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45  正義の不在

遅くなって申し訳ありません。

訳あってフォディーナ→モンスに町の名前が変わっています。

前話も修正済みです。


 





 モンスの片隅に存在する、寂れた酒場がある。

 年の半分以上が店休日なのだから、寂れるのも当然のことだ。

 ラビーと百合、エルレアは先に酒場に入っているらしく、僕が店に足を踏み入れた時には、すでに例の合言葉を店主に伝えた後だった。

 そう、何を隠そうこの偏屈そうな店主こそが帝国への案内人なのだ。

 同時に彼は、帝国の工作員でもあった。

 こんな男と繋がってる時点で、プラナスってとっくに死罪になってもおかしくないぐらいのことやってるよね。


「岬、意外と早かったね」

「おかえりなさい」

「ただいま」


 って、初めて足を踏み入れる店で、帰ってきたわけじゃないんだけど。

 つい反射的に言ってしまった。


 百合と、その膝の上に乗ったエルレアが笑顔で僕を迎えた。

 仲が良さそうで何より。

 しかし一方で、ラビーは困ったような顔をしていた。


「その顔、どうかしたのラビー」

「タヴェルナさんの話を聞いた方が早いですよ」


 どうやら案内人の名前はタヴェルナと言うらしい。

 面倒そうな風貌と言い、つくづく飲食店の店主には向かない男だ。


「あんたがミサキか。どうやら頼んでも居ないのに労働者ギルドの連中に助力してくれたらしいな」

「労働者ギルド?」

「モンスを牛耳る商人ギルドに対抗するために作られた組織だよ、そんなことも知らずに首を突っ込んだのか」


 タヴェルナは呆れきっていた。

 いちいちソレイユにシンパシーを感じたって説明するのも面倒だし、そういうことにしておこう。


 確かギルドって、権力者が集まって政治に介入するための組織、みたいなやつだっけ。

 牛耳ってるって言うぐらいだし、商人たちがこの町の政治も取り仕切ってるんだろう。

 そして戦争によるアニムスの需要の増加の恩恵を自分たちだけが受け、その負担を職人たちにだけ押し付けたと。

 調子に乗った結果だね、同情の余地もない。


「まあいい、本題に入ろう。急で済まんが、帝国への案内依頼を受けるにあたって一つ条件を付けたい」

「プラナスから対価は貰っているのでは?」

「それに付け加えたいということだ。こういうのは時価だと相場が決まっているからな」


 受けない選択肢は無い。

 どのみち彼の力を借りなければ、強引に戦場を突っ切りでもしない限り帝国にはたどり着けないのだから。


「それで、その条件というのは」

「あんた、アニマ使いなんだろう? 近々、この町で大規模な武力衝突が起きる予定だ。その時、労働者ギルドに協力して欲しい」

「……ああ、そういう」


 ラビーが困っていた理由がやっとわかった。

 あまりに都合が良すぎるもんだから戸惑ってたわけだ。


「労働者ギルドからは謝礼も出るだろう、あんたたちにとっても悪くはない話だと思うがね」


 むしろこっちからお願いしたいぐらいだったんだ、断る理由がない。

 けど、せっかく向こうから提案してくれたんだし、適度に厚かましい程度には恩は売っておきたいよね。

 少しもったいぶって、もう少し対価を引き出してみるか。


「僕たちは追われる身です、いつ追っ手が襲ってくるかわからない状況で他人の戦いに介入する余裕はありませんよ」

「シルヴァ森林の火災で王都にはそんな余裕は無いはずだ、空でも飛べない限りは」


 うわ、あれまだ燃えてるんだ。

 我ながらえぐいことやっちゃったな、ただの思いつきだったのに。


「ですが、実際に一度襲撃を受けています」

「……なに?」

「どういった方法を使ったのかはわかりませんが、王国には炎上した森を越える手段があるようですよ。仮に王都からの追っ手が来たとしたら、彼らは十中八九商人ギルドの方に付くでしょうね」


