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30  酩酊する(自称)主人公たち

 





 実を言えば、背部ブースターのテストは彼らの気分転換も兼ねていた。

 人類初のアニマを使っての空の散歩を満喫して欲しいという、アイヴィの心遣いだったのだ。

 探知スキルを持つ築城(つきぎ)も同伴させた、敵を見つけたら即座に撤退しろとも伝えてある、万が一のときには申し分ない戦闘力を持つ桂も居る。

 そして、ミーティング時、彼らに渡しておいた地図に記された経路も、プリムスやディンデを避け、可能な限り白詰の居る可能性のある場所は避けてある。

 岬のアニマ”ウルティオ”に、水木を狙撃した武装が備わっているというのはにわかに信じがたい話ではあったが、念には念をということだ。

 準備は万全なはずだった。

 しかしなぜか、彼女の胸にはもやもやとした薄暗い不安がまとわりついている。


「どうしたんですか、アイヴィ」


 アイヴィの背後から、いつの間にか近づいていたプラナスが話しかける。

 南門に立ち、6機のアニマが空高く飛び立っていった方向をじっと見ていたアイヴィは、プラナスが近づいていたことにも気づいていなかった。


「ん、プラナスか……どうも私は、最近よく嫌な予感ばかりが的中するもので、自信を無くしてしまっているようだ」


 召喚された学生たちの大量死に、岬と百合の脱走、水木の負傷と悪いことばかりが立て続けに起きている。

 彼女が自信を無くしてしまうのも仕方のないことだった。


「自信がないだなんてアイヴィらしくもないですね」

「まったくだ、騎士団長はどんと構えていなければならないのに」

「そうです、アイヴィがへこんだ所で結果が変わるわけじゃないんですから。彼らは彼らなりに最善を尽くして、うまくやってくれるはずです」

「ああ、きっとそうだな、そうに決まっている」


 アイヴィは自分に言い聞かせるように言った。

 だが、彼女は知らない。

 いくつかの都合の悪い偶然が積み重なり、彼女の心遣いはすでに無意味なものと化していることを。

 それをこの場で知っているのは、三洗や桂たちが会話しているのを盗み聞きしていたプラナスだけであるということを。




 ◆◆◆




 ディンデ上空。

 王都を出発した6機のアニマは背中に付いた灰色の四枚羽のブースターから、紫に光る魔力の粒子を吹き出させながら、それを推進力として空を飛んでいる。

 彼らは現在、本来なら通るはずのない場所に居た。


 事の発端は、岬への憎しみと薄っぺらい正義感を暴走させた、三洗(みたらい)の提案だ。

 彼はどうしても、友人である大蜘蛛と白鳥を殺した、岬を許すことができなかった。

 その恨みを晴らすため、アイヴィの指示した経路を外れ、岬と遭遇する可能性のあるディンデ周辺を通りたいと言い出したのだ。

 ……それこそが、岬の狙いとも知らずに。


 とは言え、勝手な変更が受け入れられるほどのカリスマ性は三洗には無い。

 すぐさま他のメンバーによって却下された。

