第96録 第三王子、グウェン①
前回のあらすじ
・近衛騎士ブライドさん登場!
・謎の王族あらわる!
今回は謎の王族とお喋り
……座れと言われたものの、相手は王族なんだよなぁ。
先ずは傅いたりしたほうがいいように思うんだけど……
「どうした? そう緊張することはないぞ。今日はお忍びだからな! 遠慮せずに座るといい!」
どうにもそういう感じじゃないんだよな……こっちが出方に困っていると、向こうから更にグイグイくる。
取りあえず自己紹介くらいはしておこうか。
「えぇっと、では座る前に自己紹介させていただきたく。既に名前は知っていただいているようですが、私はマキジ・ヨコシマと申します。非才の身ではありますが、冒険者ギルドから【ギルド特別派遣員】に認定されております。以後お見知り置きを」
よし! 今までで一番堅苦しく挨拶できたな! 舌噛むかと思った。
「うむ! 大体のことはブライドから聞いている! 本当に冒険者とは思えないほど礼儀正しい奴だな。それで? 後ろの者は?」
「拙者は【黒い森ベルデナット】のララーナと申します。主殿のパーティーメンバーの一人、そして従者でございまする」
「おぉ! 本当にダークエルフの忍を従えているのか! かの者達は影に潜み、人前に姿を表すことはないとまで言われるほど、任務以外で森から出ないと聞いていたが……」
「我々は基本的に、契約でのみ働くのでございます。故に限られた者……我々に依頼をする者が目にする位でしょう。ですが稀に、私のように個人に感服し、仕えることを決める者もいるのです」
ごめん俺、色々初耳だわ……まぁでも確かにララーナ以外のダークエルフは見たことがない。エルフも見たことないけど。
しかし種族単位で森に引き隠るなんて、忍の隠れ里か何かか。ちょっと行ってみたい。
「そうか……流石は【竜殺し】、彼女を感服させる程の何かを持っていると言うことか……」
いや、何て言うか長年の悩みを解決してあげただけです……
俺としてはスキルを使っただけなので、そこまで慕ってくれていることに若干の申し訳なさを感じたりするわけではあるが。
とはいえ本人は相当苦労してきたみたいだから、ただただ改善してくれた俺に感謝してくれているのだろう。なんとなくむず痒い。
まぁララーナの件はいいとして、だ。
「あの、先程から殿下が言われてる【竜殺し】とは一体……?」
「おいおい、殿下呼びは止めてくれ。折角のお忍びなんだからな……っと、そうかまだ私が自己紹介していなかったか! ははは!」
何でこんなにテンション高いんだこの人! 色々と話し辛い!
「私はレムリア王国第三王子、グウェン・レムリア。王位継承権五位の放蕩王子だ。残念ながら覚えてもらってもあまり得は無いかもな!」
「放蕩、ですか」
「うむ、自分でいうのもなんだがな? 継承権五位の私は余程の事が無い限り王座に就くことはない。まぁ精々が政略結婚させられるか、王になった兄や姉の補佐をするかの二択だろうさ。それなら、今この瞬間を楽しんでおかねば! と思ってな? 城から出歩いているうちにそう呼ばれるようになった訳だ」
「成る程、王族も大変ですね……」
「ははは! もし王族でなければ、私も冒険者になって自由に様々な場所へ行くことが出来たんだがな……っといかんいかん話が逸れたな。何故【竜殺し】と呼ばれているか、だったか?」
「はい。飛竜討伐はシャルロッテさんが請け負ったもので、止めもシャルロッテさんが刺しました。なのに何故私までそう呼ばれているのでしょう?」
長かったなここまでが……とにかく俺はシャルロッテさんの協力者であって、別段自分から飛竜を倒そうとしていたわけじゃない。
なので【竜殺し】とか呼ばれるのはちょっとどうかと思うのだ。それこそ、我が身を死地に置いてでも飛竜と対峙するつもりだったシャルロッテさんが呼ばれるべきだろう。
「私も直接聞いたわけではないがな? ブライドが言うにはシャルロッテが「私が飛竜を倒せたのはマキジの協力あってこそ。彼無くして討伐は有り得なかったでしょう」と語っていたそうだぞ。その上で、【竜殺し】の異名は自らとマキジ、君のパーティー全員に与えられるべきだと。流石は【勇者】だな」
「そ、そうでしたか……」
シャルロッテさぁぁぁぁぁん! 真面目だからきっと、称賛を自分一人だけが受けることに負い目を感じたとかそんなとこだとは思うけど! 【竜殺し】とか当分付いて回るような異名はご勘弁願いたい!
「なんだ? あまり嬉しそうではないな?」
「い、いえ、嬉しくない訳じゃないんですが……まだ冒険者になって一月経つかどうかというポッと出が、いきなりそういう異名をいただくとやっかまれるかなと思いまして」
「既に【特派】に認定されているのだから今更ではないか?」
「うぐっ……そ、それはそうですけど……」
うぅ……【特派】でも充分なのに、この上【竜殺し】なんて異名まで付けられたら、明らかに面倒事に巻き込まれる……
「まぁ諦めるしかないな。古来より竜を倒した者には【竜殺し】の異名を与える、と言うのがレムリア王国の習わしだ。既に早馬が【レムリアリア】に向けて走っているだろうさ」
「そうですか……諦めるし……今なんと?」
「ん? どうした?」
「竜を倒した者には異名を……レムリア王国から与えられるんですか……?」
「そうだぞ? 恐らく【レムリアリア】に戻って数日もすれば、王城に呼ばれるだろうさ」
王城、という単語が出た辺りで俺は膝から崩れ落ちた。
「主殿!?」
「ど、どうした? もしや飛竜との戦いで負った傷などが……!?」
……ある意味飛竜によって負った傷かもな! メンタルに対してだけど!
倒したことでダメージ受けるとは思わなかったよ!
「……いえ、大丈夫です。ですが少々疲れがたまっているようです。座らせていただいても宜しいでしょうか?」
「う、うむ。是非そうしてくれ……そろそろ昼食も出来上がる頃だ。続きは食べながら話そう」
「それでは失礼します……」
俺はよろよろと立ち上がると、初めに勧められていた席へと座る。ララーナは俺が席についたのを見てから、隣の席へと座った。
……取りあえず、気持ちを入れ換えよう。既に早馬が出ているとの事だから、今更足掻いてもしょうがない。
それにあれだ、考えてみれば国からの称号ってことは【特派】と同じで国から実力者として認められるってことだ。目立つが、悪いことばかりじゃない。
とにかく今は目の前の王子様との昼食に集中するとしよう……
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