朝の騒動
「灰倉京弥くん。あなたの進路希望調査について聞きたいことがあるので、放課後、生徒指導室に来なさい。」
俺は、とある地方の高校に通っている高校生なのだが、ある日、担任の先生に呼び出されたのだった。
担任の先生に呼び出されたら、普通の学生は素直に従うだろう。
だが、俺はもちろん行かない。校内ヒエラルキーにおいて自分の上に立つであろう者に簡単に屈することは、俺のプライドが許さなかった。
翌日。
「灰倉くん。昨日、生徒指導室に来なさいって、私、言いましたよね。何で無断で帰ったんですか?」
いつものように遅刻ギリギリの時間帯に何食わぬ顔で教室に入っていった俺に対して、担任の先生がかなり怒った様子で迫って来た。
「はあ・・・面倒だったからですかねぇ・・・」
俺は適当に理由をつけて、自分の席に座ろうとする。すると、先生はさらに語気を荒げ、近づいてきた。
「面倒って、そんな理由で勝手に帰っていいと思ってるんですか?私、かなり長い間あなたが来るのを待ってたんですよ。きちんと理由を説明してください。」
先生の大きな声に、クラス中の視線が集まる。やめてほしいな。目立ちたくないのに。
「俺、先生の事情なんて知ったことじゃないです。静かにしてくれませんか?朝からうるさいですし。俺、静寂が好きなもので。」
俺の言葉で、気が立っていた先生はハッと我に返った。先生は咳ばらいをすると、
「・・・少しうるさくしてしまいましたね。すみません。ここでいつまでも怒っていても仕方がないですね。では、灰倉くん。今日は必ず生徒指導室に来るように。くれぐれも、無断で帰らないでくださいね。」
俺の素っ気ない態度に先生は、怒りと諦めが入り混じって困ったように帰っていった。
面倒だけど、また注目されるのも嫌だし、うるさく騒ぎ立てられるのも嫌だから、仕方なく、今回は先生に従ってやることにした。