第50録 決着
前回のあらすじ
・結局、戦う定めなのか……
・阻害、そして阻害
今回はこの度のいざこざに決着がつきます。
「わ、わかった……僕の敗けだ。だからこの妙なスキルを解除してほしい」
ゲイルくんがそう言うと、会場がにわかに騒がしくなる。そこかしこから「おい……【勇者】が負けちまったぞ!?」「あいつなにもんだよ……なにもしないままにゲイルの野郎を……」「そんな……ゲイル様が……嘘よ……」とか聞こえてくる。
うんまぁ、下馬評的にはそうなるよなぁ。
さて、別にもう【移動阻害】と【スキル阻害】は解除してしまって良いのだが……
「それはもちろん。ただし、審判の判定が下されてからです」
たまにいるのだ、こういう時「まだ敗けは確定していない!」とか抜かして攻撃してくるやつ。
「……ちっ……」
あっ、こいつ今舌打ちしやがった!
「ゲイル殿の敗北宣言をもってこの試合、マキジ殿の勝利とします! 双方これ以上の戦闘は認められません」
よし、審判から勝利判定を頂いたので取り敢えず【移動阻害】を解除するか。
嫌な予感はするけどな!
「……はい。もう動ける筈ですよ」
「……あぁ確かに動ける、な!」
次の瞬間、ゲイルくんはあろうことか持っていた剣を俺に投げつけてきた!
「マキジくん!」「主殿ぉ!」
成る程、彼は確かに【勇者】なのかもしれない。投げられた剣は凄いスピードで俺に向かってまっすぐ飛んできて、そのまま……手前で何かに弾かれて床に落ちた。
完全に決まったと思ったんだろう。ゲイルは目を見開いて驚いている。
正直、ここまで来れば理由はどうあれ俺に対する攻撃に悪意が乗らないハズがない。当然そうなれば【攻撃阻害】をかけている俺には届かないのだ。
……まぁ、高速で飛んでくる剣を真正面から受けるのはものっすごい怖かったけどな!?
「な、なにが起こったんだ……!?」
「ゲイル殿! これ以上の攻撃はなりません!」
「……審判、これは不慮の事故だよ。急に動けるようになったから、剣がすっぽぬけてしまってね! マキジもどうか許してほしい!」
成る程、そう来るか。
とはいえこれでもう打ち止めだろう。この上何かすれば彼の信用も落ちるだろうからな。
「そうですね。事故なら仕方ないです。なので俺もこれ以上なにも言いませんよ。当然、そちらもそうですよね?」
暗に「もうなにもしてくれるな」、という気持ちを込めて問いかける。
「……あぁ、君は確かに彼女達を守れる力があることを示した。僕はこれ以上なにも言わないよ」
「そうですか。ならよかったです」
よし、これで漸く決着がついたな……
まぁゲイルは苦虫を噛み潰したような表情をしているけども。
今のうちにそっと【スキル阻害】も解除しておくかな。
「それではこれにてこの決闘は終了とします! マキジ殿には当初の取り決め通り、ギルドの口座に預けられているゲイル殿の金貨を100枚をお渡ししますので後程ギルドカウンターにお越し下さい」
よし!面倒事に巻き込まれたのはあれだが、金貨100枚手に入ったのはデカいな!何事もお金に余裕があると選択肢が増えるから、あるに越したことはない。
「マキジくん!」「主殿!」
手に入ったお金をどう使おうかと考えていると、マールとララーナがやって来た。向こうからマリアさんもこちらへ来ているのが見えるな。
「マキジくん! 最後の攻撃、大丈夫でしたか!? どこもケガは?!」
「主殿! 無事でござるか!? ああいう手合いは二度と逆らう気が起きなくなるまでボコボコにしてないと駄目でごさるよ! 出ないとまたいつか絡まれるでござる!」
「大丈夫大丈夫。【攻撃阻害】で完全に防いでるからかすり傷ひとつ無いよ。それとララーナ、言いたいことはわかるんだけど、俺は人と争ったことが無いからあまり攻撃をするのは得意じゃないんだ。どこかで踏ん切りをつけるから少し待って欲しい」
最後の一撃で二人とも肝が冷えたのか、ケガが無いかそこらじゅうペタペタ触ってくる……あ、脇腹はくすぐったいからやめて!
「何ともないなら良かったです! でもあんまり無茶しないでくださいね?」
「まったくでござるよ。次からは拙者が闇討ちしてしまうので、無理しないで欲しいでござる」
「あはは……気を付けます」
ララーナも闇討ちはやめてね……
「マキジくん~、災難だったわね~」
二人と話してるうちにマリアさんもこっちへ来たようだ。
「いや、まぁでもこれで金貨100枚手にはいるならある意味安いもんです……ちょっとばかり知名度が上がっちゃったかもですが」
先程から周りからの視線や、ヒソヒソとした話し声が聞こえてくるからな。
「まぁそれは仕方ないわね~。なんたって【勇者】を倒したんですから~自称だけど~」
「そうですよね……って自称!?」
【勇者】を自称してたのゲイルくん?! 偽証罪とかに問われない!?
「そうよ~、各街では一番力のある冒険者が【勇者】を名乗っても良いことになってるの~。各街のギルドも彼らを補助しているしね~。まぁその代わり~、危険な任務に出てもらうことにはなるけれど~」
「へぇ……じゃあゲイルくんはこの【モデラータ】で一番強いってことですか」
割とあっさり勝ってしまったが。
「そうなるわね~。でも最近は強さに胡座をかいて女遊びなんかも酷かったみたいだから~丁度良いお灸になったんじゃないかしらね~」
「そうだったんですか……でも確かに最後の投擲は凄かったですし、本当に強いんでしょうね」
あれはホントに冗談抜きで凄かった。
「そうね~、でもそれにあっさり勝ってしまったマキジくんはもっと強いってことになるのよ~? 【アレグレッテ】に帰ったらマキジくんを【勇者】に推薦しちゃおうかしら~」
「!? ちょっとマリアさん! 冗談でも止めてくださいよ!」
「え~?良いと思うんだけどなぁ~……」
もう……ホントに突拍子もないこと言い出すなこの人は……
ま、何にせよこれで一旦問題は解決だ。
ゲイルくんには恨まれただろうし、それで今後どうなるかは分からないけど、今はこれでいいだろう。
ゲイルくん……もうちょっと【勇者】らしく、これからも頑張ってくれ……
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