第95録 近衛騎士
前回のあらすじ
・ララーナと一緒に一狩り行こうぜ!
・謎の訪問者現る
今回は訪問者の正体と目的が判明!
「うーん、正直あんまり出ていきたくないんだけど……ララーナどう思う?」
「拙者は主殿がしたいようにすればいいと思うでござる。ですがまぁ、後々厄介なことになる可能性もなきにしもあらず。ここは取りあえず出ておくのが良いと思うでござるよ」
「まぁそうだよなぁ。ここに俺が居るってわかって来てるみたいだし……取りあえず出るか……」
「拙者もお供するでござるよ。あと冷めるといけないでござるからシチューは一旦しまうでござる」
「わかったよ。それじゃ出ようか」
外から聞こえてきた呼び掛けに対し、取りあえず応じることにする。
机の上に出したシチュー鍋を仕舞って、ララーナと一緒にテントの外へと出る。
「おぉ、いらっしゃったようで。貴殿が【特派】のマキジ殿でよろしいか?」
「えぇ、私がマキジ・ヨコシマです。何か御用でしょうか?」
テントから出ると、そこには40代くらいにみえる立派な鎧を着た騎士が立っていた。
ここ2日、野営地で暮らしているが、こんなに騎士らしい格好をした人は見たこと無いな。
「ふむ、随分とお若い。もう少し歳のいった人物を想像していたのですがな」
「えぇまぁ、私は手持ちのスキルを評価してもらって【特派】になりましたので。まだまだ学ぶことが多い身です」
「いやいや、スキルだけでは【特派】にはなれますまい。今話している貴殿の物腰の柔らかさもまた評価されてのことでしょう」
「そういってもらえると有難いですね。それで貴方は?」
よいしょしてくれるのは悪い気はしないが、話が進まない。ここはこちらから話を進めよう。
「これは失礼、私はレムリア王国軍近衛隊所属のブライドと言う。今日は飛竜の討伐状況を確認しに来たのだが……もう倒されていてな。討伐の功労者を訪ねて回っているのだ」
「あぁ、そうだったんですか。でも功労者というならシャルロッテさんでしょう。彼女なら外に……」
「いや、もうシャルロッテ殿にはお会いしてきた。そこで貴殿の話を聞いてな。こうしてお会いしに来たのだ」
「は、話……ですか?」
「そうだとも。今回の飛竜討伐は貴殿の協力なくしてはあり得なかった、と」
シャルロッテさーーーん! 出来れば余計なことは言わないで欲しかったぁぁぁぁ!
ううむ、どうしたものか……取りあえず【ストレージ】を全面に出して、そっち方面で協力したことにしておこう。
「いえいえ、私は【ストレージ】をつかった支援が殆どでしたから。それでもシャルロッテさんの力になってたのなら幸いですね」
「何を仰る。【ストレージ】一つで変わる戦況もあるほど。貴殿はそれほどの力をお持ちであることをもう少し自覚されるべきだな」
……無自覚ですみません。だってそもそもスキルなんて無い世界から来たんだから仕方ないじゃん!
「あはは……よく言われます……それで、御用は私と会って話すだけでいいんですか? 出来れば昼食がまだなのでこの辺りにしていただけると……」
「あぁいや、実は少々貴殿にお会いしてほしい方がおられてな。どうだろう、昼食がまだならばこちらで用意するゆえ、一緒に来てはもらえないだろうか」
「えぇっと……どうする? ララーナ?」
近衛隊に所属してる騎士が迎えに来て、会って欲しい人物なんぞ間違いなくヤベー血筋の方だろう……出来れば会いたくない。
俺は後ろに控えるように立っているララーナに小声で話を振る。
「うぅむ……まさかここまで面倒な相手だとは思わなかったでござる。しかしもし本当に王族関係だとするのならば、断るのは得策ではないでござろう。ここは会っておくべきでござるな」
「ですよねー……分かりました。行きましょう」
「おぉ! そうですか! では参りましょう。こちらです」
俺とララーナはブライドさんに案内されて、野営地を歩いていく。方向としては王国軍がメインで使用しているキャンプの方だな。
……さて、もし会う相手が王族だというならなにが起こるかわからない。なんせ俺は王族になんてあったこともないし、話したこともないんだからな。
貴族はまだしも王族なんてこの時代くらいなら法律そのものだ。
俺がやらかさない保証はない。
「……ララーナ、もし面倒なことになったら構わない、俺は放置してマールやマリアさんと合流するようにしてくれ」
「主殿、それは流石に承服しかね……つっ!」
俺の言うことに反発しようとしたララーナの隷属紋が熱を発する。
「ほらほら、隷属紋が発熱するんだから言うこと聞いておく。まぁそれにもしもの話だよ。ブライドさんみたいな礼儀正しい人が仕えてる人なら多分大丈夫」
「むぅ……ならあまりそう言うことは言わないで欲しいでござる」
そんなやり取りをしつつ、ブライドさんの後ろをついて歩くこと数分、野営地に建てられた一際大きなテントにたどり着いた。
「……こんなテント昨日まであったっけ?」
「いや……拙者の記憶にもござらんな……」
「これは我々がこちらに着いたあと建てたものですからな。昨日まで無くても不思議はありません。さ、お二人とも、こちらです」
そういってブライドさんが俺達二人をテントのなかへと案内する。入り口に居たのも野営地では見なかった鎧を着ていたから、多分近衛隊の人なんだろう。
横を通るとき凄い訝しげな目で見られた。
「さて、もうお気付きかとは思いますが、これからお会いしていただくのは、レムリア王国の王家に連なる御方です。気難しい方ではありませんが、あまり失礼のないようにお願いしたく」
「はい。出来る限り失礼のないようお話しさせていただきます。ララーナも大丈夫?」
「問題ありませぬ」
「ありがとうございます。ではここで武器を外していただいて、この先へとお進み下され」
ブライドさんに言われて、俺達はそれぞれ武器を外してブライドさんに渡す。
……まぁ、【ストレージ】に放り込んで置けばいいんだろうけど、こう言うのはアピールが大事だって言うしな。
武器を渡した俺達二人はそのまま、テントのなかに更にテントがあるようなもうひとつの入り口を潜り抜ける。
すると……
「おぉ! 君が竜殺しの一人、マキジであるか! さぁ、こちらへ座ってくれ!」
……随分とフランクに話しかけてくる、同い年くらいの爽やかイケメンが俺に椅子を進めてきたのだった……
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