第44録 みんなで夕食会
前回のあらすじ
・めんどくさい隷属紋
・不憫NINJA
山のように盛られたサラダとパスタが机に置かれると、アンジェさんは別の机に置いてあった皿をこちらへと持ってきた。
「あ、これ取り皿ね。本当なら一人ずつ盛り付けするんだけど、こんな時間だし、それに今から親睦会みたいなものでしょ?こっちの方がいいかなって」
確かに今はもういい時間だ。アンジェさんの言うとおり個別に盛り付けたりしてると時間がかかる。
それに俺はこういう大皿から取り分けて食べるスタイルは嫌いじゃないしな。
そんな事を考えながら、アンジェさんが持ってきたくれた大皿に盛られた料理をそれぞれの取り皿に取っていく。
俺は何かの肉のローストが乗ったサラダとタモタのパスタを丁度一人分程度になるように取った。
正面のマールは……流石だ、しれっと二人前は確保してるな。
はす向かいのララーナもバッチリ同じくらい盛ってる。
……俺が少ないのか?
「でもアンジェ~? このタモタって最近流通し出したのよね~? 高いんじゃないの~?」
「ちょっとね……でも久し振りにマリアに会えたわけだし、ちょっとくらい、ね?」
隣のマリアさんと上座に座っているアンジェさんは俺と同じくらいの量か。
しかしこのタモタ、最近流通し出したのか。
元の世界ではポピュラーだったからそんなイメージ無いけど……昔の人は同じように感じたのだろうか。
まぁとにかく頂こう。
先ずはサラダから。ベジファーストと言うやつだな。
レタスっぽいものとこれは…タマネギかな? 聞いてばっかりもあれだし、たまには【分析】で調べてみるか。
「……(分析)」
分析結果:
【レタシャ】
水分を多く含んだ一年草の一種。生食のほか加熱調理して食されている。生食の場合は少しの苦味があるのが特徴。
【オニネギ】
水分を多く含んだ多年草の根菜。様々な調理法で食卓に並ぶ。供給量が安定しており、値段も安価。
うん、レタスとタマネギだな。
今欲しい情報がピンポイントでわかるのは【分析】の強みだ。
お肉も見ておこう。
【カーウの肉】
乳製品を得るために畜産されたカーウ肉。食用に育てられた訳ではないため、少々臭みがある。生食以外で広く使用されている。値段もお手頃。
これは……牛かな。多分乳牛の肉なんだろう。
そう言えば前にマールさんと牛肉のたっぷり入ったシチューを食べたけど、あの時メニューが普通に「牛肉」って読めてたのは【異世界言語】のおかげだったし、もしかするとあれもカーウ肉だったのかもしれないな。
臭みがある、と出ているが上手にローストされていて実に美味しそうである。
「? マキジくん、食べないんですか?」
既に自分の取り皿の半分を平らげたマールがまだ口をつけてない俺に話しかけてきた。
っていうかもう半分食べたのか!?はやいな!
「いや、頂くよ。じゃあ野菜から……」
そう言ってフォークを突き刺すと、先からシャキリといい音が聞こえてきた。
かなり鮮度が良いみたいだ。
そのまま口に運んで食べる。
……レタシャもオニネギもたっぷり水分を含んでいて、噛むほどにシャキシャキと言う音と共に、野菜の旨味が口に広がる。
ドレッシングはなく、軽く塩がふってあるだけだが、それが逆に野菜の良さを引き出しているんだろうな。
お肉も一口……うん。ちょっと臭みがあるけど全然牛肉だ。
ロースト具合も丁度よく、肉汁を感じられる。
普通に旨い。
「うん、美味しいですアンジェさん。凄い新鮮ですねこの野菜」
「でしょ? うちは野菜の鮮度を保つためにちょっとお高い魔道具を使ってるからね!」
素直に感想を述べると、屈託の無い笑顔を向けてくれるアンジェさん。
魔道具、と言うのはちょっと分からないけどギルドで見た水晶みたいなものだろうか。後で聞いてみよう。
「うぅ……新鮮な野菜久し振りでござるぅ。美味しいでござるよ~! お肉もいつぶりでござろうか……」
「ララーナさん~泣きながら食べなくても~」
ララーナはまともなご飯が久し振りなのか、さっきから泣きながら食べている。
そろそろいいかな?
「さて、食べながらでいいから聞いて欲しいんだけど、明日からの予定を話しておきたいんだ」
「そうね~、闇ギルドには恐らく私達の存在はバレてないと思うけど~今はララーナさんが居るからね~。落ち着いたらまた襲って来る可能性もあるし、早いところ出発したいわね~」
そう、今はまだ本部が落ちて混乱しているが、立ち直ればまた狙われかねない。今のうちに次の町へと出発したいのが本音だ。
「私は問題ないですよ。マキジくんのお陰で荷物も少ないです。アーダジオで無理に食料を買い込んだりする必要がないので明日の出発には賛成です」
タモタのパスタに手をつけ始めたマールだが、流石に真面目な話だからかしっかり飲み込んでから話し始めた。
「拙者も問題ないでござる。何せこの身一つしかないでござる故……」
ララーナ、目のハイライト落ちてる落ちてる!
「じゃあ取り敢えず明日には出発という事で。慌ただしくてアンジェさんには申し訳ないんですが……」
なんせ二泊の間にこの騒動だからな……本当に申し訳ない。
「いいのいいの! 久し振りにマリアに会えたしね! それに君たちみたいな面白そうな子達にも会えたし! また元気にうちに来てくれればそれでいいよ!」
銀色の尻尾をファサファサさせながらアンジェさんはそう言ってくれた。
うん、アレグレッテに戻るときは絶対に立ち寄ろう。
さて、明日出発って決まったことだし、残りのパスタも頂きますか。
フォークでくるくると巻いて、口に運ぶ。
……うん。トマトパスタだわこれ。
ただ甘味より酸味の方が強くて、タモタの力強い旨味が感じられるな。かなり俺好みの味だ。
「アンジェさん、これも美味しいです。次に来るときも是非これが食べたいですね」
「ホント!? いやー、かなり頑張ってレシピ考えたから嬉しいね! そこまで言ってくれるなら、また来てくれたときもご馳走するよ!」
「はい、是非!」
「わ、私もお願いします!」
お、マールも気に入ったんだな、って
「マール、口の回りが真っ赤になってるよ」
「はぇ!? や、やだ私ったらもう!」
焦ってハンカチで口を拭うマールを見ながら、この日の夕食は和やかに終わったのであった。
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