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10  断頭台上のコメディショウ

 





 3日後、王都カプト処刑場。

 そこは悪趣味な観衆たちで溢れていた。

 今日もみんなを気遣ってか訓練は中止、しかしわざわざ処刑場まで足を運んだのは僕だけみたいだ。

 赤羽はともかくとして、クラスメイトとして死に際を看取ってやる人間が僕以外にも1人ぐらい居ても良さそうなのに。

 ちなみに、赤羽は体調を崩して部屋で寝込んでいる。

 帰りに元気づけるためにジュースでも買っていってあげるかな。


 しばらく会場で待っていると、死刑執行人である王国兵たちに連れられて榮倉が姿を現す。

 みすぼらしい囚人服を着せられ、すっかりやつれた様子の彼女は、重い足取りでギロチン台の前に向かった。

 手を後ろで縛られ、髪も短く切られている。

 元々髪が長かったため、印象がガラリと変わっており、一瞬誰なのかわからなかったほどだ。

 まあ、化粧が無い時点でかなり顔が変わってるから、今更なんだけどさ。


 ギロチン台には無駄に多くの装飾が施されており、その割にはロープを切断して刃を落とすという単純な構造になっている。

 榮倉はすでに諦めがついているのか、台の前に立っても動じなかった。

 意外だな、死を目前にしてヒステリーを起こすもんだと思ってたんだけど。

 しかし頬には涙が伝っていて、決して死を嘆いていないわけではないらしい。


 兵が榮倉の手枷を外し、背中を押し、首と両手首が台の上に乗せられる。

 さらに上から木の板を乗せ固定することで、彼女の体は完全に身動きが取れなくなった。

 固定を終えた兵は一旦その場を離れ、傍に居た別の兵から真新しい銀色の剣を受け取る。

 あれがロープを斬るための剣ってことか。

 刃に文字が刻まれているあたり、実戦のためと言うよりは、儀礼のために作られた剣のように思える。

 兵が剣を持ちギロチン台に近づくと、観衆のざわめきが大きくなった。

 声には出さないものの、僕も内心では気分が高ぶり始めている。

 いよいよ処刑執行が始まるのかと思うと、胸が躍る、体が熱くなる。


 兵が剣を振り上げる。

 刀身が明るい空に照らされきらりと輝いた。

 それは命を刈り取る物だと思えぬほど美しく透き通っていて、見入っているうちに――

 ブンッ!

