第24録 これから
前回のあらすじ
・マールさんの嫉妬
・ハゲ、余計なことを聞く
今回はマキジの選択とロイドの頼み
昼頃から始まったギルドでの祝勝会は、そのまま夜まで続いていた。
その間、他の冒険者達とも幾らか話はしたが、主に俺はロイドさん達と雑談を交わしていた。
……まぁ、雑談と言っても主に俺のこれからについてだ。
俺がロイドさん達「太陽の剣」預りになっていたのは、このゴブリン討伐任務までだ。
ここからどうするかは、俺が決めなくてはならない。
「マキジさん、本当にこのまま太陽の剣には入らないんっすか?」
「うん……このままお世話になることも考えたんだけど……やっぱりほら、記憶もないし、色々見て回るのもいいかなと思ってね」
「そうっすか……残念っすねぇ……マキジさんがいれば任務も楽になると思ったんすけど」
まぁ、ホントは入りたい気持ちはあるんだけどね……
「そう言うなライル。マキジにはマキジの道がある。もし縁があればまた一緒になることもあるだろうさ」
「そうよ。もしかしたら私達なんかじゃ足元にも及ばない程強くなって帰ってくるかも知れないわよ?」
「うっ……! マキジさんのスキルを考えたら否定できないっすね……俺も頑張らないとっす!」
「あはは……まぁ、そうなれるように頑張りますよ」
強くなるっていうのは、この魔物の居る世界では大事なことだろう。
この世界で生きていく上で強さを求めるのは間違ってはいない。
まぁでも、力の使い方はその人次第だとロイドさんに教えて貰ったんだ。ただ強さを求めるだけにはならないようにしないとな。
「……マキジしゃん……ほんろにいっちゃうんれすかぁ……?」
……大分お酒入ってるなマールさん……
「……自分で決めたことだからね。嘘にはしたくないかな」
……俺は一度このアレグレッテを離れて、今いる国の首都を目指すつもりだ。
今いる国……レムリア王国の首都には世界有数の大図書館があるらしく、俺はそこでこの世界について学ぶ事を決めていた。
生きていく上で知識と言うのは時に力に勝るものだ。
いま、何も知らない俺はある意味常識すら分からない異物に等しい。だから早くこの世界について知る必要がある。
「……でもぉ……わらしとでぇとしゅるって……」
「それは出発迄に絶対に行きますんで。なにがなんでも」
「ひゃ、ひゃい……」
「それよりお水飲みましょうお水。ほら」
ろれつ回ってないんだよなぁさっきから……まぁこれはこれで可愛いから良いけど。
「ありがひょう、ごりゃいまひゅ……」
そのままごくごくとコップの水を飲み干すマールさん。
そして……
「んにゅう……」
「あらあら、マールがこんなになるまで呑むなんて珍しいわね……マキジくん、デート頑張らなきゃ駄目よ?」
寝てしまったマールさんを介抱しながらそんな事を言い出すヴァージニアさん。
この人はもう……
「……そりゃ、頑張りますよ。こっちから言い出したんですから」
「そう? ならいいわ」
そう言うとヴァージニアさんはマールさんの横に座ってまた呑み始める。
……うわばみだなぁこの人……ずっと呑んでるのに……
そんな事を考えていたときだ。
「……マキジ、ちょっといいか?」
ロイドさんが俺を外に連れ出した。
※※※※※※※※※※
「……すまんな、急に」
「いえ、構いませんよ」
宴会場を離れた俺とロイドさんは、冒険者ギルドの裏手に来ていた。酒が入って火照った体に夜風が気持ちいい。
「……実は折り入って話がある」
「……なんでしょうか?」
ロイドさんから改まってそんな事を言われるとは……なにか重要な話だろうか。
「他でもない、マールのことだ」
「マールさんですか?」
「あぁ」
何だろう……あ、実はロイドさんもマールさんが好きで、デートの後は手を引いてほしいとか……?いや、ロイドさんに限ってそれはないか。俺も酔ってるなぁ。
「……お前さえ良ければ、マールも連れていってくれないだろうか」
「……え?」
それは、思っても見ない申し出だった。マールさんは太陽の剣に必要な回復術士の筈だ。それなのに何故……
「……実はマールは戦災孤児でな。幼少期の記憶がない」
「……そ、それは……」
「急にこんなことを言われて戸惑うのはわかっている。何より本来は俺から言うことでも無いからな」
じゃあなんでそんな事を今言うんだ……?
「まぁ、そういう生い立ちもあってマールは回復術士になった。本人に適性もあったしな。そして今ここにいる」
「……ロイドさん、結局何が言いたいんです?」
結論を急かすつもりはないが、マールさんのそういう話はやっぱり本人から聞いた方がいいと思うのだ。
だから、結論を言って欲しい。
「……マールは余り誰かに執着したことがないんだ。いつかは居なくなると言う思いがどこかにあるからだろう。でもマキジ、お前には妙に執着している。何故かはわからん。それが恋心なのか、心配だからなのかは。だが恐らく、本心では一緒に行きたいと思ってるだろう」
「でもそれは……」
「あぁ、最終的には本人が決めることだ。だからもし、お前がこの街を出るまでにマールが共に行きたいと、そう言ったときは……頼む」
「……」
……確かに、一人で旅をするよりはいいかも知れない。
それに……マールさんのことは嫌いじゃない。短い期間だが、彼女が凄くいい人だと言うのはいやというほど見てきた。
一緒に行けるなら……行きたい。
「……分かりました。ただしマールさんが自分自身で言った時だけです。それで良ければ」
それでもやはり、俺から言うのは憚られる。ここにはマールさんの居場所があるんだ。
「あぁ、それでいい。十分だ」
「はい……そろそろ戻りましょうか」
「そうだな、宴会もいい加減終わりが近いだろう……セーフハウスまではお前が運んでやれよ?」
「え!? ちょっとロイドさん!?」
「ははは! こないだから随分と見せられたからな。仕返しだ」
そう言って笑いながら戻っていくロイドさんの背中を、俺は唖然とした顔で見送るしかなかった。
「……敵わないなぁ、大人として」
これから先、どうなったとしてもあんな風に笑える大人になろう。
俺はそう、心に誓ったのだった。
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