得て失う
ゴブリン達は物凄く優しかった。
2日間お世話になった。
ご飯も美味しかったし(アンナは不味いと言って食べなかった)。
「そう言えば、お前達は何でこんな所にいたんだ?」
ゴブリンの村長であるアースさんが聞いてきた。
「実は・・・。」
「どうした?」
ちょっとまて、ここで言うのは不味いのでは?ゴブリンだって魔族だ。そんな人たちの前で魔王の封印を確かめに行く、なんて言ったら・・・。
「魔王を倒しに行くのよ。」
「なに!?」
ちょ!?アンナさん!?
しかし、アースさんは
「・・・そうか、私がついて行くのは駄目か?」
「は?」
「あの忌まわしい魔王が復活したという事だろう。私も力になりたい。」
どうやら魔王は人間だけじゃなく、一部の戦争を望まない魔族にも恨まれていたらしい。
ゴブリンは戦闘能力は高いが、争いは好まない平和主義の種族だったのだ。
「付いてきてくれるんですか?」
「私の方からお願いしたいくらいなのだ。どうか連れていってくれ。」
こうして、アースさんが仲間に加わり、再び魔王城に向かって出発したのだった。
先ずはこの山を降りた先にある町に行かないと。きっと俺らが休んでる間にケートスさんとスズナは先に着いているだろう。
ケートスさんも喜ぶだろうな。こんなに強い仲間が加わったんだから。
そう言えばアースさんはどうやって戦うんだろう。
あの時の山賊(猿頭族という種族らしい、俺達が巣に迷い込んだため襲ってきた)と俺達を守りながら戦ったんだから相当強いのは分かるけど。
そう考えていると。
「アースって魔法使えるの?」
アンナが良い質問をした。
「使えないな。ゴブリン族は一切魔法が使えない代わりに身体能力がとても高い種族だ。だから俺は力で戦う。」
マジか、俺と同じ戦闘スタイルじゃないか。
まぁ、俺達は本来支援攻撃である魔法使いのチームだ。前衛が出来るのはすごく心強い。
しかし、楽だな。本当なら熱力魔法を使わないと山越えなど不可能だが、この山のことを知り尽くしているアースさんが雪が降らない比較的温かい道を案内してくれた。
あっという間に町の前まで着いたが・・・。
「なんだよこれ・・・。」
町の前は一面焼け野原になっていた。
「まだ地面が熱い場所がある。最近ここで何かがあったんだろう。」アースさんは地面を触って確かめている。
「まぁ、町に入らないことには何も始まらないんじゃない?」
それもそうだな、しかし、この状態は・・・ケートスさんに何かあったのではないか?
これ程の被害、大規模な熱力魔法でも使わないと・・・。
「ほう、人集りが出来ているな。何かイベントがあったのだろう。」
嫌な予感がする。ケートスさん・・・。
広場に着く。
人集りの中心にはにはケートスさんのさらし首が飾られていた。