 振り下ろされ、刃を持ち上げていたロープは切断された。

 榮倉の首に鈍色のギロチンが落ちる。


 最後の一瞬、彼女の視線と僕の視線が見つめ合う。

 大勢の観衆の中から最後の最後に僕を見つけるなんて、奇跡にも程がある。

 素敵な偶然に感謝し、僕はにこりと微笑んだ。

 その笑顔を榮倉は目を見開く。

 まるで、『お前が手紙の差出人だったのか』と今さら気づいたみたいに。


「もう遅いよ榮倉、残念だったね」


 榮倉に僕の声が届くことはなく――

 ザクッ。

 次の刹那、刃は首を骨ごと切断し、彼女の頭がごとりと床に転がった。

 目を開いたまま、まだ意識があるように。

 見惚れるほど綺麗な白とピンク色の切断面に、赤い血液がじわりと滲み出す。

 やがて血はぐじゅりと溢れ出し、ぼたぼたと床を真紅に濡らしていった。

 それを見た観衆たちからは、自然と拍手が始まる。


 中世のフランスで行われたギロチン処刑は、一種のショーとして国民の娯楽になっていたと聞いたことがある。

 この世界も一緒なんだろう。

 僕も拍手をして、しばし観客との一体感を楽しんだ。

 拍手を受けて兵たちは軽く会釈し、死体の片付けと掃除を始める。

 まだ処刑場が拍手で溢れる中、僕はこちらを睨みつける榮倉の生首を一瞥して、その場を離れた。






 処刑を見届けたあと、王都で名物であるジュースを買った僕は宿舎へと戻った。

 真っ先に向かうのは、もちろん赤羽の部屋。

 宿舎は僕の部屋を除いてそれぞれ2人部屋になっており、幸い今は赤羽のルームメイトは出払ってるらしい。

 コンコン、とドアをノックすると「どうぞー」という弱々しい声が聞こえた。

 誰かがやって来ることを期待していたのか、鍵はかかっていない。

 部屋に入ると、赤羽は僕の姿を見て笑顔を浮かべた。


「来たら良いなって思ってた」


 普通の男だったら、こういう仕草でころっと落ちるんだろうな。

 今の僕が女だからこそ、ここまで無防備な姿を見せてるんだろうけど。


「期待に応えられて良かったよ。ところで喉は乾いてない?」

「ちょうど何か飲みに行こうと思ってたとこだった。もしかして何か持ってきてくれたの?」

「飲みに行く前で良かった。はいこれ、王都で有名なフルーツジュース。精力がつくんだって」

「ありがと……ってあれ、王都に行ったんだ。じゃあ、まさか」

「さすがに処刑場には行けないって」


 その答えを聞いて、赤羽は安心したように微笑んだ。


「そっか……そりゃそうだよね、変なこと聞いてごめん」


 例のごとく嘘をついた。


 行ってきたし、しっかり目に焼き付けてきた。

 君の大事な友達は、それはもう素敵な死に様を見せてくれたよ。

 おかげで、今の僕は思わず鼻歌を歌いたくなるほど上機嫌だ。

 歌っちゃったら怪しまれるし、抑えなきゃならないのが悩ましいところだけど。


 僕はテーブルの傍に置いてあった椅子を持ってくると、ベッドの横に座った。


「まだ飲まないの?」

「買ってきてくれた白詰が飲まないと飲みにくいじゃん」

「妙に律儀だなあ、じゃあ僕から飲ませてもらうよ」


 ストローをくわえ、ジュースを口に含む。

 酸味はあまり無い。

 シロップでも入れているのかと思うほど甘く、そしてとろみがあった。

 確かに元気になれそうな味ではある。

 僕が飲んだことを確認すると、赤羽もストローをくわえて飲みだした。


「隠し味で魚介類が入ってるらしいよ」

「うえっ、マジで!?」

「ドゥーチェっていう、フルーツみたいな味がする甘い貝なんだってさ」

「ドロってしてるのは、まさかそれのせい?」

「かもね。けど、それが滋養強壮に効果があるんだって」

「ぜんぜん魚介感ないんだけど……ていうか、かなり美味しい。さすが異世界の食べ物」


 どうやら相当気に入ったようで、彼女のジュースはみるみるうちに減っていく。

 これだけ食欲があるなら、体調不良は一時的なものか。

 やっぱり今日が処刑当日だという精神的な負担から来たものなんだろう。


 しばらく2人で黙々とジュースを飲む。

 先に飲み終えた赤羽は、僕が飲み干すのを待ってから口を開いた。


「アニマを手に入れて浮かれてたからあんまり意識しなかったけどさ、今さらになって思うんだ。なんで、こんな世界に連れてこられたんだろうって。連れてこられなかったら……榮倉たちだって死ぬことは無かったのに」


 人の死に関する話だ、それも新鮮な。

 待っていたのは、何かを飲みながら話す内容では無いと思ったからだろう。


「僕は……こんな時に不謹慎だとは思うけど、あんまり辛くはないかな」

「えっ?」

「だってほら、家族も含めて誰も味方なんて居なかったわけだしさ。むしろ、みんなが僕に構う余裕もなくなって、こうして赤羽さんと話せるようになって、楽になったぐらいだから。……ごめん、友達が死んだって言うのにこんなこと言って」

