十話
やばいこれと次の回でサラ編終了しちゃう(汗)
旅をしていてもシードとの手紙のやり取りは欠かさず
していました。
しかし故郷を離れた寂しさと
日々の過酷な訓練で私の心はどんどん弱って
行きました。
そんな時私を支えてくれたのが
ブレイ様でした。
私が寂しさで泣いている時は優しい
声をかけてくれました。
過酷な訓練で疲れ切った時は
私を心から労ってくれました。
私が戦闘でピンチになった際に
颯爽と現れて助けてくれたりも
しました。
私はいくら何でも優しすぎると
思いブレイ様に直接その事を聞きました。
ブレイ様は少しはにかみ
「もちろんシード君と君を守ると
約束したからね。」
と答えました。
その答えを聞いた私は少しがっかりしていました。
私は答えてくれたことに礼を言って
立ち去ろうとしました。
しかし立ち去ろうとした私の手を
ブレイ様は強く掴み、
「だけどそれとは別に僕が君の事を
とても愛おしく思っているんだ。
僕は君の隣に居続ける事は出来ないかも
しれない。だから今この時を大事にしたいんだ!
そしてもし許されるのなら魔王討伐をしても
僕は君と共にずっと暮らしていきたい。」
私はその言葉を聞いた瞬間目から涙が出ていることに
気が付きました。
私が本当につらかった時悲しかった時危なかった時に
いつもブレイ様は傍にいてくれました。
そして涙の意味を私は理解してしまいました。
ああ、私はこの人の事を本当に愛してしまって
いるんだ、と。
だから私はブレイ様の言葉に対して
「はい。よろしくお願いします。」
と答えてしまいました。
そして旅が続くにつれブレイ様への
愛情は日に日に強くなっていきました。
そしてある宿屋で私はブレイ様に
迫られ体を許してしまいました。
勿論シードの事を忘れている訳ではありません。
けれど私はもう目の前のブレイ様の事を
愛してしまっている。
だから私は体を許した時点で覚悟を決めていました。
例えどんなに罵られようとも自分の気持ちを
貫くとその為に絶対に両親やシードとシードの両親を
説得して見せると。
その後旅の途中で何回か事をいたしましたが
回数は片手で余裕で数えられる位で
どれも細心の注意をして行っていました。
いつ魔王を倒せるかわからない状況なのに
もしも子供を宿してしまえば戦力外に
なってしまうからです。
そしてついに私達は魔王を倒したのです。
残念ながら龍王には逃げられてしまいましたが
ブレイ様が放った攻撃で致命傷を
負わせることが出来たのでその内力尽きるという事で
深追いはしないという風に決まりました。
私達は戦後処理を終わらせて無事王都に
帰還することができました。
王様からブレイ様は伯爵の爵位と
姫様との婚約を認めてしまいました。
周りが驚いたり喜んでいる中、私は
それどころではありませんでした。
頭の中はどうやって両親たちを
説得するかそれだけで一杯でした。
結果だけ言うと説得は成功した。
私がブレイ様と共に両親に関係を
話すと最初こそ苦悶の表情をとるが
その後は真剣な顔で話を聞いてくれた。
シードの両親にも謝罪と許しを貰いに行った。
そしてこれもなんの問題もなく済んだ。
私はどの面下げてと思ったが
シードに謝罪をしたいと申し出ると
旅に出たと言われた。
そしていつ帰ってくるかもわからないと
言われた。
私はシードに謝罪をしなくては
結婚できないとブレイ様に言ったが
姫様との結婚式の際に
同時に式を挙げなければ
格好がつかないしいつ帰ってくるかも
分からないシードを待って
再度式を執り行うのは不自然
ということもあって
私はシードに何も言わないまま
式を執り行った。
式が行われている最中私は、
シードの姿がないか探した。
もし来ているなら兵士の方に
頼んで話をする場を設けて貰おうとした。
しかしシードは見つからず
来ていたのかさえ分からず式は終わった。
その日の晩式の時に対して食事をとることが
出来なかったという事から私達だけで食事を
とることになった。
メンバーはブレイ様、騎士団長のフレイさん
聖女のシャルさん、そして私とブレイ様の
パーティーメンバー基お嫁さん達だ。
姫様は用事があるとかでここにはいらっしゃらない。
皆さんが席に着いたのを確認しブレイ様が
乾杯の儀を執り行いました。
「今日まで僕たちは同じパーティーで
苦楽を共にしてきた。
これからもどうか不甲斐ない僕の事を
どうか支えてほしい。
では乾杯!」
「「「乾杯!」」」
そして私達は飲み物を口にしました。
その瞬間全身から力が一気に抜け落ちて
椅子から転げ落ちてしまいました。
隣をみるとフレイさんも同じ状態みたいです。
私はブレイ様とシャルさんの様子を窺うため
そちらを見ると、とても邪悪な笑みをした
お二人がおられました。
「くくくくく」
「ふぅえいひゃま?」
「あはははははは!二人とも本当に
僕の期待を裏切らない馬鹿な女どもだねー!」
「へ?」
「分からないかい二人とも?
