脱出
スズナがだいたい回復したので、そろそろここを出ようと思う。
夜になり、4人で部屋を出る。ケートスさんとアンナはすごく仲が悪くなってた。なんでもケートスさんの料理が不味かったらしい。言ってくれれば俺が作ったのに。
スズナは回復したと言っても何とか歩けるぐらいで、魔法を使うのはまだ厳しそうだ。
しかし、ここからは離れた方がいいだろう。なんたって4人とも指名手配されているんだから。
もうすぐ町を出られるという所で町の門に検問が張られていた。
「不味いな、これじゃあ町から出られないぞ。」
「とりあえず、さっきのホテルに戻るか。」
無理やり検問を突破することも出来なくはない、大魔法使いが4人もいるんだから。
しかし、スズナは無理はできないし、アンナは攻撃魔法が使えない。この状態で突破は難しいだろう。
引き返そうとした時、
「ソル、今こっちを見られてる。」
「えっ、マジっすか?」
ケートスさんが視線に気付いたらしい。
「後ろから3人ぐらいの視線を感じる。遠距離攻撃魔法を準備しろ、合図をしたら検問に向かって撃ち込んで町の外に出ろ、俺がアンナとスズナを守りながら後からついて行くから。」
「了解しました、と言いたいところですが、俺、遠距離攻撃魔法使えません。」
「マジか・・・。」
「マジです。」
「じゃあ、スズナアンナを抱えて走れるか?」
「いけそうです。」
「あんた達何話してんの、きゃあー!ちょっと何してんのよ!?」
「今から町出るから・・・、ケートスさんお願いします。」
「おう!」
辺りが光に包まれる。
次の瞬間、そこには検問などはなく、一面焼け野原になっていた。
「行くぞ、走れ!」
俺は暴れるアンナとスズナを肩と腰に抱えて走り抜ける。
ケートスさんはゆっくりと歩きながら付いてきている。
「ケートスさん大丈夫っすか!?」
「あぁ、結構でかい魔法使った後だから・・・大丈夫だ、すぐに走れるようになる。」
後ろから兵士が走ってくる。不味い!ケートスさんが追いつかれる。
ケートスさんは青白い顔をしていて、もう魔法は使えそうにない。アンナとスズナも無理・・・となったらもう俺しかいないじゃないか!
アンナとスズナを1回降ろして構える。
右手の指に指輪をはめる。
「1度しか使えないから大事に取っとこうと思ったけど・・・仕方が無い、食らえ、「重力黒弾」!」
貴重な指輪の魔法を使う。
重力を持っている弾丸を発射する魔法、前に使った重力収縮の改良版だ。
出力を抑えることで、一瞬で使うことが出来る。
発射された黒い玉は1人の兵士に当たり、爆発、しかしこれは普通の爆発ではない、その爆風に巻き込まれた者は超重力により、地面に磔になる。
指輪が割れて、地面に落ちる。
詠唱時間が短くなっただけで、重力に作用するような魔法だ。大量の魔力が必要となる。龍脈術をフルに使ったので、頭痛もやばい、今にも意識が飛びそうだ。
「ケートスさん、今の内です!」
「おう、助かった。」
何とか町から出ることが出来た。
しかし、アンナ以外は満身創痍となってしまった。