「んーん、謝らないでよ。そういう風にさせたの、私たちなわけだし」


 以前ならこんな生意気なこと言ってたら、とっくに殴られてたのに。

 いや、赤羽は直接手は出さないか、基本的に遠巻きに見てるだけだったから。


「むしろ私が謝るべきだよ。謝ったってどうにもならないのかもしれないけど……ごめんね」

「ほんとどうにもならないよ、赤羽には何もされてないんだから」

「見てるだけだった。何もしなかった。それって、直接手を出すより酷いことだと思って」

「そう思ってくれるだけで十分だよ。それに、こうして赤羽さんと話せて僕も楽しいから、差し引きでとっくにプラスになってる」

「白詰……」


 その理由はさておき、楽しいってのは本当だ。

 他人と話していて愉快な気分になれる相手なんて、今の赤羽以外に居ないよ。


「やばい、白詰が男だったら惚れてたかも」

「今も中身は男なんだけどね」

「男だって主張したいんなら、私より胸を小さくして出直してきなさい」


 言いながら、赤羽は僕の胸部を睨みつけた。


「あーあ、話すだけでこんなに気が楽になるなら、もっと早く白詰と話しておけばよかった」


 今までは話も聞こうとしなかったくせによく言うよ。


「話したくても、近くに桂くんや広瀬くんが居たら入る隙なんて無いよ」

「そうかな? あの2人は結構マイペースだから、私のことよく放り投げてどっか行っちゃうけどね。今だってそうじゃない」

「もしかして、今日も?」

「そう、訓練やってる。あいつら脳みそまで筋肉で出来てるから、人の繊細な気持ちなんて理解してくれないのよ」

「確かに、赤羽さんがこんなに弱ってるのに放っておくなんてひどいよね。でもあの2人……特に広瀬くんは、自分の弱みを他の人に見せたくないんだと思う。同じ男としての勘だけど」

