しぶしぶ筋トレを始める。
今、俺は道場で筋トレをしている。
おかしいだろ?笑えよ、魔法使いなんて筋肉なんか要らないだろって笑えよ。そんな事より魔法の勉強だろって。
あれから何日、いや何年たっただろうか。
魔法が使えないと知った日、俺は叫びながら三日三晩走り続けた。
両親共に大魔法使い、自分もそうなるだろうと思っていた矢先にこれだ。
しかも周りの人達には「俺、大魔法使いになるから!」キリッ
と言い続けていたので今更、恥ずかしくて帰れない。
走り続けて着いた先がここ「鬼門流拳闘術道場」。
実はここ、母親の実家である。
拳闘士・・・戦闘職の一つ、その身の力、つまり筋肉と総合格闘技術を使い戦う。玄人ともなればその拳は岩を砕き、蹴りは大木を切り裂く。
魔法使いは諦めて拳闘士になるのか?そう、俺は拳闘士になりに来たわけではもちろんない。
母、ニーナ・キアスターはこの道場の師範代の一人娘、この道場で生まれ、育ち、大魔法使いになったのだ。拳闘術道場でだ。なにか秘密があるに違いない。
そう考えて、師範、実祖父コウ・キモンに弟子入りしたわけだ。
両親を失った時、この道場に住むか、孤児院に入るかの選択肢があったが、俺は魔法使いになりたい。それには拳闘術は関係ないし、孤児院は魔法学校にも近い。
そういう事で俺は孤児院に入ったわけだか、何の因果か俺はこうして道場で暮らすことになった。
そうして俺は道場で最も強くなった。そう、師、祖父をも超えたのだ。このまま拳闘士になれば歴史に少し名が残るぐらいは活躍出来るだろう。
だが、それではダメだ。俺は大魔法使いになる。これは何があっても変わらない。
しかし、そんなこんなで3年近く経ち、未だに何も手掛かりを掴めていない。
さすがに、あぁ、もう流れで拳闘士になっちゃうか?って思う様になってきた。
そんな時
「お前に教えられることはもうこのぐらいしか残ってない。教えてやろう、鬼門流拳闘術道場に伝わる奥義 鬼門法 を。」
「・・・鬼門法?」
「お前、魔法使いになりたいんだろ、わかっとるわ、ニーナと同じ目をしておる。道場のことは心配するな、魔法使いになれ。」
俺は目を見開いた。
やっと魔法使いになる手掛かりが見つかった、いやそれより・・・気付かれていた・・・魔法使いになりたいという気持ちを。
いや、そんなことはどうでもいい、結果が良ければ全てが良くなる。
「じいちゃん、教えてくれ、その 鬼門法 ってやつを!」
そうして俺は鬼門法を習得したのだった。