第29録 御約束再び
前回のあらすじ
・マリアさんと一緒
・色々揺れます
今回は馬車の旅に付き物のアレ
「ヘヘヘッ、よぉにぃちゃん! 命が惜しけりゃ荷物と隣の女を黙って寄越しな! 死にたかぁねぇだろ!?」
のんびり向かえると思った2時間後、俺達は御約束に遭遇していた。
……凄いテンプレ台詞と共に馬車をぐるりと取り囲まれた時はもう、何とか言うか「あ~、盗賊の居ない現代は凄いなぁ」とか思ってしまった俺も大分異世界に馴染んできたんだろうか。
「……ん~、因みに断ると俺は殺されるんでしょうけど、承諾した場合はどうなるんですかね?」
「決まってんだろ! 身ぐるみ剥いで奴隷行きよぉ!」
「ですよねー」
まぁ盗賊だもんね、仕方ないね。
「……はぁ、まぁ気乗りしないけどやるか……」
「なにごちゃごちゃ言ってやがる! 野郎共! やっちまえ!」
そう言うと馬車に殺到する盗賊達。しかし……
「な、なんだ!? この馬車傷一つ付かねぇ!?」
「こいつ?! 見えねぇ壁でもあるのか!?」
「なんだこの馬!? 普通ビビって暴れるハズだろ!?」
……盗賊達がこうなるのも致し方なし、だな。
俺が盗賊が出た瞬間から無駄に冷静なのにも訳があるし。
……話は少し遡る……
※※※※※※※※※※
「……そろそろかしらね~」
馬車の揺れを無くしてから少しして、マールさんと御者を交代したマリアさんが俺の隣でそんな事を言い出した。
「……? 街はまだ先ですよね? 何かあるんですか?」
アレグレッテは辺境の街と呼ばれるように、レムリア王国の南端に位置している。
今から向かうのはアレグレッテが出来る前に辺境と呼ばれていた街で、今は辺境の玄関口と呼ばれている。
街の名前は【アーダジオ】で、辺境へ向かう冒険者や商人、それに辺境から来る素材等を求めてやって来る大きな商会等が集まり、非常に活気があると言うことだ。
ただ、アレグレッテとはそれなりに距離があり、馬車で少なくとも半日程度はかかるという話だったが……
「街じゃないわ~、この先には街道の横にちょっとした森があるの~」
「へぇ、そうなんですね」
「それで、最近盗賊が出るって話で~」
「そうなんですか……って盗賊!?」
いやいや! 何呑気にしてるんですかマリアさん!
「いや、このまま進んでいいんですか!?」
「このままだと~、馬車だし~人数も少ないし~襲われるわね~」
「それで、どうするんですか?」
襲われる、というマリアさんに反応して後ろからマールがひょこっと顔を出す。
「そうね~、一応私のスキルで接近は察知できるわ~。あとは、マキジさんのスキル次第かしら~?」
「俺の……ですか?」
「えぇ~、ちょっと試してほしいんだけど~……」
マリアさんの話はこうだ。
まず俺の【攻撃阻害】で相手の攻撃を無効化。
そして当然【防御阻害】もかけておく。
馬車はさっき【破損阻害】をかけたから問題なし。
肝心の試して欲しいこと、というのが馬に対しての【恐慌阻害】だ。
俺達や馬車がいくら大丈夫でも馬がやられてしまうとまずい。
命が、という部分は【攻撃阻害】でどうとでもなるが、心の問題に関してはどうしようもない。
暴れて手が付けられなかったり、逃げ出したりされると困るので、そこを【阻害】スキルで解決しようと言うわけだ。
で、実際に馬二頭に【恐慌阻害】をかけて【分析】したところ……
分析結果:
馬種:バトルホース
状態:【恐慌阻害】状態
【恐慌阻害】
付与者及びその支援者にのみ適用。
付与された生物は恐慌状態にならなくなる。
と出た。
うん、どうやら上手くいったようだな。
「……上手くいったみたいですよ。これでこの二頭は恐慌……パニックにならなくなったと思います」
「うふふ~、なら何も問題ないわね~行き掛けのお駄賃に盗賊退治といきましょ~」
「盗賊は居るだけで害悪ですからね。排除出来るなら排除です」
マリアさんはノリノリだし、マールはなんか怖い……まぁでも盗賊が害悪なのは間違ってないからな、申し訳ないがフルチート状態で押し切らせて貰おう。
※※※※※※※※※※
……そして、時間は今に至る。
結局盗賊共はこちらをどうすることもできず、俺は鞭で、マールは杖でそれぞれ制圧していく。そしてマリアさんはというと……
「あらあら~逃げちゃだめよ~?」
「「「う、うわぁぁぁぁ!?」」」
……複数の土で出来たゴーレムで捕縛していた……
何あれ、凄い造形なんだけど……土じゃなけりゃゴーレムって判らないぞ……ギルドの皆がマリアさんを恐れてた理由はこれだったんだな。
そんな事を考えているうちに、瞬く間に盗賊は全員ゴーレムによって捕縛されてしまった。
ご丁寧に土で出来た手枷までついてる。
「これで全員ね~。さ、馬車に詰め込んで【アーダジオ】まで連行しましょ~」
「「は、はい……」」
正直、俺とマールが居なくてもマリアさんだけでどうにかなったんじゃないのかこれ……護衛任務ってなんだっけ……
「? 二人とも~どうしたの~?」
「「なんでもないです!」」
取り敢えずマリアさんの言うとおり盗賊を馬車に詰め込んで行く。
盗賊達も諦めたんだろう、大人しく馬車に詰め込まれていく。
「……よし、これでいいかな」
「盗賊で一杯になっちゃいましたね」
馬車の荷台は十数人の盗賊で一杯だ。
……流石にここにマールやマリアさんを座らせる訳にはいかないな。
「取り敢えず荷台には俺が乗るんで、二人は御者台に……」
「あら~、御者台も詰めれば三人座れるわよ~?」
「そうですよ。あんなむさ苦しいところに座る必要なんてありませんよ」
……あの、それはそれで色々とですね……
「さぁ~どうぞ~?」「どうぞ! マキジくん!」
「あっはい……」
拒否権は……ないみたいだ……
その後、マールとマリアさんにサンドイッチにされた俺は、【アーダジオ】に到着するまで、この異世界に来てある意味一番辛い数時間を過ごすことになるのだった……
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