第9録 【阻害】の意外な使い道
※9/22にタイトル、あらすじ、プロローグ①を修正してます。
前回のあらすじ
・タンクトップヴァージニアさん
・マールさんとお買い物
今回は【阻害】の新たなる使い道が見つかる回
「さて! 私の買い物はこんなところですね!」
マールさんに付いて道具屋や青果店、雑貨店をみて回り、必要なものをマールさんが購入。
それを俺が店を出てから【ストレージ】に仕舞うという作業を繰り返すこと数度、マールさんの買い物は終わったようだ。
「マキジさんが運んでくれるのでポーションは何時もより多めに買い込めました! 有難う御座います!」
「役に立てたのなら何よりだよ」
ポーション買うときとかまとめ買いするからって果敢に値下げ交渉してたなマールさん。意外と……って言ったら失礼だけど、強かだな。
勝手に見るのも失礼だと思って太陽の剣のメンバーには【分析】をかけていない。森では俺のステータスを見られたが、あれは非常事態だったからだ。普通は何もないのに他人のステータスを覗き見るなんぞ失礼過ぎるからな。
でも、もしかしたらマールさんは値切りとかその辺のスキルを持ってるのかも知れない。
「じゃあ次はマキジさんのお買い物ですね! 確かに武器を見繕うんでしたっけ?」
「うん、そのつもりだよ。と言っても多分戦闘の経験とかないと思うんだ。だから護身用みたいなものでいいかなって考えてる」
「成る程、護身用ですか……だとすれば短剣など取り回しの良いものが言いかもですね」
「あー、そうだなぁ。下手に使いにくいものよりは使いやすさを重視したほうが良さそうだ」
そんな事を話しつつ、マールさんの案内で武器屋へ向かう。
このアレグレッテでは冒険者が多いこともあってか、武器と防具を取り扱う店は多い。
今回は太陽の剣がよく利用しているという武器屋「アイゼン工房」を紹介してくれるそうだ。
大通りを少し東に逸れて歩くこと数分、こじんまりした工房が見えてきた。
「あれがアイゼン工房です。小さいですけど、店主の方はドワーフで非常に腕の良い方なんですよ!」
ドワーフ! ここに来るまで人間しか居なかったから、エルフとかドワーフ居るってジジ神がホラ吹いたのかと思ってたけど、ちゃんと存在したんだな! これはエルフも期待出来るか……!?
「へぇ……ロイドさんも贔屓にされているなら期待できそうだ」
取り敢えず内心の喜びは抑えておく。
「はい! 期待してもらって言いと思います!」
そうして工房の前に着いたのだが……
「あれ? お店閉まってますね? いつもはこの時間開いてるんですが……」
店先には「closed」(と読める)看板がかけられていた。
……有り難う【異世界言語】……
「……うーん? でも中の灯りは点いてますね……あ」
マールさんが言いながら扉を引くと、鍵がかかっておらず扉が開く。
「無用心ですね。ガデツさーん! いますかー!?」
ガデツ、というのがこの工房のドワーフの名前なんだろう。
マールさんが店のなかに声をかけると、中からずんぐりとした身長150センチくらいのガッチリした髭面オヤジがやって来た。
うーん、ドワーフ! だな!
「……なんじゃマールか、なんか用か?」
「なんか用か、じゃないですよ。どうしたんですかお店閉めちゃって……」
「あぁ……ちょっとな……」
……なんか元気ないなぁ。落ち込んでるドワーフとかちょっと見たくないぞ?
ドワーフはなんかこう、陽気でお酒呑んでガハハー! してるイメージなんだが……
「何かあったんですか?」
「ん? なんだお前さんは……見ない面じゃな。マールの嬢ちゃんのコレか?」
そう言って親指を立てるガデツさん。
オッサンだなぁ……
「ふえぇっ!? ちちち違いますよ!? マキジさんはそういうんじゃないです!」
そしてそれを全力で否定するマールさん。
……ちょっとっていうか、結構へこむ……
「えっと、俺は少しの間太陽の剣にお世話になる予定のマキジって言います」
「おう、俺はガデツだ。このアイゼン工房を営んどる……まぁ今は開店休業中じゃがな……」
いや、閉まってましたけどね。
「改めて訊きますけど、何かあったんですか?」
「ん? あぁ……お前さんに話してもどうこうなる問題でもないんじゃが……まぁいいか、こっちじゃ」
ガデツさんが工房の中へと案内してくれる。
「お邪魔しまーす……」
工房の中には小型の炉や、金床が置いてあった。
ただ、炉には火が入っておらず、金属を打つための金槌も壁にかけてある。
「ガデツさん、いつもなら作業してますよね? ホントにどうしたんですか?」
「……炉をみてみぃ」
「炉をですか……? あ……」
近づいてみると、炉には幾つかのヒビが入っていた。
「……このまま使えないことはないんじゃが、危険ではあってな」
「成る程……」
高温になる炉が作業中に破損でもすれば、事だ。
「修理依頼は出しとるんじゃが、どうにも職人が手配出来んらしい。で、炉が使えんと剣を打つのもままならんわけじゃな」
成る程なぁ……取り敢えず【分析】してみるか。
分析結果:小型炉。破損の恐れの高い状態。
「……どうですか? マキジさん」
俺のスキルを知ってるマールさんが問いかけてくる。
「……駄目だな……このまま使うのは危ない」
「どうにかなりませんか?」
うーん、マールさんのお願いとあれば聞いてあげたいし、ガデツさんも困ってるみたいだから何とかしてあげたいけど……手持ちのスキルに炉を修理するようなものなんて……
手持ちのスキル……
あ。
「……ガデツさん、もしかしたら何とかなるかもしれません」
「何!?」
俺の言葉に凄い勢いで反応して顔を近づけてくるガデツさん。いや近い近い!
「落ち着いてくださいガデツさん! まだ何とかなるって決まったわけじゃないですから!」
「おっと、すまんすまん。ついな!」
そう言うと俺から離れるガデツさん。流石にオッサン顔のドアップはキツイ。
さて、何とかなるとは思うが急な思いつきだ。うまく行く保証はない。
……寧ろ心配しかない。
「失敗しても恨みっこなしですからね?」
「……どのみちこのままじゃ埒があかねぇ、一丁頼む!」
「分かりました。ではやってみます」
炉の破損が進むと壊れる。なら、炉の破損がこれ以上進まなければいい。
「【破損阻害】……!」
炉に、破損を阻害する状態を付与する。
付与した瞬間、小型炉が淡く発光した。
「で、【分析】……!」
分析結果:小型炉。【破損阻害】状態。この炉は【破損阻害】が解除されない限り破損しない。
おぉ……おぉ!?
「ど、どうなったんじゃ……!?」
「え、えっと……上手くいったというか、上手く行き過ぎたというか……」
「どうなったんですか!? マキジさん!」
「端的に言うと、この炉は壊れなくなりました……」
「「え?」」
うんまぁ……そういう反応になるよねぇ……
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