十六話
視点変更 魔王???
我魔王軍は今絶賛人手不足である。
先の大戦で我らは人間の軍に敗北した。
人間どもは先代の魔王を討伐したのち
付近にいた魔族達を目に付くなり蹂躙していった。
人間にとって我らは武器や防具になるいい素材でしかない。
それが歩いていたらまず間違いなく殺しにかかるだろう。
さて話を戻そう人で不足である我々は
密かに戦闘員を集めている。
先代を討伐してすぐに
新しい魔王が登場したという記録は今まで無いようだ。
我はこれ幸いと絶賛人員を集めているのだ。
具体的な方法はいくつかある
まず奴隷、今目の前にいる奴隷娘たちと
同様に少しでも他の人間や
勇者に恨みを持っていそうな奴隷を
オークションや奴隷商会に探しに行って
確保してくる。
ただし他の者を害するような者や
統率を乱そうとする輩は購入しない
してしまった場合は度合いにもよるが
基本的には処分をしている。
もう一つの方法が繁殖させることである。
ゴブリンやオーク、オーガなど繁殖力が
高い者達を中心に繁殖をしてもらっている。
ただ人間がいつ本格的な残党狩りを
始めるかわからないので
少し奥の手を使っている。
勿論繁殖して貰っている者達には
育児の為の金や食料を渡している。
それらを行う際の資金源は
宝物庫にあった宝たちである。
人間たちに見つからないように
隠されていたこれらは
魔王を討伐したばかりの
人間たちは興奮のあまり見逃してしまっていた。
我はそれらを生き残った家臣たちに配り
行動を起こすための資金に変えてきて
貰いその金で今行動を起こしている。
これも打倒勇者の為の準備だ。
さて長々と現状を頭の中で整理していたが、
これには理由がある。
それは目の前の女たちの事である。
今現在元賢者のサラがここまでの
経緯を説明しているがそれは
何ともお粗末なものだった。
「なるほど、二人がここまで来る際の
経緯は分かった。
して二人は勇者に復讐をしたいか?」
説明を聞いた直後に出てきたのが
この様なものだった。
本来少しでも同情しようものなら
気遣いの言葉をかけるべきなのだが
今回はそれが一切出てこなかった。
先に口を開いたのは元騎士団長フレイだ。
「私は勇者をブレイを許す気は無い
しかし今ブレイは祖国の
王族になろうとしている。
私はブレイに恨みはあっても
国そのものには何も恨みはない。」
フレイのその答えに何か返す前に
我のそばに控えて今まで無言を
貫いていたクロカが口を開いた。
「元騎士団長フレイ。
その判断をするのは少々早いと
思いますよ。」
クロカはそういうと
懐から紙束をフレイの前に投げた。
「これは?」
「中に目を通してごらんなさい。」
フレイは言われるがまま
その紙に目を通す。
その顔は徐々に曇っていき
そして次に目を見開いて驚愕する。
「今あなたが見ている書類は
ある国のとても偉い人の下から
盗み出してきたものよ。」
「こんなバカげた話があるものかッ!?」
我はフレイの豹変ぶりから
何事かと思いクロカに聞いた。
「あの書類の内容ですか?
簡潔に申し上げますと
この二人からスキルを取り上げ
封印の魔法と奴隷にすることを
この二人の祖国の王とその
親族が了承したというものです。」
「それは誠か?」
「もちろんでございます♪
なんせわざわざ私が忍び込み
偉い人たちがサインした物を
盗んできたものですから。
ま、最も元賢者のサラの両親は
平民なものですからその場に
呼ばれていませんし、
この書類の存在自体知らないでしょう。
フレイ様の両親はいましたよ。
しかも何の躊躇いもなくサインしてました♪」
その話を聞き我はいよいよ
頭を抱えて溜息をつきそうになった。