 王国との繋がりが無ければ、町一つを牛耳ることなどできるはずがない。

 アニムスの値段を割り引く代わりに、モンスの支配を黙認するとか、そういう約束が結ばれてるんだろう。

 仮に統治のノウハウを持っていない労働者ギルドが武力によってこの町の実権を握れば、しばらくの間は混乱が続くだろう。

 王国はそれを避けたい、だから商人ギルドに付く。

 対して帝国は混乱させたい、だから労働者ギルドに支援する。


「はぁ……あんたたちの意志はわかった。回りくどいやり取りは終わりにしよう。望みはなんだ?」

「話が早くて助かります。ところで、タヴェルナさんは帝国軍に所属してるんですか?」

「それとあんたの望みにどんな関係がある」

「帝国に渡った後、僕を軍に紹介してもらえないかと思いまして」

「ほう……」


 タヴェルナは感心したようににやりと笑った。


「ただの亡命希望者かと思っていたが、どうやら違うようだな。まあ出来ないことは無いが……野良のアニマ使いとなると、紹介できる先は限られてくる」

「どこでもいいです、軍にさえ入れれば」


 真正面からぶつかってクラスメイトたちを殺すことが出来るし、多くのアニマを喰らうことも出来る。

 武功を立てれば地位だって上がっていくはずだ。


「なら傭兵共の寄せ集め部隊だな、通称”無法地帯(ローレス)”なんて呼び方もされてる。元から帝国は実力主義の国ではあるが、連中はさらに弱肉強食だ。味方同士の殺し合いなんて日常茶飯事らしい」

「味方を殺してもいいんですか?」

「強ければ許される、そういう場所だ。実際、四将のうちの1人、キシニア・クロギリソゥもローレスから這い上がって今の地位にまでたどり着いたんだからな」

「キシニアって、アヴァリティアとかいうアニマを持ってる?」


 それは、王都を急襲した帝国のアニマ使いの名前だ。

 本人の姿は見ていないけど、アニマは巨大な斧と血のような赤が特徴的な外見をしていた。

 忘れたくても忘れられない。

 アイヴィはあの時、彼女のことを将官クラスと言っていたけど、四将なんて呼び方されてるってことは、本当に上から数えた方が早いぐらいの実力者だったってことか。

 そりゃ、あの時の僕に勝てるはずがないわけだよ。


「心当たりがあるみたいだな。もしかして、王都で交戦したのはあんたか?」

「勝てはしませんでしたけど」

「当然だ、四将を何だと思ってるんだ。帝国でも扱いに困るほどの化物だぞ? いや、しかし……あの時キシニアがやけに楽しそうに”面白いやつが居た”って言ってたのは記憶に新しいが、まさかそれがあんたみたいな女の子だったとは」

