十五話
私はあまりの驚きに少しの間
固まってしまいましたが
声が出るのを確認すると
思わず魔王相手に質問をしていました。
「あなたは一体何をしたのですか!?
なぜ頭に触れるだけであの解除不可能な
封印の魔法が解除出来たのですか!?」
「ん? そんなの簡単だぞ
封印の魔法って言うのはとても
強力な催眠の魔法なのだ。
その影響はかけられた本人だけではなく
周りにも影響が出てくる。
だからその催眠を解いただけだ。」
「催眠ってそんなはずありません!
それなら―――」
「ずっと昔に解除の仕方が出回っているはず
とでもいうつもりかな?」
「っ!?」
「言ったであろう周りにも影響を及ぼすと
お主は封印の魔法を解く努力をしたことが
あるか?」
「そんな解けないと分かっている物
・・・あれ?」
私は自分が言っている矛盾に気が付きました。
「解けないと分かっている物?
はておかしいな我は今しがた
お主たちの封印の魔法を解いた
はずだが?」
「そ、それは。」
「何その答えはすでに出ているであろう。
そう今しがたお主が言ったその思考も
すべて封印の魔法で縛られたものなのだよ。」
「そ、それが本当だとしてあなたは今
封印の魔法を解除したと言ったではありませんか!
それがなぜまだこのような思考を続けて
いるのですか!?」
「先ほどから質問ばかりだな。」
魔王がそういうと明らかに
今までと違う雰囲気を醸し出した。
明らかに敵意を持った物を
しかしそれはすぐに収まった。
そしてなぜか少し慌てた様子で
言い訳をするように説明しだした。
「ま、まあ良い我は今気分がいいのでな
少しくらいは付き合ってやろう。
なぜ封印の魔法を解除したのに
まだ解けるはずがないと思っているのか
だったよな。」
なぜか最後の方口調が変わっていた
気がするが気にせず
私はその問いかけに首肯した。
「我は確かにそなたたちの封印の魔法は
解除した。しかし、それはその封印が
最近かけられたものであるからだ。」
「最近?」
「お主たち人間は赤子が生まれた際
必ず赤子を連れてどこかに行くのでは
ないか?」
私はその問いかけにしばらく
思考を凝らした。
ある場所を思い浮かべ
そして戦慄した。
「ま、まさか...。」
「さすが元賢者頭の回転が速い。
そう人間の赤子は必ず教会に
連れていかれる。
そして祝福の儀を受けさせられる。
そしてその時に――――」
「封印の魔法を受けた.....。」
「と言ってもその教会の者たちも
気づかず付与しているみたいではあるがな。
そして先も言った通り封印の魔法は
時間が経てば経つほど解除が出来なくなる。
理由はもう大体察しがついているのではないか?」
「....封印の内容が魂に定着されるから?」
「正確には脳にだがまあ良いか。」
「?」
「まあ良い。
根強く植え付けられた封印の魔法は
解除しようとすればその分だけ脳...
ではなく魂を深く傷つける。
しかし先の封印は付与されてまだ
一月も立ってはおらんかった。
なのであそこまで容易く解除出来た
そういうわけだな。」
「な、なるほど。」
私は今の説明を信じるべきか
少し悩んだが目の前でそして自分の
身に起きていることを考えると
もう納得するしかなかった。
「さてこれでようやく
お主たちに質問の答えを
返してもらえるな。
さあ先程の世間話の続きをしようか。」