第21録 ゴブリン討伐任務⑥
前回のあらすじ
・ゴブリンを鞭打つ
・野戦病院マールさん
今回は【阻害】が超チート回(直接表現は無いけど、想像するとグロなシーンがあるかもしれない、注意!)
俺達が前線に向かって走っていると、途中で怪我をしている冒険者と何人もすれ違う。
基本的には軽傷だ。HPポーションを【ストレージ】から出しながら前線へと急ぐ。
「いいか!? 前線に着いたら俺達以外の冒険者には後退してもらう!」
走りながらロイドさんが現地での動きを指示してくれる。
「俺達にはマキジのアレがかかっているからまだいいが、半端な冒険者がトロールの一撃をまともに喰らえばただじゃすまない! それに奴等はダメージが深くなると暴れ始める……悪意とは無縁の攻撃を出してくる可能性がある!」
ロイドさんが厄介な情報を出してきた。
……そうか、自分が傷つけられたことで狂乱し、暴れる場合も悪意とはほぼ無縁だ。しかも、この場合あるのは自分を守りたい、生きたいという生存本能! 悪意も害意も一切介在しない……!
「ロイドさん、じゃあどうするっすか!? ダメージを与えすぎると俺達も危ないってことっすよね!?」
「そうよ! 倒せないのなら私達だけで相手しても意味がないわよ!?」
ライルくん、ヴァージニアさんの言うことは最もだ。
でもロイドさんは多分、それを承知で言っている。
「……マキジ、どうだ?!」
そう、ロイドさんは俺の【阻害】賭けているのだ。
自分達が気を引いている間に、決定的な何か。
トロールの何かを【阻害】する。
「……わかりません! でもなんとかしてみます!」
「マキジさん!? 大丈夫なんですか?!」
戦闘が続いているこの状況で、まだそこまで考えついていないが恐らくなんとかなる。こいつはなんせチートスキル。
ただちょっと癖が有りすぎて使いにくいだけだ!
「大丈夫! でも危なくなったらマールさんに助けて貰おうかな!」
「……はい! その時は必ず!」
マールさんが返事を返してくれた丁度その時、森の拓けた場所に出た。
ここが恐らくゴブリンの巣だった場所だ。そこらにゴブリンの死体がある。
そしてその中央に、ゴブリンを大きくして余分なお肉をたっぷり付けたような醜悪な生物が棍棒を振り回して暴れていた。
……そして見てしまった。トロールに、今まさに頭部を強打された冒険者が……うっ!
「おえぇぇっ……!」
「マキジさん!」
直ぐにマールさんが支えてくれるが、嘔吐は止まらない……
あまりの非現実的な瞬間に、脳が追い付かない。
足が震えて力が抜けそうになる。
「……マキジッ! しっかりしろっ!」
その時、ロイドさんが力強く俺の肩を握る……痛いくらいに。
「いいか!? 今から俺達が時間を稼ぐ! その間にお前がアイツを倒す方法を考えるんだ! 俺達が無事に戻れるかは、マキジ! お前次第だ! 頼む!」
ロイドさんの顔を見ると、まっすぐな目でこちらを見てくれている……信じている、とそう訴えかけてきていた。
……そうだ、キツイけど……やるしかない……!
「……っ、大丈夫、です……!」
少し詰まったが、ちゃんと答えは返した。
「よし……! じゃあ行くぞ! ライル、ヴァージニア!」
「了解っす!」「わかったわ!」
ロイドさんとライルくん、ヴァージニアさんが駆けていく。
……マールさんは、俺を支えてくれたままだ。
「マキジさん……これくらいしかできませんが……【カーム】」
マールさんが精神を落ち着ける回復魔法をかけてくれる。
……有難い、少しは落ち着いてきた……
「……有り難うマールさん、早速助かったよ……」
「いえ……それより本当にどうにかなるんですか?」
マールさんがそう言うと、トロールの方を見る。
そこでは丁度、他の冒険者を下がらせたロイドさん達が代わる代わるトロールに攻撃し、うまくヘイトをコントロールしていた。
「……少しだけ時間を下さい。マールさんはロイドさん達の援護へ」
「……分かりました。私も、信じてますよ」
そう言うとマールさんもロイドさん達の方へ駆け出す。
……あとは、俺次第だ……
※※※※※※※※※※
急ぎたい気持ちはあるが、まず整理だ。
……【阻害】スキルの概要を思いだそう。
【阻害Lv.2】
任意の対象に対し、使用者の定めた阻害効果を付与する。
付与対象に対してかけられる阻害の数はLvに依存する。
尚、このスキルの阻害効果は使用者が解除するまで永続する。
この間の戦闘テストで分かったことは
・付与されたのが俺や俺の仲間の場合、その効果は周囲に影響を及ぼす(相手が攻撃しても弾かれる、防御しても貫通する等)
・付与されたのが敵対するものだった場合、その効果は付与されたものに影響を及ぼす(攻撃が出来ない、防御が出来ない等)
結果として攻撃を阻害、防御を阻害しているがそのアプローチはまるで異なっている。
もっと簡単に言うなれば、味方にはバフを、敵にはデバフを撒いているような感じだ。
だがこれはテストの結果でしかない。
【阻害】のスキル説明には別にバフだのなんだのとそんな記述は無いのだ。
つまりまだ、出来ることがある。
……そうだ、ガデツさんのところで炉を使えるようにしたときは、味方も敵もなかった。あれはただの炉だったから。
つまり敵も味方も関係の無い、人間なら人間、ゴブリンならゴブリン、そしてトロールならトロールの根本的な、生物としての基本部分に対して【阻害】をかけたら……?
そこまで考えたとき、閃いた。
……余りにも悪魔じみた手段だが。
対象は任意……つまりは生命活動に必要な動作、行動に対しても、かけられるはず。
「ロイドさん! 皆! 下がって!」
形振り構ってはいられない、思い付いたのなら今はどうなろうと急ぐ!
声をかけるとロイドさん達は素早くトロールから距離を取った。
今!
「……【呼吸阻害】!」
……それは劇的だった。
後退したロイドさん達を追おうとしたトロールは急に動きを止め、喉を押さえると蹲り、口を開閉させていたかと思うとその内泡を吹いて倒れた。
……窒息死だ。
「……これは……」
……俺はとんでもない使い方をしてしまったんじゃないだろうか……
あまりの状況にロイドさん達も立ち尽くしている……
「……っ! 全員でトロールの生死を確認するぞ!」
最初に立ち直ったロイドさんが指示を出し始める。
こうして……最後は大変なことになったが、俺と太陽の剣のゴブリン討伐任務は終わりを告げたのだった。
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