「あの時って……」

「彼女を王国に招き入れたのは俺だからな、帰り道で聞いたんだ」


 そっか、つまり僕はこの男のせいで8人もクラスメイトを殺しそこなったと。


「お、おい、なんで急にそんな怖い顔するんだよ」

「別に」

「キシニアとやりあって生き残ってるあんたも十分化物だ、洒落にならないから落ち着いてくれ」


 彼が8人を殺したわけじゃないってことはわかってる。

 かといってムカつかないわけでもなく、行き場のない苛立ちをどこにぶつけて良いのか考えてただけだ。

 僕は大きく深呼吸をして、タヴェルナの言葉に従い心を落ち着けた。


「だが、それだけの強さがあれば十分だな。安心して用心棒を頼めそうだ」


 隣に居た百合があくびをした。

 元から寝不足ってのもあるけど、さすがに長話しすぎたか。


「で、その労働者ギルドの本部はどこにあるんです?」

「案内する、付いてきてくれ」


 ようやく話がまとまり、僕たちはタヴェルナに案内されて労働者ギルドへと向かった。




 ◇◇◇




 現在、モンスは東と西で真っ二つに別れていた。

 東側の労働者たちの住居が多く存在する地域を労働者ギルドが支配し、西側の工場や大きな住居が立ち並ぶ地域を商人ギルドが支配しているそうだ。

 間に壁があるわけではないが、境界となる地域は、度重なる小規模な戦闘によってほぼ廃墟と化している。

 労働者ギルドの本部は、モンス東側の中央あたりに存在した。

 本部と言っても、見た目はほぼ教会。

 元はグラティア教の教会として利用されていた場所で、労働者ギルドに与した神父が彼らに譲渡したらしい。

 教会の扉を開いて中に踏み入れると、1人の女性が笑顔で僕たちを迎えた。


「タヴェルナ……と、あれ? ミサキじゃん、さっきぶり!」


 元気に手を振るソレイユに、僕は軽く手を上げて返事をした。

 そっけない返事なのに、満面の笑みが返ってくる。

 ちょっとだけ罪悪感。


「フォードキンを呼んでくれないか、彼らを紹介したい」

「えっ、もしかして労働者ギルドに協力してくれるとか!? やったぁっ! ミサキが居れば百人力だよ!」

「ソレイユ、喜ぶのはあとでも出来るだろう?」

「あ……ごめん、つい嬉しくって。呼んでくるからちょっと待ってろよー!」


 ソレイユは慌ただしく、駆け足で教会の奥へと消えていった。


「岬、さっきの子は誰なの?」

「戦闘中に黄色いアニマいたでしょ? あれの使い手で、名前はソレイユだってさ」

「付け加えると、労働者ギルドで唯一のアニマ使いだ」

「唯一、ですか。ちなみに、商人ギルドにはどれぐらいアニマ使いがいるのですか?」


 僕の背中からエルレアがタヴェルナに尋ねる。


「今のところは5人だな。うち2人は金に釣られて労働者ギルドを裏切った連中だ」


 まあ、金払いは明らかに商人ギルドの方が良いに決まってるよね。

 それでもソレイユが労働者ギルド側についているのは――


「ソレイユって、もしかしてこの町の生まれだったりするんですか?」

「よくわかったな。そうだ、この町で生まれ育ち、商人ギルドに殺された両親の仇を取るために戦ってる」

「それでミサキは彼女を手助けしたのですね」


 僕は無言で頷いた。

 商人ギルドに両親を殺された、か。

 それであんなに強く憎んでたんだ。

 アニムスを持ち出しての大規模な戦闘が始まったのは戦争が始まって以降、つまり割と最近みたいだけど、昔から殺し殺されの小競り合いは水面下で起きてたんだろうな。


 駆け足でソレイユが戻ってくる。

 彼女が連れてきたのは、見た目30代ほどの2人の男女だった。


「こんにちは、タヴェルナさん。彼らが例のアニマ使いですか」

「ああ、そうだ」


 おそらくこの男性が、フォードキンなのだろう。

 僕は彼の言葉を聞いて違和感を覚えた。

 まるで以前から、僕たちが用心棒になることが決まっていたみたいじゃないか。

 試しにタヴェルナを睨みつけると、彼は頬を引きつらせながら弁明を始めた。


「軍の紹介だって引き受けたんだ、本当なら無理な頼みなんだぞ? しかも、予定じゃ2人だった所が4人に増えてるんだ、これぐらい大目に見てくれ」


 その腰の低さたるや、最初に見た時の印象とは全く別人に思えるほどだ。

 相手によって平気で態度を変えられる人間なんだろう、あんまり信用出来ないな。


「ふふ、色々と込み入った事情があるようね」


 上品に笑いながら女性が言った。


「私はラクサ・スィダレー、ここで労働者ギルドのサブリーダーをやっているわ。よろしくね」


 ラクサはまず僕に手を差し出した。

 柔和な笑みが警戒感を解かせる。

 信用できるかどうかはさておき、円滑に会話を進めるために僕はすぐに彼女の手を握った。

 続けて百合、ラビーと握手を交わし、エルレアにも「よろしく」と笑顔を向ける。


「ラクサに先を越されてしまったね。僕はフォードキン・キーサリス、ここのリーダーだ」