君たちはね僕のおもちゃとして今まで
使われていたに過ぎないんだよ。」
私はブレイ様が何を言っているのかが
分からなかった。
馬鹿な女?おもちゃ?一体何を言っているんだ?
この人は?
「フレイ、君は今まで周りから女として
扱われていなかったよね。
それで僕がすこ~し女の子扱いをしたら
コロッと落ちちゃうんだもんつまんなかったよ~。
考えてもみなよ君のような顔や体に傷がつきまくっている
醜いやつを女としてみる訳ないだろう。」
隣からすすり泣く声が聞こえるフレイさんの声だろう。
「サラ、君も大概だけどね~
いくら悲しい思いをしていたからといっても
婚約者がいる身なのに簡単に僕の口車にのって
愛してるーなんて言って簡単に体を赦すなんて
僕は君の元婚約者に心から同情するよ。
彼もきっとあの世で君が来るのを待って
いるだろうさ。ま、簡単には殺さないけどね♪」
今この男はなんて言った?
あの世で待っている?元婚約者?
私は驚愕で顔を固まらせる。
「あれ?もしかして知らなかった?
君の元婚約者シード君だっけ?
彼ね君に振られたことがショックだったのか
旅に出てね。その道中に魔物の残党に
殺されちゃったみたいなんだよね~
しかも死体も残っていなかったから
住処にでも連れていかれてサンドバックに
でもされてるんじゃない。
あ、でも期待しちゃだめだよ。
その現場大量に血が流れていたみたいだから
どっちにしたって絶対に死んじゃってるからさ~」
私は今起きていることが夢だと思いたかった。
だってブレイ様におもちゃだと言われ
裏切られ現に薬を飲まされて身動きが取れない
状態。それにシードが死んでしまったという事実
私は夢だと悪夢だと思いたかった。しかし、
腹部に鈍い痛みを感じるとこれが現実だと
思い知らされる。
痛みの原因を探ろうと顔を上げると
そこには聖女さんがいた。
「勇者様お遊びはこの位にして早く
事をなしてしまいましょう。」
「ああそうだねシャル。」
聖女さんはそういうと私の頭をつかみ
あおむけの体勢をとらせた。
「これからあなたたちのスキルを
貰いますね。 そんな事ができる訳が
無いって顔ですね。でもご安心を
それが可能なのが聖女なのですから。
私の力でそれが可能なのですよ。
ご安心をあなたたちはこの事が済んだら
特別な封印をかけて奴隷として売って
差し上げますから。
もちろん表向きは死んだことに
なさいますからご心配ないく。
そうですね筋書きは楽しく晩餐会の途中
魔物の残党が魔王の仇討に来て
何とか殲滅に成功するも賢者と騎士団長は
不意を突かれて死亡。
といかがでしょうか
これなら色々な人達を陥れられ私たちの
特になるようなものばかりではないですか?」
「ああ素晴らしいよシャルさすがは
僕のお嫁さんだ。」
私はそんな二人の話を途中から
完全に聞いてなんていなかった。
私の頭の中にあるのはシードが
死んだという事実。
この事に私は酷く絶望していた。
そして私は思い至った。
いたってしまった。
私は本当の意味で勇者の事を愛してなんか
いなかったのだと。
昔からシードは私に対してどこか素っ気無い
所があった。今回の魔王討伐に関してもそうだ
もっと全力で止めてほしかった。
何が何でもついてきてほしかった。
私の事をもっと見ていてほしかった。
そんな子供じみた考えを拗らせ勇者に体を許し
結婚までしてしまった。
そんな考えを巡らせていると
聖女が私のその考えを否定するかのように
ある事実を告げた。
曰くシードは手紙のやり取りで私が
勇者に心が引かれていることを気づき始めていた。
曰く私が勇者と体の関係まで至っていることを聞き
情報屋に探らせていた事。
曰くその噂が事実でそうしたら自分という婚約者が
いるなんてことがしられれば私に迷惑がかかると思い
自ら身を引きそもそも婚約者なんていなかったことに
してもらうように恥を忍んで頭を下げて回ったと。
私は今度こそ心から絶望した
シードが私に関心が無かったなんてことは
無かった。近くにいなくても直接話さなくても
手紙のやり取りだけで私を理解してくれて
私の将来の事を思って身を引いてくれた。
恐らく両親たちがあんなに簡単に
勇者との結婚を認めてくれたのも
シードがお膳だてしてくれたからだろう。
私はそんなシードを裏切った。
自分の事なんかより私の事を
第一に思ってくれていた彼を。
聖女の手が私に伸びる。
いよいよ私のスキルを奪うのだろう
私は恐らく簡単には死なせてもらえないだろう
しかし私はそれを甘んじて受ける。
これが私に対する罰なのだと思い
そして私の中から何かが抜けていく感じが
したかと思うと意識が遠のいてきた。
そして願うのであった。
もしこのまま何かの間違えで死ねるのなら
シードに謝らせてほしいと。
地獄に落ちてもいいからせめてシードに
謝らせてほしいと願い
私は意識を手放した。