緑色
「うらぁ!!」
向かって来る山賊を殴り飛ばす。もう50人は倒しただろうか。
雪崩で二手に分かれてしまった後、俺とアンナは再び山賊に襲われ、かれこれ1時間以上戦い続けている。
普通なら囲まれた時点で飛び道具で一斉に攻撃されて詰んでいるのだが、俺は弓矢なら掴み取れるし、アンナが的確に相手の魔法を無効化してくれているから何とかなっている。
しかし、山賊も飛び道具が効かないとみて、今度は武器を取って向かって来た。
まぁ、でも正直言ってきつい・・・。鬼龍闘気で、回復は出来るが疲労は溜まるし、さっき受けた矢の毒も効いてきた。
龍脈術を使い過ぎて、頭痛もしてきた。恐らく闘気を解除した瞬間気絶してしまうだろう。
アンナも顔色が悪い。当たり前だ、俺みたいに無限に魔力を使えるわけじゃないのに、これだけ封印魔法を連発しているんだ。
「ぐふぅ!」
棍棒が俺の腹にクリーンヒットした。
殴って来た奴は倒したが、痛みでもう動けない・・・。
同時にアンナも魔力切れで座り込んでしまった。
そこを狙ったように矢が一斉に飛んできた。
もう矢を掴み取れる程の体力は残ってない。
アンナの盾になるため、アンナを抱き締め、俺の背中に矢が刺さらなかった。
・・・?
当たりには中心から真っ二つに折れた無数の矢が転がっている。
そして、目の前に背の高い人影が写る。
「ケートスさん・・・。」
そこで俺の意識は途切れた。
目を覚ます。
とごだここは・・・。小屋の中、俺はベットに寝かされていた。
おかしい、体の痛みがない。あれだけ鬼龍闘気を使ったのに筋肉痛が起きないなんておかしい。
しかし、筋肉痛はなくても疲労により立ち上がることが出来ない。
横を見るとアンナも寝かされていた。
小さな寝息を立ててよく眠っている。髪を掻き分け、顔をよく見ようとした時。
「起きたか?」
「きゃぁーーーーーー!?」
突然背後から声がして変な声を出してしまった。
アンナも起きてしまった。
助けたのはケートスさんじゃなかった。
「私はゴブリンのアースという者だ。このゴブリンの村の村長をしている。」
「俺はソル・キアスターです。助けて下さってありがとうございます。でもどうして・・・?」
「なに・・・村の周りを巡回していたら、同族が猿頭族に襲われていたから助けたまでだ。」
「えっ・・・同族?」
「ん、違ったか?お前もゴブリン族だろう?その尖った耳と翡翠色の目はゴブリンの物だ。」
「すみません、俺、人間です・・・。」
「そうだったのか、でも襲われていたのには違いない。私が通りかかって良かったな。私は村長としてお前達を歓迎する。こんな山奥の村、普段は誰も来ないからな。回復するまでいてもらって構わない。」
「あ、ありがとうございます。ところで俺の体を治療したのは?」
「あぁ、私だ。回復魔法を使った。」
回復魔法・・・!強化魔法の亜種的な存在で体内の器官の治療が出来る古代魔法の一つ・・・。
「腹が減っただろう、飯を持ってくる。」
すごく親切な人だな・・・。
ここはゴブリンの村だ。
この山の火孔付近にあるこの村は寒さの影響を受けずとても温かい。
ゴブリンというのは魔族の一種で、尖った耳と、翡翠色の目を持った身体能力が高い種族だ。
ゴブリンは基本ズボラで体を締め付けるものを嫌ってブカブカの服を着て、靴を履かない。そういうところが俺も似ているとも思ったが、俺がゴブリンだなんて初めて言われたな。
てか、俺の目って翡翠色なのか?
「なぁ、アンナ?」
「・・・何よ?」
アンナは布団から顔だけを出して答える。
「俺の目の色って何色だ?」
アンナの目の前まで顔を近づける。
「ちょっ!!!近い!近いわよ!!」
アンナは顔を真っ赤にして俺を押しのけた。
「あっすまん。」
「・・・緑色かしら・・・?よく見ると珍しい色ね。」
あぁ、じゃあやっぱり翡翠色なのか。
両親の顔はあまり覚えてないし・・・爺ちゃんの目って確か緑色だったな。
じゃあ、爺ちゃんからの遺伝なのか・・・。
人間なのに、目が緑色なのか。確かに珍しいな。
期間を開けてしまってすみません。