第97録 第三王子、グウェン②
前回のあらすじ
・会食相手は第三王子
・【竜殺し】って国から送られるんかーい!
今回は昼食で判明するララーナの新たな一面……!
俺達が席について程なくして、テントの入り口から料理が運ばれてきた……順番に。
そう、昼食はまさかの地球でいうコース形式だったのだ。
何故かフランス料理よろしくフォークやナイフが複数置かれているが……これ、使い方も同じでいいんだろうか……
「あー……すみません。あまりこういった形式の食事をしたことがなく、不作法がありましたら御容赦を」
「ほう? 言葉使いが良いからこういったことにも明るいかと思ったが。やはりそこは冒険者といったところかな?」
「あははは……まぁそんなところです」
流石に地球にいた頃でも本格的なフランス料理を食べた事なんて一度もない。
大体そんなものが食べられるような御身分だったなら、石鹸を踏んで死んだりしてないと思うし!
「ははは! そうか。では隣の従者殿に教えてもらってはどうだろうか?」
「え?」
俺の返答に笑いながら答え、隣を見るグウェン王子。
それにつられて隣を見ると……
「……」
「なん……だと……!?」
そこには、見事な所作でスープをスプーンに掬い取り、口へ運ぶララーナの姿があった。
俺が唖然として見ているのに気付くとスプーンを置き、ナプキンで口を拭き取る。
そして、ジトーッとした目でこちらを見てきた。
「なんだと、とはご挨拶でありますな。拙者これでも忍でござる。当然、潜入任務等もこなせるように様々な礼儀作法に精通しているでござるよ。失礼しちゃうでござる!」
そして言いたいことを言うと、プイと顔を背けられてしまった。
……マールといい、マリアさんといい、どうしてうちのパーティーの年上女性はこう可愛い所があるんだ……!
「あー、その、ごめんララーナ。いつも皆で楽しくご飯食べてるからさ。あんまりこういう食事をするイメージが無くて……ホントごめん! あと折角なので教えて下さい!」
「むぅ……そもそも拙者、主殿のお願いは断れないでござる。仕方ないでござるな、拙者が教示してしんぜよう!」
素直に謝った上で、テーブルマナーを教えて欲しいと頼むと、仕方ないと言いつつ、心なしかニマニマしながら使い方を教えてくれ始めた。
ちょろすぎるぞララーナ。まぁお願いを断ると隷属紋が発熱するからしょうがないのもあるけどさ。
「ははは! 【竜殺し】と言えど女性には頭が上がらないか! 全く、見せつけてくれるじゃないか?」
「あ、すみませんグウェン王子。お見苦しい所を……」
「なに、仲が良いのは良いことだ。私もシャーリーに会いたくなってしまったよ」
「シャーリーさん、ですか?」
ララーナに簡単なテーブルマナーを教えて貰いつつ、王子と話す。
「あぁ、所謂幼馴染みと言うやつだよ。乳母の娘でね。私は第三王子と言うこともあって、あまり勉学だなんだと兄や姉に比べれば言われなくてな。同い年だったシャーリーとは幼い頃よく遊んだものだ」
「……幼い頃、ということは……」
「あぁ、幼馴染みとはいえ私は王族で、彼女は使用人の娘だ。今はたまに顔を合わせて話すくらいが限界でな。中々難しいものだよ」
そう言って溜め息をつくグウェン王子は、イケメンなこともあって物凄く絵になっている。
「……やっぱり、大変ですね。王族と言うのも」
「ははは、まぁそうだな。本当に、本当にそう思うとも。もしこのしがらみから逃れられるのであれば、私も冒険者となって様々な土地を巡り、シャーリーにその話をしてやれるんだがな……」
……グウェン王子、そのシャーリーさんって人の事、好きなんだろうな。
幼馴染みに秘めた思い……か。聞いてるだけでドキドキしてしまうな!
「グウェン王子はそのシャーリー殿の事を好いているのでは?」
「ちょ、お、おいララーナ……!」
俺がそんな事を考えていると、お隣の天然ダークエルフがド直球に聞いてしまった。
「ははは、ララーナは正直だな。まぁ、そうだな。恐らくそうなんだろう。彼女と話している間は、王族であるということを忘れられる気がしてな、随分と心穏やかに過ごせるものだ」
「……その、こんなことを聞くのはどうかと思うんですが、グウェン王子はあまり王族と言うものに思い入れがないのですか?」
「……そうだな。私くらいの立場だと、この血は枷になりはしても、自らの為にはならない。そういう意味では煩わしく感じてはいるな。とは言え辞められるものでもないが」
「そうなんですね……」
……マリアさんは、どうだったんだろうか。
彼女も元王族だと言っていた。グウェン王子の言うことが本当なら、そう簡単に辞められるものではないはず。
俺、まだまだみんなの事知らないんだな。さっきのララーナの事もそうだし。
……今までは、こちらから聞くってことはしなかったけど、これからはもう少し聞いたりしてもいいかもな。
「さあ、この話しはこの辺りにしておこう。次の料理を持ってこようとしている使用人が入り辛そうにしているからな」
「えぇ、そうしましょう……ララーナ、次はどれ使うんだ?」
「こっちのフォークでござるよ。その次はこのナイフとフォークでござる」
こうして、その後は他愛のない話をしながら、グウェン王子との昼食は進んでいった。
そして……
「マキジ、ララーナ、今日は有意義な時間を過ごすことができた。礼を言わせてくれ。ありがとう」
「いえ、こちらこそ美味しい料理をありがとうございました。それに【竜殺し】の件も。事前に知られて心の準備も出来そうです」
「拙者は主殿の従者という立場でござるが、もてなして頂き感謝致すでござる」
「楽しんでもらえたなら良かった。もし機会があるのであれば、他のメンバーも交えて話したいものだ。ではな!」
食事を終え、テントの出口まで来た俺とララーナをわざわざ見送りに来てくれたグウェン王子と別れを済ませ、テントを出る。
「……さて、じゃあ俺たちのテントに戻ろうか!」
「うむ! そうでござるな!」
元気よく返事を返してくれたララーナと来た道を戻っていく。
「ララーナ、一つだけ言っておくけど、今日のお昼の話、マールにしないようにね」
「? 何故でござるか?」
「……そんな感じだからテーブルマナーが完璧なことに違和感持たれるんだよ」
「???」
さて、テントに帰ったら皆戻ってるだろうか。
色々と話すことができたからな。
出来ればちょっと会議をしたいところだ。
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