必要はないだろう。
だが、俺達がここで出会わなければ、エレミアさんは上手くゲイルから【無声病】の材料か薬そのものを得て、声が出るようになっていたかもしれない。
全てはタラレバの話だ。だが、このまま彼女を放置するような選択をするつもりは俺にはない。
「……マール、彼女を一緒に宿へ案内しよう。話はそれからだ」
「そうですね。それがいいと思います。ララーナさんもマリアさんもいいですか?」
「拙者は問題ないでござるよ」
「私も~問題ないわね~」
どうやら全員問題ないみたいだな。よかった。
漸くうるさい冒険者から解放されたと思ったら、今度は声無き冒険者か……さて、筆談なりなんなりで上手くコミュニケーションが取れればいいが……
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