八話
遅れてしまって申し訳ないです。
目を覚ますと辺りは明るくなっていた
どうやら俺は昨日あのまま眠ってしまっていたらしい。
俺はリュウヤが眠っていたベットに視線を移した。
しかしそこにはリュウヤの姿はなかった。
代わりにリュウヤが昨晩着ていた衣類と
灰がそこにあった。
この世界では魔物は生命活動が止まると
灰になるという特性がある。
つまりこの灰はリュウヤの物という事になる。
現にリュウヤの衣類はここにある。それに
灰の中に牙が落ちていた。
ドロップアイテムだ。
大きさは人間の中指位の大きさで
わずかながら魔力のようなものを感じる。
そしてこの魔力はリュウヤの物だ。
それすなわちこの牙の持ち主はリュウヤで
死んでしまうと同時に灰とドロップアイテムに
変わってしまった事に他ならない。
俺は再度涙を流しそうになるが
それを必死に我慢する。
涙を流す時間は終わりだそれは
昨日リュウヤと別れるときに済ませた。
なら今俺がしなければいけないことは
泣くことじゃない。
俺は思考がその様に動くやいなや
行動を開始した。
まず一階に降りて両親にリュウヤの事を告げる。
龍王だという事はさすがに言えないが
魔物であったことは話した。
両親は最初こそ驚いていたが
すぐに持ち直した。
「それでシードこれからどうするつもりだ。」
父は俺の目を見据えて聞いてきた。
「お前は今とてつもなく傷ついているだろう。
サラちゃんは他の男の所に行き
オーマさんやリュウヤさんは亡くなってしまった。
そんな精神的にボロボロなお前はどうする
つもりなんだ。」
父の言葉は聞きようによっては
とてつもなく残酷であまりにも無神経な
物だった。
しかしその言葉は現実から目を
そらさずに現状を見つめて
自分がどうしたいのかを決めさせようと
する後押しのようなとても
温かい言葉だった。
「俺はしばらく旅に出るよ。
おそらく近いうちにサラと勇者が
サラの両親の下へ来ると思う。
俺は祝福すると決めたが今の状態だと
何をするかわからない。
だから自分を納得させるため、
自分の中で整理をつける為に一度
旅に出るよ。
もちろん旅先で死のうとかは
全く考えてなんていないよ。
だから安心して俺を送り出してほしい。」
父は俺の意思を聞くと大きく頷き
先ほどまでの険しい表情から緩やかな
表情になり笑みを浮かべた。
「なら私達からいうことは無い。
シードしばらく会えなくなるが
しっかりやるんだぞ。」
「病気には気を付けるんだよ。」
二人のエールを貰い俺は
即座に準備を整えて
旅に出た。とてつもなく長い長い
旅を。