「露骨な男アピールだ」

「だから男だってば」


 桂と広瀬は、休みの日も、訓練終了後も、自主的に残って訓練をしている。

 元から優秀な2人は、その練習のお陰でレベルが向上し、更に飛び抜けて強力な力を手に入れつつあった。

 アイヴィも彼らには期待しているようで、たまに自主練習に付き合っているらしい。


「で、団十郎が弱みを見せたくないってどういうこと?」

「広瀬くんはクラスのリーダーだったから、何人も死んでしまったことを悔やんでるんじゃないかな」

「それで、訓練を?」

「悔しさを紛らわすため、そしていざって時に大事な人を守れるようにね」

「それで放置されてたんじゃ、全然うれしくないっての」


 そう言いながらも、赤羽はにやついている。

 僕は”大事な人”としか言ってないんだけど、どうも彼女はそれが自分だと信じているらしい。

 幼馴染だからこそ、そこまで自信を持てるんだろう。

 少し羨ましいな。


「うん、今の気分なら眠れそうな気がしてきた」

「寝てなかったの?」

「眠れなかったの、色々考えちゃって。でも白詰のおかげで気分が晴れたから」

「そっか、じゃあ僕はそろそろ自分の部屋に――」


 赤羽の睡眠の邪魔をしては悪いと立ち上がり、椅子を元に戻そうとすると。

 僕の服の端を、彼女の指先がつまんでいた。

 振り返ると、そこには顔を赤くしてそっぽを向く赤羽の姿があった。

 僕はいたずらっぽく笑うと、彼女の額に手を置く。


「熱、あるんじゃない?」


 そう言うと、さらに赤羽の顔は真っ赤になった。


「ちょ、調子乗るなっての! 何……勝手に触ってんのよ」

「引き止めた赤羽さんが悪い」

「うっ……」


 反論できない赤羽の額から手を離すと、彼女は寂しそうに「あ……」と声をあげた。

 僕は部屋から出るのを諦めて、再び椅子に座る。


「寝付けるまで一緒にいようか?」

「できれば……手も、握ってて欲しい」

「赤羽さんって結構甘えるタイプなんだね」

「うっさい、黙って握っててよ!」


 声を荒げる赤羽の手を、僕は苦笑いしながら握った。

 そのままじっとしていると、彼女は10分ほどで寝息を立て始める。

 手を放し、最後に軽く額を撫でると、僕は部屋を後にした。




◆◆◆




 プラナスはコンコン、とアイヴィの部屋の扉をノックした。

 ”まだ処刑場から戻ってきてはいないだろうけど”とダメ元で試してみたのだが、意外にも「どうぞ」と返事が戻ってくる。

 部屋に入ると、そこには暗い表情でカップを傾ける彼女の姿があった。


「もう戻ってきてたんですね」

「あそこに長居はしたくなかったから……ふぅ」


 アイヴィは大きくため息をついた。

 彼女は騎士団長として処刑場に自ら足を運び、異世界から呼び出したアニマ使いの末路を見届けていた。

 四者四様の死に様を見せつけられ、鬱屈とした気持ちにならないわけがない。


「お菓子を持ってきたんですけど、食べますか?」

「作ってきてくれたのか?」

「少しでも元気を出してくれればと思いまして」

「ありがとう。プラナスの分もお茶を用意するから、そこに座っておいてくれ」


 1人で居るとどうしても暗いことばかり考えてしまう。

 アイヴィはプラナスがこうして部屋に来てくれたことを、心の底からありがたいと思っていた。

 まあ、最近は頻繁にプラナスがここを訪れるので、心のどこかで”プラナスが来てくれるはず”と期待していたのだが。

 それは言うまでもなく、岬の助言の影響だった。

 プラナスさえアイヴィの傍に居れば、水木はおいそれとアイヴィに近づくことはできない。

 特別なことなど必要なかったのだ、ただ近くにいる、それだけで十分効果がある。

 そのおかげか、最近、アイヴィと水木が共に過ごす時間は明らかに減っていた。


 アイヴィはお茶を注いだティーカップを椅子に腰掛けたプラナスの前に置くと、自らも向かいの椅子に座る。


「ごめんなさい、本当は私も処刑場に行くべきだったんですよね」

「プラナスはそういうの苦手なんだから、気にしないでいいよ」

「でも、彼らを呼んだのは私なのに……」

「召喚を提案したのははプラナスではない、責任を負うのは騎士団長である私の仕事だ」

「私にできることは、何かありませんか?」

「こうして部屋に来てくれるだけで十分だ、プラナスと話していると心が安らぐからな」


 素面でこういうことを言えてしまうのが、アイヴィの長所であり欠点でもあった。

 彼女は当然のことを言っているつもりなのだ。

 その言葉がどれほどプラナスに大きな影響を与えているのか、自覚がない。

 プラナスは動悸を抑えるために胸に手を当てながら、アイヴィとの会話を続けた。


「それはつまり、心の安らぎを求めるほど追い詰められているということではないですか。帝国の使者の件、やっぱりまずいんですよね」

「まあ……な。まず外務大臣が秘密裏に使者を招いていたことには驚いたが、それを殺してしまった以上、帝国との関係悪化は避けられないだろうな。少なくとも和平の目は完全に消えたと言って良い」

「そう、ですか……」


 プラナスは自身も一件に絡んでいたとは言えなかった。

 ひとえに、アイヴィの命を守るために戦争が終わればいいと思っての行動だったのだが、結果的に戦争を激化させる原因を作ってしまうことになったのだ。

 それを彼女に知られてしまえば、自分は嫌われるかもしれない――そんな風に考えてしまったから。


「使者の件が漏れたとすれば、城にスパイが潜り込んでいたんでしょうか」

「あるいは外務大臣と敵対する、過激派の人間がやらせたかのどちらかだ。何にせよ、これ以上アニマ使いが減っても困るし、ただちに訓練を終わらせ彼らを前線に送れとお達しがあった、もうあまり時間は残されていない」

