終話「旅立ち」
「君がソル・キアスター君だね?」
俺よりも遥かに大きな、髭の似合う老人は言った。
ただそれだけで、圧倒的強者であることがわかる。
俺は久し振りに狩られる存在になったのだ。
「・・・はい、そうです。」
「そうかそうか、わしは魔法協会会長兼大魔法使い「七つの大罪」ニコラス・アルデルトじゃ、よろしくな。」
「・・・。」
この人、今の魔法使いの中で1番偉くて、恐らく1番強い人だ。
「おーい、医療班。カイトのやつはどうなったよ。」
「ダメです。死んでます、もう助かりません。」
「そうか・・・。」
「・・・。」
「ソル君よ、君がカイトを倒したんじゃな?」
「はい・・・。」
「良くやった!」
「は?」
「いやぁなぁ、あの問題児には困っとったんじゃよ。今度問題を起こしたらわしがじきじきに粛清しようかと思ってたんじゃ。
そしたらあいつ急に仕事中暴れだしたと報告が入ってな、大急ぎで飛んできたら既に君がやってくれていた様じゃな、びっくりしたが、ありがたい。」
「・・・。」
「いやぁ、にしても君なかなか強いなぁ、しかもあれは古代魔法じゃないのか?」
「あっ、はい。」
「そこで提案なんじゃが、聞いてくれるかの?」
「何でしょうか。」
「ソル・キアスター君、君、大魔法使いになりたくはないかい?」
「えっ!?」
「いやな、カイトのやつが死んで大魔法使いの席が一つ空いてしまったんじゃ。
大魔法使いは常に7人いないといけないんじゃが。
なにぶん急での、まだ人員補充が難しい。
そこで!カイトを倒した実力を認め、君を大魔法使いに推薦しようとおもうんじゃが。どうかな?」
「やりたいです!俺!大魔法使いになりたい!!!」
「おうおう、元気がいいのぉ。
よし!それじゃあ、ソル・キアスター君、君は今日から大魔法使いじゃ!
そうと決まれば異名を付けなければならんのぉ。」
「異名ですか?」
「あぁ、大魔法使いには異名があってな、カイトは「光弾の射手」、わしは「七つの大罪」という感じで全員付けられるんじゃ。そうだな、君のさっきの戦いぶり、古代魔法・・・まるで怒り喰らう龍の様じゃったな・・・。」
「・・・。」
「ソル・キアスター、君の異名は「憤怒の暴龍」というのはどうじゃろうか?」
「かっこいいです!!!」
「ふふっ、そうかそれじゃあ、大魔法使いにもなったことじゃし付いてきてもらうぞ、「憤怒の暴龍」ソル・キアスター君。」
そう言ってニコラスさんが手を前に突き出した瞬間、爆風が吹き荒れた。
そして風がやんだそこには、さっきの巨大な鳥が佇んでいた。
「わしの魔法の一つ、生獣魔法「天空大鷲」じゃ、さ、乗りたまえ。」
「どこに行くんですか?」
「ふっふっふ、君に大魔法使いとしての最初の仕事を与えようと思ってな・・・。」
するとエリスが近づいて来た。
「ソル・・・行くの?」
「ん、あぁ、行ってくる。」
「そう、待ってるから!」
「あぁ、俺も待ってる!」
「ソル君、行くぞ!」
「はい!」
ブァフォォと羽を羽ばたかせ
一瞬で雲の上までやって来た。
大鷲の背中に乗り、空をかける。
「とりあえず、大魔法使い就任おめでとう、ソル君。」
「はい、ありがとうございます。
ところで、俺にさせたい仕事とは?」
「ふっふっふ、まぁ、聞きなさい。
本来はカイトに任せるつもりだったんじゃが、カイト亡き今、新たに大魔法使いになった君にこの仕事をやってもらう。
今、世界で大地が枯れるという現象が頻繁に起こってることは知ってるね?」
「いや、知らないです。」
「えっ・・・そうか、まぁ、説明する。
最近になって大地が生物が住めないくらいに枯れるという現象が世界各地で起こっておる。
これには「魔王」が復活したからだという噂がある。」
「ま、魔王が!?」
「あくまで噂じゃが、魔王が復活して、行なったとすれば納得がいく。そこで、君にはこの調査を依頼したい。」
「調査って?」
「君には・・・魔界に行ってもらう!」
「魔界!?」
「そう、魔界に実際にいって、魔王の封印が解けてないか確かめてきてもらいたい。」
「魔界ですか・・・。」
「大丈夫、君ならやれる、
父を、キール・キアスターを超えたいんだろう?」
「ッ!?知ってたんですか?」
「知らないとでも思ったか?まぁ、しかし、断りはせんよな?」
「はい!その依頼、受けさせて貰います!
そして、その問題を解決して、
俺がもう1度人類を救って見せます!」
魔法の使えない少年は夢をあきらめずに努力と工夫で、魔法使いになり、大魔法使いにまでなった。
魔法の使えない魔法使いはいったいこれからどのような道を歩むのだろうか・・・。
第一部完
魔法の使えない魔法使いソルの物語はここで一旦完結です。
これからは番外編を少しずつ出していきながら近々、第二部を書こうかと思います。
投稿ペースは落ちると思いますがご了承ください。