 これはつまり、僕たちにも自己紹介をしろという流れなんだろう。


「僕はミサキ・シロツメ。こっちの女性がユリ・アカバネ」

「名字はシロツメでもいいんだけどね」


 茶々を入れるんじゃない。


「背中の女性がエルレア・フラウクロック」

「私もシロツメでいいですよ?」


 だから割り込まないでってば。


「で、彼がラビー・ミジャーラです」

「よろしくお願いします」


 ラビーがぺこりと頭を下げる。

 常識人っぷりに涙がこぼれそうだ。


「仲がいいんだね。ところで、アニマ使いは2人と聞いていたけど、ミサキさんと、ユリさんということでいいのかな?」

「いえ、私もアニマ使いですよ。ですから今は3人です」

「君が?」


 フォードキンが驚くのも仕方のないことだった。

 手足の無いエルレアの姿を見て、まさか彼女がアニマ使いとは思う人間は居まい。


「アニマ使いと言うのは不思議な存在、私たち一般人の尺度で判断するのも良くないわ」

「それもそうだね、ラクサ。何にせよ、作戦を立てるためにまずは力を確認しないと。格納庫に案内するよ、そこでアニマを見せてもらってもいいかな?」


 正直、あまり気乗りはしない。

 力を確認ってことは、ステータスを見せなければならないということだろうから。

 けど、協力すると決めたからには見せないわけにも行かないんだろうな。


「そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫、フォードキンもラクサも誠実な人だからさっ」


 いくらソレイユに言われても、初対面の相手を信用できるはずがない。

 僕たちはフォードキンに案内されながら、しぶしぶ格納庫へと向かった。




 ◇◇◇




 教会を奥へ進むと、明らかに周囲とは趣の違う、急遽取り付けられた扉があった。

 扉を開くと、その先にあるのはこれまた教会の雰囲気とはガラッと変わった、無骨な廊下。

 その先に、格納庫はあった。


「うわあ、こんなに沢山……」

「一体いくらするんだろ」

「こんだけ並ぶとさすがに壮観だね、岬」

「うん、ちょっとワクワクしちゃったよ」


 ずらりと並ぶプルムブム。

 その数、およそ10機ほど。

 いくら型落ち品とは言え、アニムスは一般市民に手の届く値段じゃない。


「ここは第一格納庫。本当は1箇所にまとめたいんだけど、残り20機は他の2箇所に配備してあるんだ」


 フォードキンが自慢げに解説してくれた。

 ちなみにタヴェルナは用事があると言って酒場に戻っている。


「アニムスが30機も。防衛戦力としては過剰ですね、戦争でもするつもりですか?」

「商人ギルドに対抗するには、これでも足りないぐらいなのよ? 元々はアニムス製造用のプルムブムを改造した物も多いから、全てが同等の戦闘能力を持っているというわけでもないのだけれど」


 フォードキンへの問いに、ラクサが答える。


「アニムス製造用?」

「ああ、さすがにこのサイズのアニムスを人間の手で作るのは難しいからね。職人たちはアニムスを操作して、巨大なハンマーを打ち付けながらパーツを作っていくんだ」


 そして今度はフォードキンが答えた。

 2人で交互に話すから頭が混乱しそうだ。

 しかし、アニムスがアニムスを作るのか。

 確かに生身じゃ大変そうだとは思ってたけど、生産用だと言うのならこの数も納得だ。


「さ、じゃあ早速だけどアニマを見せてもらってもいいかい?」


 格納庫に空いているスペースに案内される。

 ここまで来たら、さすがに見せないわけにも行かない。


「イリテュムっ!」

「来てください、テネリタス」

「ウルティオ!」


 僕と百合、エルレアはそれぞれ少しずつ離れた場所でアニマを呼び出し、ステータスを表示させた。

 アニマ同士ならステータスを確認することは出来るけど、生身の人間で見えるものなのかな。

 ……と言う心配は不要なものだったようで。


「おぉ……これは」


 フォードキンはこちらを見て感嘆の言葉を漏らしていた。




 ----------------------------------------


 名称  イリテュム

 武装  実体剣:ミセリコルデ

     実体誘導弾:ダガーミサイル

     連結円環刃:スカートブレード

     虚像破棄:ヴァニタス

 スキル 独り歩きする嘘(アフェクテーション)

 能力  Lv.31

     HP   8000/8000

     MP   11800/11800

     出力  1480

     機動性 2750


 ----------------------------------------




 ----------------------------------------


 名称  テネリタス

 武装  補助触腕ソーサリーガン:テンタクルス・レイ

     軟性補助触腕:スキュラー

 スキル 聖女の微笑(リバーサル)