 しかし、自然とテスト班のリーダーということになっていた桂が、三洗に賛成してから風向きは変わった。

 桂の言う事なら正しいのかもしれない。

 彼の言葉には、そんな謎の説得力があった。

 要は普段の行いが、それだけ素晴らしい物だということなのだろう。


 本来、いつも冷静な彼なら賛成に回るはずなど無いのだが、桂にはどうしても確認しなければならないことがあった。

 それは、親友である広瀬の大事な幼馴染、百合の安否だ。

 彼女が岬と行動を共にしていること、そして大蜘蛛(おおくも)白鳥(しらとり)の殺害に関与していることは、三洗から聞かされていた。

 だが、桂はそれがどうにも腑に落ちない。

 ”百合が白詰に付いていくわけがない、何らかの事情があるはず”、そうとしか思えなかったのだ。

 脅迫か、人質か、どちらにしても、救うとしたらまず接触するしかない。

 うまく行けば彼女を救えるかもしれない、それが無理でも理由だけでも知ることが出来たら――そう思う一心で、三洗の提案に乗った。

 結果、テスト班は本来の経路を外れディンデ上空を通過しているというわけだ。


「町が燃えてる……」


 築城が直下に見える町の残骸を見て呟いた。

 本来ならここにはディンデと呼ばれる町があるはずなのだ。

 未だ煙が燻っていると言うことは、襲われてそう長い時間は経過していないはず。

 しかし――


「築城さん、あの町にはどれぐらい生き残りの人が居るのかわかる?」


 桂が尋ねる。

 彼女の探知スキルは、アニマやアニムスだけでなく、人間や動物の反応まで見定めることが出来た。


「……誰も生き残ってない。たぶん、全員死んじゃったんだと思う」

「そうか……」


 それを聞いて、桂のアニマ”ヘイロス”が肩を落とした。

 ディンデの跡地には、そこを襲ったはずの山賊すらすでに残っていない。

 彼らは町の人々を殺した後、恐ろしくなって略奪もそこそこに逃げてしまったのだ。


「これも白詰のしわざだ、そうに決まってる。あいつ、一体何人殺せば気が済むんだよ!」


 三洗が拳を握り、わざとらしく悔しさを滲ませながら嘆く。

 証拠は何もない。

 しかし、三洗はそれを真実だと思い込み疑わなかった。


 実際のところ、当たらずとも遠からずなのだが――他の5人は、三洗の妄想と断じ相手にしなかった。

 岬がやってきたことも、現在のウルティオの姿も、それを知っているのは三洗だけなのだ。

 仕方のないことなのかもしれない。

 だが、その無知が呼び寄せるのは取り返しのつかない結末だ。


 ディンデを通り過ぎ、その先にある山へと近づいていく一行。

 予定では、山は越えずにその前で引き返すことになっていた。

 岬が見つからないことに三洗は不満を抱いていたようだが、


「そろそろ戻ろう、三洗くん。これ以上進むとアイヴィさんを誤魔化せなくなる」


 桂の冷静な言葉に、三洗はしぶしぶながら頷く。

 その時だった。


「……え?」


 築城のスキルが何らかの熱源の反応を捉える。

 しかし、反応は一瞬だ。

 ドォンッ!