「それは、アイヴィも一緒に前線に行くということですか?」

「そうなるだろうな……ああプラナス、そう悲しい顔をするな。前線に行ったからと言って私が死ぬとでも思っているのか?」

「離れ離れにはなってしまいます。それに、戦況は連合軍有利と聞いていますよ」

「だとしてもだ。私は”王の城壁”と呼ばれたほどのアニマ使いだぞ、そう簡単に死にはしないさ」


 アイヴィはプラナスの頭を撫でた。

 しかし、子供の頃のようにそれだけで機嫌が治るほど、今のプラナスは単純じゃない。

 ふくれっ面の彼女を見て、アイヴィは困ったように苦笑いを浮かべた。


「弱ったな……私の言葉を信じてくれないのか?」

「その言い方は卑怯です」

「まだ前線に行くと決まったわけじゃないんだ、それにまだ最低限の訓練も終わっちゃいない、行くとしてもまだ猶予はあるぞ」

「でも行く可能性は高いんですよね」


 なかなか納得してくれないプラナスに、困った顔で頭を掻くアイヴィ。

 彼女は幼い頃から、気弱なプラナスを守ってきた。

 それはひとえに、プラナスに独り立ちして欲しいという願いゆえに他ならない。

 しかしプラナスはアイヴィとずっと一緒にいることを望んでいる。

 2人はその時点で、致命的にすれ違っていた。

 だからアイヴィにはプラナスのことが理解できない。

 理解できないからこそ――


「プラナスはいつまでも甘えんぼなんだな。だったらいっそ、今夜は一緒に寝てみるか? そしたら少しは気持ちも晴れるだろう」


 ――プラナスをからかうつもりで、そんなことを言ってしまう。

 相手がその言葉を真に受けることなど、想像すらしていないのだ。


「いいんですか?」

「へ?」

「じゃあ……枕と寝間着持ってきますね」

「いや、それは……あれ?」


 冗談だと言うより早く、心なしか嬉しそうに、素早い動きで部屋を出て行くプラナス。

 部屋に残されたアイヴィは再び困った顔で頭を掻いた。


「一緒に寝るなんて子供のころ以来か……それもそれで楽しそうだし、まあいいか」


 ここで強引にでも止めないから、いつまでもプラナスはアイヴィから離れていかないのだ。

 アイヴィ自身も、ひょっとすると心のどこかではそれを望んでいるのかもしれないが。


 急に部屋が静かになる。

 一人きりになると、再び思考はネガティブな方へと進み始める。

 さしあたっての問題は、近々行われる夜間訓練だ。


 アニマの視覚は光だけを頼りにするものではない、つまり暗所でも問題なく動くことが出来る。

 しかし問題は、暗所で見える風景が人間の見る風景と全く異なるということ。

 世界に満ちる微弱な魔力の流れを頼りにしなければならない。

 ある程度の慣れが必要だった。

 そのために、すぐさま前線に送り出す必要があったとしても、夜間訓練だけは避けることができないのだ。

 夜間での動き方さえ覚えてもらえれば、あとは前線に送り込み、実際の戦争に身を投じることで経験を積んでもらう。

 荒療治だが、今の王国に彼らの身を気遣うほどの余裕は無い。


「何事もなく終わればいいのだが……」


 ある程度レベルの上がったアニマ使いなら、初めての暗闇の中での戦いでも、シルヴァ森林、あるいはイグニフェール山の”浅い部分に現れる魔物”なら、問題なく狩ることが出来るはず。

 そのための最低限の訓練は今日までに済ませてきたつもりだった。

 ハプニングさえ起きなければ、夜間訓練は滞りなく終わる。

 訓練は十分とは言えないが、それでようやく彼らを戦地へと送り出せるわけだ。

 数十人のアニマ使いが戦列に加われば、防戦一方の現状も変えられるはず。

 そのためにはなんとしても、夜間訓練を成功させなければならない。

 何か起きたとしても、折鶴の件の二の舞いにはさせない。

 教官として今度こそは彼らを守ってみせる。

 そう強く決意してもなお――アイヴィの胸にまとわりつく不安が晴れることは無かった。






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アイビィが?!
[気になる点] 以前から警戒していた要注意人物ならいざ知らず、何もできない無能と蔑んでいた白詰と視線を合わせただけで全ての仕掛人と気付くってのは…ちょっと無理筋じゃないですかねぇ( ´△`) 『こいつ…
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