氷の火山
寒い・・・。
俺ら4人は今雪山を歩いている。
ここは通称「氷の火山」、元はただの火山だったが、世界が枯れる現象はこの山に雪を降らせたのだ。
よって雪山なのに火山という奇妙な山になったというわけだ。
町を出た後、俺らはこの山に入った。この山を越えればもうすぐ魔王の封印場所、魔王城が見えてくる。
さっさと越えて行きたい所だが・・・。
「さぁぁむぅぅぅいぃぃぃ!!!」
もう何度目かも分からない寒さへの文句をアンナが垂れる。
「寒いだけましだ。俺の熱力魔法がなかったらとっくに凍死してるんだぞ・・・。」
ケートスさんが熱力魔法を使い俺達の周囲を温めながら進んでいる。ケートスさんマジ兄貴。
「何でこんな所通らないといけないのよ!もっと他に道があったでしょ!?」
「ここを越えるのが一番安全で近道なんだ。」
「山の横に渓谷があるじゃない!そこ通れば良かったのに!」
「バカ言うなよ、その渓谷は竜の棲家だ。人間なんか入った瞬間八つ裂きにされる。」
「・・・バカ!」
この2人、いつも喧嘩してるな・・・。
ふと、肩に痛みが走った。
「なんだ・・・。」
俺の肩には矢が刺さっていた。
「矢!?あっ、痛てえ!!!」
「敵襲か!?」
ケートスさんが望遠魔法で周り見る。
「不味い!山賊だ、しかも囲まれてる!」
「数は!?」
「分からない!でも最低20人はいる!」
そして、矢が再び飛んできた。
来ると分かってたら俺は掴み取ることが出来るが、他の3人はそうもいかない。
ケートスさんは炎を使って矢を防いでいるが、スズナとアンナは何も出来ずにいる。
しょうがない、俺は2人に覆いかぶさり、肉の盾となった。
「ちょっと!重いわよ!何すんのよ!」
「死にたいのか!しかもこの矢、毒が塗ってあるぞ・・・。」
物理的なダメージは回復するが、毒はどうなのだろうか、分からない。
しかし矢はひっきりなしに飛んでくる。
するとケートスさんが、
「くそ、広範囲攻撃魔法を使う!全員防御の準備しろ!」
「私、封印魔法しか使えないんだけど・・・。」
「・・・私も防御用の魔法は使えない・・・。」
マジかよ、しょうがない。
「俺が壁になるから、2人とも俺の後ろに!」
ケートスさんは熱力魔法で辺りを焼き払う気だろう。
俺はどうせ回復できる。2人はそういうわけにも行かないから、とりあえず2人を守らないと。
「いくぞ!!!」
ケートスさんの魔法が発動した。
物凄い熱風だ。ケートスさんの方に向けていた背中は炭になってしまったが、2人は何とか守ることが出来た。
「ふぅふぅ、何とか追い払えたか・・・。」
「流石です、ケートスさん。」
「ケートでいいって・・・ぐっ・・・。」
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ、しかし、ここの所魔力を使いすぎた。しばらくは魔法は使えない。というか、お前こそ大丈夫か、背中炭になってるぞ!?」
「大丈夫です!体だけは丈夫ですから!」
本当に鬼龍闘気様様。
でも確かに山に入ってからケートスさんはずっと俺らを温めるために魔法を使っていた。そして、大規模な魔法も使ったのだ。
「少し休ませてくれ・・・、もう立つのも辛い・・・。」
「わかりました・・・。」
その時
「・・・何か聞こえないか・・・?」
「何ですか?」
鬼龍闘気で聴力を強化してみる・・・。
・・・。ゴォォォッ。
確か何か聞こえる・・・てか、これ!?
「な、雪崩です!!!」
「なに!?」
さっきの大規模魔法のせいで雪崩が起こってしまったのだ。
しかもすぐそこにまで迫っていた。
「ソル!アンナを頼む!」
「えっ!?わ、わかりました。」
アンナを抱き締める。
「ちょ!?待って!何して・・・!」
雪崩に飲み込まれる。
ケートスさんはスズナと一緒に俺とアンナとは違う方向へ流されていく。
「ソル!この山を降りた先に新しい町がある!そこで落ち合おう!」
「わかりました!絶対ですよ!」
俺らは二手に分かれてしまった。