 それを周囲に伝えるより早く、ウルティオの放った弾丸は、築城のアニマ”ソーンシア”の背部ブースター右翼に着弾。

 片側の推進力を失ったソーンシアはバランスを崩し、回転しながら高度を下げた。


「きゃあっ!?」

「築城っ!」


 傍に居た長穂(ながほ)のアニマ”ウェントゥース”が慌ててソーンシアの体を支えた。

 肩を貸すような形で、どうにか墜落は防げたようだ。

 だが――


「やっぱり白詰だ……あいつがすぐ側にいるんだッ!」

「待ってくれ、三洗くん!」


 岬の存在を確信した三洗が、桂の静止も虚しく単騎で突っ込んでいく。

 どう考えてもこれは罠だ、三洗以外の全員はそれに気づいていた。


「いや、ひょっとすると三洗くんだけが生き残った時点ですでに……」


 彼は自分たちを引き寄せるための餌として使われたのかもしれない。

 そんな嫌な想像が脳裏をかすめる。

 しかし、例え罠だったとしても、三洗を見捨てることは桂には出来ない。


「仕方ない、僕たちも行こう。築城さんと長穂くんは出来るだけ前に出ないように」

「桂は大丈夫なのか?」

「ヘイロスならある程度の攻撃は耐えられる」

「わかった、援護は任せてくれ」


 三洗のアニマ”サブティリタス”の後を、5機のアニマが追従する。

 この状況で果たして百合とコンタクトが取れるのか――桂は一抹の不安を抱きながらも、それを振り払い、戦闘に集中することにした。




 ◆◆◆




 まんまと誘いに乗った三洗を見て、僕はにやりと口元を歪めた。

 まずは、近づいてくるサブティリタスに対して一度だけ狙撃を行う。

 引き金を引くと、微かな反動が伝わってくる。

 放たれた弾丸は高速でサブティリタスに迫るが――三洗は直前で気づき、肩を掠めるだけに留まった。

 サブティリタスは、水木のアニマのようにHPが低いわけでもない。

 仮に真正面から当たったとしても一撃で障壁を貫くことは出来ないけれど……まあ、避けられたなら避けられたでもいい。

 どうせ今回は、彼を殺すつもりは無いのだから。

 これ以上、障壁のない状態――魔弾の射手(イリーガルスナイパー)を発動させた状態で接近されるのは危険だ。

 僕はスキルを解除し、可変ソーサリーガンを殲滅形態(モードブリューナク)へと変形させる。

 銃身が短くなり、一撃あたりに込められた魔力量も跳ね上がる。

 狙撃形態(モードアンサラー)が単機に対する遠距離からの狙撃を想定しているのに対し、殲滅形態(モードブリューナク)は複数機相手への使用を想定された武装だ。


「百合、牽制をお願い」

「りょーかい、ダガーミサイルっ!」


 しかし、どんな威力の高い武装も回避されては元も子もない。

 百合のイリテュムがスカートブレードの端をつまみ持ち上げると、その内側からバラバラと小型の短刀が落ちる。

 それらは地面に当たる直前で魔力を吹き出し、意志を持ったかのように一気にターゲット――サブティリタスへと殺到した。


「っ、赤羽ェッ!」


 ドドドドドドッ!

 小型の頭部ソーサリーガンで迎撃する三洗。

 しかし全てを撃墜することは出来ない、撃ち漏らしたダガーミサイルが彼に迫る。

 が、それらが命中することは無かった。


「クラウソラス、彼を守れ!」


 背後から現れた桂のアニマ”ヘイロス”の背中から放たれた三筋の光。

 それはヘビのようにうねり、的確にサブティリタスに迫る脅威を撃ち落とす。

 厄介な武装だ。

 でも、爆風で彼らの視界は遮られた。

 僕の狙いはそこにある。


殲滅形態(モードブリューナク)、シュートッ!」


 彩花から受け継いだ可変ソーサリーガンが火を噴く。

 銃口から強大な魔力が込められた弾丸が放たれ、爆炎の帳の先に居るサブティリタスを狙った。

 チッ……ドオオォオオオンッ!

 ダガーミサイルの爆炎を、その奥で発生した更に大きな爆発が吹き飛ばした。


「当たった……? いや、でも――」


 想像していたより着弾が早かった、つまり手前で当たったってことになる。

 視界を遮る炎が晴れると、その奥から姿を表したのは、巨大な剣を盾のように構えるヘイロスの姿だった。


「ぐっ……白詰くん、楠さんの武装をどうして……!?」


 背後に居たサブティリタスは無傷……いや、爆風に巻き込まれたんなら完全に無傷とは言えないはずだ。

 見た目じゃわからないけど、HPは減少していると思いたい。


「だから言ったろ、桂。あいつは他のアニマを喰うんだ、喰って自分の力に変えてるに違いないんだ!」

「そのために楠さんを食べたとでも!?」

「そうだよ、あいつにとっちゃ幼馴染なんてどうでもよかったんだ。ただ人を殺したいだけのクズ――」


 ……好き放題言ってくれるな、ほんと。


「ヴァジュラッ!」


 僕を見下す桂と三洗に向けて、広瀬から奪った武装を放つ。

 無論、この距離じゃ、比較的隙の大きいヴァジュラは当たらない。

 胸部から放たれたビームは掠りもせず回避されたけれど――桂の心にダメージを与えるには十分だったみたいだ。


「団十郎の武装……白詰くん、まさか、あいつまで……!」

「そうだよ、僕が殺した。で、僕が喰った。いやあ、この武装便利でさ、愛用させてもらってるよ。いつか会うことがあったら、あの世の広瀬くんにありがとうって言っといてよ」