 能力  Lv.18

     HP   7400/7400

     MP   7250/7250

     出力  4900

     機動性 15


 ----------------------------------------




 ----------------------------------------


 名称  ウルティオ

 武装  頭部ハイソーサリーガン

     腕部火炎放射銃:アグニ

     脚部凍結機構:フリームスルス

     脚部非実体剣:ピールピアサー

     非実体剣:ハイソーサリーサーベル

     実体手甲剣:シヴァージー

     実体弓:ガーンデーヴァ

     可変ソーサリーガン:殲滅形態(モードブリューナク)

     可変ソーサリーガン:狙撃形態(モードアンサラー)

     胸部大型ソーサリーガン:ヴァジュラ

 スキル 親愛なる友(スウィンドラー)

     卑劣なる俯瞰者(ライフトーチャー)

     正義の味方(ブレイバー)

     霧に消える悪意(ソーサリーチャフ)

     魔弾の射手(イリーガルスナイパー)

     羨望せよ我が領域(ナルキッソス)

 能力  Lv.44

     HP   47250/47250

     MP   41890/41890

     出力  4440

     機動性 4790


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 実は僕もテネリタスのステータスを見るのは初めてで、その突き抜けた性能に圧倒されてしまった。

 機動性が極端に低いのは、手足が無いからだろう。

 その分だけ、出力が上がっている。

 しかし低い機動性もスキュラーの触手によって補うことが出来るわけで、つまり何のハンデにもなっていない。


「むぅー」


 百合がテネリタスを見ながら、妙なうめき声をあげた。


「そんなに不満げな声を出さなくても、百合だって十分強くなってるよ」

「ずば抜けて強い岬に言われたってどういう反応したらいいのかわかんないってば」

「ユリは分身できるではないですか」

「それでもエルレアの出力には敵わないと思うんだけどな」

「いいえ、胸を張るべきです。1人で2人分ミサキを愛せるのはユリだけなのですよ? どう足掻いても私には出来ないことなのですよ!?」

「そんな熱弁されても……」


 僕たちがアホな会話をしている間、フォードキンとラクサは何やら小さな声で話し込んでいる。

 一方、その近くで立ち並ぶ3機のアニマを見上げていたソレイユは、目をキラキラと輝かせながら言った。


「全員すごいな! 当然のようにスキル持ちだし能力だって高い、特にミサキの武装とスキルの数はわけわかんないな! ははははっ!」


 数がやたら多いのは捕食のおかげなんだけど――まあ、それは言わなくても良いか。

 そういや、今さらだけどウルティオの武装、微妙に名前が変わってるんだよね。

 ハイソーサリーガンだとか、ハイソーサリーサーベルだとか。

 この2つは、割とどのアニマにも備え付けられていることが多い、いわゆる”汎用武装”だ。

 つまり食べても食べても同じ武装が被るばかりで、手数が増えるわけじゃないと思ってたんだけど……。

 どうやら、同じ武装を繰り返し食べたことで武装自体が強化されているらしい。

 オリハルコンの影響を受けたアニマに勝つためにも少しでも火力が欲しいと思っていた所だし、純粋に嬉しい。

 次の戦闘でぜひ試し切りがしたいものだ。


「ありがとう、もう大丈夫だ。素晴らしいアニマばかりで驚いたよ」


 アニマを解除し、エルレアを再び背負うと、再びフォードキンとラクサの周囲に集まる。


「嬉しい誤算だよ。作戦変更だ、これだけのアニマがあれば無理も力で押し通せる」

「無茶は言わないでくださいね、あくまで用心棒ですから」

「わかっているさ。総力戦は3日後だ、詳細な作戦は追って伝えられると思うから、それまではゆっくり休んでいてくれ」

「モンスの居住区には一通りのお店が揃っているわ、食事も不自由はしないはずよ」

「何だったらあたしが案内してやるよ!」


 返事をするより前に僕の腕はソレイユに掴まれた。

 対抗するように百合も僕の腕にしがみつく。


「え、いや、ちょ、ちょっと!? はいとは言ってないんだけど!?」

「いいじゃん、どうせお腹も空いてたし、案内してもらおうよ」

「土地勘のある方に案内して頂いた方が安心ですから」


 そのまま3人に押し切られ、僕はわけもわからずに外へと連れ出される。


「……ふぅ」


 その後ろで、ラビーは一瞬だけ憂鬱な表情を浮かべ――そしてすぐに、駆け足で僕達を追いかけるのだった。






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