一話
王都から俺たちが住んでいる辺境の地まで
多数の兵士と数人の神官そして一人の青年がやってきた。
なんでも魔王と龍王が同時に現れてしかも手を組んだらしい。
そこで少しでも戦力を集める為に各地を回って
有力な者をかき集めているそうだ。
勿論サラも徴収されることになった。
なんせ賢者なんてチートスキルを持っていれば
当然だろう。
「という事なのでサラさん私たちと共に
来てお力をお貸しいただけないだろうか。」
神官のその言葉にサラは戸惑いの表情を
見せた。それもそのはず、俺とサラは
あと半年で18歳つまり法的に結婚が
認められる年になる。
もしも今回の戦いで何かあったらと
思うと心配なのだろう。
「すみません。お話の途中いいですか。」
そこで俺は神官に俺とサラの事を話した。
二人が婚約関係でありあと半月で結婚を
するという事を。神官が事情を聴くと
少し戸惑いの姿勢を見せていると
横にいる青年ブレイが話に割り込んできた。
「そういう事ならご心配なく。
彼女は今回の戦いの間勇者たる
私が守りますので。」
「あなたはどちら様ですか?」
「私はブレイ今期の勇者をやっています。」
これが俺と勇者ブレイの出会いである。
結局サラは軍についていくことになった。
やはり魔王と龍王というとんでもない戦力の
前では一人でも優秀な人材が必要なようで
俺もサラもそして両親も首を縦に振るしか
無かったのだ。
俺もついて行こうとしたのだが
俺の使えるのが強化魔法だと初めに
聞いたとき神官は顔を明るくしたが
ステータスの事を話すと、一気に
落胆の顔つきになり動向を拒否した。
曰く確かに戦力は欲しているが
死ぬと分かっている人を連れて
行くほど非道な事は出来ないとのことだった。
人の婚約者を連れて行こうとしてるのに
どの口が言うかと思った。
結局足手まといは連れていけない
という事じゃん。
俺は何とか粘ろうとしたが
それ以降は取り入ってもらえず神官たちは
出発の準備を始めてしまった。
「シード...」
「ごめんなサラ俺が弱いばかりに
サラを一人で行かせる事になっちまって。」
「うんうん。気にしないで、
私頑張ってくるからシードの分まで
頑張ってくるから。」
「サラ...」
俺とサラが別れを悲しんでいると
ブレイがやってきた。
「あんたは...」
「シードさん先ほども言いましたが
どうか安心してください。
こんなんでも私は勇者です。
何があろうとあなたの婚約者の
サラさんは守って見せます。」
「ブレイさん...。わかりました
どうか不甲斐ない俺の代わりに
サラの事をよろしくお願いします。」
「はい。任せてください。」
俺はこの時もっと気を張っておくべきだった。
そうすればブレイの危険性に少しは気づけていたかも
しれない。