「っ……! 百合ッ! どうしてそんな奴の傍にいるんだ!? 団十郎を殺したのはそいつなんだぞ!? さあ戻ろう、団十郎だってきってそれを望んでいる!」

「団十郎はそれを望んでたとしても、私がそれを望まない。だから戻らないよ。だって、私は岬のこと愛してるんだもん」

「百合!?」


 愛している。

 そんな想像すらしていなかったフレーズに、桂は心底困惑しているようだった。

 ほんの少し前まではいじめていた相手に、しかも女になってしまった相手に、どうしてそんな言葉を使っているのか、と。


「だから言ってるじゃないか。桂、もうあいつらに何を言ったって無駄なんだ、倒すべき敵なんだよ!」

「三洗……くそっ、やるしかないのか。百合と、団十郎の幼馴染と戦わなければならないのか……!」


 苦悩する桂を見上げる百合。

 僕にはなんとなく彼女が、呆れたように彼を見ているように思えた。

 そんな僕の視線に気づいたのか、百合は小声でこう零す。


「笑わせてくれるよね、偉月は私になんてこれっぽっちも興味ないくせに。あるとすれば、団十郎の幼馴染(・・・・・・・)である私に興味があるだけだよ」

「それって、まさか……」

「本人に自覚があるかどうかはさておき、私はずっと思ってたよ。偉月、団十郎のこと好きすぎでしょって」


 天才という生き物は、必ずどこかに歪みを抱えているもので。

 百合をほったらかして広瀬と二人きりで訓練漬けって時点で、薄情な2人だと思っていたけれど、そうなってくると話は違う。

 いや、広瀬は百合に好意を寄せていたからそんなつもりは無かったのかもしれないけど、桂の方には、あるいは。

 むしろ百合が居たら邪魔な理由があったってことか――

 まあ、なんていうか。

 心の底からどうでも良いんだけどさ。


「さあ、やろう桂。あいつらを倒して広瀬の敵を取るんだ!」


 自分の役柄に酔った三洗の発言は、いちいち癇に障る。

 本当はすぐにでも殺したいけど、餌にはもっと頑張ってもらわないといけないから、そういうわけにもいかない。

 今回殺すのは、三洗と桂以外のモブ4名。

 できれば桂もやっちまいたいけど……さて、そこまでの余裕ができるかな。


「ああ、そうだね。百合はただ白詰に操られているだけかもしれない。団十郎の敵をうつ、百合を救う、そのためには――どのみち、あいつを倒すしか無いんだ!」


 そんな主人公めいた台詞と共に、ヘイロスが全速力でこちらに迫ってくる。

 全ての能力が一流なアニマだけあって、さすが早いな。


「百合、離れて援護をお願い」

「わかった!」


 百合に指示を出しながら、殲滅形態(モードブリューナク)でヘイロスを迎撃。

 迫る弾丸を巨大な実体剣――エクスカリバーでなぎ払いながら、爆風を防ぐ素振りも見せず一気に距離を詰めてくる。

 武装の名前もいちいち主人公っぽいな、まったく!


「シヴァージーッ!」


 これ以上ヘイロスを止めるのは無理だと判断し、手甲剣を取り出す。


「また団十郎の武装をぉっ!」


 振り下ろされる巨大な剣を、シヴァージーをクロスさせて受け止めた。

 ガギィンッ! ギ、ギギギギッ……。

 衝突、そして鍔迫り合い。

 圧倒的出力から放たれる圧倒的圧力を、どうにか受け止める。

 でも力は――相手の方が上か。

 じわじわと押されている、ウルティオのかかとが地面を刳りながら後退していく。


「死ねぇっ、白詰!」


 そこに、上空からサブティリタスがソーサリーガンを放つ。

 精密な攻撃が売りなだけあって、ヘイロスが直ぐ側に居るにもかかわらずフレンドリーファイアを恐れる様子は一切ない。

 空から放たれた一撃は、確実にウルティオの顔面に命中した。


「ぐっ……」


 衝撃でバランスを崩し、合わせるように一気にヘイロスが腕に力を込めた。

 このままじゃ、押しつぶされる。

 僕は腕のクロスを解くと、地面を転がりながらヘイロスから距離を取った。

 ドオォンッ!

 エクスカリバーが空を裂き、地面に叩きつけられる。

 ヘイロスはすぐさま次の攻撃に移り、剣を構えた。

 慌てて体勢を持ち直そうとしたところに、再びサブティリタスの銃撃。

 加えて、残り4人のアニマも同様にこちらに攻撃を加えてくる。


「岬っ!」


 僕を守ろうと、イリテュムもダガーミサイルで応戦するも、いかんせん手数が違いすぎる。

 万事休すか――一見してそう思える状況だったが。


「ひひっ」


 笑いを心の中だけに押しとどめられず、思わず口から漏れる。


「なにっ!?」


 それを聞いたヘイロスは嫌な予感でもしたのか、バックステップで僕から距離を取った。

 桂ぁ、それは悪手だよ。

 まあどっちにしろ、結果は同じだったと思うけどね。


「スキル発動(ブート)羨望せよ我が領域(ナルキッソス)


 脚部に魔力が集中し、力がこもる。

 あの兎のアニマから奪ったスキル、早速使わせてもらう!

 ダンッ!

 ウルティオが強く地面を踏みしめ、上空高くへと飛び立ってゆく。


「飛んだ、だとっ!?」


 桂の驚愕の声。

 ブースターを着けた彼らより少し高い場所まで舞い上がった僕は、ソーンシアを支える長穂のアニマ――ウェントゥースに軽く手を振って、フランクに挨拶をした。


「やっほ」

「ひっ」


 長穂が怯えたような声を漏らす。


 いいよね、そういう声。

 聞いてるだけで――心がすうっと、青空のように晴れていくようだ。


 現在位置は、長穂のちょうど真上。

 脚部がもう一度魔力を吹き出し、ウルティオの機体は今度は一気に地面へと落ちていった。

 ガシァンッ!

 足裏で、ソーンシアとウェントゥースを巻き込みながら。


「あ、ああっ、あああああああぁぁぁっ!」

「いやあああああぁぁぁっ!」


 落ちていく。

 2人の悲鳴と共に、ウルティオと彼らの命が落ちていく。


「ぐげっ……」


 地面に叩きつけられたウェントゥースから、潰れたカエルのような声が漏れた。


「は、はあぁ……ぁ……」


 築城もうめき声をあげる。

 まだ命はあるようだ。

 機体に傷が入ってない所を見ると、HPが0になったってわけでも無いらしい。

 僕は重なり合った状態で地面に寝転がるソーンシアとウェントゥースに近づくと、至近距離まで近づいて武装を発動した。


「ヴァジュラ」


 脚部装甲が開き、宝石のような球体が現れる。

 バチバチという音と共に球体にエネルギーがチャージされ、それが飽和状態に達すると――溜まったエネルギーが、一気に放射された。


「やめろおおおおおおおおおぉぉおおおっ!」


 桂の叫び声が響く。

 同時に例の追尾武装――クラウソラスを放ったようだけど、間に合いそうにない。

 照射されたビームは2人のHPを削り、肌を焼き、溶かしていく。


「ぅ、ああぁ……あ、あっ……」


 喉まで焼かれた2人はまともな声を発することもできず。

 このままにしておくのも可哀想なので、ソーサリーサーベルで介錯してやるか、と考えているうちに背後からクラウソラスが迫ってくる。

 仕方ないのでひょいっと避けると、不運にもクラウソラスは地面に倒れるソーンシアとウェントゥースに命中。

 障壁の無い、ケロイドのように表面の溶けた彼らの体を貫通し、今度こそ2人は完全に絶命した。


「あーあ、桂。2人にとどめ刺しちゃったね」


 ヘイロスの方を向いて半笑いで言うと、


「お、おおおぉぉおお……白詰ええええええええぇぇェェェッ!」


 彼は怒り狂いながら叫んだ。


 桂とはあまり因縁がないからどうだろうと思ってたけど――どうやらこの戦い、まだまだ楽しめそうだ。






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